元ラスボスの悪役令息はネタ装備がお好き - 通常プレイに飽きたので[武器:トイレのスッポン]で無双していたら、いつしか変態貴族と呼ばれるようになっていた -   作:ふつうのにーちゃん

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・原作にはないオリジナル武器を作った!

 朝日が出るとベットを出た。

 

「わぁーっ、ご主人様っ♪ 今日は珍しくまともな社会人してるんですねーっ♪」

 

「そういや、この時間に起き出したのは初めてかもな」

 

「それよりっ、昨晩はうちで飲み食いしてないでしょ!? 売り上げに貢献しないさいよ、貢献っ!」

 

「じゃあ一番高いモーニングで」

 

「毎度ありーっ!! 肉盛りメガパンケーキ入りまーすっ!!」

 

「え、何その裏メニュー……」

 

 胃袋にも財布にもかなり重たい朝食をヒィヒィと平らげると、気まぐれな宿娘が機嫌を良くしてくれた。

 それからお腹を膨らませて武器工房に出勤した。

 

「すみませーんっ、バイトしたいんですけどーっっ!!」

 

「おう、よくきたなリチャード! インゴッドはもう十分だっ、今日からブロンズソードを作ってもらう!」

 

 もう知っているのだけど、パンガスさんがブロンズソード制作の手順を教えてくれた。

 材料は【剣の握り手】と【ブロンズインゴッド】。【剣の握り手】は【ブロンズインゴッド】と【革紐】で作れる。

 

 ゲームではバーのタイミングに合わせて鍛冶ハンマーを振り、何度かグッドゾーンの中で叩けば制作成功。

 エクセレントゾーンでのヒットが増えるほどに大成功確率が上がる。

 

「いいか、リチャード……鍛冶のコツはタイミングだ。上下に動くバーに合わせてインゴッドを叩くんだ!!」

 

「なぁパンガス、なんでそんだけで剣が出来るんだろうな?」

 

「ダハハハッ、バカなこと言うなよ!! 鍛冶って言ったら石器時代からずっとこうだろうがよーっ!!」

 

「そうだっけ? あー、そんな気もしてきたかも」

 

 そんなわけで視界右手に現れたバーにタイミングを合わせて、鍛冶ハンマーを叩くよ。

 なんでそれだけで武器が出来るのか知んないけど、なんか叩けば叩くほど完成してゆくよ!

 

 グッド、グッド、エクセレント、グッド、エクセレント、エクセレント!!

 合計6回叩くと【ブロンズソード】が完成した!

 

『パンパンパーンッ!!』

 

 とクラッカーみたいに景気の良い音が響いて、【大成功】判定により【ブロンズソード】は【ブロンズソード+3】となった!

 

「やるじゃねぇか、リチャードッッ!!」

 

「きっとマグレだ」

 

「謙遜すんなってっ! お前変なやつだけどもしかしたら武器制作の天才かもなぁっ!」

 

「そ、そうかな……?」

 

 なぜだろう、言われてもあまり嬉しくない。

 だってやってることはただのタイミングゲーだし、こんなの慣れれば誰にでも出来る。

 

 そうだ、この感覚はソシャゲーのチュートリアルシナリオだ。

 

『はわぁっ、画面をタップ出来るなんてご主人様は天才ですねっ! わっわっ、画面をスクロールも出来ちゃうんですかーっ!? 素敵ですぅ♪』

 

 とか言われてモンニョリするアレだ。

 

「コツわかったし、ここは俺に任せてくれ!」

 

「おうっ、任せたぜ、リチャード!! 終わったら飲み行こうぜーっ!!」

 

 求人に『アットホームな職場です。』ってあるとこは見えてる地雷だけど、この世界においてはありだと思う。

 俺は手元にある素材の限り、ブロンズソードを大量生産していった。

 

 

 ・

 

 

≪武器制作:29→30≫

 

 ちょうどスキルが30に達したいいところで材料のブロンズインゴッドが欠品した。

 

≪武器制作:30到達!

 特殊効果:大成功効果+2を獲得した!≫

 

 この補正は制作が大成功した際に、補正値が+2されるという効果だ。たとえばブロンズソード+3となる結果が+5となる。

 

 空を見上げると夕方前。少し休憩すれば西の空が燃えるような赤に染まる時刻だ。

 

「パンガス、材料が切れた。バイトを上がるから勘定を頼むよ」

 

「昼飯も食わねぇで黙々と働きやがってこの野郎……飲みの誘いまで忘れてんじゃねぇだろな?」

 

「まさか。バイトを上がるのは作業場をレンタルするためだよ。次の冒険のためにお手製のトイレのスッポンとダーツを作る」

 

「ホントにそんなので戦ってんのか……? まあ、取り合えず完成品を見せてもらうか」

 

 ブロンズソードは合計で87本完成した。品質は平均値で+7ほどだ。身体が慣れると、9割をエクセレント判定で仕上げることが出来るようになった。

 

「な……なんだこりゃぁ……っっ!?」

 

「な、なんだよその反応、不安になるじゃん……」

 

「ど、どうなってやがる……【ブロンズソード+7】が……ご、51本っっ!?」

 

「なんだ品質のことか。いい感じでエクセレントが出まくった!」

 

「信じられねぇ……バイトの新入りがこんな……正規の職人の立場がねぇぞ、こりゃ……」

 

 このバイトではブロンズソード1本に付き5Gのバイト代が入る。もちろん大成功を出せば報酬が上がる。

 

「え、こんなに……?」

 

「おう、このクオリティなら当然だ!! 今日は500グラムステーキをおごってやるよ!!」

 

 支払われたバイト代は2435G。どんぶり勘定で(87本×5G)+ボーナス2000Gをつけてもらった。

 

 そして受け取った金からまたパンガスにレンタル料200Gと材料費950Gを支払った。

 

 新しいダーツの材料は【鉄インゴッド】【鉛インゴッド】【パラライズポーション】。

 これをカンカンと作業場を使って鍛冶ハンマーで叩けば、ゲーム上存在しないオリジナル武器の完成だ。

 

 破壊力増し増しの殺人ダーツ【ヘビーダーツ(麻痺)+10】が完成した。

 これまでは挑発くらいにしかならなかったダーツも、ヘビーなこれなら頭蓋骨までズドンだ。

 

――――――――――――――――――――

【ヘビーダーツ(麻痺)+10】

 攻撃力: 53

 命中 :- 5

 特殊 :麻痺付与(中)

――――――――――――――――――――

 

「普通にジャベリンでも持てばいいじゃねぇか。なんでダーツにこだわる?」

 

「フツーじゃ面白くないだろ、パンガス」

 

「そりゃわからねぇでもねぇが、こりゃやり過ぎだろぉ……」

 

 次はトイレのスッポン。

 同じ要領で【鉄インゴッド】【グリーンスライムの核】×10をトンテンカンと叩いた。

 

「ぜ、全部エクセレント判定、だと……?」

 

 すると完成したのは【スライムラバーカップ+11】だ。

 

――――――――――――――――――――

【スライムラバーカップ+11】

 攻撃力: 21

 命中 : 11

 特殊 :鈍足付与(中)

     吸引力強化

――――――――――――――――――――

 

 弱い。ダーツよりさらに弱い。

 だが俺のトイレのスッポンの神髄は精神攻撃と状態異常付与にある。

 

「ダハハハッッ、お前が作ったブロンズソードの5分の1の威力じゃねーかっ!!」

 

「一見は弱いな」

 

「一見も何も当然によえーよっ! こんなので戦うとか正気かおめぇっ!?」

 

「いや強い、この新しいトイレのスッポンは確実に強い!」

 

 そう宣言して空にスライムラバーカップを掲げた。握りは鉄。グリップはグリーンスライム。先端の吸引部分もグリーンスライムで出来た世にもヘンテコなネタ武器だ。

 

 それが赤く燃え上がった西の空を背景に、『我ぞネタ武器ぞ』と輝いていた。

 

「明日、冒険者ギルドに行ってこれで無双してくる。土産話を期待していてくれ、パンガス!」

 

「そんなおかしな武器を見たのは初めてだぜ、俺はよ……。そんな装備で大丈夫か……?」

 

「大丈夫、これが現状一番良い装備だ!」

 

 その後、パンガスと昨日に続き飲みに行った。キャンディさんが金を使えと嫌みを言うので、空鯨亭のレストランに誘った。

 

「おう姉ちゃんっ、ステーキ500グラムをドーンと2皿頼むぜ!! 過去最高に頭のおかしいバカ弟子の出発祝いだっ!!」

 

「はいはーいっ、毎度ありーっ♪ やだぁっ、おじさんワイルドでカッコイーッ♪ 高~いお酒飲んでってねぇーっ♪」

 

「おうっ、今日は大儲けだ! 飲もうぜ、リチャードッ!!」

 

 肉汁滴る500グラムステーキは巨大でいくら食べても減らなかった。

 キャンディさんに言いくるめられて高い酒を飲み交わせば、最後にはボックリバーみたいな支払い明細が帰ってきた。

 

 飲食だけで1150Gとはいったい……。

 ここの宿代の40倍近い数字だ……。

 

 だが何も問題ない。また稼げばいいだけのことだ。

 どんな仕事も気軽に始められて、気軽に辞められるこの世界で、俺はネタ武器道を極める。

 

「毎度ありー♪ 私、リチャードさんだーい好き!」

 

「いや好きなのは俺の財布だろ……」

 

 そう信じれば、財布がいくら軽くなろうともいくらでも強気でいられた。

 

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