「ゲームを作る」
部室でユズと向き合って一言、桜が発言する。
入学から三週間が経過し、各々が学校で何をするべきなのかを把握してきたころ。荷物の仕分けはもちろん終わって、部室の片付けも終わった。部屋のレイアウトは話し合ったが、ゲーム開発のための機材があまりないことを理由に、部屋の片隅に机とハードウェア。ゲームプレイ用のスペースでノートパソコンを使うことになった。
閑話休題。
桜とユズは部室で向かい合って話し合っていた。
「ゲーム開発部として活動を初めて一か月。ここまで2人で部室にあった積みゲーを解消しかしてない。」
「…そ、それと格ゲーもたくさんやったよね…。レースゲームもいくつかやったし…」
「…だな。よってこのままだとただのゲーム同好会になってしまう。…それは嫌、なのでゲームを作ります。」
こうして、ゲーム開発部は初のゲーム開発を始めた。
「…まずは、ゲームの方向性から決めるか。…すでに結構絞られてるが。」
「グラフィックと、シナリオライターがいないから、RPG系のゲームはまだ難しい、よね…。」
「何せ部員が二人だからな。できることは限られてる。」
トレーニング部でももっと部員がいる。
「…でも、できることがないわけじゃない。」
そう言うと部室の隅からホワイトボードを引っ張り出す。ホワイトボードマーカーを一つユズに手渡しし、
「…パズルゲームなら、そこまでグラフィックに左右されないし。アクションゲームとかに比べても、コードの量が少なくすむと思う。」
「たしかに」
「あと、俺たちは商業目的でやってないから、プレイ中の広告をゼロにできる。」
これは結構デカい。広告だらけで疲弊した現代人の心にスッと響くはずだ。
「…よし。なんとなく見えてきた気がする。これからドンドン意見を出して、どうするか決めよう。」
「うん…」
会議は長引いた。ホワイトボードマーカーは途中からインクが出なくなったし、間食も一回か二回くらい挟んだ。手元の機材や自分たちの技術力と相談しながら、少しずついいものにしようと擦り合わせていった。
そして
「…とりあえず、どういうものにするかは決定したな。」
「う、うん…疲れた…」
「でも、目標は定まった。実際やり始めて気づくこともあるだろうし、そこは共有しながら進めてこう。」
「うん…」
そういうと、ユズは布団に倒れ込んでしまった。目を閉じて、寝息も立て始めた。キッチリとマーカーに蓋をしているところが、彼女の真面目さを物語っている。
「…無理させちゃったな。ごめんユズ。ゆっくり寝てくれ。俺も…すぐ寝る、から…」
臨戦ユズかわいい。