ポケモン牧場物語 再会のミネラルタウン   作:ゲーマーN

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2日② トーマスの バトンタッチ!

 ――過去*1

 

「……ねえ。……ねえ起きて。起きてってば」

 

 それは、今から4つ前の人生――いや、ポケモン生のこと。見知らぬ森で眠りから覚めたハルトのすぐ目の前に、ニンゲンフォルムのローリエの顔があったのが「始まりの出会い」だった。

 

「あ、気がついた! 良かった~!!」

 

「う、うーん……ここは……」

 

「君、ここで倒れてたんだよ。起きてくれてよかったあ!」

 

 ローリエはほっとしたように深く息を吐き、その様子を見ながら、辺りに目を向ける。森の中の小さな空き地。柔らかな緑の絨毯に仰向けに横たわり、空からは穏やかな光が差し込んでいた。

 

「私はローリエ。チコリータのローリエ。よろしくね!」

 

「……チコリータ? どこからどう見ても、人間にしか見えないけど……」

 

「え? 人間? 面白い冗談だね! 私はポケモンだよ?」

 

 当時のハルトにとって、ポケモンとは創作物の中に描かれる絵空事――すなわち架空の生物だった。だからこそ、最初は「気合いの入ったなりきりさんかな」と考えていたのだが……。

 

「あ、信じてないでしょ! じゃあ見せてあげるよ! ”はっぱカッター”!!」

 

 むっとした様子で立ち上がると、ローリエは右腕を一本の樹に向ける。するとその腕から、まるで手品のように何枚もの葉っぱが放たれる。そして目にも止まらぬ速さで樹に命中、葉っぱの刃が幹に幾筋もの切り傷を刻んだ。

 

「ね? どう? これで信じてくれた?」

 

「……あ、ああ……うん」

 

「良かった。……で、君は? 見たところ、ヒトカゲみたいだけど……」

 

 え? と声を漏らし、自らの身体に視線を落とした。見覚えのない服だが、袖や首周りにオレンジのラインが入った、黄色いフード付きトレーナーに身を包んでいるのはいい。だが、腰の上から人間には存在しない奇妙な部位が伸びており、その先端にぼうっと小さな炎が灯っている。

 

「(ホ、ホントだ……この尻尾、確かにヒトカゲになっている!?)」

 

「ねぇ名前は? 名前はなんていうの?」

 

「名前……? えっと、僕の名前はハルトだよ」

 

「ハルトくんかあ。じゃあよろしくね!」

 

 屈託のない笑顔で手を差し出し、握手を求めてくるローリエ。まるで雲ひとつない空のように澄みきった笑みに戸惑いを覚えながらも、ハルトもそっと手を伸ばす。互いの手が触れた瞬間、ぱっと花が咲くように表情を綻ばせ、彼女はその手をぎゅっと嬉しそうに握り返してきた。

 

 

 

 ――現在 ミネラルタウン北側*2

 

「ここが、この町のフレンドリィショップだよ!」

 

 白い壁に、オレンジ色のラインが映える青い屋根。傍らでは、支柱の先に取り付けられたモンスターボールマーク入りの看板がゆっくりと回転しており、店内からは聞き馴染みのある音楽が流れてくる。フレンドリィショップ――ほぼ全ての地方で展開されているコンビニチェーン店だ。

 

「で、ポケモンセンター! 普段はここで、野生のポケモンを保護するお手伝いをしてるんだ!」

 

 何故ローリエが町を案内しているのか――それは、トーマスの粋な計らいによるものだった。二人がひどく親しい間柄にあることを知った彼は、「どうだろう、もしよければ私の代わりに彼の案内をしてもらえないかい?」とローリエに持ちかけたのだ。

 当然、その提案を断る理由などあるはずもなく、むしろ久しぶりの再会を喜びながら、張り切って案内役を引き受けたというわけだ。

 

「あっ、そうだ! お店で買い物してく? 野菜とかの種も売ってるはずだけど……」

 

「そうだね。せっかくだし、ここで買い物していこうかな」

 

 ゲームの主人公なら無一文で町を訪れるところだが、これは現実。トレーナーとして長く旅を続けてきたハルトは、今も潤沢な資金を有しており、財布の中身で困ることなどそうそうない。

 そんなわけで店に入り、まず目についたのは、気弱そうな印象を受けるヒゲの男性。どうやら彼が店の主らしい。内気な性格が滲み出るような佇まいで、レジの奥に立っている。そして――

 

「やっほ、シュティレちゃん!」

 

「いらっしゃいませ、ローリエさん。そちらの方は……」

 

「久しぶり、また会えたね」

 

「はい。お久しぶりです、ハルトさん。今回もまたお会いできましたね。ぶい」

 

 ピースする水色のショートヘアの少女――彼女の名はシュティレ。ロボットのように無表情であるが、前前前前世からの付き合いのあるハルトは知っている。彼女は表情作りが苦手なだけで、中身はむしろユーモラスでノリノリな性格をしていると。

 実際、声にこそ抑揚は乏しいが、言葉の端々には隠しきれない自意識と癖の強さが感じられる。

 

「ハルトさん。再会を祝して、私と1枚、記念撮影よろしいでしょうか? 好きな風景や人物と共に、ピースサインで自撮りするのが3度のご飯より好きなのです」

 

「もちろん、いいよ」

 

「ありがとうございます。……では、失礼します」

 

 隣に並ぶと、シュティレはスマホロトムを器用に構え、慣れた手付きでカメラレンズの角度を調整する。

 

「タイマーを起動します。ポーズはピースサインにて。3、2、1――ぶいっ」

 

「ぶい」

 

 パシャリ。軽快な電子音が響き渡り、撮影完了。画面に表示された画像を確認しながら、彼女はこくりと満足そうに頷く。

 

「思い出のメモリーをゲット。つきましてはスマートフォンの連絡先交換を。写真、お送りします」

 

「うん、ありがとう。……ところでシュティレ。今日は、作物の種を買いに来たんだけど……」

 

「はい。種は、こちらの棚に取り揃えてあります」

 

 スマホの連絡先を交換しつつ、シュティレが示した棚を覗き込む。そこにはカブやジャガイモ、キュウリといった春の月に育つ作物の種が整然と並べられており、それぞれの説明を記したポップが添えられている。

 

 カブの種   :1袋120円 出荷額1個60円 単作 収穫日数 5日

 ジャガイモの種:1袋150円 出荷額1個80円 単作 収穫日数 8日

 キュウリの種 :1袋200円 出荷額1個60円 連作 収穫日数10日→ 6日

 牧草の苗   :1袋500円 冬以外の季節に畑に置くと、日ごとに増えていく

 

「……ふむ」

 

 本来なら、収穫が早く利益率も高いカブを選ぶのが効率的だ。1袋で10個収穫できると仮定すれば、5日ごとに480円の黒字。春の月で5回転すれば、計2400円の利益が見込める。

 対して、キュウリは収益効率が最悪。連作という点だけを見れば魅力的だが、収穫が可能になるまで待たされる期間を考えると割に合わない。同様の仮定で進めると、最初の一度は10日で400円の黒字。その後、限界まで連作したとしても、2200円とやや低い収益率になる。

 

「(……本当は、ジャガイモのほうが効率は悪いけど、いろんな料理に使えるからね)」

 

 何も価値の基準は単純な数字だけではない。料理において多用途で扱える材料であることは、それ自体が大きな価値を持つ。その点においてはジャガイモもまた無視できない存在だ。

 ……ただ――とハルトは思う。あれだけ広大な土地を預かっておきながら、効率が悪いという理由だけで育てないのは、些か寂しくはないだろうか、と。

 

「――よし、決めた」

 

 結局、三種の種を3袋ずつ購入し、牧草の苗は見送ることにした。牧草は冬以外の全季節で継続して成長するので、牧場の完成形がある程度見えてから植え始めたほうが、無駄なく配置できると考えたためだ。

 

「ありがとうございます。またのご利用をお待ちしております」

 

「こちらこそ。それじゃあまたね」

 

「ばいばい! また来るね!」

 

 ぺこりと一礼するシュティレに軽く手を振り、二人は別れを告げた。

*1
【推奨BGM:Shoujo Delight】ブルーアーカイブより

*2
【推奨BGM:爽やかなStart】超昂神騎エクシールより




登場人物紹介:

名前  :シュティレ
前世  :紫のカクレオン
立ち位置:【再会のミネラルタウン】より『カレン』
元ネタ :【ティンクルスターナイツ】より『シュティレ』

概要
フレンドリィショップの娘。
カクレオン商店にて、わざマシンの販売を担当していた尻尾が紫のカクレオン娘の転生体。
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