元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・>口<; した!

・SIDE:弟

 

一方その少し前――

 

「そういうわけでね、ダビデ、僕はまだ諦めてはいないんだ」

 

 グレンター家の若き当主チャールズは、兄が残していった光輝くスライムのダビデに語りかけていた。

 

「確かに僕とサルビア・ブラウンウォーターの婚約は破談となった。でもそれは、グレンター家を陥れる陰謀があったからだ」

 

「ぷるぅ…… ー ー?」

 

「真実さえ暴けば、僕とサルビアはもう一度……婚約者の関係に戻れるはずなんだ……」

 

 チャールズが今日まで必死で家の名誉を回復しようとしてきたのは、タナトス事件で失ったものを取り戻すためだ。

 

 彼は奪われた物を取り返すという執念に突き動かされて今日まで生きてきた。

 今ではその努力が実り、完全ではないが夢の一部が叶った。

 兄リチャードの精神が奇跡的に回復し、父と兄が魔剣に操られていたことを彼は証明したのだ。

 

 しかし全てが返ってきたわけではない。

 チャールズが最も取り戻したかった『ブラウンウォーター侯爵の娘、サルビアとの婚約関係』は、いまだ手に戻らず、彼を苦しめていた。

 

「ぷりゅぅー、ぷりゅっ、ぷりゅぅぅっ♪」

 

「僕を励ましてくれているの……? ありがとう、ダビデ……僕、がんばるよ!!」

 

「ぷりゅぷりゅ」

 

「出来れば兄さんと一緒に宮廷で戦いたかったけど、楽しそうに冒険する今の兄さんを見ていると、巻き込みづらいかな……」

 

「ぷりゅっ! ーVー b」

 

 光を吸い込みキラキラと輝くスライムが指先を立てて、ベットに寝そべるチャールズにすり寄った。

 ちなみに同室で療養していた御者の男は今朝立てるほどに回復して、チャールズのやさしさに感謝して自室での療養に入った。

 

 チャールズは子供の頃から屋敷の者に愛されていた。高飛車なリチャードは正反対の、おとなしくやさしい子供だった。

 

 そんなリチャードの部屋にノックの音が響いた。

 

「…………どなたですか?」

 

 屋敷の者ならばノックと共に名を名乗る。

 不審に思いチャールズが問いかけても、返ってきたのは静けさだけだった。

 

 チャールズはレイピアを取り、最強の用心棒を肩に乗せて立ち上がった。そして扉を静かに開く。

 

「あ……!?」

 

「チャールズ様……」

 

 扉の向こうには元婚約者のサルビア・ブラウンウォーターが静かにたたずんでいた。

 

「サルビア!! う……っ?!」

 

「だ、大丈夫ですか、チャールズ様……!?」

 

 チャールズは気づかうサルビアに背中を押されてベットへと横たわった。

 

「ごめんなさい、チャールズ様……驚かせようと思って……」

 

「驚きました……来てくれて、嬉しいです……。サルビア、会いたかった……」

 

 サルビアはチャールズから見て4つ下の婚約者だった。

 婚約関係が結ばれたのはサルビアがまだ5歳の頃で、彼らはもう10年来の付き合いだった。

 

 彼女の髪色は青。体格はやや小柄。

 この物語のヒロインである侯爵令嬢ゾリアを姉に持っている。

 

「あの、この子は……?」

 

「この子はダビデ。リチャード兄さんが僕に付けてくれた頼もしい護衛だよ」

 

「かわいい……。触っても、いいですか……?」

 

「うん、ダビデは賢いから大丈夫だよ」

 

 大福のような小さなスライムをチャールズは元婚約者に手渡した。二人の手と手が触れ合い、視線が重なり合った。

 

「ひんやりしてます……」

 

「サルビア、屋敷に入るときは気を付けてね。誰かに見られたら、君の立場が悪くなる」

 

「ごめんなさい……。でも、大怪我をされたと聞いて、いてもたってもいられず……。チャールズ様、よかった……」

 

「ぷりゅ…… ・口・;」

 

 引き裂かれた恋人たちは唇を重ね、抱きしめ合い、情熱的な吐息を漏らした。

 

「ダメだよ、僕たちの縁談は破談になったんだ……」

 

「大丈夫です、チャールズ様は強い人です。小さい頃から知ってます……」

 

「うん……必ず君を取り返すよ……! 兄さんもよくなって、僕たちに追い風が吹いてきてるんだ……っ」

 

「チャールズ様……」

 

「ダ、ダメだよ、サルビア……ッ」

 

「我慢できません……。お会い出来たの、10日も前でした……ごめんなさい、チャールズ様……」

 

「ぷりゅ…… ゚o゚;」

 

 サルビアは4つ下。チャールズも若ければサルビアも若い。この先を詳しく語るには色々ととまずいものがあった。

 

 2人はしばらく休憩すると、次の逢い引きの日取りと場所を決めて、名残惜しみながらも別れた。

 

「クックックッ……不貞はいけませんなぁ、グレンター公爵様」

 

 ところがサルビアが去った寝室に突然、何者かの冷やかしの言葉が響いた。

 

「だ、誰だっ!!」

 

「名乗る名もございません、私はただの冥土の案内人ですよ。おっと、動かない方がいい」

 

 いつからそこにいたのだろうか。カーテンの裏にボウガンを持った暗殺者が潜んでいた。

 

「……誰の差し金ですか?」

 

「死人に口なしとはいえそれは言えませんな。しかし、ククク……今頃は貴様の兄も襲撃を受けている頃です」

 

「兄さんにも……?」

 

「依頼人からの伝言です。『兄弟仲良く、魔剣タナトスの真実と共に消えろ』。では死んでいただきましょうか、グレンター公爵殿」

 

 ボウガンを向けられてもチャールズは落ち着き払っていた。

 暗殺者ごときに倒れる兄ではないと彼は確信していた。

 

「やれっ、ダビデッッ!!」

 

「何……っ!?」

 

 チャールズはボウガンの矢をレイピアで斬り払った。

 そして暗殺者の足下に忍び寄っていたダビデは大きく口を広げ、必殺の【ダイヤモンドブレス】を吐いた。

 

「ぷりゅぅぅぅぅっっ!! >口<;」

 

 HP・SSSランクによる、HP依存攻撃だ。

 輝く白銀のブレスが暗殺者の足下から吹き上がり、一瞬で標的を凍り漬けにしてしまった。

 

「つ、強い……強すぎる……カーテンまで、カチンコチン……」

 

「ぷっりゅっ!! 。・ω・。v」

 

 死角から放たれる問答無用の防御力無視貫通ダメージの前には、暗殺者などなすすべもなかった。

 

「ありがとうダビデッ! かっこよかったっ!」

 

「ぷりゅぅー! v。・ω・。v」

 

 チャールズはダビデと兄に感謝して、凍り漬けの暗殺者を眺めながら再び決意した。

 

「兄さんは変態になってしまったけど……何も考えないで変態をやっているわけでは、なかったのですね……! よしっ、がんばろうっ、僕もがんばろうっ!」

 

 愛するサルビアともう一度婚約者になるために、チャールズはグレンター家の名誉を回復させる。

 彼は書斎に飛び込み、戦うためにペンを取った。

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