武士娘転生 剣の聖地にTS転生した忠犬の奮闘記   作:斑模様のキャットフィッシュ

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ルーク・ノトス・グレイラット 前編

────ルーク視点────

 

「何人か取り逃しましたが、死体の鎧には全てノトス家の紋章が入っていました。」

「元々覚悟していた事ではありましたが…これで確信に変わりましたね。

ピレモン様は、我々を裏切りました。」

 

 

 

言い訳のしようがなかった。

父から聞かされていた長年ノトス家の用心棒をしているという北神流の達人、それが刺客の一人だったウィ・ターその人なのだろう。

 

彼は父とアリエル様の訣別を宣言して、俺の身柄を要求までした。

同じ北神三剣士を名乗ったオーベールとナックルガードも彼との縁で雇ったと推測できる。

ルーデウス達が同行していなければ確実に俺達を皆殺しできる戦力を揃えての待ち伏せ…父は既に敵なのだと、納得するしかない。

 

 

「何はともあれ…ルディの治療が間に合って安心したよ。

はみ出た内臓にまで傷が付いてた時はもう手遅れかと思ったんだから。」

「切り傷が綺麗だったお陰だろう、あたしが冒険者だった頃にも似たような事があった。

魔術師は身体が脆い分綺麗に刃が通るから、切り傷だけなら治癒術師がいれば助かりやすいのだとゼニスから聞かされた覚えがある。」

「北神三剣士…強敵だったわね、シルフィの援護が無かったら私も無事に済まなかったわ。」

 

 

 

あれだけの死闘を演じたものの、こちらに死傷者は出なかった。

北帝を受け持ち前に出過ぎたルーデウスが斬られこそしたが、代わりにウィ・ターに致命傷を与えた上に本人も治療が済んで奥の簡易テントで寝かされている。

父が裏切ったという一点を除けば、文句無しの完全勝利だ。

 

 

 

「時に姫様、ウィ・ターの言っていたあたしにピレモンを差し出すというのはどういう事だ?」

 

 

 

 

──来た。

 

 

 

「ピレモン様…いえ、ピレモン・ノトス・グレイラットは元々私の重臣でした。

ですが、政争に負けてラノアに亡命してからは情報のやり取りはできていませんし、彼の近況も分かっていません。

その上で他ならぬ貴女にその身柄を差し出すという事であれば…」

「サウロス様の仇と…そういうことか。

アスラ王国にいた頃に、お前達も関わっていたという事ではないんだな?」

「ええ、それはもちろん。

元々の契約通り彼を庇うつもりもありません。」

 

 

 

淡々と父を殺す算段が立てられていく、裏切るまでどれほど献身的に仕えたとしてもあれだけの刺客を送ったのだから当然の話だ。

つい先ほど窮地を打開して見せたギレーヌやエリスへの報酬になるのなら、尚のこと殺さない理由はない。

 

 

 

(ああ、父上は死ぬのか。)

 

 

 

納得も理解も追いつかないまま、これから父を殺すのだという実感だけが強まっていく。

ルーデウスの介入によってペルギウスを説得する手立てが見つかり、ルーデウスの連れてきた剣王達によって窮地を脱して、その剣王達のために裏切った父が差し出される。

 

 

 

(なんなんだ、それは…)

 

 

 

「待ってください、アリエル様。

おかしいじゃないですか、どうしてウィ・ターはギレーヌがこちらについた事を知っていたのですか。

どうして彼女に復讐の機会を与えるという、我々しか知らぬはずの報酬を持っていたのですか。

……誰かが情報を流して、父上を裏切らせたのではありませんか?」

「ピレモンの裏切りが発覚した矢先に、私達の中にまで裏切り者がいると…そう言いたいのですか?」

 

「違わないでしょう、ルーデウスが自分達に同行すると言い出してから…都合よく事が運びすぎて予定がどれだけ早まったことか。

そのルーデウスが不透明な行動だらけな今、考えも無しに父上を敵と断定するのは…っ」

 

 

話している自分から見ても支離滅裂な言い分を並べ立てて父の処遇から話をすり替えようとしたところ、最後まで言い切る前に剣王達からの殺気で口を塞がれた。

 

 

 

「どの道、それで刺客を差し向けたのならサウロス様の仇だと白状したようなものだろう。庇うのならお前もここで殺す。」

 

「ルーク、混乱するのは分かるけどさっきの襲撃で死にかけたルディを疑うなんて滅茶苦茶だよ。

それにオルステッドの命令でもあるけど、ルディの一番の目的はボクらの手助けだって言ってたじゃないか。」

 

 

そう言って諭してくるシルフィの言葉に正気を疑った。

空中城塞でペルギウスの精霊を通して聞かされた、質問の答えにもなっていないようなあの言葉、あんなものが信じられるわけがない。

王となったアリエル様に後ろ楯になって欲しい言っていたが、それなら尚の事、主人であるオルステッドの存在を伏せる理由が分からない。

 

 

「お前は…あんな言葉を信じたのか?あんなカケラも誠実さのない言葉で、あれだけ疑っていたオルステッドに…

そうだ、ルーデウスも騙されているんだ!お前が散々言っていただろう、オルステッドは信用ならないと!全てそいつが仕組んだ「いい加減にしなさいルーク!」

 

「何度も話し合った上で、背後に居るオルステッドという方の事も含めて彼を…ルーデウス様を信じると決めたから、こうして私達は同行しているのでしょう。」

 

 

「覚悟はしていたはずです。

ラノアへの亡命を選んだ時から、こうして力をつけて帰る頃には、貴方の父が敵に回っているかも知れないと。」

「だからって…だからってこんな、おかしいじゃないですか!

今だってオルステッドに従って護衛についたルーデウスが、危うくそいつの命令に使い潰されて死ぬところだったのですよ!?

こんな状態で誰かに踊らされるような形で父上を殺して…これで本当に、自分達は間違っていないと言えるのですか…?」

 

 

 

 

 

そうだ、こんなのはおかしい、こんなのは……納得できない。

 

 

 

 

 

 

「さっきからごちゃごちゃとうるさいわね、ルーデウスがなんとかするって言ったんだから、黙って信じなさいよ。」

「は、あ……?」

 

「ルーデウスが私達もあんた達も助けたいと思って、こうして方がいいって決めたんだから、それを信じればいいじゃないの。」

 

 

何だその暴論は、ルーデウスが何も間違えずにやる事なす事全て上手くいくとでも…

 

「それでもダメだった時は私達がルーデウスを助ければいいのよ。」

「エリスそれ…丸ごとロキシーの受け売りじゃ…「う、うるさいわね、いいじゃない別に!」

 

 

 

ガツン、と殴られたような衝撃が俺の中を駆け回っていた。

ここ最近のルーデウスは間違いなく挙動不審で、伝えるべき事も伝えず隠し事だらけだっただろう。

これは父の事を抜きにして、俺以外の人間から見たとしても事実不自然そのものだったはずだ。

 

それでも彼女は、いやシルフィも…ギレーヌもだろう、全員がルーデウスを信じて、どんな結果に終わっても納得できるように覚悟を決めているのだ。

最後まで、何があってもついて行くのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリエル様。自分は、貴女の騎士です。」

「ええ、分かっていますよ。」

 

「何があろうと、最後まで貴女に付き従うつもりでいます。」

「ええ、それも分かっています。」

 

 

 

 

 

「……父上の処遇を決める前に、ルーデウスと話をさせてくれませんか?」




本作のルークはヒトガミの使徒ではありません。
ルーデウスやオーベール達の行動がガラリと変わるせいでただでさえ操りにくいルークを誘導するのは不可能と判断して、別の人間を使徒にしています。
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