武士娘転生 剣の聖地にTS転生した忠犬の奮闘記   作:斑模様のキャットフィッシュ

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とある日記の一幕

エディトが家を出て行った。

あの子のために作った特注のザリフの義手も、俺が渡しておいた装備や衣服、貨幣も全部部屋に纏めて置き去りになっていた。

 

昨日、起きた事を書いておこうと思う。

あれはそう…夕飯時になっても部屋に篭っていたエディトに夕飯を持って行ったのがきっかけだった。今思えば、ノックもせずに娘の部屋に入ったのも悪かったんだろう。

俺が入ってきたのに気づいて、咄嗟に何かを隠したエディトに日頃のストレスをぶつけてしまった。

ヒトガミを倒す手がかりが見つからなくて、エリスに邪魔ばかりされていて、気が立っていたんだ。

 

隠されたものを取り上げてみれば、それはエリスとギレーヌ宛てにしたためられた手紙であった。

今読み返しても特別な事でもない、俺の普段の生活や、エディト自身の近況を報告するだけの手紙でしかない。

だが、俺はそれが許せなかった。シルフィが死んで荒れていた頃、エリスに捨てられたと泣いて俺の家に頼って来たエディトが、俺に黙ってエリスとやり取りをしていた事実をどうしても許せなかった。

あの子が転生者だったのも良くなかったんだろう、最近の俺は、自分から見ても被害妄想や邪推が酷すぎだった。些細な事が目についてなんでもかんでも自分への悪意だと思い込んでいたような気がする。

 

俺はエディトの言葉を聞こうともせず罵詈雑言を投げかけた。

『この世界のどこを探したってお前の故郷なんかない、元の世界に戻れてもお前の生きてた時代なんか何百年も前だ』と…口汚く、わざと傷つけて追い詰めるように、徹底的に罵った。

エディトは、泣いていた。

 

塞ぎ込んで酒に逃げていたら、アイシャに殴られて外に放り出された。

あんなに怒ったアイシャを見たのは初めてかも知れない。

エリスでもペルギウスでもいいから心当たりのある奴に頼んで、エディトを連れ戻してこいとキツく言われて、俺はようやく動き出した。

本当、アラフォーにもなって何をやってんだろうな俺は…

 

 

 

ペルギウスやザノバ、魔法三大国の重鎮と片っ端から声をかけてエディトの情報をかき集めたが、赤龍山脈を超えた辺りで足跡は途切れていた。

もう、他にどうしようもない。

エディトの手紙からエリスの居場所を割り出した、明日にでもエリスに会いに行こうと思う。

 

俺はバカだ。救いようがない。

 

 

 

 

エリスとギレーヌに事情を話し終えた俺は、ギレーヌに殴り飛ばされていた。エリスは膝から崩れ落ちて頭を抱えたまま、その日は一言も喋らなかった。

 

ギレーヌが言うにはエリスはずっと俺の事を想っていて、今も俺が何かをしでかす度に死なないように止めていたと言うのだ。

ずっと、俺が好きで、俺が大事なままで、それでも溝が深すぎたから、エディトだけでも俺の元で生きられるよう捨てただなんて嘘までついて俺のところに送りつけたのだと。

 

その結果が、これだ。復讐のために危ない場所に連れ回して、腕まで失くすような怪我を負わせて、最後には泣いて出て行くような傷付け方をしてしまった。

俺はその場で二人に土下座をして、エディトを探すために力を貸してくれと頼み込んだ。

 

 

 

 

エリス達と和解して一年、ペルギウスの転移魔法陣を借りてあちこちを探し回ったが一向にエディトは見つからなかった。

俺達3人の間には業務的な会話しかない、酒もやめてチンピラみたいに暴れる事もやめたが、それでも必要な事以外で二人と話す勇気が持てなかった。

 

手詰まりになった俺達は魔大陸への転移魔法陣を使わせてもらって、キシリカの魔眼を頼ることにした。

エディトが死ぬような心配はしていない、義手は置いて行ったがあの子も水王で旅の熟練者だ、死ぬような事があれば絶対に何か噂が残ってないとおかしい。

 

更に半年、ようやくキシリカを発見した俺達は早速エディトの居場所を聞き出した。

どうやらあの子はベガリット大陸の端からかなり離れた海で船旅をしていたらしい、見つからないわけだ。

四角形に閉じた世界とは言え広大な海の上を探すという事で、キシリカからは千里眼を与えてもらった。

 

 

 

 

エディトの居場所を掴んだ俺達はペルギウスの城に戻り、そのままエディトのいる海に一番近い場所の魔法陣を借りて船旅を始めた。

船の上でいつまでかかるか分からない人探し、俺は研究の論文などで稼いだ金を搾りに搾って船旅用の奴隷を10人ほど購入した。

奴隷達に船を回させ襲ってきたモンスターを殺して食べ、時折俺がマストの上から千里眼で船を探す毎日、数ヶ月もする頃には俺達は心身共に限界が来ていた。

 

船を、見つけた。

まだ新しい漂流船だ、中には一体のスケルトンがいた。

骨と服の隙間に緑の髪の毛が、付着していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エディトを骨壷に収めた。

もういい、もう…帰ろう…。

 

 

 

俺は今、漂流船の中にあったエディトの航海日記を解読している。

せめて、あの子が何を思ってこんな所に来て、あんな死に方をしたのか知りたかった。

日本語ではあるんだが、文面も文字の形も古すぎるし達筆すぎて解読が難しい、長丁場になりそうだ。

 

 

 

 

 

何が長丁場になりそうだ、ふざけるな。

 

 

 

 

 

 

エディトの航海日記の内容は、ほとんどが俺とエリスへの謝罪で埋め尽くされていた。

20年も側で暮らしていながら間を取り持てなかったとか、こんな結果に終わって迷惑をかけたとか、あの子が謝るような事じゃないのに。

そして、それ以外では淡々と海という海を渡って日本に帰る手立てを探す内容が殆どだった。

隅から隅まで探し回って、絶望し、最後の方のページは帰れないという言葉で埋め尽くされていた。

 

俺は、何をやっているんだ、ナナホシの時に、帰れない事がどれだけ辛いのか学んだんじゃなかったのか、なんで…なんで、なんで、なんであんな、バカみたいな事を…俺は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後のページにはもう一度俺達への謝罪の言葉と、どうかこの船を見つけず、全てを忘れて二人で添い遂げていてほしいと、そんな言葉が書き残されていた。




エディト君ちゃんは生前負担をかけてしまった両親が養子なり新しい子供を作るなりして幸せに過ごす姿を、若しくは幸せに生きたという足跡を一目見たいと想っています。
老デウス時空ではルーデウスに拒絶されて前世の両親が生きた形跡すら完全に無くなっていると言われたせいで暴走の末に自害しました。
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