魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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14-2.最強vs最優

 ☆

 

「『影獄域(シェオル)』」

 

 クァトランがつい、とその場で爪を動かすと、遠く離れた位置にいたプレシャスの眼前で、鋭い三日月型の黒い刃が生じる。つい、つい、つい、と、まるで遠くに居る相手を軽く引っ掻いているような仕草だが、その向こう側で生じる破壊の規模はそんな生易しいものじゃない。

 

 プレシャスは《桜花の剣(アンルージュ)》で受け止め、避けて、時に《魔弾》を放って相殺するが、発生速度と威力が尋常じゃない。

 

 一度放たれた〝引っかき傷〟が、その場に残り続けているのだ。ラミアは固有魔法(オリジン)で以て空間に斬撃を残すが、クァトランはそれを異常なまでの出力と容量で、遠く離れた場所で強引に行っている。

 

「『暗獄門(エレボス)』」

 

 プレシャスが相殺しきれなかった〝引っかき傷〟が、その場で暴れ狂うように動き回り始めた。四方八方から襲い来る黒い斬撃に、対し、プレシャスは足を止め、《桜花の剣(アンルージュ)》を構え振り抜く。

 

「『桜花の剣・煌光の穿ち(アンルージュ・スフィアレイ)』!」

 

 《桜花の剣(アンルージュ)》を砲塔として、圧縮した《魔弾》を光線の様に放つプレシャスの必殺技。

 プレシャスを追尾して追いかけてきた〝引っかき傷〟をすべて巻き込む絶妙なタイミングで放たれたその先には――――。

 

「『冥獄絶(ドゥアト)』」

 

 クァトランを射線に収めている。黒く圧縮された防壁を展開。ピンクゴールドの《魔力光(エーテルライト)》とかち合い、両者共に譲らず拮抗している。

 

「はあああああああああ!」

 

 光線は《桜花の剣(アンルージュ)》から放たれ、接続されている――その為、プレシャスは更に追加で《魔力(エーテル)》を注ぎ込むことが出来る。

 更に出力を増す光に対し、クァトランは空いた片手を掲げた。

 

「『劫獄落(タルタロス)』」

 

 光を受け止めていた『冥獄絶(ドゥアト)』の面積が一気に膨れ上がり、プレシャスが放つ光線を更に上から包み込むような筒状に変化して、プレシャスに向かって放たれた。

 

「わぁ!」

 

 慌てて飛び退くプレシャス、光の放出が止まると同時に、クァトランは一歩前に出た。

 踏み込みでリングを構築する石材が砕け割れ、ゴムで弾かれた様に勢いよくプレシャス目掛けて突っ込んでいく。

 

「『裁獄罪(ジュデッカ)』」

 

 片手に《魔力(エーテル)》を圧縮して作った黒く薄い刃を作り出し、斬りかかる。

 

「凄いね、近距離戦も出来るの!?」

「なんでできねーと思ったわけ?」

 

 ――――斬る、受ける、弾く、捌く。避ける。交わす。打ち合い、また跳ぶ。

 キン、キン、キン――いっそ心地よくすら聞こえてしまう、リズムの良い剣戟の音。

 二人の手の動きが見えない――剣技を極めたプレシャスのそれは当然として、クァトランがあんなに剣を使えるなんて思ってなかった。

 

 遠目から見る限りは、ほぼ互角だった。お互いが攻めきれず、守りきれず、やがてどちらからともなく、より深く一歩踏み込んで――――。

 

「!」

 

 ブシュ、と防御を貫いて、クァトランの腕から血が吹き上がった。

 クァトランが――――負傷した。

 

「――――はぁああああ!」

 

 その隙を見逃すプレシャスじゃない、返す刃で切り上げる動作に、とうとうクァトランの方が退いた。

 

「……いまのを避けるんだ、ほんとすごいね、キミ」

 

 ダメージを与えたのはプレシャスの方なのに、驚いているのは彼女の方に見える。

 クァトランは流れた血を軽く舌で舐め取って、ふん、と鼻を鳴らし、

 

「何発かはあたったはずなのよね……」

「うん、結構痛かったよ」

 

 クァトランが、恐らく本気で固めた《魔力(エーテル)》の刃を受けて、痛かったで済むはずがない。

 何より当人がそれを感じているらしく、なるほどね、と呟いた。

理想のアンタ(、、、、、、)を揺るがせない限り、致命打にはならないわけだ」

 

 そう、それがプレシャス・プリンセスの《理想の私になる魔法(プレシャス・マジック)》。

 本来であればピンクゴールドは、比較的薄い色(パステルカラー)に該当する色だ。何よりも濃厚な黒い《魔力(エーテル)》と打ち合って、侵食されない道理はない。

 

 けれど、プレシャス・プリンセスが胸に掲げる理想がある限り、誰もその色彩を濁す事はできない。

 どんな攻撃を受けても退かず、どんな危機も乗り越えて、どんな敵でも絶対に勝つ。

 

 掲げる理想を体現するこの魔法は、プレシャスが重ねてきた数々の戦歴を以て、無敵の魔法に昇華されたのだ。

 

 経験と実績、周囲の期待というプレッシャー、それら全てを背負って立って、最前線に立ち続けた自負。他者が自分に見出す理想すら、プレシャスは己のものにしている。

 

「そういうことっ!」

 

 ……ここに来て、いや、このレベルの極限だからこそ、固有魔法(オリジン)の性質の差が響くのか。

 

 クァトランの《悪魔を支配する魔法(クァトラン・マジック)》は、魔法少女の力の根源たる悪魔そのものの力を使う。

 

 しかしそれはあくまで燃料として《魔力(エーテル)》を組み上げたり、出力の規模に寄与するだけで…………本当に変な言い方だけど、クァトランが起こす現象はどれもこれも、『普通の延長線上』にあるものなのだ。

 

 クァトラン自身の出力と技巧と操作能力が常軌を逸しているから、とんでもないことが起こっているように見えるだけで……その証拠に、今クァトランが見せた技は、ファラフが全て、現象だけなら再現できてしまう。

 

 一方で、プレシャスの《理想の私になる魔法(プレシャス・マジック)》は一つ上の領域……概念に関わる固有魔法(オリジン)だ。

 

 魔法少女の固有魔法(オリジン)は、時に現実を超越する。

 どれだけクァトランが強くても、プレシャスの理想が揺るがない限り――――。

 

「勝てない……?」

 

 空想しなかったことがないわけじゃない、最強(クァトラン)最優(プレシャス)ってどっちが強いんだろう、と考えたことは、当然ある。

 

 だけど、実際にその結果が見えそうになると……クァトランが、負けるかも知れない、と思ってしまうと。

 友達と憧れ、どっちを応援すれば良いんだろう。

 

 どっちに勝ってほしいんだろう。

 

「リーンっち! 見ろって!」

「痛ぇっ!」

 

 クローネが、私の背中をばしんと叩いた。

 満月のような黄色い瞳を、キラキラに輝かせて、クローネは笑いながらいう。

 

「お嬢、すっげー楽しそうじゃん! まだなんかやらかすって!」

 

 …………ああ、そっか。

 疑問に思う時点で決まってるんだ、そんなこと。

 だって今日は『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』の決勝戦で――史上初の全種目制覇がかかってる、大一番。

 

 

 だから、足りなかったものを足そう、今までの戦いで、私たちがしてこなかったこと。

 

 

「頑張れー! クァトラン!」

 

 

 大声で声援を送る――なんて。当たり前のことなのに、そう言えば無粋すぎて、してなかった気がする。

 声が聞こえたのだと思う、ちら、とこちらに視線を向けたクァトランは、にや、と笑い。

 

「馬鹿ね」

 

 小さく呟いた。

 

「勝つわよ」

 

 そして、高く高く、右手を掲げた。

 

 

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