元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・大会予選 いきなり囲まれた!

 とあるお姉さんいわく、闘技大会の予選はA~Lまでの12のグループに分けられている。

 1つのグループには24~25名が集められ、サバイバルバトルで最後まで立っていた者が予選を通過する。

 

 殺しは厳禁。武器防具はなんでもあり。ただし召喚魔法とテイムモンスターの持ち込みは禁止。

 予選を通過した時点で国から1000Gの賞金が出る。

 

 予選を勝利した12人と、シード枠の4人が栄えある本戦に出場する。

 シード枠は前回優勝者、準優勝者、エーギルの杜の模擬戦優勝者、現役の貴族階級からそれぞれが出場する。

 

 ざっくり要約すると、5回試合をすれば俺の優勝ってことだ。

 

 まるで圧迫面接のような過酷なハーレムナイトを楽しんだのも今は昔。俺は今、闘技場の舞台に立ってる。

 

 まだ予選だというのに闘技場は満員大入りだ。

 親の顔より見たローマ式の円形闘技場で、我らJグループ25名の勇士たちは大観衆に見下ろされていた。

 

「なんだアイツ!?」

 

「気でも狂ってるのか!?」

 

「嘘っ、本当にトイレのアレを持ってるわ!」

 

「どう見ても変態じゃないか!!」

 

「50年間通い詰めてきたワシも、あんな変態は初めて見るぞい……!」

 

「あれが変態!? わたくし初めて見ましたわ!!」

 

 リチャード・グレンターは注目の的だった。

 そりゃ白髪碧眼のイケメンがダーツボードを盾にして、トイレのスッポンを天に掲げて精神を集中する姿を目にすれば、黄色い救急車を呼びたくもなるだろう。

 

「皆様っ、余興はお楽しみいただけたでしょうか!! ただいまより闘技大会予選Jグループの!! ドキドキハラハラ・サバイバルマッチを開催いたしますにゃーん♪♪」

 

 ようやく俺の予選が始まる。

 声を追って実況の姿を探すと、そこに猫耳と尻尾が付いたあざとい格好のお姉さんがいる。

 

 彼女は実況のチャッティ・キャットさん。その正体はあの日出会った[お役所の受付のお姉さん]だ。

 彼女の家では代々世襲で、キャットガールと呼ばれる薄手の伝統衣装をまとい、闘技大会の実況を行う役目を担っている。

 

 そんな彼女11代目チャッティ・キャット(本名シシリア)は予選前に言った。

 

『誤解がないように言っておきますがリチャード様、私も好き好んで『ニャーン♪』なんて痛い語尾を付けているのではありません。これがこの国の様式、どうかご理解下さい……』

 

 お仕事でやっているだけです。

 媚び媚びしく『ニャーン♪』とやるのが大会の正しい様式であると。

 

『別に恥ずかしがることないだろ。闘技大会って要するにお祭りだろ? 面白い格好と言葉で祭りを盛り上げる! それがお姉さんの仕事じゃん!』

 

『ぁ……っ。そうですっ、私もそう思いますっ!! わかって下さる方がいて嬉しいです……っ!!』

 

 そんなやり取りをしたのもつい数十分前。

 自信を付けたチャッティキャットはセクシースレンダーな体をひるがえして、会場の皆さんに両手を上げる。

 

「さあ、一番強いやつを決めるニャァッ! 選手の皆様もよろしいですニャァッ!? ではっ、予選第10試合、試合開始ですニャーンッ!!」

 

 一人の女性がこれまで恥と感じていた仕事にやりがいを見つけた。11代目チャッティ・キャットは今、キラキラと輝いていた。

 

 いやぁ、俺いいことしたなぁ……。

 

「って、アレッ?」

 

 サバイバルバトル開始早々、俺は囲まれた。

 具体的には闘技場のど真ん中でのん気に猫耳のお姉さんを眺めていたら、いきなり1対24の不平等バトルが勃発していた!

 

「おおっとぉっ、話題の変態貴族リチャード・グレンターッ、いきなり囲まれたニャァッッ!!」

 

「えっ、ちょっ、ずるくないこれっ!?」

 

「まずがお前から退場してもらうぞ、変態っ!!」

 

「バカめっ、サバイバルバトルで目立ちまくるやつがあるかっ!!」

 

「蜂の巣にしてやる!!」

 

 弓使いたちの狙撃を軽々とかわしてみせると、闘技場が興奮に湧いた。

 

「なーんとリチャード・グレンターッ、姿こそ怪しいが動きがメチャンコいいニャァァーッッ!!」

 

「こそばゆいな、こりゃ……」

 

 遠距離攻撃をやり過ごすと、身軽な剣士たちが一斉に突っ込んできた。

 

「イケメンだからっていい気になりやがって!」

 

「動きはいいが残念だったなっ!」

 

「一斉攻撃を食らえっ!!」

 

 やつらはトイレの清掃道具で戦う変態を甘く見ていた。

 太刀筋が甘く、命中率が20%を切っているようなヘナチョコな攻撃だった。

 

「なっ、なぜかわせ――ホギュッッ?!!」

 

 【公爵家の聖なるトイレのスッポン】+25で、剣士たちの顔面を突いていった。

 

「しまっ――ンブホッッ?!!」

 

「コ、コイツッ、ただ者じゃ――ブフゥゥゥッッ?!!」

 

「ウ、ウオォォォォッッ?!! 汚ェェェーッッッ!!」

 

「ヒッヒィッ!? い、嫌だっ、俺はもう嫌だぁぁーっっ!!」

 

 トイレのスッポンで突かれた彼らは、たった1撃で戦意を喪失した。

 

「ニャーンッ、これはたまらなーいっ!! トイレのスッポンで顔面を突かれた選手たちが次々と膝を突いていきますニャァッッ!!」

 

 そう、次々と襲ってきたので、次々と黙らせた。

 

「強い強い強いっ、リチャード・グレンター強いっ!! この男、ただの変態ではなかったニャァッ!!」

 

 実況が試合を盛り上げると、満員の大観衆も湧いた。

 

「お、おい、アイツ強いぞっ!?」

 

「あれだけの人数相手になんて涼しい顔してやがる!!」

 

「まあっ、ただのヘンタイではございませんことよ!?」

 

「盾の扱いが神がかっておる……!! あれほどの盾使いはワシも見たことがないぞい!!」

 

 トイレのスッポンにやられた選手たちは顔を抱いてうずくまったり、あまりの気持ちの悪さに絶叫を上げる。

 彼らは自分の顔を何度も拭って綺麗にしようとするが、精神に塗り付けられた汚れは決して消えなかったようである。

 

 まるで集団ヒステリーにかかったかのように、戦闘不能者の嘆きがこだましていた。

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