滅びた世界のアフランシ   作:翔々

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いまでも蒼は澄んでいる(物理的に)

 

 

 ネバダ州南部・ラスベガス。モハーヴェ砂漠に誕生した、アメリカでもっとも乾いた都市。

 

 分室から南東105kmに位置するこの都市は、かつて「眠らない街」と称されたギャンブルの繁華街である。旧西暦時代にはゴールドラッシュによる鉱業で栄えていたが、20世紀の大恐慌をきっかけにカジノ産業へと転換。税制の優遇によって大企業を誘致し、あらゆる快楽を提供する秘密のサロンとして富裕層を掴んだことで、アメリカを代表する都市に成り上がった。

 

 新西暦においてもそれは変わらなかったが、一年戦争から立て続けの侵略による治安悪化を受けて裏社会の勢力が活発化。さらにはバルマー戦役でのバイストン・ウェル勢力出現がきっかけとなり、都市そのものに自衛手段が必要であるとの声が高まる。

 

 結果、ラスベガスは戦役中に勢力を拡大。アナハイムを含めた出資企業とのコネクションを活用してモビルスーツを運用し、旧ジオン軍人や科学者、さらには地球人に擬態する異星人などの駆け込み寺となった。

 

 重力波襲来で世界が混乱に陥った中でも、独自に開発したドーム型のシールドを展開して壊滅をまぬがれると、放射線の除去が済むまで外部からの隔絶を実行。以来、フォーリナーの襲撃を撃退し続けている。

 

 ───12004によるインディアン・スプリングス地域解放から数日後、ラスベガスと外界を繋ぐゲートが開かれ、数台の武装キャリアーが走り出す。

 

 目的地は、北。

 

 

 

 

 

「わーい、プールだー! すっごく気持ちいい!!」

「プル・オルタ、飛び込みは腹を打つからやめ……ムーンサルトだと!? プロフェッサーめ、いったい何を見せたらこうなる!!」

 

 水棲生物の実験設備を利用した大浴槽にぷかぷかと浮いていた12004に、南斗水鳥拳じみた跳躍から華麗なボディプレスを決めたプル・オルタが楽しそうに笑う。どちらも強化人間なのでダメージはない。痛いものは痛いが。

 

 壁面モニターに映るプロフェッサーが、旧時代のDVDディスクを取り出して見せる。

 

『君がシャイニングウィザードなんて披露したからだろう、帰ってくるまでに旧世紀のプロレス名試合百選を熱心に見ていたぞ』

 

「……私か? 私のせいなのか?」

「ゼロヨンもあそぼー! あたし、ルチャもやってみたい!」

「いかん、思考が白兵戦に傾き過ぎている気が……ええい、肩紐がほどけてしまっているではないか! 直してやるから止まるんだ! おやつにパンケーキを作るから!」

「はぁーい」

 

 事情を知らない者が見れば、外見年齢15歳の兄が10歳未満の妹の面倒を見るような、世界崩壊前ならありふれた光景。実際にはどちらもカプセルから目覚めて十日前後の赤ちゃんである。

 

 

 

 

 やや細見ながら、トラックの衝突にも耐えられる頑健な両肩に掴まったまま、プル・オルタは笑顔を絶やさない。

 

(ゼロヨンはやさしいな! あったかくてポカポカする!)

 

 少女は自らのルーツを理解している。カプセルから助け出されて間もなく、自分の姉達だと名乗る魂だけの存在と何度も交流したからだ。

 

 彼女達は、この世界のものではないと告げた。幾つもの世界、幾つものifの中で生まれ、戦い、そして死んでいった、平和にたどり着くための犠牲。肉体という鎖から解き放たれ、魂だけの存在となって、ようやく彼女達は自由を手に入れたのだという。

 

『……色んな世界を渡ってきたが、ここは最悪だな。気色の悪い虫の大群に襲われるなんて冗談じゃない。それも歩兵として戦えだって? 私達に期待されたのはパイロットとしての活躍だろう』

『ねー。"私"も大変だなぁ』

「そうなの? あんまり気にならないけど」

 

 12004がインディアン・スプリングスに遠征中、プル・オルタは分室に迫る巨大生物達を一体も残さずに駆除した。彼女が得意とするのは地に足をつけて戦うレンジャーではなく、縦横無尽に空を駆けるウィングダイバーである。地上に配置したセントリーガンを活かしての空陸コンビネーションは、防衛戦においては12004単騎以上の戦力となる。

 

 今回のご褒美として、いつものシャワーではなくプール遊びをやってもいいと許可が出たので、プル・オルタも張り切ってこなした。放置すれば地表を汚染してしまう巨大生物の死骸は、プロフェッサー発明のハーベスター・システムによってみるみる内に分解され、原子データとして変換される。大量の水を作るのにどれくらい消費するのか、彼女にはまったく想像がつかない。

 

『……ね、"私"? あなたのお兄ちゃんから、絶対に離れちゃダメだよ』

『妙な魂が混ざっているが、むしろそれが良いのかもしれない。きっと最後までお前を守ってくれるさ。だから、お前もあいつを守ってやるんだぞ?』

「もっちろん!」

 

 崩落によって稼働を止めたカプセルの中から、おっかなびっくり抱き上げてくれた。男の瞳はどこまでも続く空のように青く澄んで、あるいは宇宙に輝く星々のように蒼くきらめいて、会ったこともない父母の温かみを感じさせてくれた。

 

 離れたいなんて思わない。思うわけがない。

 

 あの日、あの時、あの場所で、自分を見つけてくれた彗星の光を、プル・オルタナティブは生涯忘れることはないのだ。

 

 

 

 

408:転生すれば名無し

薄々わかってたんやけども

 

 

409:転生すれば名無し

はい

 

 

410:転生すれば名無し

うす……

 

 

411:転生すれば名無し

『きゃーっ、オルタって大胆!』

『よ、嫁入り前だぞ……破廉恥過ぎないか?』

『姉さん達、あまり見ないであげたほうが……』

 

 

412:転生すれば名無し

いるよな!? うっすらと! ちっちゃい子達が!!

 

 

413:転生すれば名無し

プルとプルツー、あとはマリーダさん……ですかね……

 

 

414:転生すれば名無し

他にもいるっぽいけど、目立つのはこの三人やな

 

 

415:転生すれば名無し

ガンダムもスパロボもオカルトが当たり前やからなぁ

いても不思議じゃないやろ

 

 

416:転生すれば名無し

12004「ほら、次はバタ足の練習だ。両手を持っているからな」

 

あいつはあいつで無視しとるのは何でや

 

 

417:転生すれば名無し

ニュータイプ感覚をカットできるようになったらしい

要するに面倒事を回避する処世術やな

 

 

418:転生すれば名無し

「見なかったことにしよう」は宇宙世紀の必須技能だった……?

 

 

 

 

 

☆人物・舞台説明

 

 

〇12004

 

 霊達の存在には気づいている。が、相手をしたら面倒なのがわかりきっているのでフィルターを掛けた。無視されてムカついたプルのあっかんべーが炸裂するまで残り5秒。12004は耐えた。

 

 

〇プル・オルタ

 

 思った以上に焦げ付いていた。魂に焼き付いた記憶はどこまでも鮮明で、インプリンティングにしては重すぎる。別世界の姉達との交流でニュータイプ感覚が日々研ぎ澄まされていくが、12004による適度なストレス発散(スキンシップ、おやつ、ボードゲーム)によってデトックスが働く。

 

 

〇プロフェッサー

 

 連日のように拠点内の計器が謎エラーを起こしたり、監視カメラに人魂っぽいオーラが映ったりするのを「そういうこともあるさ」と笑って見逃す大らかなAI。人間(機械)が出来すぎている。

 

 

 

おしまい

 

 

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