入学式の後日、二人の入部届は思っていたよりもあっさり承認された。受け取った生徒会の人曰く、
「部員が誰もいなかったから、扱いに困ってたの。正直に言うと助かるわ。」
だそうだ。まあ、廃部にならなかっただけいいんじゃないか?
というわけで、早速部室まで案内されたわけだが。
「「…」」
物置だった。そこにあるのは物置だった。
「…なんだこれ…。物多過ぎだろ。」
「…なんで、こんなに物が…」
所狭しと並べられた段ボール、そして雑多に置かれた…雑貨?。とにかく、物が多すぎる。足の踏み場もない。先に進むには足で蹴飛ばしていくしかない。はっきり言えばゴミ屋敷だ。
「…とりあえず、片付けるか。こんなんじゃ部活もできない。」
「…そうだね。」
そうして、新生ゲーム開発部の最初の活動は、部室の掃除に決定した。
とりあえず、向かいの廊下の一角を借り、いるものといらないもの、または保留にするものを分けるエリアを作った。
「一つずつ中身を見ていこう。もしかしたら…ほんとにもしかしたら、大事なものとか入ってるかもしれない。」
「うん。わかった…」
やたらギチギチに詰められた中から一つのダンボールを引き抜き、中身を開封する。取り出しにくいならもはや物置ですらないだろ。
「…これは、ゲームソフト?」
一個の缶の中身を見ると、ゲームソフトが雑多に入れられていた。
「10年前のハードの奴だ。懐かしい。保管方法には…いささか疑問が残るが。」
「…これは、いるものでいいよね?」
「ああ、置いといてくれ。」
ユズが置いたのを確認すると、また別の袋の中身を確認する。結構重い。
「…これは…コードだと思うけど…」
「肝心の差すものがない。とりあえず、保留でいいか。」
「うん。持ってくね…」
そう言ってユズは軽々持ち上げる。無事保留のところに置いてくれた。
「ありがと」
「うん」
「じゃあ、次はこいつだな」
こんな感じで、次々と掃除を続けていった。
「固っ…開かない…」
「か、貸して…んっ!……開かない…」
「…とりあえず、保留にしとくか。」
「…うん」
「…なんだこれ…」
「…変なおもちゃがたくさん入ってる…」
「…これは…やめとくか…」
「…だね。」
私、花岡ユズは焦っていた。
部室が、こんなんだと思わなかったからだ。
見よ、いらないものエリアに積み上げられた雑貨たちを。初めこそ必要そうなものがたくさん出てきたものの、喜びも一潮。
見よ、いらないもののエリアに積み上げられた雑貨…はっきり言えば、ゴミ…!
こんなんでいいのだろうか。先代のゲーム開発部は何をしていたのだろうか。私たちはこんな部活に入っていていいのだろうか。そして、
桜くんは、ゲーム開発部がいやになっていないだろうか。
「…おい。おい、ユズ。」
「…え、あ、うん!」
話しかけられていることに気づかなかった…!ぼーっとしすぎていたかも…!
「大丈夫か?ぼーっとしてたが…」
「う、うん。全然大丈夫。つ、続けよ…?」
「…ちょっと休憩するか。流石に疲れただろ。」
「え?いや、全然…」
「まだまだあるんだし、休憩しないと持たないぞ。」
「…わ、わかった…」
そう言って、2人は椅子に腰掛ける。
「…それで?ユズは何が気になってるんだ?」
「…うぇっ!?」
「気づかないとでも思ったか?あんだけぼーっとされたら…流石に気づくぞ。」
「…そんなにぼーっとしてた?」
「ああ」
「…ちょっと、怖くなっちゃって…」
「…部活がか?」
「それもあるけど…もっと、色んなこと…」
「…俺だって怖いよ。部活の先輩もいないし、何から始めればいいのかもわからん。」
「…桜くんも、怖いんだね。」
「そりゃそうだろ。何かを始めるのを恐れないのは、何も考えてない一直線のバカくらいだ。」
「…」
「ユズがそんなに不安になってるのは、部活のことをそれだけ考えてくれてるんだろ?」
「…うん」
「ありがと。でも、俺たちは1人じゃないんだからさ。共有しようよ、不安なことも辛いこともめんどくさいことも。愚痴だって言っていいよ。文句もどんどん言ってこうぜ。な?」
「…うん。わかった…」
「よし、休憩終わり!どんどんやって、めんどくさいことは終わらせようぜ」
「…うん!」
そう言って、桜くんは山積みのダンボールを開ける。
「…おい、ユズ。見て見て。」
「な、なに…?」
言われるがまま中身を見ると。
「パソコン、あった。スペックも良さそうだぞ。」
「…いいこと、あったね。」