最強の武器の作り方   作:かのさん

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第一話「話早くない?」

その少女が目を覚ましたのは暗闇の中だった。一面に、そしてどこまで続いているのか分からない闇の空間。彼女の足元だけがスポットライトで当てられたかのように照らされている。人の気配などするはずもなく、彼女はただ一人寝転がっていた。

「……ん?ここ何処?」

ややあって彼女は目を覚ます。

「うわぁ、何ここ真っ暗なんだけど。」

片目をこすりながらムクリと少女は起き上がる。大きな欠伸をして半目で自身の思考を整理し始める。西寺桜、高校2年生。昨日まで普通にJKやっていた少女だ。

(昨日は普通に学校行って、家帰って飯食ってアニメ観て……それで?寝落ち?)

桜は自分の頬をつねってみる。

━━痛い

たしかにここは夢ではないようだ。服も部屋着のままで髪も崩れてしまっている。現実味を帯び始めている自分の感覚に怯えながら周りを眺める。

「暗いね……。」

居るはずもない誰かに語りかけてみる。そうでもしないと桜の精神はおかしくなってしまいそうだ。

『……起きたか』

突如頭に響く声。男性とも女性とも見分けのつかないノイズのかかった声だ。桜は咄嗟に耳を塞ぐが効果はなく、一方的に情報が頭に直接流し込まれる。

『悪いがお嬢さんには”ゲーム”に参加してもらう。そのためにはまず武器を作ってもらう。武器と言ってもオーダーメイドでだな、これがクラス決定に大きく関わるからおろそかにでき……』

「武器?私、鍛冶屋じゃないんだけど。」

勝手に進められる話に疑問が湧き桜は話を遮るように声を出す。すると脳内に響いていた声は一瞬とまり、明らかなため息が聞こえた後にそれは更に続けて

『それも知らなかったのか。こんな無知なガキ連れてくんなよな。コホン、とりあえず好きな武器種を言ってみろ。例えば…ホラと”弓”とかな』

「じゃあ刀!刀がいい!」

桜は食い気味に言う。はたから見れば異常者だ。何も無い空間に向かって一人で勝手に興奮して自身の要求を突きつけている。

『ほう……?珍しい武器を選ぶな。ならクラスは”サムライ”で確定だな。』

「サムライ!?マジ?最高じゃん!それでいいよ!」

先程までの眠気は何処へやら。桜は自分の理想が眼の前にあると知るやいなや手を上げて喜び、飛び跳ねる。声も上ずってしまっている。

『本当にそれでいいんだな?後悔しても知らぬぞ?』

「もちろん!後悔なんてするわけ無いじゃん!どんな奴が来ても大丈夫!」

声の主の忠告に対しても桜は全く聞き耳を持たない。早く刀を振りたくて仕方がないようだ。

『わかった。では最後の工程だ。その武器…”刀”に付与する”能力”を3つ好きなように考えてくれ。じっくり考えるんだ。その能力が転生後のお前に大きく関わる。』

「へ?」

素っ頓狂な声が出る。

━━能力を好きなように???

最後の最後で理由のわからない指示が出る。

(好きに決めていいのか?なら「すべてのものを斬れる」とか?いやそれはベタすぎる。それとも「すべての魔法を無効化する」とか?いやそれはどうせ「相手の無効化する能力を無効化する」とか言う訳わからんので防がれる気がする。)

桜は悩む。ここで常人なら「何でも〜する」や「〜を無効にする」と考えるだろう。桜が初めに思いついたように。しかしこれは大きな罠である。基本的に相手に干渉するような能力というものがあれば必然的にそれに対抗する能力もまた存在する。ということはつまり、相手の動きを縛っても対抗札を一枚切られてしまえば一瞬で瓦解……!後はただの実力行使に。そうなってしまってはせっかく考えた最強の能力も意味を成さない。これは分かりやすいよう大げさに言っているが大体はこうである。カードゲームやソシャゲの環境もこのようにして回っている。「メタる」ということは「メタられる」ということの裏返しでもあるのだ。

(相手に干渉するような能力ではメタられたら終わり……。ならばいっそこの武器自体を強化すれば良いのでは?)

逆転の発想である。しかしこれにも穴はあるのだ。しかし桜はそれに気付くこと無く、3つの能力を宣言する。

「決めた!この武器の能力は…

”この武器の基礎ステータス値をすべて「3那由多」に書き換える”

”この武器の保有出来るスキルの数は1億個である”

”この武器によって倒した敵の保有する能力はすべてこの武器のスキルに追加される”

この3つでよろしく。」

傲慢である。数字はありきたりなほどにクソでかいものを要求しているがスキルの内容は意外にも技巧派のようだ。桜は

(この能力たちが既出でありませんように)

と心のなかで切に願っている。

『基礎ステータスの書き換えか。面白い。すべて許可する。それじゃ楽しい異世界ライフを楽しんで来い。』

声がそう言うと桜は足元が崩壊していく感覚に襲われる。実際に崩れているわけではないのに脳がそう錯覚する。同時に急激な眠気に襲われ桜は目を閉じる。薄れゆく意識の中、桜は声からの最後のメッセージを受け取る。

『お前と同じ境遇の者があと12人居る。最後に生き残った奴に元いた世界に帰る権利をやる。』

━━━へぇ、面白そうじゃん。

 

 

「んぁ?」

あれからどれほど経ったかは分からない。気づけば桜は丘の上で寝ていたようだ。目を覚ました彼女は自身のあらゆるところを触ってみる。触ってみた感じは元の体との相違点は無い。腰付近まで伸びたきれいな髪の色も黒から変わっていない。

━━ほんの少しだけでいいから赤色が欲しかったな

と文句をたれてみる。転生したからといっていい感じになるとは限らないようだ。(何処とは言わないが)それでも違う箇所はちゃんとある。まず腰に据えられた”刀”だ。朱色に輝く鞘に収められた武士の象徴を抜いてみれば、天下無双の輝きを誇っている(ように見える)。次に目がいくのは服装だ。女武士に似合いそうな袴で、特殊な模様などは入っておらず、白にほんの少しピンクを加えたような色をしている。桜の望んでいた格好のようで終始喜んでいる。

「ここが異世界ね。早速町に行きますか!」

やる気満々である。すると桜は自身の腰辺りに振動を感じる。

「ん?なんだ?」

ポケット(そう呼んでいいのかわからないが)に手を入れると何やら硬いものがある。何故さっきまで気付かなかったかはさておき桜はそれを取り出す。向こうの世界で言うスマホほどの大きさのそれからは金属らしい冷たさは感じられない。画面であろう部分の下には桜も良く知っているアルファベットで「Macro Desire」と刻まれていた。

━━━ダサすぎる…

桜はそう思い恥ずかしさから左手で顔を覆ってしまう。残った右手で画面をタップすると端末が起動する。

「アプリが色々あるな…地図はこれか。」

「MAP」と書かれたアイコンに触れると思っていた通り地図が表示される。現在地には赤いピンが刺さっており分かりやすい。そのピンの少し下に黒文字で「ヤークの丘」と書かれている。

「ヤークの丘ねぇ。あっちじゃ聞いたこと無い地名ね。」

ブツブツいいながら画面を移動させていると今度は「ヤクシミリアン」という地名が目に入る。町のアイコンになっている。ここから約2キロほどらしい。

「遠いな…」

前の桜ならば気が引けて部屋にこもっていただろうが今は違う。せっかく憧れの異世界転生を果たしたのたのだからこの機を逃すわけにはいかない。何処からとも無くやってくるやる気に唆され歩みを進める。

 

町までもう少しとなったところで桜は道端に座り込んでいる老人に話しかけられた。

「お嬢ちゃん。アンタ冒険者かい?」

「冒険者ではないが…」

「ほーかほーか。んだらその腰に掛けてるもん、それなんや?」

「あぁこれ?これは刀だよ爺さん。」

「なに!?刀だと!?そんならアンタぁ”クラス”はサムライかいな?」

老人は刀という言葉に反応し、まるで若返ったかのように活発になる。その豹変ぶりに桜は引きつつも会話を続ける。

「まぁそんなとこだが。珍しいのか?」

「もちろんだ。なんせサムライなんて数百年前に滅びたクラスだからなぁ。刀もおんなじだ。今じゃ誰一人としてそんな武器を作るやつはおらん。ぜーんぶ骨董品扱いや。」

「へぇー」

あまりに衝撃的な内容に桜は言葉を忘れてしまったようだ。やっと出てきた言葉がこれだ。

「あ、そうだついでになんか買ってくか?せっかくだし負けてやるよ。」

老人はそう言うと自身の周りに広がっている商品を勧めてくる。日用品から何やら怪しそうなアクセサリー等様々である。しかしどれも桜にはピンと来ない。来ないというよりそもそも

「金が無い、パスさせてくれるか?」

「あぁ?金が無いだぁ?そんなに珍しいクラスしてるのにか?」

「そうだ。故郷でやらかしてしまってな、無一文になったから放浪してるんだよ。」

桜は咄嗟に嘘をついた。その割には妙に信憑性がある嘘に老人はまんまと騙された。馬鹿である。

「そーかそーか、そんなら持ってくがいい。老人のなけなしの金や。生活の足しにしてくれ。」

老人はそう言うとジャラと心地の良い音の鳴る小さな革袋を渡してきた。

「30ダールだ。大体宿3日分だ。これから大変だと思うが頑張れ。」

「あ…ありがと」

桜はそれをありがたく受け取り懐に入れる。着物の隙間に入れるのでまさに懐だ。老人に深くお辞儀をし、町に向かう。町は中世ヨーロッパに良くありそうな雰囲気で石造りの家が町の殆どを占める。想像通りの異世界の町だ。

「ほぉぉぉぉぉ!」

入口である橋をわたり町の内部に入った桜は目を輝かせ町の至る所をジロジロと舐め回すように観察する。その姿を見た町の住民は「田舎モンがはしゃいでいるよ」と言わんばかりに冷ややかな視線を送る。完全にお上りさんだ。

「さてさて、ギルドとやらは何処だ?」

異世界に来たとすればまず行くべきは冒険者ギルドであろう。そう考えた桜はそれらしき看板を求めて歩き始める。

「冒険者ギルド…ここか!」

しばらく歩いて町の中心部付近で目的の建物を発見する。見た感じ2階建てで、どっしりとした造りのようだ。木製のドアに取り付けられた鉄のドアノブを回し、開ける。中には多数の冒険者たちがおり、皆椅子に座っている。それぞれ話していたり料理を食べていたりと自由に過ごしている。あまり見ない顔である桜にほぼ全員の注目が集まり数秒の沈黙があるが、すぐに元の騒がしさに戻る。

「受付に行けばいいのかな?」

桜は入って右手側に見える「受付」と書かれたカウンターに向かって進んでいく。幸い先客は居ないようだ。

「あのーすみません。冒険者になりたいんですけど。」

桜が恐る恐る話しかけると

「冒険者希望ですね。分かりました。ではこちらの紙に必要事項をお書き下さい。」

と言い受付嬢は一枚の紙を桜に渡す。A4用紙半分ほどの大きさだ。

「えーーっと……名前ね名前……天草桜っと。」

傍にあったペン立てからペンを一本取り出す。名前を記入し、クラスや武器の欄にも記入する。必要事項はこれらだけのようで非常に簡単だった。記入が完了し受付嬢に用紙とペンを返そうとしたところで桜は違和感を覚える。

(天草……?え?私の苗字って天草だっけ?)

桜は頭の中が混濁する感覚を覚える。用紙を持っている手が震え、自然と下を向いてしまう。

「どうかされましたか?」

受付嬢が心配そうに聞いてくるが

「なんでもない。目にゴミが入っただけ。」

と言って誤魔化す。受付嬢はそれ以上追求してこなかった。というより出来なかった。その用紙に書かれていた内容が衝撃的すぎて━━

「”クラス”サムライ!?」

受付嬢が甲高い声で叫ぶ。それと同時に腰が抜けたのかへたり込んでしまう。冒険者らの視線が一斉に桜に向けられる。こうなっては桜も自身の苗字を気にする暇はない。皆の視線を一斉に浴びた桜は恥ずかしさから顔を赤らめてしまう。

━━こんなとき帽子があれば

そう思ってしまう桜であった。

一分ほど経つと受付嬢は立ち直り桜に向き直る。その頃には先程の視線たちもマシにはなっていた。

「サムライはとてつもなくレアなクラスです。本来なら禁止されていますが今すぐ他の誰かとバディを組んで下さい。」

「バディ?」

「はい。冒険者の間のまとまりのようなもので基本的には4人以上が組む”パーティー”なのですがそれが解禁されるのは5等級以上の冒険者でして…」

「じゃあバディってのは一番下から組めるのか?」

「いえ、そちらは6等級からです。」

「なら一番下の等級はなんだ?」

「7等級です。そこから6,5,4といって1まで、その後はブロンズ、シルバー、ゴールド、最後がホワイトの計11段階です。まぁホワイトまで行った冒険者は史上4人しかいませんが。」

桜は受付嬢の話を質問を交えながらしっかりと聞く。根は真面目なのだ。

「なら今の私は7等級というわけだ。」

小さな独り言を言う。桜と受付嬢の話が一段落したところで一人の少女が桜の隣にやってきた。

「あの………せっかくなら私と組んでくれませんか?」

桜より頭2つ分ほど小さい少女が提案してくる。

「あ!ユイさん!ちょうどいいところに。」

ユイそう呼ばれた少女は受付嬢の方も桜の方も見ず俯いてモジモジしている。肩より少し下まで伸ばした金髪で片方は耳が髪で隠れているがもう片方は三つ編みにして先端を小さな紫色のリボンで結んでおりあらわになっている。見ればその耳は真っ赤に染まっている。彼女なりに勇気を振り絞ってみたんだろう。努力のうかがえる色をしている。

「彼女つい最近6等級になったばっかりでバディの相方を探していたところなんですよ。彼女の”クラス”は指揮官(コマンダー)なので前線を張れる方を求めていまして。」

「なら大丈夫ですよ。等級も1つしか変わりませんし。しかも……」

好みの子だしと言いかけてなんとか抑える。

「良いんですか!?」

ユイはキラキラさせた目を桜に向ける。その眩しさに思わず目を瞑ってしまいたくなる桜であった。━━━━




どうも、作者のかのさんです。第一話短いですが楽しんでいただけたでしょうか?前回の投稿からとんでもないくらい時間が開いてしまいました。申し訳ないです。第二回エデン条約編の方も話の構成自体は出来てはいるのですが全く筆が進まず、それに加え私生活も多忙の極み。なので落ち着くまでは当分休載にしたいと思います。内容が内容なのでしっかり書かないといけませんしね。これからは空き時間を使いつつこちらをメインでやっていきたいと考えていますが、投稿頻度もまた文章量や質もイマイチな連載になるかもしれません。それでもよろしければ今後ともよろしくお願いします。
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