武士娘転生 剣の聖地にTS転生した忠犬の奮闘記   作:斑模様のキャットフィッシュ

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今回からエディト君ちゃん以外の視点も入ります。


エディト・グレイラットという幼女

───ギレーヌ視点───

 

初めてエディトを見た時、私はお嬢様が何かに呪われたのかと戦慄していた。

お嬢様がルーデウスの閨に入り旅立ちの決意を固めたあの日以来、私の剣と鼻にかけて誰にも手を出されていなかった筈だ。腕の中の赤子からだって間違いなくお嬢様とルーデウスの匂いがしていたのだ。

だというのにエディトは2人のどちらとも違う緑の髪を持って産まれてきて、私はお嬢様からエディトを隠す愚を犯しかけるほどに混乱させられた。

結局の所災害に遭ってからの3年間緑髪のスペルド族と旅をしていたお嬢様は特段気にする事なく愛情を注ぎ、乳母を雇えないからと修業中の世話は私に任せた事で最初の混乱は乗り越えたが其処からが本当の苦難の始まりだった。

 

最初の一年は子育てをした事など全くない私が何度もエディトを危険に晒し、夜中でも構わず剣帝や師匠(剣の聖地とは言え緑髪の赤子を助ける余裕があるのは彼らくらいだった)を叩き起こしては助けを求めて袋叩きにされた。

ハッキリと目が開いて首が据わってからはエディトはとんでもない癇癪を起こし、何が怖かったのか私達や周りのものを見る度に泣き叫んで暴れに暴れる日々。

 

2歳も半ばになって漸く落ち着いたエディトは髪は緑とは言えゼニスの代から続くアンテナのような髪とパウロから続く左目の泣き黒子、きりりと鋭い目つきに力強く固い面持ちの正しくお嬢様とルーデウスの娘と言える姿に成長していた。

剣に興味を示しあちこち走り回り貪欲に言葉を覚える姿も2人にそっくりで、私は緑髪の事など頭から抜け落ちて考え無しに外を出歩かせてしまった。そのせいでエディトは深く心に傷を負ったのだろう。

 

すっかり意気消沈したエディトは滅多な事では笑う事もなく、しきりに自分を忌子や産まれ損ないと呼んで謝るような子になってしまった。

何度ルーデウスに手紙を出して助けを求めそうになったか分からない、魔術の弟子でもあったという幼馴染や2人の妹を同時に見ていたルーデウスの偉大さを改めて思い知らされる気分だった。

 

それでもエディトは強く芯のある子供だった、お嬢様の話をよく聞き理解して父に会えない寂しさに怒る事もなく自分も強くなろうと鍛錬に励む姿に私は何度も胸を打たれた。

その頃には水神の娘やニナに影響されてお嬢様も女らしさを取り戻し、お嬢様の娘という事で興味を持った師匠や水神もエディトを見てくれるようになった。

 

エディトは抜群に目がいい、あの歳で師匠や水神の強さを理解して怯えて泣き出すこともなく礼を尽くせるのは天賦の才と言えるだろう。

師匠曰く、合理を理解し合理に沿って動ける事は剣神流にとって大きな素質の一つである。

 

 

『あいつは素質もあるし目もいいがワガママってもんがカケラもねぇ、水神に弟子入りさせて徹底的に我慢をさせ続けろ。

受け流さずにずっと我慢できちまう奴はいつか絶対に自分を爆発させる、そうなったら俺様が剣神流の合理を叩き込み直してやるよ。』

 

『この子は相手を見る目にかけては天才的だね、3つとは思えないくらい我慢強くて確かに水神流に向いてるよ。丁度よく受け流す術を身に付ければ大きく化けるだろうね。』

 

『あの子は素直すぎるなギレーヌ殿、剣に対しても強い拘りを持っていて某のような奇抜派の剣は身に付かぬだろう。

幸い此処以上に師匠に恵まれた場所もない、正道の剣を極めさせるが良い。』

 

 

 

剣神である師匠、水神レイダ、北帝オーベール、三者三様の達人達も結論は違えどエディトの才能には太鼓判を押している。

剣神流初級の認可を持つ土台もあってか、水神に師事してからものの一月で水神流初級の認可が降りた。

魔術だけは成果が芳しくないが直にお嬢様の修業も終わりルーデウスに会えるのだから心配は無いだろう、毎日詠唱を続けたおかげで舌足らずだった喋り方は流暢なものになったし完全な無駄ではなかったと思いたい。

 

 

「お前の娘は立派に育っているぞルーデウス。」

 

 

フィリップ様とヒルダ様は間に合わなかった、サウロス様は私に手が出せるようなものではなく領地や家を守ることもできなかった。

しかしそれでも私にはお嬢様がいる、お嬢様とルーデウスの娘であるエディトの成長をこうして見守っていられる。

私は十分報われているだろう、後はお嬢様とエディトをルーデウスの元に送り届けるだけだ。

 

 

「そうして全ての役目を終えた時は…サウロス様達の仇、疑わしき輩は皆殺しだ。」

 

 

牙を研ぎ続ける狂犬の傍らで、親猫は牙を隠し続ける。

鈍る事のない殺意が守るべき子達を傷つけぬよう、決して主人の仇を逃さぬよう、いつか仇討ちを果たすその時まで敵の矛先が子供達に向けられぬよう。




なんだかんだ言ってるけどガル坊は自分を見ても泣かない子供を気に入ってるのが本音です。
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