武士娘転生 剣の聖地にTS転生した忠犬の奮闘記   作:斑模様のキャットフィッシュ

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再出発

────ルーデウス視点────

 

『ピレモンを助けて欲しい』

そう言ってルークに頭を下げられた時、俺は正直緊張の糸が切れた気がしていた。都合の良い頼みだったがルークの言葉はこれまでで一番真摯だったように感じたのだ。

俺とあの老人とは違うと何度も自分に言い聞かせていたが、意識すればするほど日記に書かれていた俺の失言の数々が脳裏をよぎって隠す必要のない事まで隠して頑なになってしまっていたように思う。

第三者でつい昨日まではギクシャクとしていたルークがそれを気づかせてくれて、彼なりに俺を認めてくれた言葉に応えたくなったのだ。

 

アリエル達にしたってずっと一緒にやってきた仲間と最後まで戦い抜きたいだけで、別に俺が憎くてシルフィを連れて行こうとしてるわけでもない。

未来の俺…いや、あの老人がヒトガミすら関係のない八つ当たりでエディトを死なせてしまった後悔が俺にまで伝播して何でもかんでも自罰的に捉えていたんだろう。

嘘をつくと悪いものが溜まる…確かゾルダートに教えられた事だったか、嘘も隠し事も同じようなものだろうに、俺は同じところで失敗してしまったらしい。

 

ちゃんと話せる事は話して、嫌われようと泣いて縋り付いてでも助けてもらおう。俺は一人じゃ何もできないが、俺の支えになってくれる人間はいっぱいいるんだから。

何よりまずはギレーヌなんだが…彼女を説得するのが一番難しいよなぁ…と早くも勢いで返事した事を後悔しながらルークと一緒にテントを片付ける。

「話は終わったな、借りていくぞ。」

 

 

と思ったら、近くにいたギレーヌに首根っこを掴まれて少し離れた場所に連れ込まれた。聞かれていた…殺される……

いや諦めるな、出鼻を挫かれたけど今から説得すれば良い、ロキシー師匠…俺に勇気をお与えください…!

 

 

「急に祈り出してどうしたんだお前は…?

それよりもルーデウス、ピレモンを助けると言っていたが、あたしの仇討ちに協力するという言葉は嘘だったのか?」

「……いえ、ピレモンも確かにサウロス様の死に関わった人間でしょうが、恐らく流されて巻き込まれただけの小物です。

彼を殺しても黒幕は痛くも痒くもありません、どうせならピレモンを抱き込んで首謀者を引きずり出してやりましょう。」

「……首謀者を引きずり出した後にでもピレモンは殺せるだろう。」

 

そこを突かれると痛い、巻き込まれた形でもサウロスと仲の悪かったらしいピレモンはこれ幸いと処刑に加担しただろうしアリエルやルーク達の都合はギレーヌには全く関係がない。

 

「…いい、そんな顔をするな。ピレモンには目を瞑ろう。」

「はい…?」

 

「い、いいんですか?」

「最初はルークを殺してしまおうかと思ったがエリス様に叱られた。『ルーデウスなら仇は討たせてくれるからワガママを言うな』とな。

エリス様の言葉通りお前はあたしを裏切らないように考えた上で動いてくれた。これ以上困らせるわけにもいかん。」

「すみません…いや、ありがとうございますギレーヌ。首謀者には粗方目星がついています、全員で生き残って決着をつけましょう。」

 

 

結果的にギレーヌの温情に甘える形になってしまった。

彼女の懐の深さにありがたくも申し訳ない気持ちになっていると、何故かギレーヌの方が俺に頭を下げてきた。

 

 

「あたしは正直このままお前にお嬢様達を預けて良いのか不安だった。

お嬢様が剣の聖地で修行をしている間に手紙の一つでも出していればお前達の間に溝を作らずに済んだだろうに、お前に全ての後始末を任せて復讐に走って良いのかとずっと悩んでいた。」

 

それは俺を含めた全員を慮っての、大人としての謝罪だった。

…だが、産まれてからずっとエディトの世話をして、喋れるようになってからは簡単な読み書きの勉強まで見ていたのだ。そこまで気が回らなくても仕方がないだろう。

 

「師匠や兄弟子達に助けられる形だったが、エディトの育ての親を任されておきながらあたしはあの子が産まれた事すらお前に伝えていなかった。今もこうして弱くなったあたしのためにお前を死なせかけている、本当にすまない。」

「そんな……って、弱くなってたんですかギレーヌ?」

「ああ、師匠も呆れを通り越して嘆いていたし、先程戦ったウィ・ターにも殆ど完敗だった。奴もやり手だったとは言えあたしが抑えていればお前が斬られることもなくオーベール以外は全滅させられただろう。」

 

言われて見れば当然か、何をするにもつきっきりな子供がいたら剣の修行なんて続けられるわけもない。俺としては今も変わらず頼りになるつもりだったが、本人としては思うところがあるのだろう。

 

「だがお前はお嬢様達を受け入れ今も命懸けで共に戦ってくれている、エリス様もエディトもサウロス様の仇討ちを優先させてくれた。

覚悟がないのはあたしだった、どんな命令でもお前を信じて従おう。」

 

 

今までずっとエリス達を見守っていたギレーヌも、ずっと彼女なりに悩んでいた。俺が彼女の立場ならエディトを手放せる自信なんて無いが、ギレーヌはそんな俺を信じてここまで言ってくれたのだ。

未だに人を殺すのは怖いし腰が引ける。それでも、殺すためだけに一人で戦うのではないという事実に俺は救われていた。

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくお互いに頭を下げ合った後にアリエル達の元に合流してオルステッドの関与を正式に打ち明けて謝罪した。まぁ、ルークの言う通り全員殆ど把握していたしアッサリ許してくれたんだが。……本当に一人で抱え込むものじゃないと実感させられる。

最後にオルステッドの説得をすると言う話になりそこに立ち会いたいとアリエルが言い出して一悶着になり、結局護衛としてルークとエリスも付いてくる事になった。

 

オルステッドを見たアリエルがショックで漏らした挙句ヘブン状態になったり実質的な配下に降ると言い出してルークが白目を剥いて処理落ちしたが、概ね平和に話が進んだと思う。

俺も最近の八つ当たりのような態度を謝罪してピレモンの助命を願ったがそこもアッサリ受け入れてもらえた。というか全体的に投げやりと言うかおざなりな対応で好きにしてくれって感じに見える、拗ねさせてしまったか……

 

 

「それはそれとして…イレギュラー抜きにあれだけ強いのがいたならちゃんと言っておいてください、王級剣士が一人いるだけで全然違うんですから。」

「…ああ、次回からは気を付けよう。」

 

 

旅に出る前に片付けておくような話で散々振り回してしまったが、これで俺達の陣営に不透明だったり指揮系統の不確かな要素は無くなった。クリーンでホワイトでアットホームな理想の職場と言えるだろう。

明日は諸々の前準備のために盗賊のアジトに顔を出すと言ってルーク始めアリエルの従者達に心底疲れ切った目を向けられる事になったが、未来の情報ありきで動く事になるのだ、今から慣れてもらうしかない。




八つ当たりされてた事に気づいてなかった社長、割と本気で拗ねる。
次回から調整するつもりでルーデウス達には好きにさせてくれてます。
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