武士娘転生 剣の聖地にTS転生した忠犬の奮闘記 作:斑模様のキャットフィッシュ
今回かなり独自解釈入ってるので地雷注意です。
『某が教えるべき事は概ね伝授し終えたのでな、ここを立つ前にお主とも話しておこうと思ったのだ。
まぁ、母親と違ってお主には師と名乗れるほどの事はしてやれなんだが…』
『お主が謝る事ではない、久々に良い弟子を持てた某がその娘にまで北神流を伝えようと色気を出しただけの話よ。
それに…お主は何れ北神流の道を歩む、こうして“今の北神流”と合わぬ事を知れただけでも十分な価値があったとも。』
『何も不思議な事は無い、お主の剣には己が勝利も生存も念頭に無いであろう?剣神様と水神様は各々のやり方でその考えを矯正しようとしているが、それも叶わんだろうからなぁ。』
『あの子も惨い事を言う。頭を丸めねば人里で生きられぬお主に“長子として弟妹を守れ”などと……あれのせいかは分からぬが、お主の剣は“自分の命を捨て石に誰かを生かす”物だと定まってしまった。
流派を立ち上げた初代という明確な答えを持つ剣神流や水神流をいくら磨こうとお主の剣は完成せぬ、ならばお主が行き着くのは北神流に他ならぬよ。』
『そう、北神流は三大流派で唯一明確な答えの存在しない流派だ。
成り立ちこそ初代様の高潔な精神と生き抜く術を継ぐものであったが、戦士としての単純な力量では先代様が既に超えてしまっている。
その先代様が北神を最強たらしめた王竜剣を手放して、三代目に全てを投げ渡した事で“北神流は各々の見出した答えを継ぐ物となった”』
『三大流派のどれにも属さぬお主の剣が答えと成った時、それが新たな北神流となるのだ。
そして、お主は流派を編み出した当主としてそれを次代に継がねばならん。
ただ生かすために死ぬのではなく…お主自身も生き延びて守り続けるための剣を、お主が守る者と次代の弟子達のために遺さねばならん。』
『あの子はお主に死んでほしくてあのような言葉をかけたのではない。
敵の多い人生を歩むお主が強く生きられるよう、守るべき者を示してくれたのだ。
目的のために手段を間違えれば、某のように見出した答えまで汚名に塗れた物になってしまう、某のようにはなるな。』
『お主の見出した答えが北神流に名を遺す日を楽しみしているぞ…エディトよ。』
────ルーデウス視点────
ウィ・ターと名乗った全身鎧の小人が先頭に立って声を張り上げる、奇襲どころか正義は我にありとでも言わんばかりの口振りだ。
「アリエル王女とその一派よ!!我が主君、ピレモン様の献身を踏み躙り黒狼のギレーヌに差し出した大義なき王女よ!!
ノトス家次男であるルーク様を差し出して即刻ラノアへ引き返せ!!これはかつて仕えた者として最初で最後の情けである!!」
「笑わせるな!アリエル様を裏切って誰に鞍替えしたか知らないが…その後ろ暗さを当のアリエル様に押し付けて刺客を送るなど許されるはずがない!そちらこそ今すぐに兵を退かせて沙汰を受けろ!!」
ウィ・ターの言葉に絶句したルークを他所に、フィッツ先輩と化したシルフィが凛々しい声で舌戦を繰り広げる。
元々ピレモンは裏切った前提で動くつもりだったがそれにしてもウィ・ターの言い分は飛躍しすぎだ、あれでは裏切った事が丸わかり…いや、そうか。
アリエル達は自分達も間接的にサウロスの処刑に関わったと言っていた、ギレーヌがそのアリエル達に協力した事で裏切り者のピレモンは生け贄に選ばれたと疑心暗鬼になったのだろう。
アスラ王国の中でその情報を手に入れたのなら…目の前のウィ・ターかピレモンがヒトガミの使徒と言う事になる。
「そうか…残念だ!」
「やはり衝突は避けられぬ様だな、エリスよ!」
「オーベール…久しぶりね!!」
交渉決裂を合図に3人の剣士が木の上から飛び降りた。
オルステッドから聞かされていた人相と服装の男と、鏡合わせのような瓜二つのうさ耳剣士達である。
「同じく北神三剣士が一人にして筆頭…北帝『孔雀剣』のオーベール・コルベット。」
「同じく北神三剣士が一人、北王『双剣』のナックルガード。」
──聞いていない。
こんなのは、聞いていない。
正面から戦っても強いとは聞いていたが、大前提として奇襲があるものとして対策を命じられていたのに。
俺は勘違いをしていた、オルステッドの知る未来は、絶対じゃない。
本来産まれるはずのなかった俺とエディトが、本来起こるはずのなかった転移事件が、関わるはずの無かった人間達を繋げ未来を捻じ曲げてしまったのだ。
「「「「『泥沼』のルーデウスとその一行よ!いざ、尋常に勝負!!!」」」」
オルステッドから伝えられたどの想定にも当て嵌まらない、出し惜しみ無しの真っ向勝負が始まった。
本作のオーベールは見るからに早死にしそうな狂犬親子に北神流の新たな可能性を感じて真っ当な剣士として再燃しています。