武士娘転生 剣の聖地にTS転生した忠犬の奮闘記   作:斑模様のキャットフィッシュ

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龍神神社への参拝 初めての誕生日

「ご挨拶…ですか?」

「ああ、オルステッド様の呪いは俺には効かないらしくてな…俺の子供も同じなのか確かめたいそうなんだ。見た目ほど怖い人じゃないしルーシーも連れて挨拶に行こう。」

 

仕事から帰って来た父様にそんな事を切り出される。

父様は現在、龍神であるオルステッド様の予言を受けて将来役に立つような人物を助けて回る仕事に就いている。

転移魔法陣を駆使して世界中を飛び回りある時は魔物や賊を討ち、またある時には呪いで人と関われないオルステッド様の名代として交渉を熟しもする右腕に相応しい働きぶりだ。

 

仕事から帰ると私達家族や御友人と顔を合わせ、数日間エリス母様との修行やザノバ殿やクリフ殿と研究をしてからまた仕事に行くという形式のおかげで名代の仕事を果たしながら魔術師としての力量もめきめきと伸ばしている。

そして今日、私とルーシー(シルフィ母様に様付けはやめるよう言われた)に呼び出しがかかったという事は本当の意味で配下として認められたという事だろう。

オルステッド様は長命の存在、父様より後の代の配下も欲しいと思うのは当然だ。粗相の無いようにしなければ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パーパ!パーパ!」

「…………………」

「ひいっ!?」

 

怒っている、父様が…オルステッド様を殺そうとしている…!

シルフィ母様と似た色合いをしたオルステッド様の銀髪にルーシーが懐き、仕事で家に居られないせいでルーシーに忘れられがちな父様が激怒したのだ。

こんなに激怒した父様を見たのは初めてで、思わず今世では一度も出したことの無かった悲鳴が口を突いて飛び出してしまった。

 

父様が立ち回り次第で剣神様や水神様をも倒し得る存在なのは会った時から理解していた、理解した上で、父様からは彼らのような威圧感や恐ろしさは感じていなかったからだ。

強大ではあれど山や空に人が恐怖する事は少ない、あって当然の己を取り巻く環境がいきなり牙を剥き出しにして睨みつけて来たような錯覚に襲われた私は完全に竦み上がってしまう。

 

「パパじゃないよルーシー…オルステッド様だよ。オ・ル・ス・テ・ッ・ド。」

「おーす…?オーステッ、オーステッ!」

「本当に呪いが効かないようだな、姉の方は…だめだったか…」

「ふぅ…ふぅー…あっ、大丈夫ですオルステッド様!私も怖くありません!」

「そうか、ルーデウスの子なら誰でも問題なさそうだな。」

 

一瞬森ごと吹き飛ぶ未来を幻視したものの、父様はなんとか怒りを押し殺して耐える事を選んだ。オルステッド様は私達に呪いが効かない事を確かめるとルーシーを肩車し、私を右腕に乗せて抱き上げた。

横顔を見れば人と大差ない見た目ではあるものの、銀の鱗のようなものが僅かながら浮き上がっていた。

 

(オルステッド様は意外と子供好きな方のようだ。)

 

ルーシーがオルステッド様の髪を引っ張った時は心臓が止まるかと思ったが怒る事はなく「問題ない、俺の龍聖闘気はこの程度ではビクともせん」と自信ありげに答えていた。

他者から恐れられ嫌われる呪い、それが父様やその子供に通じないのは父様が沼の神だからだろう。沼地や地中に居を構えることの多い龍神と相性がいいのも当然の帰結だ。

 

 

 

 

そうしてオルステッド様との顔合わせを終えた数日後、私の5歳を祝うパーティーが開かれた。元服までに5年ごとで行われる祝事はまつろわぬ民の七五三のようなものであり、転移災害の影響で祝えなかった事の多かった父様達はとても気合を入れて準備をしていた。

私が家に迎え入れられて初めての祝事の主役が私で、当然ながら手伝いに参加できない事で嬉しくも落ち着かない時間をルーシーと過ごした。

 

「5才の誕生日おめでとうエディト!まずはパパからだな。」

 

そう言って順番に祝いの贈り物を渡される。父様からはザノバ殿とクリフ殿と協力して作った特注のザリフの義手と義足、私がザノバ殿の手伝いをする度に義手に目を輝かせていたのを見て私専用のものを作ってくださったそうな。

エリス母様からは魔獣の皮で作った頑丈な腹帯、私が北神流を使える事もあり自分で微調整できる優れ物であった。乱暴な扱いにも耐えいざという時は鞭にもなるらしい。

シルフィ母様からは可愛らしい花柄の前掛け、ロキシー母様からは毒草の見分け方や応急処置の手順が書かれた教本をいただいた。

 

他にもノルン姉様はルイジェルド殿の真実を記した『スペルド族の冒険』の写本、アイシャさんとリーリャさんからは本の上から被せて保護する装飾(アイシャさん好みの可愛い意匠)と私専用の本棚をいただいた。

一夜にして両手で抱えきれないほどの宝物ができた私は目を白黒させながら全員にお礼を言った。

 

それから一先ずプレゼントを脇に置いて食事会が始まり、ぱえりあというこの国の酢と魚や野菜を煮た炊き込み飯に舌鼓を打つ。

その日の晩、私は部屋に所狭しと並べられた贈り物を眠りに落ちるまでうっとりとした顔で眺め続けた。

 

更に幾月か過ぎた頃にロキシー母様が臨月を迎え、難産の末に三人目の子供(今度も女の子だったので名前はララになる)が産まれた。

この子は父様の髪色を受け継がず、ロキシー母様そっくりの青髪で産まれてきた。私はロキシー母様の髪色は好きなのだが日の当たりようによっては緑に近く見えるらしく、迫害の対象の色なのだ。

これからのこの子に降り掛かるに不安を抱えながら、私はより一層修行に熱を入れた。




エディト君ちゃんは正確にルーデウスの力を理解していますがファザコンなので全く怖がっていません。
その分ルーデウスが唐突にキレると普段からは想像できないくらいビビります。
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