元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・ハック&スラッシュでスライム乱獲ヨシッ! した!

 冒険者生活2日目。優雅に朝10時まで惰眠をむさぼると、1階の大衆レストランでランチをいただいた。

 

「ご注文ありがとうございます、ご主人様♪ 混ぜ混ぜキュンッ♪」

 

 オムライスを注文すると、看板娘のキャンディさんが愛を込めてケチャップをかけてくれた。

 

「お、おう……」

 

「今日も1日がんばって下さいねー♪ もー昼だけどー、はぁー、優雅なもんよねぇ~あんたー……」

 

「気ままな冒険者の特権だ。いいだろー? うぉっ?!」

 

 キャンディさんはサービスでマスタードもトッピングしてくれた。

 

「たっくさん稼いでー、うちにお金落として下さいねー、お客様ー♪」

 

「おう、任せろ」

 

 スパイシーな朝食(ランチ)とフレッシュなブドウジュースを楽しむと、表通りの冒険者ギルドを訪れた。

 

「あ、待ってましたよ、リチャードさん!」

 

 ピリリカさんは俺が来店すると笑顔を浮かべてカウンターから立ち上がり、わざわざ入り口まで出迎えにきてくれた。

 

「薬草採集なんていいですから、今日はCランクの――」

 

「【不定形の森での薬草採集クエスト】を頼む」

 

「そんなの誰でも出来る仕事ですよ! 貴方にしか出来ない仕事を見繕っておいたのに、働く気あるんですかっ、貴方!」

 

「他のクエストは育成効率が悪いから嫌だ」

 

 この街の女性はしたたかだ。

 ピリリカさんの強引な誘いを断って、地下祭壇の【旅の扉】から不定形の森に転移した。

 

「ふぅ……わかってないな、ピリリカさんは」

 

 薬草の群生地を見つけるとどんどん抜いていった。

 

≪採集:24→25≫

 

 1つあたり2ゴールド。5本抜けばビールが大ジョッキで飲める。酒が高いのが困りものだけど良い世界だ。

 

≪採集:25到達!

 特殊効果:採集数×2を得た!≫

 

「よしきたっ! これで稼ぎ効率が2倍だっ!」

 

 ゲームだと薬草1株を引っこ抜くと、このスキルの効果により2株手に入る。

 

 しかしここはゲームの中とはいえ現実。いったいどうなるのだろうかとワクワクしながら、エメラルドグリーンに光るハーブを引っこ抜いてみた。

 

「ふ、増えるんかい……」

 

 ゲーム仕様に準拠して、1株の薬草は抜かれると2株に分裂した。

 

「なんか脳が理解を拒むんだけどー……ここってゲームの世界なんだし、ま、しょうがないか、ははは……」

 

 何度やっても同じ結果で、自分が正気なのかちょっと信じられなくなったりした。

 

 『普通増えねーよっ、なんで増えるんだよっ、物理法則どうなってるし!』と叫びたい気持ちをぐっと抑え、あるがままを受け入れた。

 

「薬草を抜くと、薬草が分裂して増えるよ。ハハハハ……イカレてやがる、この世界……」

 

 とにかく籠に全部採集して新たな群生地を探すと、グリーンスライムの群れを見つけた。

 昨日の報復だろうか、しめて8体もいて今すぐ合体すらしてきそうな勢いだった。

 

「好都合だっ、我がケーケンチとなれっっ!!」

 

 最弱モンスターども相手にずっぽんずっぽん戦った。

 群れようとも相手は最弱。

 状態異常耐性もガバ穴ダディだった。

 

「ピ、ピリ、ピリプリュピリ……」

 

「逃げ出されると回収が面倒だった。麻痺、やはりこれは使える!」

 

 麻痺&毒付与、相手は死ぬ。

 ダーツの的にしたり、トイレのスッポンで痺れたグリーンスライムを追撃して毒状態を悪化させると、スライムの群れは8つの核となった。

 

≪ダーツ:9→10≫

  ≪トイレのスッポン:25→26≫

 ≪トイレのスッポン:26→27≫

 

 まとめて現れてくれると育成もはかどっていい。

 

≪ダーツ:10到達!

 特殊効果:絶対命中+20%を得た!≫

 

「なんとっ、絶対命中が20%もっ!?」

 

 簡単に説明しよう。

 【命中率】と【絶対命中率】は計算の順序が異なる。雑な数式にするとこうだ。

 

【俺:命中率】-【敵:回避率】=【攻撃:命中率】

 

 ここに絶対命中の補正が加わるとこうなる。

 

【攻撃:命中率】+【俺:絶対命中率】=【最終:命中率】

 

 仮に命中率が0%だったとしても、攻撃が強制的に20%で命中するようになる。

 それがこの補正【絶対命中+20%】の効果だ。

 

「よーしっ、ダーツもどんどん上げていこう! 効率レベリングたーのしーっ!!」

 

 採集採集採集……。

 ずっぽんずっぽんずっぽん……。

 ひゅんひゅんひゅんひゅん……。

 

「はぁ、今日もよく働いた!」

 

 旅の扉からギルドの地下に帰ると、そこには大時計が置かれている。

 それによると今日の労働時間は5時間! 

 5時間もよく働いた! 俺偉い!

 

「お帰りなさいっ、リチャードさんっ、今日もまたすごいですねっ!」

 

「ただいま、ピリリカさん。換金お願いで出来る?」

 

「はい、喜んで!」

 

 その日の稼ぎは採集スキルの補正により薬草が395本。怒れるグリーンスライムにより核が82個も集まった。

 

 本日の稼ぎは(82×3)+(395×2)=1036Gだ!

 ピリリカさんはニコニコ現金払いをしてくれた。

 なぜか、先日のように二の腕にしがみつくように。

 

「すごいですねっ、Fランクのクエストで1000G金貨を払ったのは私も初めてです!」

 

「お、おう……」

 

「当ギルドは貴方のような救世主を探していたのかもしれません。さあ、明日は私が用意したCランクの――」

 

「いや、明日も【不定形の森での薬草採集クエスト】にする」

 

「ええーっ、なんでですかぁーっっ!?」

 

「だって俺弱いし」

 

「そんな変な武器使ってるからですよーっ!!」

 

 変な武器と言われて笑顔がこぼれると、ピリリカさんがメガネを直して人の顔をのぞき込んだ。

 

「今、笑いました?」

 

「おう。そっちはだいぶ目が悪いみたいだな……?」

 

「子供の頃からこうなんです。それよりリチャードさん、気が変わったらいつでも言って下さいね? キツいの用意しておきますから!」

 

「俺はゆるゆるがいい」

 

 ピリリカさんと別れ、1日を終えた。

 

 それから夜が明けて新しい1日が始まると、俺は文句を言われながらも【不定形の森での薬草採集クエスト】を請ける。

 

 その日も、その翌日も、薬草が2株に増える薬でもキメているかのような光景を受け入れつつ、群がるグリーンスライムをズッポンズッポン吸い上げては無慈悲に毒殺していった。

 

 そうして完成したスキル成長画面がこれだ。

 

――――――――――――――

【戦闘スキル】

 トイレのスッポン

     : 24

     → 39

 ダーツ :  9

     → 23

【生活スキル】

 採集  : 24

     → 45

――――――――――――――

 

 まるで健康診断のように、ピリリカさんの要求によりスキルオープンすることになった。

 

「な、なんですか、この急成長!? 普通ならスキルレベル30になるまで5年かかるというのに、こんな、こんなの信じられない……」

 

「見せろって言ったのピリリカさんだろ」

 

「そして、なんてバカな方なのでしょう……。何も考えずに剣スキルを上げて下されば、Aランクのクエストだって紹介できたのに……はぁ……なんてもったいない……」

 

 そういうプレイはもう飽きた。

 ギルドの小柄でメガネのお姉さんに、残念な天才扱いされるのは新鮮な体験だった。

 

「リチャードさんっ、そのバカな武器を封印しましょう!」

 

「ヤダ」

 

「ヤダではありませんっ!! 貴方が本気を出せば、世界の英雄にだってなれるのですよ!?」

 

「なってどうするんの、それ?」

 

「せっかくの才能をそんなっ、トイレの清掃道具になんか使ったらダメですよーっっ!!」

 

 ピリリカさんにすがりつかれた。

 バカなことは止めろ、まともな道に戻れと、必死で説得された。

 ピリリカさんはかわいい女性であるし、良い匂いもした。

 

 今日も荒稼ぎ。昨日も荒稼ぎ。いつものホクホク顔でピリリカさんに見送られてギルドを出て、今日は高いお酒頼んじゃおうかなと、空鯨亭に帰った。

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