元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・なんかビーム出た!

「おはようございますお客様♪ 本日も中途半端な時間にぃー、中途半端なご注文をありがとうございまぁーす♪」

 

「あ、おはよう、キャンディさん」

 

 時刻は9時過ぎの遅い朝、ギルドに向かう前にパンケーキセット3人前を注文した。

 

「いえいえ、糖尿病になっちまえーだなんて、これっぽっちも思っておりませんわー♪」

 

 キャンディさんも遅い朝食のようだ。主食はパンの耳。おかずは肉と野菜の切れ端を使ったスープ。ずいぶんと切り詰めた朝食を目の前で食べ始めた。

 

「美味しいですか、リチャードさん?」

 

「うん、甘い。キャンディさんもちょっと食べる?」

 

「欲しいだなんて一言も言ってませんけど」

 

 と言いながらも、彼女は大皿に積み重なった豪華9枚のパンケーキから1枚をかっさらった。

 

「うーんっ、さすが私が焼いただけあります。……もう1枚貰っても?」

 

「いいよ、何枚でも」

 

「では全部――」

 

 皿ごと持って行こうとする彼女の手をガシリつかんだ。

 

「それはダメ、もう2枚で勘弁して」

 

 キャンディさんは18歳。

 まだお酒の飲めない年齢ながら、こういった商売をしているからか垢抜けている。

 

 彼女はこの店の常連たちのアイドルだ。

 実際明るいし、かわいいし、仕事をする姿も生き生きとしていて輝いている。

 

「昨晩は沢山のご飲食ありがとうございます、パパも喜んでおりました」

 

「いいよ、また稼げばいいんだし」

 

「いえ、何かサービスしないといけませんね。……夜、マッサージをいたしましょうか?」

 

「な、何ぃ……っ!?」

 

「もちろん、料金はいただきますが」

 

「あ、うん……ちゃっかりしてんね、君!?」

 

「言っておきますけどー、リチャードさんだけですからね、こんな話をするの……」

 

 つい『本当かよ?』と喉から出てきそうになったのを飲み込んだ。

 相手は思春期、ちょっとした一言で傷ついて右ストレートで言葉を返してくるかもわからない。

 

「んーー……そうだな、それは悪くないかも」

 

「え……!?」

 

 自分から誘っておいてキャンディさんは驚いていた。

 

「通常プレイではあり得なかった展開は大歓迎だ。早速今夜お願いするよ、キャンディさんの『ぱふぱふ』を」

 

「い、いかがわしい言い方しないで下さいっ!! ただのマッサージですっっ!!」

 

 通じるんだなぁ、『ぱふぱふ』で。

 誘っておいて恥じらう純情なキャンディさんを笑い、残りのパンケーキを飲むように平らげた。

 

 パンケーキは飲み物。みんな知ってるね?

 

「じゃ、今夜楽しみにしてるから」

 

「は、はい……」

 

 恥じらいに慎ましげにうつむくのが普通の女の子らしくてギャップ萌えだった。

 

「無理なら別にいいよ。じゃ、また夕飯時に」

 

 空鯨亭を出て、腹八分目の腹を抱えて冒険者ギルドを訪れた。

 

「あ、リチャードさんっ!!」

 

「おっす、ピリリカさん、プチ久しぶり! クエスト見せてくんない?」

 

「はい待っていましたっ、さあこちらをどうぞっ!」

 

 この時間はみんな出払っていてギルドはガラガラだ。

 カウンターに置かれたFランククエストのバインダーに目を通した。

 

「あれ、【不定形の森での薬草採集クエスト】、これ復活したの?」

 

「はい、仕方がありませんので私自らが営業に出て、販路を拡大してきました。感謝して下さいね?」

 

「ありがとう、ピリリカさん!!」

 

「いえいえ、自分の出世のためですからお構いなく。たくさんっ、かき集めてきて下さいねっ!」

 

「ああ、ピリリカさんの出世のためにな!!」

 

「はいっ! では【不定形の森】に1名様ごあんなーいっ!」

 

 俺はギルドの地下に下り、【旅の扉】からモニターがスクリーン焼けするまで眺めた【不定形の森】を訪れた。

 

 少し回るとすぐにピカピカと光る薬草の群生地を発見し、抜いた薬草が2つに増える質量保存の法則完全無視の採集作業に入った。

 

「プリュリュゥッッ!!」

 

 それから少しするとそこにいつものグリーンスライムが現れた。

 しばらく顔を出していなかったからかやたらに数が多い。

 彼らは計30体もの団体で悪しき変態貴族にお礼参りにやってきた。

 

「会いたかったぜ、ケーケンチ!! このスライムラバーカップとヘビーダーツの餌食になってもらおうか!」

 

 遭遇したら先制攻撃あるのみ。

 重いヘビーダーツ3本を指先にはさみ、野球マンガのように垂直に足を上げてからのオーバースローで、ブン投げた!!

 

 キュィンッッ、ベチャンッッ!!

 

 グリーンスライムAは爆散した! グリーンスライムBは爆散した! グリーンスライムCは爆散した!

 ヒャァァッッ、ンギモヂィィッッ!!

 

「ハハハハッ、おかわりをくれてやるぜ、最弱モンスターッッ!!」

 

 残りダーツ2本を投げつけると、DもEも爆散した。

 

「いやぁ、弱い者イジメって、本当に素晴らしいものですねぇ……。ま、ゲームの世界に限っけど、よし残ってるやつらこいやーっ!!」

 

 グリーンスライムたちが一斉攻撃をしかけてきた。

 グリーンスライムは体当たり以外の攻撃パターンが存在しない悲しきワンパターン生命体だ。

 

「ムダムダムダムダムダムダムダァァッッ!!」

 

 囲まれないように後退しながら全ての攻撃をダーツボードシールドで防いだ。

 防いだっていうか、防げて当然だったというか、『俺の盾スキル高過ぎぃぃっ!』だった。

 

「つ、強い……っ」

 

 どこからか声がしたような気がするが、まあ気のせいだろう。

 

「バカめっ、理論上お前たちが俺の盾を抜ける確率は0.7%! つまり――ゲフッッ?!!」

 

 手数で押されるとごく稀に当たるということである。

 だが相手は最弱、俺の防御スキルがあれば、サッカーボールが顔に当たったようなものだ。いてて……。

 

「さあこいっ、どんどんこいっ!」

 

≪盾術:83→84≫

 

「よしっ、あと1!」

 

 スキルはレベルが上がれば上がるほどに沢山の経験値が必要になる。

 特にこの手の防御系統のスキルは特殊なプレイをしない限りなかなか上がらない。

 

「す、すごい……ほとんど受け止めてる……。あんな、あんな冗談みたいな装備で……っ」

 

 こうやって最弱スライムの群れに盾を構えて、後退しながら全部受け止めるとか、そういう変なプレイをしなければ効率的に育たないのがスキル制度のゲームだ!

 

 その点、この肉体はいいぞぉ、リチャード!

 お前が元ラスボスだったおかげで、上げにくい防御スキルがこの通りの高水準!

 

≪防御:98→99≫

    ≪盾術:84→85≫

 

「よしきたーっ!!」

 

≪盾術:85到達!

 特殊効果:盾装備枠+1を得た!≫

 

 説明しよう。盾装備枠+1とは、1枚余分に盾を装備できる効果である。

 『ゲームだからね!』で成り立っていたこの効果、この世界で修得したらどうなるんだろう。ワクワクが止まらない! だから狙ってみた!

 

「ヘゴッッ、オゴッ、アベシッッ?! 止めて、止めて、みぞおちは止めて……っ! てかお前らはもう用済みだっ、死ねいっ!」

 

 迫り来る体当たりをダーツボードで受け止めつつ、スライムラバーカップを槍のように放った。

 

「ピキュッ!? TT」

 

「ピ、ピィィィッッ!! TT」

 

 1撃でグリーンスライムは動きを止めた。

 毒、麻痺、さらに鈍足効果の付与により、トイレのスッポンに『ズッポン』と吸われたスライムは餅のように落ちてぷるぷると震えるだけの塊と化した!

 

「グリーンスライムよっ、我がトイレのスッポンの餌食となれ!!」

 

≪トイレのスッポン:39→40≫

 

 合計25体のグリーンスライムは全てぷるぷると震えるずんだ餅となり、先に倒したスライムからHPを失って核となっていった。

 

≪トイレのスッポン:40到達!

 戦技:ラバーカップ・ビームを得た!≫

 

「は、ビーム……!? え、ビーム出んのっ!?」

 

 諸葛亮。独眼竜正宗。

 古の武将たちもゲームの世界ではビームを出す時代である。

 トイレのすっぽんからビームが出ても――いや、やっぱ完璧おかしいわ。

 

「はっ、あれはっ!?」

 

 その時、俺は未知のモンスターを森の奥地に見つけた。

 コンプリートしたモンスター図鑑にも存在しない、本来存在するはずのないモンスターだった。

 

「ぷぅー、りゅー、りゅー、りゅー、りゅぅぅぅーっっ!!」

 

 それは騎士の兜をかぶったナイト・グリーンスライムとでも呼べる、ダンプカーより巨大なグリーンスライムだった。

 

「仕様外のモンスター! 試し撃ちに上等だっ!! しょせんはでかくなろうと最弱は最弱っ!!」

 

 そのグリーンスライムはスライムをいじめまくる変態外道冒険者に怒っていた。

 時速50キロは超えているであろう速度とパワーで、ヤツは元ラスボス・リチャードをひき殺そうとした!

 

「喰らえっ、トイレのすっぽんっ、ンビィィィィムッッ!!!」

 

 叫んでスキルを発動させると、本当にトイレのスッポンの先端からビームが出た。

 ビームの色は何かをほうふつとさせる黄土色。太さはごんぶとで、直径1メートルほど。

 

「ぷきゃぁぁぁっっ?!! TT」

 

 ビームはスライムごと不定形の森をなぎ倒した。

 貫通力増し増しのビームは彼方の山にぶち当たると、爆発して山肌を吹き飛ばし、ナイト・グリーンスライムの残骸など影も残さなかった。

 

「つ、強っ、強いっていうかっ、もはやロボゲー並みの破壊力……!! ぅ……っ!?」

 

 あまりの破壊力に感動するまもなく、脱力にその場でうずくまることになった。

 立とうとしてもまったく立ち上がることが出来ない。

 

「う、うぅ……強いけど、ソロプレイ向きじゃ……う……っ」

 

 こんなところで意識を失ったら今日までいじめてきたスライムに何をされるかもわからないのに、逆らいようもなく意識が遠くなっていった……。

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