主人公恐怖症、主人公に付け狙われる。【ガラル編完結】   作:ドンカラス好き

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ガラル編 終

 

「ザシアン、きょじゅうざん」

「ザマゼンタ! きょじゅうだん!」

「ムゲンダイナ! ダイマックスほう!」

 

 ……は? え、なんで? 俺とヒカリの渾身の一撃が三体がかりで逸らされた。え? なんでいるの? ビートくんもホップくんもユウリさんもローズ委員長も、シロナまでいる。

 

「ザシアン、最優先で浮いてるピンクを倒しなさい。もう一度きょじゅうざん」

 

 ビートくんがおそらくガラルの伝説でカプ・テテフを倒す。と同時に鱗粉が止まり、ぐっと楽になった。助かってしまった。

 

「え? 裏切ったの?」

 

 ビートくんとホップくんが向こう行ったらワープ閉じるって約束だったじゃん。なんで全員いんの?

 

「え? ほんとになんで? ローズ委員長? 裏切る要素あった?」

「そりゃあ裏切るとも。聞いてた話と違うからね。死ぬなんて聞いてないよ全く。きみに死なれたらわたくしの計画丸潰れですよ」

「いや言ってたよ!」

「言ってなかったよ」

「言ってなかったですよ」

 

 ユウリさんが怒ってる。

 

「聞いてたら許してるわけないでしょ? バカなんですか? いい加減にしてください」

「いいじゃん俺が死のうが……悪者に相応しい最後だよ」

「あ、そういう態度取るんですね。ちなみに私もガチギレ中ですがビートもなかなかですよ。弁明どうぞ」

 

 ビートくんがこちらに歩いてくる。あまりの怒気にびくびくしていたら、スルーして通り過ぎていった。

 

「とりあえず……カプ・テテフと言いましたね。あなたは身体を癒せるんでしょう? 適量でサキナさんの身体を治しなさい。余計なことをしたら……わかってますね?」

 

 嫌がるテテフだったがザシアンに剣を突きつけられ、嫌々俺を治す。こいつは多分邪神だからそういうのは嫌いなんだろう。死にかけの身体が少しまともになった。

 

「さて……」

 

 急にこちらへ振り返り、へたり込んでいる俺を見下ろしてくる。そこそこ長い付き合いになってきたが、今までに見たことないくらい冷たい目をしている。

 

「ビートくんが捕まえたんだ。剣のポケモン。ホップくんが盾の方なんだね。似合ってるね」

「黙りなさい」

 

 怒ってるなぁ。騙してたんだから当然か。

 

「じゃあ説明してもらいましょうか」

「説明って言われても……ユウリさんに聞いたんでしょ?」

 

 ちらりとヒカリの方を見る。さっきからずっと黙っている。近づいてはきたが静観の構えらしい。

 

「俺は別の世界から来て……ヤケになって悪党の仲間になったんだよ。悪いことしたから死のうと思って……」

「なぜぼくに相談しない? あと話を端折ってますよね。何か目的があったんでしょう?」

 

 ヒカリを見る。いや、もういいか。聞かれても。

 

「……セレビィを捕まえたかった。元の世界に帰れないのは分かってた。けど、セレビィの過去の回想なら、元の世界の家族の顔がもう一度見れるんじゃないかと……」

 

 ディアルガじゃ無理なのは分かってた。ディアルガはあくまでこの世界の時間を支配しているだけだから。この身体は元の世界と別の身体だから、ユクシーのように記憶を読み取るのも無理だった。

 ただ、セレビィなら、俺という存在を起点に出来るかもしれないと、どうせ無理だと分かっていても、諦めきれなかった。

 死んだ両親の写真も、ここに来たら無くなった。ギンガ団を利用してでも最後に見たかった。

 

「それを理由に悪いやつらに協力して、それでバチが当たったんだよ。結局アローラで元の世界での記憶はほとんど消えた」

 

 アカギが見つけてくれたセレビィも、もうヒビキが捕まえてしまった。映像に映っていた。

 セレビィは世界に一匹しかいないわけじゃない。けど、ギンガ団の情報力も、マスターボールも無くては諦める他なかった。

 

「だから! それをなんでぼくたちに言わないんですか! ぼくがあなたにどれだけ恩があるか分かってるんですか!? 勝手に死ぬな! 協力しますから、ちゃんと話してください!」

「今更俺が自分の目的優先していいわけないだろ! アグノムが、アグノムは、俺が捕まえてあんなに苦しんで……!」

「どうせそんなことだろうと思ったわよ」

 

 黙って聞いていたヒカリが近づいてきた。条件反射でビクッと身体を跳ねさせてしまう俺を微妙な顔で見ながら、バトルで意地でも使わなかった、出さなかった、最後のモンスターボールを投げた。

 そこから、出て、きたのは……

 

「アグノムは怒ってないって。こっち来る前に捕まえといて良かったわ」

 

 アグノムだった。ずっと、記憶が削れていっても残り続けた、一番の後悔。

 リッシ湖を爆発させるよりはマシだから、なんて言い訳して、俺の手で捕まえたアグノム。

 エムリットも、ユクシーも、アグノムも、みんな苦しんでた。ゲームでは分からなかった。おぞましかった。それを自分の手でやったと思うと吐き気がした。

 

 そのアグノムが、苦しかったはずなのに、笑って、慰めるように俺の頭を撫でている。

 

「あ、あ……! ごめん、ごめんなさい……!」

 

 ぼろぼろと子供のように泣きながら、アグノムに縋り付く。

 

「これでもう解決でしょ! あたしももう今までのこと全部許してあげるから、次死ぬなんて言ったらぶっ飛ばすわよ!」

 

 みんな優しすぎる……! 俺は、こんなにして貰える人間じゃないのに……!

 

「それで……彼女には何で追われてたんですか?」

「あ、いや、その、やさぐれてる時にヒカリに会って……」

 

 あまりに話し辛い内容すぎて上手く話せない。当時の俺、あまりに酷すぎる。

 

「それで、楽しそうに旅してるヒカリが妬ましくて……新人っぽかったから腹いせに倒した後めちゃくちゃ煽ったの」

「え、お兄さん昔メスガキだったんですか?」

「俺は生物学上オスから変化したことはないけど……」

「だいぶ自業自得ですね」

「それでヒカリだったら俺の自殺に付き合ってくれると思って……」

「最低ですか?」

「最低すぎます」

「ヒカリだったら俺の手持ちを残していっても任せられると思って……」

「クズですか?」

「酷すぎるぞ!」

「……ごめんね? ヒカリ」

「いいわよもう。死ななきゃなんでも」

 

 諦められてる。ごめん。

 

「ヒカリさん……いや、ヒカリ先輩、大変だったんですね、今まで……」

「分かってくれるの? ……あなた、良い子なのね」

 

 ユウリさんとヒカリが仲良くなっている。ちらりと見たら正座! と怒られた。ごめんなさい。

 

「私は結構ヒカリ先輩の登場に危機感を覚えちゃってるんですけど、先輩はそうでもないみたいですね?」

「最後にあたしの隣に居ればそれでいいわ」

「覇王か何かなんですか?」

 

 というより死なれるよりは全部マシよ、とのことらしい。ヒカリはなんだかんだで優しいから、俺なんかが死にかけたのもトラウマになってしまったみたいだ。本当にごめん。

 俺のせいでヒカリが擦れてしまっている。昔はもっとこう正統派のツンデレみたいな感じだったのに。ごめん。

 

「うん、じゃあ俺は自首するね……みんな本当にありがとう。じゃあシロナ、お願い。てかシロナはなんでいるの?」

「あなたなんでずっとわたしに当たり強いのよ」

「ごめん。俺のこと可哀想がるやつみんな嫌いなんだ」

「あ、そういう理由……」

「いやぁ、先ほどシロナくんには話したんだけどね、サキナくん、君の手配はもう解けてるよ。ま、わたくしの交渉力のおかげといったところかな」

「は? いや無理でしょ」

 

 俺がどんだけギンガ団に協力してきたと思ってるんだよ。

 

「セレビィ捕獲、良いじゃないですか。マクロコスモスが協力させていただきますよ。ただね、何もなしで無罪放免とはいかなかったんだよ」

 

 そりゃそうだろ。こんな犯罪者を。

 

「マクロコスモス側で監視を付けることが条件なんだ。だからね、昨日付で社員になったビートくんと一緒に、捕獲の旅というのはどうだろう」

「……なんの話ですか?」

「おやおやビートくん、よく思い出してくださいよ? きみは昨日マクロコスモスの社員になっただろう? ねえオリーヴくん」

『ええ、書類もしっかりとここに』

「…………そうでしたね。昨日なったんでしたっけね」

 

 いや、流石に……!

 

「甘すぎる! 罰を受けるべきだろ俺は! ローズ委員長! なんでそこまでしてくれる!?」

「ユウリくんから前金を頂いているようなものだからねえ。ムゲンダイナの捕獲というね」

 

 それが理由だったのか? じゃあユウリさんはずっと俺のために、旅を犠牲にして……

 

「ユウリさん、俺は……」

「言ったでしょ? 私はお兄さんの味方だって。次の旅も連れてってくださいね」

「それは無理だねえ。ムゲンダイナは国外に持ち出せないし、制御もきみにしか出来ないし」

「そっ、そんな!」

「あたしが代わりに行ってあげるわよ。安心しなさい後輩」

「きみはもっと無理だよ? シンオウリーグがカンカンだから。当分謹慎じゃないかな?」

 

 なぜか絶望している二人は置いておいて、ビートくんに向き直る。

 

「ビートくんはいいの!? 俺のろくでもない我儘に付き合うなんて……!」

「あなたほんとに人の話聞いてないですね。ぼくが恩があるから返したいって言ってんですよ。それに……」

「それに?」

 

 少し恥ずかしそうに口ごもったビートくんが、意を決したように叫ぶ。

 

「もうぼくたちは師弟じゃないってあなたが言ったんですよ。……親友のお願い聞くのに理由がいるんですか! サキナ!」

「ううん……ビート、ありがとう……!」

 

 この世界に来てから、最初から、ずっと間違え続けていた日々だった。ギンガ団に入ったのも、ヒカリへの八つ当たりも、その後ろくにヒカリと話さなかったのも。

 でも、みんなのおかげで、ヒカリに許してもらえた。アグノムに許してもらえた。自分勝手に死のうとしたのに、許してくれた。セレビィの夢も追わせてもらえた。みんなこんなに優しかったのに、勝手に疑っていた。

 

 犯罪者じゃ無くなったとしても、償おう。最大限、俺に出来ることなら何でもやろう。迷惑をかけたシンオウにも、ヒカリにも、ユウリさんにも、ホップくんにも……ビートにも。

 

「あ、そうだ。許してはあげるけど条件があるから」

「え、な、なんでしょう……」

 

 急にヒカリが何かを投げてくる。これは……?

 

「スマホあげるから持ちなさい。ミヅキのアドレス入れてあるから……ちゃんと返信してあげること。それが条件」

「わ、分かった。ミヅキ、さんって、その……どういう感じの人……?」

「忘れたアンタが悪い。教えてあーげない。ふふっ」

 

 こんな風に、にこやかにヒカリと話せる日が来るなんて、思いもしなかった。

 

 きっと次の地方では、主人公と関わることはないだろう。でももし会ったとしても、ヒカリとだって和解出来たんだから、多分、きっと、大丈夫。




ガラル編これで終わりです。拙い小説をここまで応援して頂いて、本当にありがとうございました。
後日談を二個か三個か投稿して、その後次の地方の章を始めようと思っています。また読んでもらえると嬉しいです。
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