「生....先生っ!!」
「...!!ここは...」
ヨミ先生の眼前に晴れ晴れとした青空が広がる
「大丈夫ですか!!先生!!」
「アロナ...」
目の前の存在にヨミ先生は今、自分がシッテムの箱の
中にいることを理解した
「...私は大丈夫だけど...一体何があったの?」
「古聖堂が爆破されて...なんとか先生を守ろうとしたのですが...
これ以上は.....しっかり力が....」
「アロナ...」
ヨミ先生の視界が明転し、目が覚めると...
爆心地に近い最前列。ひっくり返された執務机の影で、ヨミ先生は意識を浮上させた。
鼓膜を突き破らんばかりの耳鳴りが、次第に現実の音を連れてくる。それは、少女たちの悲鳴ですらなく、火炎が酸素を喰らう「ゴウッ」という低い唸りと、崩落した建築材が不規則に砕け散る乾いた音だった。
ヨミ先生は、灰を被った手で瓦礫を掴み、痛みに耐えながら身を乗り出す。
視界に入ったのは、己を囲むかのように立ちはだかる無機質なガスマスクの集団。
ヨミ先生の思考は、理解を拒絶した。
数時間前まで、自分はシャーレで彼女たちの「青春」を願っていたはずだった。エデン条約という、拙いながらも美しいはずの合意を、命がけで支えようとしていたはずだった。
「......あ、....ぁ.....」
喉が、張り付いたように音を拒む。
視線を巡らせれば、動かない「生徒だったもの」が、瓦礫の隙間から無造作に突き出している。
「......嘘。....嘘だよ、みんな。....どうして」
絞り出した声は、爆音に掻き消されるほどに細い。
ヨミの瞳に映るのは、正義でも悪でもない。ただ、自分が愛し、守るべきだと誓った「日常」が、救いようのない塵へと成り果てた、圧倒的な確定事項としての地獄だった。
「....サクラコ...?....ヒナタ....? ....だれ、か.....だれか、こたえて....」
無意識に一歩、踏み出そうとした足が、血に濡れた瓦礫に滑る。
その拍子に、彼女の耳の奥で、またしても夢の中で聞いたものと同じ声の「囁き」が再び反響した。
痛いだろう? 怖いだろう? 汝一人の肩で、そのすべての命を背負い切れると思っているのか?
ヨミ先生の視界が、急激に色彩を失い濁り始める。
彼女が守りたかった世界は愛した世界は、今まさに彼女の目の前で、あまりにも淡々と、完璧に破壊し尽くされていた。
もはやそこに青春の物語の面影はなく、ねじれ歪み、滅びへと一直線に進んで行く地獄がそこにはあった。