元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・気のいいガチムチのとこで【武器制作】スキルを極めた!

 昼前、パンガスの武器工房を訪れた。

 

「おっす、おっさん……バイトしたいんだけど……」

 

「おおっ、リチャードじゃねーか! どうしたっ、今日は元気ねぇなぁ!?」

 

「いや、ちょっとな……」

 

 顔面蒼白の内股で医院に駆け込んだのは、ほんの2時間前のことだった。

 

「聞いたぜ、結石の薬の材料をかき集めてくれたんだってな!」

 

「ははは……人として当然のことをしただけさ……」

 

 ありがとう、ありがとうお医者さん……。

 これからは不用意に川の水は飲むまいと、心に誓った。

 

「で、バイトの件だけど、空いてる?」

 

「何言ってやがるっ、お前さんみたいな助っ人ならいつだって大歓迎だ! そうだな、んじゃ今日は――」

 

 その時、パンガスの顔の筋肉が突然死した。

 気のいい赤毛のオヤジがいきなり素に戻り、腕を組んでこちらを見た。

 

「ほぅ、武器制作スキルが30を超えたか、若いの。もう若造なんて言えねぇな」

 

「あ、はい」

 

 これは[バイト:中級]の条件を満たしてしまったようだ。

 

「よしっ、今日からお前には中級ランクの仕事を任せる! ギャラもよくなってるからがんばって稼いでくれよっ、若いの!」

 

「はい」

 

 本当はいいえ。中級ランクのバイトは効率が悪いのでやりたくないでござる。

 

「やっぱお前は天才だ! くぅ、こりゃ俺もうかうかしてられねぇぜ!」

 

 ここまで一句一句、全てが俺の知っているセリフと全く同じものだった。

 

「今日の仕事は【ヘビーボウガン】と【破魔の剣の制作】だ! よろしく頼むぜ、若いの!」

 

「はい」

 

 肯定で返すと、どこからともなく制作の素材が現れて、やっとパンガスが元の陽気なオヤジに戻ってくれた。

 

「なぁパンガス? この素材、どっから出てきてるんだ?」

 

「はぁ? 何言ってんだ、さっき俺と一緒に運んだだろが。おいリチャード、お前昼間から酔ってんのかぁ?」

 

「そういやそうだったかもな」

 

 手間が省けて助かるけど、時々背筋が薄ら寒くなる。この世界の物事はゲームのシステム上に成り立っている。

 

 ま、これはこれで楽しいし! 俺は別にいいと思うけどな!

 

「工数が増えて判定がシビアになってんからな? くれぐれも失敗なんてすんじゃねーぞ」

 

「なら初級の仕事を回してくれ」

 

「ガハハハッ、何言ってやがる! やなこった!」

 

 赤毛のおっさんは自分の持ち場に戻って『トンテンカン』と陽気に歌いながら仕事を再開した。

 

 んじゃ、俺も始めるか。

 効率悪いけど、自腹で武具を作ってバザーで売っていたら在庫がダブ付いて悲惨なことになってしまう。

 

 もし完成品をNPC売りしたら赤字になる。生産システムが充実しているゲームではよくある話だ。

 

 さて【ヘビーボウガン】の材料は【魔獣の腱】【金具】【硬木】【スティールインゴット】だ。

 それを手順通りに重ねてカンカン叩くだけの物造りを舐め腐ってる世界がここ!

 

 その工数はなんと31カンカン。

 ちょっぴりシビアになった判定を8割エクセレント判定で突破してゆくと、なんでか超複雑な工業品である【ヘビーボウガン】+10が完成した!

 

 防具制作スキルで得た特性で、完成品の+補正が底上げされていた。

 

「ジャキィィンッッ!! かっけーなーっ、頭とか盾とか身体とか全部【ヘビーボウガン】でそろえてぇ……」

 

 いにしえのゲームではそうすると、回避率がえげつないことになったとされている。セーブデータが飛ぶ可能性もあるので事故責任でどうぞ。

 

「リチャード、おめぇ……」

 

「おうパンガスッ、完成したけどこれどうよ?」

 

「おめぇ、やっぱ天才だろ……!! いきなり【ヘビーボウガン】+10とか、どうなってやがるんだよ!?」

 

「タイミングゲーは得意なんだ。ガンガン作るからギャラ弾んでくれよな?」

 

「いいぜっ、今夜また飲みに行こう! あのぼったくりレストランが気に入った!」

 

「ま、フツーの客にはフツーの店のはずなんだけどな……」

 

 パンガスが持ち場に帰って行くと、次に俺は【破魔の剣】の制作に入った。

 材料は【スティールインゴット】【銀インゴット】【金インゴット】【エメラルド】【エルフの聖水】だ。

 

 さすが中級、原材料も全て高級品。

 失敗するとざっくり1500Gの赤字がパンガスに伸し掛かる。

 

 あと、エルフの聖水からはほんのりユズジュースの臭いがした。なんか美味しそうだし今度自分で買って飲んでみよう。

 

 さて【破魔の剣】の工数は32。

 カンカンカンと、音ゲー感覚でエクセレント判定を出しまくって完成させた。

 

≪武器制作:30→31≫

 

「おっし完成っ! 【破魔の剣】+11!」

 

「マ、マジか!?」

 

 するとパンガスが自分の仕事をほおって駆けつけてきた。

 

「おおっ、こりゃすげぇ!! いやぁっ、おめーのおかげでだいぶ楽になるぜっ、その調子でガンガンカンカンやってくんなっ!!」

 

「おうっ、任せとけ!!」

 

「任せた!!」

 

 これで感覚はつかめた。

 俺は【ヘビーボウガン】と【破魔の剣】をローテーションさせて、素材の許す限り黙々と作り続けた。

 これがホントのヘビーローテーション、ってな。

 

≪武器制作:31→46≫

 

≪武器制作:45到達!

 特殊効果:成功判定バー増加を得た!≫

 

 [特殊効果:成功判定バー増加]はエクセレントおよび成功判定のバーが広がって制作難易度が下がる効果だ。

 あるだけで制作が楽になり、特に難易度の高い物の制作時に輝く。

 

 ま、地味っちゃ地味。

 

「おつかれさん」

 

「なんだ、もう夕方か」

 

 素材が尽きると燃えるような赤い夕日が辺りを染めていた。現実世界じゃあり得ないようなギラギラと妖しく輝く極端な夕日だった。

 

「お前さんの集中力はとんでもねぇなぁ」

 

「ありがとう」

 

 ゲーマーというのはそんなものだ。夢中になって時間を溶かす。このゲームも2000時間遊んだところで数えるのを止めた。

 

「お前さんが作ったヘビーボウガン、早くも飛ぶように売れてるぜ!」

 

「そりゃよかった」

 

「ほれ今日のギャラだ! ひとっ風呂浴びて飲みいこうぜ!」

 

 今日の稼ぎは5000Gだった。

 以前の稼ぎが確か2500Gくらいだったので、金策の効率が倍になった。

 

「男同士で、風呂か……?」

 

「ガハハハッ、俺の肉体美を見せてやるよっ!!」

 

「いらねーしそんなん」

 

「遠慮すんなよ、減るもんじゃねぇし見せ合おうぜ!?」

 

 パンガスはせっかちなおっさんだった。

 俺たちはまるで江戸っ子のように約10分で入浴を済ませて、せっかく金を払って入った公共浴場をすぐに出ることになった。

 

「これよこれっ、たらたらぬるい湯に浸かるなんて性に合わねぇ!」

 

「お、おう……」

 

「明日はどうすんだ、リチャード?」

 

「明日も行くよ。昼過ぎまで働きたい」

 

「ほぅ、今度は何作るんだぁー?」

 

 パンガスは俺のすることなんてお見通しだった。

 

「闘技大会に勝つための武器だ」

 

「そりゃいい! うちの商品も箔が付く!」

 

 いつもの空鯨亭に帰ると、キャンディさんが俺たち見つけて駆け寄ってきた。

 

「いらっしゃいませーっ、パンガスおじさまぁーっ♪」

 

「ようキャンディちゃんっ、久しぶりだなぁっ!」

 

「もーっ、もっと寄っていって下さいよぉーっ♪」

 

 プライベートではあの通りの傍若無人のティリアが、金払いのいい客の前ではまるでお水系のお姉さんそのまんまに見えた。

 

「ダハハハッ、今日はいい稼ぎになった! 一番上等な酒を持ってきてくんなっ!」

 

「お、おい、パンガス……ッ」

 

「えーっ、いいんですかぁーっ!?」

 

「今日はリチャードのおかげでメチャクチャ稼げた!! 遠慮なくボトル1本持ってこいっ!!」

 

「知らねーぞ、おい……」

 

 キャンディさんは乗客のたくましい二の腕に抱きついて、酒場の中心の席にご案内した。

 

「ありがとー、リチャード♪」

 

「今日だけ店変えてぇ……」

 

「逃がさなーいっ! ま、アンタにはさ、後でサービスしてあげるからさ……。おとなしくぼったくられろぉーっっ♪」

 

 今日は思いの他に稼げた。

 ティリアの夢に貢献するのもゲームから逸脱した楽しみだと思って、おとなしくぼったくられた。

 

 最高のブランデーをパンガスと水割りにして、肉だ魚だ珍味だと、他の客も巻き込んでドンチャン騒ぎをした。

 

「今日もありがとうございます、お客様ーっ♪ こちら本日の明細でございまーすっ♪」

 

「に、2510G、だとぉぉっっ!? ガ、ガハハ……ちぃと、遊びすぎたみてぇだな、リチャード……」

 

「だから言っただろ、店を変えたいって」

 

「あ、ちなみに割り勘で2510Gでーす♪」

 

 ポンッと2510Gを支払うと、キャンディさんがニッコリ笑顔になった。

 この町の女性は本当に、したたかだ……。

 

「ま、いいか! 明日の助っ人も期待してるぜ、リチャード!!」

 

「おう、任せとけ!!」

 

 パンガスが相手でなければこんなバカな金の使い方は出来なかった。こういう日があってもいいと思う。

 

 俺は奥の通りまでパンガスを見守ってから自分の部屋に落ち着いた。

 トイレのスッポンからポゥエン山麓の美味しい水をグラスに出して、グビリとやった。

 

 トイレの味がするような気がするのは気のせい、人の思い込みがもたらす錯覚だ。

 

「リチャード」

 

「お、ティリアか。店はもういいのか?」

 

「サービスするって言ったじゃん、さ、上脱いで横になって」

 

「おう。……上を、脱ぐ?」

 

「いいからいいからっ♪」

 

 酔った勢いで俺は言われた通りに脱いだ。

 

「わぉっ、エッロッ♪」

 

「んじゃ、頼む」

 

「はいはーいっ!」

 

 50G銀貨をチップで払って、その日も1日の疲れを癒してもらった。

 

「またいっぱい飲んでくれるお客さんっ、連れてきてねっ! パンガスのおじさんがいると、他のお客さんもバンバン飲んでくれてお店的にもチョー助かるっ!」

 

「お、おい……っ」

 

「なーにー?」

 

「そ、そこは……」

 

「むふふふ……♪」

 

 その晩のマッサージはちょっとだけ長くなった。

 

≪女たらし:46→49≫

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