武士娘転生 剣の聖地にTS転生した忠犬の奮闘記   作:斑模様のキャットフィッシュ

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帰郷

────ルーデウス視点────

盗賊団のアジトで(アジトと言っても受け付け事務所のような小屋だが)トリスの協力を取り付けた俺達は難なくアスラ王国への密入国を果たした。

 

女盗賊トリス。本名は『トリスティーナ・パープルホース』

パープルホース家の令嬢というれっきとした貴族でありながらダリウス上級大臣に監禁され性奴隷として使い潰された挙句に捨てられたという壮絶な過去を持つ女。

運良く口封じを免れ売られた先の盗賊に仲間入りした彼女は未来の俺がアスラ王国に密入国する際にも世話になったらしい。

襲撃を避けるための密入国の手引きはついでで、アリエル達を彼女に引き合わせて第一王子最大の後ろ盾であるダリウスを失脚させる切り札に加える事が俺の仕事だった。

 

 

─しかし、情報共有を済ませオルステッドがアリエルの後ろ盾として認知されたおかげで俺のやる事はほとんどなくなってしまった。

盗賊団に会うと言えば嫌な顔はされるが受け入れられるしそこにダリウス失脚の材料になる元貴族の女盗賊がいると言えば胡散臭そうな目で見られるがその前提でアリエル達が説得の用意をして実際にトリスを口説き落としてくれた。

 

元々アリエル一行はラノアに流れ着いた頃には5人しかいなかった状態でアスラ王国の王位継承争いに参加できるだけの力を蓄えて見せた海千山千の猛者達だ、俺を信用して計画通りに動いてさえくれれば俺が彼らの仕事に割り込める余地は無い。

……アスラ王国から亡命する前はピレモンもこの輪の中で筆頭として勢力争いに協力していたんだろう、ギレーヌ達が見逃すならピレモンの助命に不満が出ないのも当然だ。

 

それはさておき、ここ数日の俺は大筋の交渉や立ち回り以外はアリエル達に任せてピレモン捕縛の計画と剣士達への対策会議に専念することができた。

俺達はオルステッドから与えられた情報を元に俺達全員で連携して剣士達への対策を練り、空き時間を見つけてはその対策に沿った内容の模擬戦を繰り返した。

ヒトガミが予め用意するだけあって彼らと純粋にぶつかり合えば俺達は負けるだろうし未来の見えるアイツにはその盤面が整えられる。シルフィ以外全員冒険者だったので剣士との技比べではなくモンスターを攻略するような想定で連携する形で方針は纏まった。

 

 

「問題はピレモンを内々で捕縛する手段ですが…オーベール達が守っている以上一筋縄ではいかないでしょうね。

下手をすると水神に合流されたり王都中ひっくり返して探すことになるかも…」

 

「いや、そこは問題ないと思うぞルーデウス。

父上は小心者で判断力が無い、北神三剣士が半壊して帰って来れば自分の屋敷に篭って剣士も護衛に張り付かせるだろう。ダリウスらの助勢が加わる前に王都に着いて別邸に夜襲をかければ一網打尽にできるはずだ。」

「なるほど。」

 

 

ウィ・ターはオルステッドが死亡を確認した、血痕を辿った先の小さな洞穴でミラーボールの様な鎧の脇に火葬跡が残っていたらしい。

なぜ一度見失ったのかと聞いたら不服そうな顔で俺の治療に出張るべきか迷った結果だと言われて平謝りした。

ナックルガードも一人では北聖止まりらしいしルークの言う通り形勢を立て直される前に攻め切れば水神と合流される前にオーベールを落とせるだろう、ここが正念場だ。

 

 

 

 

 

王都へ向かう道中フィットア領の近く通る事になり、それなりに復興が進みまばらに麦畑の並ぶ草原を見てエリスを連れ帰って来た頃を思い出した。

あの時はすぐにゼニスも見つけ出して家族みんなでここに住むのだと思っていた、実際には貴族のしがらみで思うようにはならなかったが。

俺達は覚悟もないまま慰め合うように結ばれて、デキちゃった事にも気づかないまますれ違う事になった。

今の生活には満足しているが、俺とエリスの若気の至りが我が家の長女に苦労をかけてしまったのも事実だ。そう考えれば、ここは故郷であると同時に俺達の人生の分岐点でもあったんだろう。

エリスも同じように感じたのか、俺とシルフィの乗った馬に寄ってきてなんとも言えない顔をしていた。

 

 

「ルーシー達…元気にしてるかな…」

「大丈夫よ。エディトにしっかり守るように言っておいたわ。」

「エディトもだよ、ボクらがいない間に…いじめられたりしないかな?」

「心配ないわよ、あの子は強いから全員返り討ちにするわ!」

「そうだよね…うん、大丈夫だよね。ルーシーも、エディトも。」

 

 

シルフィはここ数日ずっと不安そうな顔をしていた、今でこそ真っ白な髪だがブエナ村にいた頃のシルフィはエディトと同じ緑髪だった。

ほんの少しでも昔の景色を取り戻したフィットア領を見て、緑髪なせいでいじめられていた頃を思い出したのかもしれない。

俺は緑の髪が大好きだし誰にも髪色なんかで侮辱させるつもりはないが、髪のせいで苦労しているシルフィ達はそうはいかないし周りだって全員が黙って飲み込んでくれるわけじゃない。

 

その日の晩、エリスは俺達二人分の見張りを請け負うと宣言して俺の部屋にシルフィを連れ込み『今日は二人で寝なさい!』とだけ言って出て行った。

シルフィは少し戸惑ってから同じベッドに座り込んで、俺にもたれ掛かるようにして服をはだけ…途中で泣き出してしまった。

 

 

 

「ごめん…ごめんねルディ、こんな時にまでボク、こんな…

やっとルーシーを産んであげられたのに、やっとロキシーにも子供ができたのに、やっとエリスと仲直りできて、エディトにも会えたのに…こんな事に付き合わせて…あんな大怪我負わせて…ごめんね…ルディ……」

「大丈夫…大丈夫だよシルフィ。俺もエリスも大丈夫だから、アリエル様の無事を見届けてみんなで帰ろう。」

 

 

 

…シルフィは責任を感じているのかも知れない。

俺と結婚した頃からいざという時にはアリエルの助けになると言っていた。だから今回子供と身重のロキシーを残して権力争いに巻き込んでしまったと、昔の嫌な事を思い出した拍子にそんな考えが溢れてしまったのだろう。

緑髪じゃない俺にはシルフィの不安やトラウマを失くす事は出来ない。それでもロキシーが手を引いて支えになってくれたように、シルフィが真っ先に頼れる味方でいようと決意を固め直す。

シルフィが泣き止んだ後も頭を撫でたまま、その日は抱き合って眠りについた。

 

それからも馬を急がせながら王都を目指して3週間と少しが経ち、漸く王都アルスに辿り着いた。




家族間でのイベントがぐっちゃぐちゃに前後してるせいでシルフィも大概病んでいます、意外と渦中の狂犬親子が一番ケロりとしてる。
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