元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・闘技大会開幕! いきなり観客を味方につけた!

 『インターバル期間中何してた?』と聞くのはハラスメントである。

 ガチで女の子たちにハブられて、パンガスとロッコさんとおっさん臭い休暇を過ごしたなんて人に言えるはずがない。

 

 インターバル中もレベリングをして過ごすつもりだったというのに、冒険者ギルドを訪れてみれば、キリリとした男性受付に――

 

『申し訳ありませんが大会参加者にクエストを紹介することは出来ません』

 

『え、なして?』

 

『要らぬトラブルを避けるためです。ご了承下さい』

 

 遠回しに『クエストで失踪でもされたらうちの責任問題になるんじゃぁ、ボケェ!』と言われて門前払いされた。

 

『また私の勝ちでございますな』

 

『ぐ、ぐぬ……執事のくせに生意気な……』

 

 そんなわけで俺の休暇はロッコさんにダーツ(ゲーム)でボコボコにされ――

 

『おいお前らっ、終わったら闘鶏行こうぜ、闘鶏!』

 

 貴族のあんちゃんが知ることのない野蛮な娯楽を悪オジたちにたくさん教えてもらった。

 

≪男たらし:0→7≫

 

 なんか取り返しの付かないスキルを手に入れてしまったような気もするけど、あえて考えることを止めた。

 【スキル:男たらし】は封印を試みても消えないやつだった。いつかは俺がヒロインになる時代がくるのかもしれない。

 

 てなわけで、インターバル期間が終わった翌日、大会本戦当日、出番まで惰眠をむさぼるはずだった俺は朝っぱらから拉致られた。

 

「やあリチャード、迎えにきたよ!」

 

「リチャード様、本戦出場おめでとうございます。本日はわたくしもお兄様もリチャード様を応援させていただきます」

 

 王家の大型馬車が空気も読まずに旅人と冒険者の街[宿屋街]に乗り込んできて、その馬車からルイン王子とレティシャ姫が現れれば、騒ぎになるのも当然だった。

 

「いや俺、試合まで寝てたいんだけど……?」

 

「よろしければリチャードのガールフレンドの方々もどうぞ」

 

「ちょ、ちょ待てよお前っ、俺の話聞いてる!?」

 

「試合まで会場にいてよ。参加者が会場にそろってないと主催として困るんだ」

 

 ルインは続けてこんなことを言った。

 闘技大会の主催者は王家だ。ルイン王子の強い後押しでこの大会は再び開催された。

 『ガールフレンドの皆さんは関係者として貴賓席にご招待するので、ぜひ皆さんでリチャードを応援して下さい』と。

 

 そんなわけで俺たちはまとめて貴賓席に拉致された。

 具体的にプレートに[グレンター公爵家]記された個室が俺たちの席で、扉の向こうではチャールズがチェス盤を用意して兄を待っていた。

 

 そうなれば当然、兄弟でチェスをして暇を潰すことになった。

 

「あの、兄さん……」

 

「ん、どうした?」

 

「付き合って下さるのは嬉しいのですが、試合を見なくてもいいのですか……?」

 

「問題ない、俺が負ける要素はゼロだ」

 

「そうですか。それと兄さん……」

 

「ん、なんだ?」

 

「女性陣のお相手をされてはどうでしょうか……?」

 

 言われて振り返ると[ティリア][ピリリカさん][ヘルバさん]と目が合った。

 ちなみに[ニケ・クーガー]は王族の末席として、ルイン王子たちと一番高いところにある特別席に座している。

 

「あたしらに遠慮はいらないよ、バカな男なのはみんな知っているからね」

 

「たまには家に帰ってあげなよー、リチャード。独りでがんばってるチャルくんが可哀想でしょー」

 

「そうですよ、リチャードさんっ! ボランティアもいいですけど、家族も大切にして下さい!」

 

「あ、ありがとうございます、皆さん……っ」

 

 ありがたく受け止めて、俺が出場する第6試合までチャールズと遊び倒した。

 そして第1試合開始より2時間半後、やっと俺の出番がやってきた。

 

 皆の応援を背に控え室へと下り、間もなくして熱気渦巻く闘技場の舞台に進み出た。

 

「ヒッポグリフの門っ、謎の変態貴族!! リチャード・グレンターッッ!!」

 

 実況はご存じ役所のお姉さんシシリア。11代目チャッティ・キャットが選手の周囲を軽やかに回り、大歓声を拡声魔法n大音量でねじ伏せた。

 

「対するペガサスの門っ、S級アイドル冒険者!! アンドゥル・クリスタン選手!!」

 

 俺の対戦相手は同業者だった。サラッサラの赤毛のやさしそうなイケメンで、彼が会場に姿を現すと、女性たちの黄色い悲鳴が会場に渦巻いた。

 

「こんにちは、お噂はかねがね。僕は王都冒険者ギルド本部の一員[ピリリカさんのメガネを外す委員会]代表のアンドゥルともうします」

 

「な……っ、なん、だと……っ!?」

 

「フッフッフッ、少し前に加入しましてね。まあ僕が本気になれば、ピリリカさんのメガネを亡き物にするなど簡単なことですよ……」

 

 コイツ、ピリリカさんにテキトー言って、イケメンの色香でメガネを外させるつもりなのか……!?

 

「き、貴様ぁぁーっっ!!!!」

 

「ふっふっふっ、ナイフくんとターントくんを倒したようだが、彼らは四天王の中でも最弱」

 

「え、アイツら会員だったの!?」

 

「僕はこの大会に優勝したら、国王陛下に『ピリリカさんのメガネをコンタクトレンズに変えてくれ!』と頼む」

 

「バカなっ!! ピリリカさんからメガネを取ったらただのちっちゃいお姉さんじゃないかっ!!」

 

「フッ、それがいいんじゃないか……。さあ、僕を止められるものなら止めてみるがいいっっ!!」

 

 以上の不毛なやり取りを実況のキャットさんは拡声魔法で会場の皆さんに広めてくれた。

 貴賓席のピリリカさんの心境やいかに。

 

「気が変わったっ、今回はお前を応援するぜ!! ソイツをぶっ殺せリチャードォォッッ!!」

 

「そうだ遠慮はいらない!! [ピリリカさんのメガネを外す委員会]は異端!! 絶対に許さんぞぉぉっっ!!」

 

「冒険者ギルドの事情はよくわかんねーが許せねぇ!!」

 

「うおぉぉぉぉーっ、がんばれぇぇーっっ、変態の方のイケメェェンッッ!!」

 

 共感が得られたところでさあ処刑タイムだ。キャットさんが声を上げ、試合開始の前口上を述べた。

 

「さあっ、勝つのはメガネ派かっ、コンタクト派かっ!! アイドル系のイケメンかっ、変態系のイケメンかっっ!!」

 

 まだ一回戦だというのに会場がかつてない興奮に湧いた。

 これよりメガネ派とコンタクト派の終わることのない代理戦争が始まらんとしていた。

 

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