元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・最強の防具を自作してクズの中のクズになった!

 朝、目を覚ますと置き手紙があった。

 

『昨日は楽しかった。先に鍛冶場に行く。トマトパスタの残りは全部アンタが食べて』

 

 半日経ってもヘルバのトマトパスタは美味しかった。

 トマトの味が染み込んでこれはこれで乙なものだった。

 

 戸締まりをして鍛冶場を訪ねると、ヘルバさんはまたあの輪っかに没頭していた。

 家の鍵を家主に返すのは後にして、俺も俺の制作に入った。

 

「鉱石を全部引き出したいんだけど」

 

「おー、お前はヘルバの彼氏の……いや、羨ましいねぇ……!」

 

「俺はただの弟子だ」

 

「ヘルバは昔、歳の離れた弟を弟子にしててなぁ。だが病でコロッと死んじまった」

 

「そうなのか……?」

 

 それは初耳だ。このゲームをやり尽くした俺ですら聞いたことがない話だ。

 

 本編から逸脱した情報は物語においてはただのノイズとなりがちなのだから、まあプレイヤーが知らなくて当然なのかもしれないが。

 

「弟子になれただけでも信頼されているぜ。よかったら本当の彼氏になってやんな」

 

 倉庫代の超過分を払い、今日までかき集めた鉱石を全部引き出した。

 銅鉱石は修行のために残していたのに、ヘルバさんが次から次へと仕事をくれるので出番がなくなってしまった。

 

「ありがとう、またドッカーにきたら借りにくるよ」

 

「いやぁ羨ましい……羨ましいねぇ……」

 

「いや、そのジェスチャー止めて……」

 

 倉庫番のおっさんのジェスチャーは『コイツ、ヘルバさんのおっぱいしか見ていないな』と断言出来る感じのやつだった。

 

 それから作業場に戻り、ダーツボードシールドを作業台に乗せて鍛冶ハンマーを握った。

 それからミスリル鉱石をダーツボードの上に乗せて、ハンマーで叩いた。

 

「鉱石を装備に使うと、装備を強化出来るよ。鉱石はレアな方が成功率が上がり、失敗確率が下がるんだ。失敗するとアイテムロストするから注意だよ、新人」

 

「はい」

 

 作業に入るとチュートリアルシナリオがロードされたのか、ヘルバさんがふらふらと自分の作業場から現れた。

 

「無茶をして『くほほ……』となるのはアンタだけさ。ま、がんばりなよ、新人」

 

「はい」

 

 説明が終わるとヘルバさんは自分の作業場に帰って行った。

 チュートリアルに操られた悲しき人生を俺は見た。

 まあそれはともかく、これはそういうことである。

 

 貴重なミスリル鉱石を使って強化を行うと、ダーツボードシールドの補正値が+0から+3となった。

 同じ要領でそれを7回繰り返すと、【ダーツボードシールド+20】が完成した。

 

「おお、軽い……っ!」

 

 【アイテム鑑定】スキルがないのでわからないが、+20なので理論上は防御力が+200%増えているはずだ。

 

 次にメイン防具【冒険者の服】を脱いだ。

 思えばパンツはあの日から1度も身に着けていなかった。

 

 作業台に【冒険者の服】を乗せて、それにミスリル鉱石を重ねてカンカンカンと叩いた。

 

 レアなミスリル鉱石を使えば+13までは失敗率0%だ。

 そこから失敗確率が伸びてゆき、ロストの危険が出てくる。

 とりま、+18まで進めた。

 

 目の前に現れている【強化画面】にはこうあった。

 

―――――――――

【成功】 84%

【大成功】 6%

【失敗】 10%

―――――――――

 

 ざっくり説明すると、10%の確率で【冒険者の服】がロストする。

 ロストすると着替えがなくなり、今日までパンツをはいてこなかったことを死ぬほど後悔することになる。

 

「スリルがあるぜ……そぉいっ!!」

 

 成功した。

 成功したので追加でミスリル鉱石を【冒険者の服+20】になったやつに乗せた。

 

 無論、再び強化を試みる!

 

―――――――――

【成功】 80%

【大成功】 5%

【失敗】 15%

―――――――――

 

≪防具制作:50→51≫

 

 成功した。

 成功によりその防具は【冒険者の服+22】となった。

 

「ま、もう1回くらいいけるだろ」

 

 20回に3回の確率で―ー以下略。

 結果は成功だった。神を味方に付けたつもりになった俺は、さらにミスリル鉱石を乗せる。

 

―――――――――

【成功】 75%

【大成功】 3%

【失敗】 22%

―――――――――

 

「アンタ、ホントにバカな男だねぇ……」

 

「お? そっちはいいのか、ヘルバ?」

 

「服を着なよ、これじゃあたしが変なプレイをさせてるみたいじゃないか」

 

「そうはならないと思うが」

 

 220%の強化となった冒険者の服を身に着けた。

 通気性アップアップ。まるで洗濯したてみたいにふわふわ。すごく快適になった。

 

 それからヘルバさんの隣で防具制作を行った。

 材料はミスリル鉱石。ミスリル鉱石1つを使って、ミスリルネックレスを作った。

 

 これは毒、麻痺、眠り、転び耐性が30%上がる防具だ。

 これを強化して+33にする。

 

「アンタ、贅沢な使い方するねぇ……? その辺にしておいた方が――ああっ、いわんこっちゃない!」

 

 このミスリルネックレスは耐えられなかったようだ。

 『カンッ』と叩くと光の粒子となってロストした。

 

「ア、アンタ、まさか……」

 

「+33にすれば耐性100%だ。成功するまで続ける」

 

「止めておきなよっ、Gを融かすようなもんだよ!?」

 

「金も材料も、なくなったらまた集めればいい。もし全部融けたら明日からまた鉱山夫になるだけだ」

 

「え、本当かいっ!? なら失敗するよう祈っておかないとね!!」

 

「成功を祈っててくれよっ、ヘルバさんっ!?」

 

「あっはっはっ、こればっかりはお断りさ!」

 

 手に入れたミスリル鉱石全てを融かす覚悟で、アイテム強化沼に身を投じた。

 

 そしてミスリルネックレスを失うこと9個目。

 手持ちのお金で40個のミスリル鉱石を買い上げたところで、そこに神アクセ【ミスリルネックレス+33】が誕生した。

 

「どうだ、ヘルバさん! 財布はすっかり薄くなったが、4つの完全耐性を持つ神アクセの完成だ!」

 

「アンタ、つくづくとんでもない男だね……。だけどすごい、すごい物だよ、これは……!」

 

「ヘルバさんならそう言ってくれると思っていた!」

 

 え、なぜこれを作ったか、だって?

 特に意味はない。きっといつか出番がくる。耐性装備ってそういうものでしょ。俺たちは雰囲気でゲームをしている!

 

 作りたかったから作った!

 

「それはそうとリチャード、アンタに渡したい物があるんだ」

 

「それってまさか、さっきまで没頭してたあの輪っかか?」

 

「ああそうさ! アンタがくれたオリハルコンを使った、オリハルコンの腕輪さ!」

 

「…………え」

 

 強引でちょっとスケベだけどやさしいヘルバお姉さんが、俺の右腕を取ってそこに腕輪はめた。

 

「なんだい、そんな顔して?」

 

「え……くれる……のか……?」

 

「あたしが欲しかったのはオリハルコンを使って大仕事をするひとときさ」

 

「マ、マジか……」

 

 なんか、らしくもなく目頭が熱くなった……。

 こういう不意打ちの贈り物はいけない……。

 

「あたしには弟がいてね……。その弟も、アンタみたいな大バカ小僧でね……。リチャード……アンタは死ぬんじゃないよ……?」

 

「ああ、もう優勝出来そうな気がしてきた!! ありがとう、ヘルバさんっ!!」

 

「はっ、ならさっさと行きなっ! アンタに残られたら、あたしも鉱山夫も仕事を取られてたまったもんじゃないさ!」

 

「おう、また都で暴れ回ってくる! またな、ヘルバさ――オウフッッ?!!」

 

 ヘルバさんは大人の女性だ。

 愛情表現の激しさはR16が付く洋ドラマ並みだ。

 

 彼氏ではないけどそれをどうにか受け止めて、首や顔にキスマークをくっつけた俺は馬車駅に飛び込み、都行きの馬車に飛び乗った。

 

「ありがとうっ、楽しかった、リチャード!!」

 

「俺もだ!! 待ってるからな、ヘルバさん!!」

 

 こうして6日間に及ぶ滞在は終わった。

 採掘と登山と飛び降りが一度に楽しめるドッカー鉱山での思い出を胸に、ヘルバのオリハルコンの腕輪を握って、遙か彼方、都への帰路へとついた。

 

 ヘルバさんのトマトパスタ、美味しかったな。

 今度会ったときは俺が都の美味い物をごちそうしよう。

 

 ちなみに余りに余った銅鉱石75個は、ダイヤモンド鉱石で作ったダイヤモンドリングと一緒に、ヘルバさんとこの倉庫に押し込んでおいた。

 

 さらばドッカー。さらばヘルバさん。毎日がエンジョイライフだった。

 

≪女たらし:24→27≫

 

≪女たらし:25に到達!

 特性:クズの中のクズを獲得!

 能力値=ガールフレンド数×3%の補正がかかります!≫

 

 ところでこのスキルやったら強いけど……代償ヤバ過ぎひん……?

 

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