最強の武器の作り方   作:かのさん

12 / 12
第十二話「同じ島、違う空気」

「『傭兵』じゃと?」

司馬龍はその言葉に反応しいつものいや相手への敵意がある時の低い声で握手に応じようとしたサオリを制する。

「龍さん何か問題でも?」

「そなた出身はどこじゃ。生まれて今の今までずっとここか?」

「はい…そうです。」

サオリは警察に取り調べを受けている容疑者のような小さい声で応じる。

「ならいい。妾の心配は杞憂だったようじゃな。」

そう言い終わると司馬龍はまた桜の背中で寝始めた。するとサオリは握手しようとしたてを引っ込め控えめな笑顔で

「やっぱり誤解されてしまうのですね。」

とこぼす。

「誤解って?」

桜は意味がわからずすかさず聞き返す。

「傭兵って世間一般だとならず者のレッテルを貼られているんです。外の大陸の方だとなおさらだと聞きますが…。例に漏れず私も……ですが!私は違います!私はなりたくて傭兵になったわけではないんです!」

サオリは自身の胸に手を置き桜に訴えかけてくる。「私は違う」とう言う言葉を強めに言っている。桜は彼女に疑いを持っているわけではないが彼女のある部分に自分との差異を感じ反発を覚えたので問い詰めることにした。

「じゃあなんでさ。剣の腕に覚えがあるなら冒険者の道もあったろうに。」

「もちろん冒険者志願でした。ですがこの島は冒険者という職についてかなり高いプライドを持っていてかなり厳しい採用試験があるんです。」

「さ…採用試験!?」

桜は自分が冒険者になった経緯を思い返し二重に驚く。

「桜さんが知っているかは分かりませんが、私たちアキタイト人という民族は元々サリトリア人という島の外からやってきた別の民族から奴隷的支配を受けていて、三人の冒険者が起こした反乱をきっかけに独立を達成したという歴史を持っているんです。」

「あー。ていうことはサオリ含めこの島の人は冒険者っていう職を重く見ているってワケ?」

突然民族の歴史引っ張ってきての説明が始まったが桜は一つ一つを噛みしめて理解する。

「そうです。理解が早くて助かります。普通の人は何度説明しても聞き返すばかりで……」

「そ、そうか…まぁ悪い気はしないな。」

へへっと桜は恥ずかしそうに頭をかく。

「話を戻しますね。そのせいで私が採用試験を受けた時のギルド長がかなり厳格な方でして。」

段々と顔が優から怒へ切り替わっていくのを桜は感じた。

「でも、サオリなら冒険者ふさわしいと私は思うけどな。」

「ふぅふ、ありがとうございます。ですが残念ながら私は不合格でした。理由はこの右目の傷です。冒険者たるもの五体満足でなくてはならないというのがギルド側の主張のようですが…。」

サオリの右目を改めて見る。その生傷に秘められた過去に何があるのか桜には全く見当がつかなかった。気にはなったが深追いしないことにした。それはきっと彼女に苦しみを主出させることになってしまうと直感したからだ。

「右目が見えなくたって実力があればそれでいいのに……」

「お気持はわかりますが仕方のないことです。」

サオリは作り笑いをして桜を納得させようとする。渋々桜は理解を示した。

「桜殿、この方は?」

いいのか悪いのかわからないタイミングで孔が顔を出す。

「ひゃぁうあぁっ!?」

近づいてくる気配を一切感じられなかった桜は驚きで意味不明な叫びをしてしまった寸前で抑えている。対してサオリはフッと自然な笑みをが溢れる。

「驚かせてしまって申し訳ない、桜殿。私は孔真明。純白の麗しき方。お名前は?」

(それじゃあ口説き文句にも聞こえますけど?孔さん?)

「えっ…あっあの私は宮本サオリと言います。この島で傭兵をやっていて…あっあの…」

「傭兵…?」

やはり孔もそこが引っかかるようだ。眉間に皺を寄せてうたがいをかけているのが嫌でもわかる。サオリの顔にもさきほどの暗がりが戻ってしまった。

「孔さんの想像している傭兵とサオリは違います。彼女は本来なら冒険者として活躍するはずでしたが、右目の傷のせいでなれなかっただけなんです!」

桜は孔のサオリに対する信用を勝ち取るために必死に弁明する。

「故に彼女を信用しろと…?」

やはり難しいのか…?

「はい……」

孔の目がいつもより鋭くなる。桜は喉元に刃を突きつけられているような気分にぬり呼吸すらまともにできなくなる。かれの口から発せられる言葉を聞き逃すまいと視線が彼の口元に移動する。

そして遂に彼の真一文字に結ばれた口がほどける。

━━はじめに出てきたのはため息だった。

 

 

 

━━桜一行の上陸と同じ頃━━

「サオリさんはちゃんと桜さんと合流できたのでしょうか。」

「まぁ大丈夫だろう。ていうかアイツが本当に来るかどうかわからないのによく傭兵を雇おうと思ったな。」

ユイと桃は島の中心部であるトリトアンズに来ていた。桜たちよりも一日早く到着した彼女らは桜との合流、装備の調達のために市場を巡っているところだ。

「あまりオレから離れるなよ。はぐれると面倒だからな。」

桃は屋台をしきりに見渡して目当ての店がないかを探す。その上でユイへの注意も怠らない。次彼女に何かあったら桜に何をされるか分かったものじゃない。

「分かっていますよ。桃さんが頼りにぬるのは分かっていますから。」

ユイは桃の横にぴったりとつき、彼女の手を握っている。桃も離すまいと握り返す。まだ成長途中で半端な身長のため、どこを見渡しても彼女からは人混みしか見えず、彼女にはつまらない風景が続いている。

「んーと、あ、あったあった。」

桃が目当ての出店を見つけたようだ。声が弾んでいる。彼女はユイの手から手を離し彼女の腕をがっしりと掴み直すとそのままユイをひっぱって歩き出した。

「ちょ、ちょっと!桃さん、離してください!自分で歩けますから!」

ユイの懇願が桃に届くわけもなく彼女がかきわけた人混みの隙間に引き摺り込まれていく。

「おっと…すまない。」

一瞬桃の歩みが止まる。前方から来た人物と肩がぶつかったらしい。桃は一言謝罪を入れてから去ろうとするが相手は舌打ちを残して去っていく。その去り際ユイはその人物と目が合った。相手は鎧を着ており表情は読み取れないはずだが確実に兜の向こう側と視線が繋がったのを感じた。

(いや…まさか…そんなはずはないですよね…)

ユイの背中に一筋の冷たい感触が走った。

「ちっ、鎧着てるならもうちっとは周りに配慮しろよな。」

桃は不満を垂れ流しながら屋台の商品を選んでいる。ここは出張の武器屋らしく、木箱を積んで作られた即席のテーブルに様々な武器が鎮座している。

「きっとあれは警備の騎士様だろうね。この時間帯はよくトラブルが起きますから。」

「そーかいそーかい…ん?これ持ってみてもいいか?」

店主は桃を宥めるように説明を試みるが彼女はそれを左から脳を経由せずに右へ聞き流す。大量の武器を前に夢中な彼女を止めるものはいないのだ。

「ふむ…これはいいな…アンタ、これいくらだ?」

「87000ダールにございます。」

「「は?」」

ユイと桃は同時に声が出る。

「桃さん、流石にムリですよ!報酬で10万ダールをもらいましたけど、傭兵さんへの依頼費に5000、これに加えて宿泊や食費などの諸々諸経費を考えるとこんなところで9万ダール近いお金は使いません!」

ユイは出来る限り声を殺しながらもさいだいおんりょで桃に訴えかける。その様子を見ていた店主は手を揉みながら二人に話しかける。

「確かに、この剣が今すぐに手を出しにくいシロモノというのは分かります。ですが…貴方に一つ良いお知らせがありますよ。」

「いい知らせ?教えろ。」

桃は商人特有のビジネススマイルにうんざりしつつも話の続きを促す。

「よくぞ聞いてくださいました!!実はこの剣、価格といいピーキーな性能といい。作られてから7年ほど経っておりまして、もし!もし今ここで買ってくださるのなら!87000のところを!70000でお譲りいたしましょう!」

「いくら17000ダールの割引とはいえ……」

ドンッ!

「え?」

「買おう。はいこれ。」

即決だった。桃はユイが持っていたはずの共用財布をいつの間にか取り出し、会計台の上に叩きつけていた。

「もちろんだが釣りはいる。彼女によろしく。」

そう言うと桃は目的の剣と鞘を奪うように受け取ると足早に去ってしまった。あまりに唐突な出来事だったためユイが面食らっていると

「はいこれ、お釣りだよ。毎度あり!」

「はっ…はい。」

店主の声で現実に引き戻されたが実感はなかった。ただ確実なのは財布の中身が一気に軽くなったことだけだ。この一瞬で手持ちの現金の約7割がなくなったのである。それに気づいた彼女はすぐに桃が言った方向へ走り始めた。貧乏冒険者の彼女らにとってこれがいかに由々しき事態かについては言わなくても分かるだろう。

「おお。これはすごい。美しいな…ってうあああああああああ!?」

桃が自分の戦利品を路地裏で鑑賞していた所に猛ダッシュでユイが来る。よく見つけたものだ。

「今すぐ…それを……ハァハァ…返して来てください…。」

ユイがものすごい形相で桃に縋り付く。走って来たため息が切れており肩を大きく上下させている。

「返せって言われてもな…イヤって言ったらどうする?」

「ボコボコにします。」

「それはどうゆう?」

ももは返すつもりは毛頭ないように見える。必死なユイをからかっているのだ。

「それはもう、すっごい…タダじゃ済まないくらいにはボコボコにしますよ。」

脳に酸素が足りていないのかユイは幼稚園児並みの語彙力で桃を脅す。こんなものに桃が屈するはずもなく、彼女は剣を腰に付けてしまった。

「あぁもうそういうことですか。分かりましたよ。それならこっちだって━━」

「待て。」

ユイが杖を構えて桃に攻撃をしようと構えた瞬間一人の人物が彼女の肩を叩いてそれを止めさせた。

(こいつ…さっきの…!)

ユイはその人物が先刻自分とすれ違い視線が合った相手だと分かった。鎧を着ていても彼女には違いがわかる。しかしどうやら今回は一人だけではないようだ物陰からさらにもう一人同じく鎧に身を包んだ人影がある。

「お前…サリトリア人だな?」

「━━!?」

(またサリトリア人だ。前にレミルスが言っていたな)

「なぁ、アンタそんなのどうやって分かるんだ?ユイもそこら辺の人と同じ普通の━━」

「黙れ。さては貴様奴らの味方につくのか?」

兜の奥で目が光ったように感じられる。ユイの肩に置いた手に力がこもっており彼女の逃げようとする意志を握りつぶしている。

「ごめんなさい桃さん。いつかちゃんと話そうと思っていたのですが…。」

ユイの表情に影が落ちる。高身長の騎士に日を遮られているためでもあるが、それ以上に暗く見える。

「まてよ。ユイはオレの相棒だ。」

鋼鉄に覆われた全身と読めない表情からの重圧に負けじと桃も相手を睨みつける。また、ユイを傷つけてしまうわけにもいかない上、連れ去られてしまってはそれこそ桜に合わせる顔がない。

「それは無理な話だ。大司教様が言っていた娘とはコイツだったか。おい、やれ」

「ハッ」

ユイを掴んでいた騎士は後ろに控えていたもう一人の騎士を顎でしゃって指示を出す。それを受けた彼は剣は収めたまま桃の前に立つ。

「な…なんだよ。」

目の前に来た騎士は想像以上の威圧感がある。無言のままなので桃は体を傾けてユイの様子を伺う

「……ッ!?」

しかしもうそこには彼女の姿はなかった。

「おい!アンタ!ユイをどこへやった!?」

「答えられない。」

「答えられないって。使えねぇ役所の受付みたいなことほざいてんじゃねぇよ!」

当然のように返ってきたのは冷たい返事だった。剛を煮やした桃は一歩詰め寄り自分よりも背の高い騎士を見上げる形で彼を非難する。

「流石に限度ってモンがあるだろ!?アンタらのやってることは人攫いとなんらかわんねぇんだぞ!まずは対話をだな━━」

「対話をした上でも貴様は反対したであろう?」

「ぐっ…」

その通りである。桃の思いついた計画では対話でユイへの注意を逸らし、その隙にユイと逃げるつもりであったが相手の方が一枚上手だったらしい。

「それに貴様は部外者だ。本来なら関わるべきではない。」

「オレがユイの部外者だと?ふざけるな!戯言ばっかほざいてるとその首叩っ斬っ━━。」

「部外者は排除しなければならない。」

「う…ぐ…」

騎士の拳が桃の鳩尾を襲う。桃の反射神経よりも早く鋭いそれは彼女のをダウンさせるには充分な威力だった。桃は悶絶しながらその場に崩れ落ちる。彼女に戦う力が残っていないと判断した騎士は踵を返して歩き去ろうとする。

「ま…待て……ユイを…彼女をどうする…?」

ユイの名を聞いた騎士は桃の方へ向き直ると一言。

「あの少女は我らの繁栄のための生贄になるのだ。」

と言い放った。

「は…?いけ…にえ……?バカいうじゃ…うぐっ…つうぅぅ………」

到底許されるはずのない発言に殴りかかろうとするが鳩尾の痛みがそれを阻む。起きあがろうとするが全身を駆け巡る激痛は桃の心を容易に挫いた。その様子を見ていた騎士は鼻で笑うと軽蔑するような視線だけを残して遠く視界の外へ消えていった。

 

 

━━ほぼ同時刻、港湾付近にて━━

「孔さん、ため息ついてないで何か言ってください。」

孔は目を瞑り腕を組んだままでうんともすんとも言わない仏像モードに突入してしまった。そんな状態が体感で5時間ほど続くのでもしかしたら寝ているのかもしれないとおもい、桜が孔の肩を叩くとようやっと彼は瞼を開け一言

「分かりました。」

それこそ桜が求めて一言であった。彼女は孔からの承認とほぼ同時にサオリの手を握り二人で喜びを分かち合った。その様子を微笑ましく見ていた孔と目が合ったサオリは何度も彼に会釈し感謝を伝えた。

 

「宿は大通りの近くにあるので便利ですよ。」

正式に護衛として認められたサオリは三人に宿を案内していた。なんでも彼女のおすすめの宿屋らしい。

「随分と賑やかだな。」

桜は物珍しさから周りをキョロキョロと見渡しながらサオリについていく。田舎者丸出しの桜をこれまた孔は微笑ましく見ていなが今回のには何か別の意も含まれていそうだったので、それに気づいた桜は一応彼の靴を踏んでおいた(気持ち強めに)。

「今日は市場の日なので、それもあると思います。」

トロント島の中心地トリアンズ、その大通りで月4回行われる定期市は島中からあらゆる業者は集まり競うように出店するのでまるでお祭りのようになる。

「サオリってさ傭兵なのは分かったんだけど、普段はどんな仕事してるの?」

「えっ…と私は一応組織には所属していて…!いつもは教会騎士団っていう島の治安維持を担っています。今週は非番なのでフリーの傭兵として依頼を受けていたんです。」

「非番ならフリーとしての依頼を受けても良いのだな。」

間に入ってきたのは孔だ。もしかしたら彼はまだサオリを疑っているのかもしれない。声色から若干見て取れる。

「もちろんです。大体みなさんは休まれるのですが、私は仕事をしてないとウズウズしちゃって。寮でじっとしているわけにもいかず…」

「これがワーカーホリックってやつか………」

「そうかもしれないですね。」

 

桜たちには和やかな空気が流れている一方へで桃とユイには不穏な空気が漂っている。離れていく二人の境遇。皆が笑って同じ卓を囲むときは訪れるのだろうか………




今回はなんと2話連続投稿です。やったね。桜とサオリの出会いから始まる新たな波乱をお楽しみに。これからもどうぞよしなに…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。