元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・準々決勝 会場をファッキンHOTにした!

 大会の第一回戦が全て終わると、闘技場の時計が正午を示した。それから1時間の昼食休憩が取られ、午後1時から準々決勝が始まった。

 

 俺の試合は準決勝第4試合だ。順当に進めば2時半からの対戦となる。

 

「ようリチャードッ、お前守備範囲やべぇなぁっ!?」

 

「……へ? 何、突然何……?」

 

 ところがチャールズとまたチェスをして暇を潰していると、パンガスがまた女性を貴賓席に連れてきた。

 

「リチャード様ぁぁんっっ!!」

 

「この前はありがとうっ、おかげで村に孫が帰ってきたのよぉっっ!!」

 

「オバちゃんたちね、いてもたってもいられなくて、応援にきちゃったぁっ♪」

 

 それはゴブリン討伐クエストでお世話したポゥエン村のオバちゃんたち(11名の団体さん)だった。

 

「リチャード、アンタやるねぇ……」

 

「この人たち全員っ、リチャードのファン!? ええっ、あたしのお母さんより年上なんだけど!?」

 

「本格的にリチャードさんが刺される未来が見えてきて、私不安なってきましたー……」

 

「妙齢のババァまでたらしこむたぁっ、お前さんは本物だぜ! 恐れ入ったわ、ガハハハッ!」

 

 誰に予想出来ただろうか。

 一回戦で圧倒的勝利を見せつけたリチャード・グレンターが、二回戦開始までオバ様方の相手をして過ごすことになろうとは。

 

「リチャード様、こちらルイン様からの差し入れにございます」

 

「ドリンク……? アイツが珍しいことするもんだな」

 

「さ、どうぞ、冷えているうちに」

 

 試合が近付くとルインから花がそえられたオシャレなソーダが届いた。

 それを一気飲みすると、ちょうど出番だ。

 

「じゃ、行ってくるぜ!!」

 

 みんな(おばちゃん多数含む)の激励を背に控え室へと下り、ダレた体をウォーミングアップして待てばすぐに出番だった。

 

「ヒッポグリフの門っ、メガネ派変態貴族っ、リチャード・グレンターッッ!!」

 

「対するペガサスの門っ、紅蓮術師ゲース・ヤロウリーチャーッッ!!」

 

 さっきの試合で女性ファンが減り、男性ファンがどっと増えた。

 野郎どもの野太い歓声が大地を震わせるほどに熱く降り注いでいた。

 

 女性にキャーキャー言われるより、こっちの方がなんかお祭りみたいで楽しくていいと思う!

 

「ヒェヒェヒェ……特製ドリンクのお味はどうだったかなぁ……?」

 

 ゲース・ヤロウリーチャー略してゲスヤロウは50代ほどの魔法使いだった。

 趣味の悪いドクロの杖に、金糸を使った赤いローブをまとっていた。

 

「なにそれ?」

 

「ヒェヒェヒェ!! 苦しいのにやせ我慢をしおって……まあいい……すぐにあの世に送ってやるからなぁ……」

 

「ん、んん……?」

 

 妄想と現実の区別が付かない類の方だろうか。

 まあどっちにしろぶっ飛ばすし軽く流すことにした。

 

「それでは両選手、準備はよろしいですニャァッ!?」

 

「いいよー」

 

「ヒヒヒヒ……つらかろう、苦しかろう、ギヒヒヒヒ……」

 

 いやこの人怖っ、さっきから何を言ってるのかわかんない!

 

「それではっ、準々決勝第4回戦っ!! リチャード・グレンターVSゲース・ヤロウリーチャー!! 試合開始ですニャァァッッ!!」

 

 試合が始まった。

 ダーツボードシールドを構え、トイレのスッポンを腰から抜いた。

 

「ヒヒヒッ、やはり立っているだけでやっとかぁ……」

 

「お、おう……?」

 

「言っておくが早めに棄権した方がいいぞぉ……。貴様に盛られた毒は特殊な配合になっていてなぁ……この解毒剤がなければ重傷化はまぬがれない……ヒヒヒヒ!!」

 

「え、毒……?」

 

 おかしなことを言う。

 ミスリルブローチ+33を身に着けている俺は毒に完全耐性を持っている。

 

「よぉぉし……趣向が決まったぞ……じわじわと、とろ火であぶり殺してくれる……。【フレイムサークル】……」

 

「おお……っ」

 

 【フレイムサークル】は外れ魔法だ。

 これはじわじわと継続ダメージを与えるものであるが、通常プレイにおいては出番がない。

 

 継続ダメージが敵を倒すのを待つより、その時間を使って直接攻撃した方が早いのがRPGのゲームバランスというものである。

 

「さあ、逃げよ、逃げまどえ……」

 

「えーっと、色々ごめん。[放出:山奥の美味しい水]っっ!!」

 

 変態貴族はトイレのスッポンからプシャーッと水を放って、己を囲む炎の輪を鎮火させた。

 

「なっ、水魔法使い、だと……!? だったら次は本気でいくぞ、【フレイムサークルⅤ】ッッ!!」

 

「え、その罠スキルをⅤまで上げちゃったの……? やるじゃん、ゲスヤロウ!」

 

 使えない魔法を高レベルまで上げるおっさんに共感を覚えた。

 あ、もちろん、あっついんで【フレイムサークルⅤ】は美味しい水で鎮火させていただいた。

 

「ぐっぐぬぅぅぅっっ?! 死にかけだというのに往生際の悪いことを……っ! 【フレイムサークルⅤ】ッッ!!」

 

「ほい消火」

 

「【フレイムサークルⅤ】ィィィッッ!!」

 

「消火」

 

「【フレイムサークルⅤ】【フレイムサークルⅤ】【フレイムサークルⅤ】【フレイムサークルⅤ】だぁぁぁっっ!!」

 

「消火消火消火消火ー」

 

 かくして円形闘技場は蒸し風呂と化した。

 風通しの悪い盆地に熱がたまるように、円形闘技場はファッキンHOTとなったのだ。

 

「ま、まさか……貴様、まさか毒が……毒が効いていないのか……っ!?」

 

「はい」

 

「なぜだ……っ!? 確かにあの時飲んだはず……っ、どうなっているのだ、貴様の体は……っ!?」

 

「あー……ちょっとタイム」

 

 ゲスヤロウさんを放置して、俺は俺を見下ろす王族たちの席を見上げた。

 

「おーい、ルインッッ!! お前さっき、俺にドリンク差し入れしたぁぁーっっ?!!」

 

 王の御前だからだろう。

 さすがのルインもこちらのすることに驚いていた。

 

「いったいなんのことでしょうか、リチャード? 試合前の選手に差し入れなんて、そんな非常識なことをするわけがないでしょう」

 

「なんだ、そういうことか!! サンキュッ、ルイン!!」

 

「え……まさか……っ、毒を盛られたの、リチャード……ッ!?」

 

 せっかく取り繕ったのに素が出てしまうルインが好きだ。

 この主人公が好きになれなかったら、そもそも1000時間以上プレイしていない。

 

「盛ったなら盛ったって言えよっ、わかりにくいなぁっ!!」

 

「くぅ……っっ!!」

 

 まあ盛りましたなんてこの状況で言えないだろうけどな。

 

「おおっと、どうやら私たちの知らないところで不正があったようですが……リチャード選手っっ、毒を盛られたことに気づいていなかった模様ですニャァァーッッ!!」

 

 キャットさんは実況として状況説明のつとめを果たすと、会場が湧いた。

 

「マジかよ、アイツ……!?」

 

「毒に気付かないって普通ありえるの……!?」

 

「バカだ!! やっぱりあの貴族、大バカだ!!」

 

「毒が効かないとかあのお兄ちゃんカッコイイ!!」

 

 さて、盛り上がりもピークだ。

 終わらせるとしよう。

 俺は大地を蹴ってゲスヤロウに突進した。

 

 当然ながら迎撃の【ファイアーボルト】が放たれるが、悲しいかな、彼の魔法は継続ダメージ系に偏っていた。

 

「ひっ、く、くるなっ、そのトイレのアレで俺に何をするつもりだぁぁーっっ?!!」

 

 よって詰みである。

 ファイアーボルトはダーツボードシールドで全て受け止めて、間合いを詰めると俺はトイレのスッポンで敵を突いた。

 

「顔顔顔っ、からーのっ、顔ッッ!!」

 

「ポギュッ、ホギュッ、ンププププゥッッ?!! ひぃっ、ギュポォォォーッッ?!!」

 

 これにて成敗完了。

 MPを浪費しまくった魔法使いは、たった4発のスッポン攻撃で壊れた。

 

「ぁ……ぁ……ぁぁぁぁ…………」

 

 ゲスヤロウは倒れなかった。

 その場で立ち尽くしたまま、口を開けっぱなしにして大観衆を見上げて動かなくなった。

 

「汚、な……ぁ……嫌だ……汚ぁ……ぃぃぃぃっぁぁぁぁ…………」

 

 いや、しばらくすると受け身も取らずに前のめりに倒れていた。

 

「勝者っっ、リチャード・グレンターッッ!! この男っ、強いっ、強過ぎるっ!! ですが一言言わせていただきますとーっ、会場を蒸し風呂にする前に倒してほしかったニャァァァッッ!!」

 

 準々決勝の賞金は5000G。

 立派な5000G大金貨を受け取って、キャットさんのキスももらって、俺は蒸し風呂から涼しい屋内へと避難した。

 

 これにてベスト4進出!

 あと2回勝てば、俺の優勝だ!

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