元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・Aランクボスモンスターをトイレのビームで倒した!

「つ、強すぎます……。トイレの清掃道具が、まさか、こんなに強いなんて……っ」

 

「そう思うじゃん? 物理的な攻撃力は全然ないんだな。ってことでっ、やっちゃってよ、ピリリカさんっ!!」

 

「はいっ、お任せ下さいっ!! 星魔法【流星雨】ッッ!!!」

 

 説明しよう。

 星魔法とは全ての相手に平等に効くファンシーな万能魔法である。

 

 キラキラと輝く虹色の六芒星がピリリカさんの頭上よりオーガへと流星のように降り注ぎ、敵を容赦なく消滅させた。

 

 後に残ったのは【オーガの爪】が5つと【異界鉱石】が3つ。

 前者は100G、後者は250Gで売れたはずだ。

 

「わ、私っ、やっつけちゃいましたっ、リチャードさんっっ!!」

 

「お見事! いやぁピリリカさんは強いなぁ!」

 

「リチャードさんが言うと嫌みですよ。驚きました……トレイの清掃道具だなんて言ってごめんなさい!」

 

「いや実際清掃道具だし。これがなかったらマラカスとギターで戦ってたよ」

 

「え、えぇぇ……っ!?」

 

 ヘビーダーツを拾い、ピリリカさんと並んで前進した。

 ピリリカさんの信頼のまなざしを隣に感じた。

 

 忙しなかったが先ほどの成長で、ダーツの絶対命中補正が合計50%となった。

 つまりはどんなにメチャクチャな投げ方をしても、2回に1回は当たるってことだ。

 

 これはいい!

 運用を工夫すれば超面白いことになる!

 

「あ、この奥にオーガが1体います」

 

「目、悪いのにどうしてわかるんだ?」

 

「索敵の魔法を使っているんです。昔はもっと目が良かったのですが、色々ありまして……」

 

「Cランク冒険者なのに受付嬢をやっているのも、ソレ繋がり?」

 

「ええまあ、そんなところです……。誰も目の悪い魔法使いに、後ろを任せたくないですから……」

 

「俺は気にしないよ」

 

「それはリチャードさんが桁違いに強いからですっ! こんなに強い人、見たことないですよ、私!」

 

「そうでもない、上には上がいる」

 

 過去形だが裏ボスもいたし、その裏ボスを倒したやつらもいる。

 まあもう二度と関わることはないだろうが。

 

「お、本当だ、アレはオーガ(つよ)だ」

 

「……いえ、(きょう)では?」

 

(つよ)だ」

 

 ルビが振られていない表現に人それぞれの読みがある。誰がなんと言おうと、あれは(つよ)だ。

 

「どっちでもいいですけど……あ、ちょっと……!?」

 

「あれくらいならダーツだけでいける」

 

「嘘っ、100メートル以上離れていますよ……っ!? あ、気付かれました……!」

 

 絶対命中50%の検証もかねて、全力投球でダーツを投げ付けた。ダーツはカブラ矢のように音色を上げて空を切り、彼方のオーガに直撃した。

 

「よしっ、残る4投っ! 全部命中したらお立ち会いっ、そおぉぉぃっっ!!!」

 

 キィィンッ……ズダンッッ!!

 キィィンッ……ズダンッッ!!

 キィィンッ……ズダンッッ!!

 キィィンッ……ズドォォォンッッ!!

 

 1撃でオーガを麻痺させるダーツは、最後の5発目の命中で彼方のオーガ強(つよ)を消滅させた。

 

「どうだっ、ハハハッッ、ンギモヂィィッッ!!」

 

「え、ええええええええ…………全部、当たっちゃっいました……」

 

「どうだっ、ネタ武器もバカにならないだろっ!」

 

「こんなの、強過ぎますよ……。リチャードさんって、いったい、どうなってるんですか……」

 

「そんなことよりドンドン行こうぜ!」

 

 どんどん前進して坑道を攻略した。

 オーガたちはニンゲンに代わって坑道を広げているようだ。

 

 ツルハシを振るって採掘に励んでいるやつの背中を卑怯に撃ってやったりして、ターゲットのクリムゾン・オーガが住まう深部へと下りた。

 

「リ、リチャードさんっ、い、いました……っ、いましたけど……つ、強そう……っ」

 

 独りで行くと昨日言っていたのにずいぶんとピリリカさんは及び腰だった。

 

 赤く、巨大で、角を肩から生やしちゃったりしているクリムゾン・オーガに、彼女はズレたメガネを戻すのを忘れてしまうほどに恐れおおのいていた。

 

「あれを倒せば……あれを倒せばあの子たちが……ぅ、ぅぅ……」

 

 まあ実際クリムゾン・オーガは強い。

 肩から角が生えているやつはだいたい強い。でかい=強い。

 その筋肉質のオーガは身長4メートルを超えていた。

 

「あの子たち? これ、出世のためじゃなかったの?」

 

「ぅぅ……それももちろん、あるんですけどぉ……。この目のことで、お医者様とのお付き合いがありまして……」

 

「ああ、それで可哀想な子たちと知り合っちゃって、同情しちゃったと?」

 

「ぅ……」

 

 図星だったようだ。

 素直に慈善事業と言えばいいのに、彼女はビジネスと言い張りたいようだ。

 

「しょうがないじゃないですか……。みんなリチャードさんみたいにっ、危険なクエストはやりたがらないんですからーっっ!!」

 

 なんだ、いい人じゃん、ピリリカさん。

 キャリアアップしたい気持ちなんて誰でも持っているし、それに向かって必死でがんばる姿も嫌いじゃない。

 

「え……リチャードさん……?」

 

 標的、クリムゾン・オーガを正面にトイレのスッポンを腰から抜いた。

 

「C級冒険者ピリリカ」

 

「は、はい……っ」

 

「アレ、倒せばいいんだよね?」

 

「え、ええ……でも……あんなに高い魔力を持った怪物とは思いも……」

 

「どんな手を使ってもいいから、倒せばいいんだよね?」

 

「い、いえ、いくらリチャードさんと私が連携しても、アレを倒せるとは……」

 

「ところがどっこい、どうにかなるんだな」

 

 クソデカ人喰い鬼クリムゾン・オーガの前に進み出た。

 ピリリカさんは悲鳴を上げるが、やつはこちらを敵と認識してしまった。

 

「リ、リチャードさんっ、逃げ――」

 

 いや、申し訳ない。

 このような場面で、このようなふざけた力でクエストを終わらせるだなんて。

 

「ファファファファッ、また愚かなニンゲンが我に喰われにきたようだな! 私はそこいらのオーガ族とはわけが違うぞぉ。食らえ、煉獄の炎、邪鬼覇道炎獄インフェルノォォォ――」

 

 トイレのアレを、やたら流ちょうに喋り出すAランクのボスクラスモンスターに向けて、俺は叫んだ。

 

「ラバーカップゥゥゥ……ッ!! ンビィィィィィィムッッッ!!!!」

 

 その刹那、黄土色に輝く問答無用の極太ビームがクリムゾン・オーガを『邪鬼覇道炎獄インフェルノなんとか』ごと消し飛ばした。

 さらにビームは坑道の深部で爆裂し、辺りそこら中に粉塵をまき散らした。

 

「え……ええ……っ、ええええええええーーーーっっ?!!!」

 

「くっ、やったか……ぐへ……っ」

 

「えっえっ、リチャードさんっ!? 大丈夫ですかっ、リチャードさんっ!? わっ、ぺっぺっ……」

 

 2度目になっても意識を保てなかった。

 俺は小柄なピリリカさんに担がれて、粉塵の届かないどこかへと運ばれていったようだった。

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