元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・メガネ女子とトーイ温泉に入った!

「リチャードさんっ、今日は本当にありがとうございますっ!」

 

「お、おう……」

 

「どうしたんですかー? 私と一緒の混浴、お嫌ですかー?」

 

「いやぁ……まあ、どういう風の吹き回しなのかなぁ……と、思わなくもないね」

 

 あの後、意識が戻ると心配に目を腫らしたピリリカさんに介抱されていた。

 涙にメガネを外した彼女の素顔は綺麗で、つい禁断のあの言葉を口にしかけた。

 

『メガネしない方がかわいいよ』

 

 なんて言った日には、ピリリカさんのファンに抹殺されてもおかしくなかった。

 メガネキャラはメガネが本体。常識である。世界の真理である。歪めると世界が滅びる。

 

 なんて話はともかくin the 露天風呂。

 なぜか隣にはバスタオルを身体に巻いたピリリカさんがいる。

 

「あ、あの……そんなに、見ないで下さい……」

 

「タオル巻いて風呂に入るのは――ま、いいや。絶景だよ、ピリリカさんっ、ありがとうなっ!!」

 

 タオルを巻いて湯船に入ってはいけません。

 風呂ガチ勢に処されても文句は言えません。

 

「恥ずかしいです……私、細すぎでしょうか……?」

 

「いや、それが魅力的だと思う」

 

「本当ですかっ!?」

 

≪女たらし:5→8≫

 

「で、これ、どういう風の吹き回し……?」

 

「サービスですっ、サービスッ! リチャードさんのおかげであの子たちの病気が良くなるんですからっ、今後の懐柔もかねてサービスですっ!」

 

「お、おいっ!? ちょ、それは、ちょぉ!?」

 

「お背中お流ししまーす♪」

 

 何コイツ、リチャード・グレンターってモテ過ぎじゃねぇ!?

 俺はギルドの受付嬢と裸の付き合いを楽しんだ。

 

 誓っていかがわしいことはしていません。

 背中を流していただいただけです。

 

 そんなサービス展開をささっと終えると、温泉郷での海鮮料理をたっぷり小一時間堪能してから馬車に乗り込み、スタコラサッサと都へと帰った。

 

 行き先はギルドではなく、とある町外れの医院だった。

 

「ありがとうございます、グレンター様。貴方のおかげで皆、症状が落ち着きました」

 

 クリムゾン・オーガの爪が処方されると、激しくせき込んでいた子供たちのせきが止まった。

 ようやくそれで眠れるようになって、今では皆が穏やかな寝息を立てている。

 

「いやぁ、俺はピリリカさんに頼まれただけかな。強引に誘われちゃってさぁ……」

 

「私はピリリカを止めたのです。まさか、無事に戻ってきてくれるとは……」

 

 医者の男性は立派な人だった。

 遊び半分で生きている俺とは別の人種だった。

 彼に目を治療をしてもらったピリリカさんが恩義を感じるのもなんだかわかった。

 

「グレンター様。また彼女が無茶を始めたら、サポートして下さいませんか?」

 

「あー、まあ、考えておくよ」

 

「お願いいたします。重ねてとなりますがこのたびは本当にありがとうございます。薬が間に合わなければ、あの子たちは全滅していたでしょう。全て、貴方とピリリカのおかげです」

 

「止めてくれよ。俺はそういうシリアスなのは性に合わない。もっと遊び半分に物事を見ていたいんだ」

 

「ふふ、変わった人だ」

 

「いや、まかり間違っても、人助けって案外気持ちいいもんだなぁ……とかさ、思ってないぜ。そういうのは俺のプレイスタイルに反する」

 

 だけど俺とピリリカさんが手に入れてきた薬が苦しむ子供たちの安息に変わった。

 これはなんというか、認めがたいことだけど、なんかすごく気分が良い。

 

「ピリリカをお願いします、リチャード・グレンター元公爵様」

 

「なんだ、俺のこと知ってたのか……」

 

「医学と政治は切り離せませんので」

 

「まあわかった。ピリリカさんに怪我でもされたらギルドの連中みんなが悲しむ。たまには慈善事業もいいかもな。遊び半分で」

 

 ここはゲームの世界だが、スキルビルド以外の楽しみ方もある。

 今日はそんな当たり前のことに気付いた日だった。

 

 

 ・

 

 

 それから夜が明けて、宿娘ティリアにツンツンした嫌みを言われながら朝食を食べた。

 

「サラダにハムサンドにヨーグルト。リチャードにしては健康的じゃない」

 

「昨日仕事で医者のところに行ったんだ。いやケンコー大事だわ」

 

「何当たり前のこと言ってんのよ。それで、わけてくれるの……?」

 

「おう、昨日もありがとうな」

 

 二人前頼んだサラダとハムサンドから半分を彼女の皿に移した。

 ヨーグルトは先に半分食べて、彼女の前に錫のカップを突き出した。

 

「成長期なんだからちゃんと食べろよ、キャンディさん」

 

「ふふっ、明日ももらってあげる! いただきまーすっ!」

 

 少し下の妹を見ているような気分になりながら、自分の分を食べ切ると席を立った。

 

≪女たらし:8→10≫

 

「いってらっしゃい、リチャード。いっぱい稼いで、いっぱいうちでお金使ってねっ!」

 

「おうっ、そっちも仕事がんばれな!」

 

 空鯨亭を出て、表通りの冒険者ギルドを訪れた。

 休日出勤の翌日だというのに、ピリリカさんは今日も精力的に働いていた。

 

「あ、リチャードさん! 【不定形の森での薬草採集クエスト】ならまだありませんよ!」

 

「そうか、ならしょうがないし、今日は武器工房でバイトしてくるかな」

 

「もうっ、つれない人ですね……! あ、それはそうと、噂、聞きました?」

 

「なんだ、噂って?」

 

 ギルドを出ようとするとピリリカさんに回り込まれて、逃がさないと言わんばかりに両手でカウンター側に押し込まれた。

 

「近々、武術大会が開かれるそうなんですよ。チャンスじゃありませんか、リチャードさんっ!?」

 

「武術大会か」

 

 そんなシステムあったなと、今さら存在を思い出した。

 

「はいっ、リチャードさんのトイレのすっぽん剣術を広めるチャンスですよっ!!」

 

「おお、なるほど……ふぅん……?」

 

「昨日のリチャードさんっ、信じられない強さでした! リチャードさんなら優勝できますよっ、優勝! そしてっ!!」

 

「[新流派創出]、ってか?」

 

 説明しよう。

 このゲームは武術大会に勝利すると、師範となれる。

 師範となると国軍に己の流派が採用され、その流派の部隊が新設されるのである。

 

「はいっ、リチャードさんのすっぽん剣術で最強部隊創出です!!」

 

「はははっ、そりゃ面白い!」

 

 俺のトイレのスッポンとダーツと盾を使った戦闘術が流派として採用されたらそれは、通常プレイから激しく逸脱した新鮮な体験となる。

 

 面白い。訓練風景を想像するだけでシュールだ。

 

「リチャードさんっ、うちでクエストを受けて鍛えて鍛えてっ、優勝しちゃいましょうっ!!」

 

「わかった、Fランククエストのバインダーを見せてくれ」

 

「いえ、リチャードさんならAでも余裕ですよっ」

 

「Fがいい」

 

「じゃあ間を取って、Bで!」

 

「全然っそれ間じゃないだろっ! なら、しょうがない、Eランクのクエストを受けよう」

 

 譲歩するとピリリカさんはEランクのバインダーを見せてくれた。

 そこから俺は【ブルースライムの森でのマジックマッシュルーム採集クエスト】を受けた。

 

「スライムがお好きですね、リチャードさんは」

 

「弱いしワンパだし楽だからな。んじゃ行ってくるわ!」

 

「はいっ、いってらっしゃいませ、リチャードさんっ!」

 

 その日の育成効率はイマイチ。

 稼ぎはボチボチ。やはり効率育成の友はグリーンスライムだけだった。

 

――――――――――――――

【戦闘スキル】

 トイレのスッポン

     : 49

     → 54

 ダーツ : 30

     → 32

 

【生活スキル】

 採集  : 57

     → 60

 女たらし: 10

――――――――――――――

 

≪採集:60到達!

 特殊効果:レア素材獲得判定を得た!≫

 

 これは採集した素材が一定確率で、目の前でレア素材に変化するスキルだ。

 

 引っこ抜いた【マジックマッシュルーム】(麻薬じゃないやつ)がミラーボールのようにギンギラに輝きだしたとき、俺は考えるのを止めた。

 

 ゲームなんだから抜いたキノコが2つに増えたり、別のキノコにトランスフォームしてもおかしくないよね!

 むしろ当然だよねっ、常識だよねっ、疑う方がおかしいよね! 俺は断じて変な薬とかキメてねぇ! 

 

 『ゲームだからね!』と割り切るのは、わかってても案外大変なことだった。

 

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