魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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15.致命的なるミスリード

 ☆ ホテル自室 ☆

 

 エキシビションマッチでリングが結構破壊されてしまった為、決勝開始は予定より少し長引いて、一時間半後ということになった。

 

 メアに連絡を取ると、レイと一緒にホテルの部屋に戻ったというので、私も皆に一言告げて、一旦自室へと戻ることにした。

 

「メアー、いるー?」

 

 扉を開けると、ベッドに腰掛けて肩を落としたレイと、その隣に座るメアが居た。

 

「リーンちゃん……」

 

 ……うーん、なんて言ったらいいんだろう。

 シャクティーバの物言いは腹が立つ。今でも思い出すと怒りが湧いてくる。

 でも、決勝の相手はあのクァトランだ。気持ちいいぐらいボコボコにしてくれるはずだ。

 

 なんて、この時まで、私は思っていた。

 

「これ……」

 

 メアが取り出したのは、ハンカチに包まれて、折れたタッチペンだった。

 カラスの意匠をかたどったお気に入り。魔法の杖としても愛用していて、常に持ち歩いている。――――かつてレイの《使い魔(マスコット)》だったというカラスのクロウの話を聞いた私とメアで作った、いつかの誕生日のプレゼント。

 

 

『というか、まだそのタッチペン使ってるの? いい加減買い替えたら?』

『嫌ですよ、わたしはこれがいーんです、これ以外使いません』

 

 

 『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』の前に、寮の部屋で交わした会話。

 

「あ、あいつ、踏んづけたんです」

 

 レイがか細い、小さな声で、呻くように言った。

 

「戦いが終わったあと、拾おうとしたら、わざわざ、戻ってきて」

 

 私は、それを見てなかった、見えなかった。気づかなかった。

 

「ゴ、ゴミみたいに、ふ、二人が、くれたのに……わ、わたしの」

 

 そんな大事なものなら、試合の場に持ち込むなよ、と。

 それが正論だと思う、正しい意見だと思う。

 

 子供が作ったから不格好だし、古いし、価値なんてないんだろう。

 砕かれてしまった聖剣となんて、比較する意味すら無いんだろう。

 

 だけど、個人が何に価値を見出すかは、個人の勝手だし。

 わざわざ踏みにじっていい理由が、どこにあるんだろう。

 

「わ、わたし、間違ってるんで、しょーか」

 

 小さい肩が震えていた。ひく、と喉が鳴る声が聞こえた。

 

「ま、負けたのは、いいです。わたしが、弱かったんです、図に乗って、行けるって思って、調子にのった、わたしが、悪いんです」

 

 そんなことない、なんて口が裂けても言わない。

 勝負の世界だから、勝ち負けがあって、強弱がある。それは事実で、結果が出たんだから、仕方ないことだ。究極的にはトーナメントなんて、最後に勝った一人以外は、全員が負けて、悔しい思いをするものだから。

 

 《個人戦(スターダスト)》でレイと戦って、『心音天使(カデンツ)』を受けてなすすべなく敗退した魔法少女たちだって同じことだ。

 悔しかっただろうし、辛かっただろう、だから(、、、)それは、レイ本人が背負うべきものだ。

 

「わ、わたし……自分で、言っちゃった、んです。勝ったほうが、正しい、って、だから、わたし、わたしは…………わたしが、負けたから」

 

 だけど(、、、)

 レイは立ち上がった、立ち上がって、私にすがった。細い腕で、震える声で。

 

 

「ねえ、リーンちゃん、わ、わたしが負けちゃったから、学校、なくなっちゃうのかな、ハ、ハルミ先生、死んじゃうのかなぁっ!」

 

 

 …………ああ、くそ。私は馬鹿だ、メアに任せてないで、真っ先にこっちにくればよかった。

 

「……させないよ」

「……えっ」

 

 私はレイの腕を掴んで、有無を言わさず引っ張った。

 

 

 

 

 ☆

 

「な、何よアンタら、どーしたのよ」

 

 私が向かったのは、二つ隣のクァトランの部屋だった。

 暴れすぎたから一度着替えると言って、一緒に戻ってきていたのだ。

 いきなりの来客に流石に戸惑っていたクァトランだったが、困ったような顔のメアと、目を腫らせたレイ、そして顔を引き締めた私を見て、おおよそのところは察してくれたらしい。

 

「あーあー、安心しなさい、あの目隠しが何企んでようと、私がボコボコにしてあげるから」

「そ、そうだよ、レイちゃん、クァトランちゃん、すごいんだよ、あの小癪な手羽先なんちゃらだって、ボコボコのバキバキのメタメタのギトギトのグチャグチャのゴキゴキのズタズタのメコメコのズガズガのドギョドギョにしてくれるよ!」

 

 ……メアもメアで憤ってはいたんだなあ、という擬音の数だった、それはともかく。

 

「いや、クァトラン、私が言いに来たのはそうじゃないんだ」

「?」

 

 これから戦う決勝の相手に負けて、泣き腫らした奴を連れてきて、他に何の用事があるというんだ……という顔だった。

まあ、そうだよな、と思う。

 

 レイですら、ぐす、とまだ鼻をすするものの、私の言いたいことがわかってないようだった。

 

「クァトラン」

「何よ」

 

 

 

 

「決勝戦、私と代わって(、、、、、、)

 

 リザーバー枠……本戦トーナメント出場者には、非常時に備え代理選手を選出する義務がある。そして私はその枠に、名前を登録している。

 

 ……意外なことに、誰より先に反応したのはメアだった。

 

 肩をガシッと掴まれ、身体をグルンと回され、顔をぐいっと近づけて、ゴツンと角をぶつけられた、痛い。

 

「何言い出すのリーンちゃん! 何考えてるのリーンちゃん! 正気に戻ってリーンちゃん!」

「私は正気だけど……」

「リーンちゃんに正気なタイミングなんて一度としてないでしょ!」

 

 じゃあもうずっと駄目じゃんかよ。

 

「うわぁぁぁぁぁ、嫌な予感がしてたんだよぉ、部屋を出た時、目の色が急に変わってたんだもん!」

 

 この親愛なる幼馴染は、私を何だと思ってるんだ……。

 

「あー、ちょっといい? リーン。私もユメミと同じこというけど」

「あ、うん、どうぞ」

「じゃあ言うわね、結構失礼めのこと。頭大丈夫?」

「大丈夫かどうかでいうと、大丈夫じゃないかな。すげー怒ってるし」

 

 ウィッチハットを傾けて、視線を隠し、小さく息を吐きだして、私は言った。

 

「でも、本気かどうかで言うと本気。私は間違ってた」

「間違い?」

「あのシャクティーバとかいう奴とは、あの時、あの瞬間、あの場で決着をつけなきゃ駄目だったんだ。ハルミ先生を死刑にして、クロムローム魔法学園を解体するなんて言い出した時点で、私は怒らなきゃいけなかった」

「………………待ちなさい、まずその話が初耳なんだけど」

 

 メアは恐らく慰めモードの時にレイから聞いていると思うけど……初遭遇の時の状況も加味して、私はクァトランに説明した。

 しばらく真剣にきいていたが、やがてぼそっと。

 

「じゃあ余計、アンタが戦うわけにはいかないじゃない。アレ(、、)、強いわよ」

 

 もちろん、私ほどじゃないけどね、と添えた。

 

「そうかも知れないけど、そういう問題じゃないんだよ」

 

 驚くほど怒っていて、驚くほど冷静な自分が、命知らずの言葉を、次々垂れ流す。

 

「家族を殺すと言われて、大事な物を踏みにじった。アイツは、私の家族を晒し者にした」

 

 私が戦う動機なんて、それ以外にない、それだけで十分。

 

「だから、私がやらなきゃいけないんだ」

 

 身の程知らずな話だけど、そう、これは……。

 

「プライドの問題なんだよ、クァトラン」

「プライド、ねぇ」

 

 目を閉じて、言葉を反芻し、とんとん、と指先でこめかみを叩き始めるクァトラン。

 なるべく暴力を使わず、この場を収める方法を考えてくれているのだろうな、と思う。

 だから、私に食って掛かってきたのは、クァトランじゃなくて……レイだった。

 

「誰が…………誰がそんな事、頼んだんですかぁ!」

 

 ある程度泣いて冷静になったのかも知れないし、私がとんでもないことを言い出して、冷水をぶっかけられた気持ちになったのかも知れない。

 そりゃ、不安をぶつけはしたが、まさか私が戦うと言い出すなんて思ってなかったはずだ。

 

「自分の弱さを知らないんですか!? わたしが奥の手まで使って手も足も出なかった奴に、どうやったらリーンちゃんが勝てるってんですか!」

 

 一分の隙もないド正論だ、レイの言っていることはすべて正しい。

 

「あなたは……あなたは、一人じゃ戦えない魔法少女でしょーが!」

 

 全く以てその通り、役に立てるかどうかで言えば、《集団戦(マギアパーティ)》でやっとトントン。

 だけど、だけどさ。

 

「正しいってなんだろう、レイ」

「…………わかんないですよ、もう、そんなの!」

「私はさ、正しさって、理由だと思うんだよ」

「理由?」

 

 問うたのは、メアだった。

 

「そう、自分が何かをするための理由の事を、人間は正しさって呼ぶんだと思う。誰だって、間違ったことはしたくないから、そこに自分なりの折り合いが必要なんだって」

 

 シャクティーバが言ってる正しさは、自分ひとりの正しさだ。

 だけど、彼女のカリスマに惹かれて人が集まって、一人が思う正しさが、共有されてしまった。集団が共有する正しさは、あっという間に大義名分になっていく。

 

「人に突きつけるものじゃなくて、自分のための指標のはずなんだ。自分にとっては正しくて、誰かにとっては間違ってるんだよ。そんなものを高く掲げて、正しい魔法少女なんてのたまって、私の家族を傷つけた」

 

 だから――――。

 

「誰かにやってもらうんじゃなくて、私が戦わなきゃいけないんだ」

 

 最初から、シャクティーバ・シュラクシャリアは、私にとっての敵だった。

 それに気づくのが……遅かった、それが、私の失敗。

 

「……二つ、問題があるわね」

 

 大人しく話を聞いてくれていたクァトランは、指を一本立てた。

 

「一つ、アンタ、アレにどうやって勝つつもり? 勝てなくても挑むんだ、みたいなのは無しよ。勝てなかったら私がアンタを殺す」

 

 それはそうだ、わざわざ打てない代打に変わるエースバッターはいないだろう。

 

「二つ、私をどうやって納得させるつもり? 私ははっきり言うわよ。気持ちはわかったけど、私に任せなさい。代わりにボコボコのバキバキのメタメタのギトギトのグチャグチャのゴキゴキのズタズタのメコメコのズガズガのドギョドギョにしといてあげるから、って」

 

 クァトラン、やっぱり記憶力いいな……実際、それが一番いい選択肢なんだろう。

 最良で、最善で、最短で、最速で、最適だ。

 だからこそ……間違った選択肢を、選びに行こう。

 

「とりあえず、二つ目に関しては大丈夫」

「はぁ?」

 

 私は努めて平静に、平坦に聞こえるように、言った。

 

「クァトランはこの後、プレシャス・プリンセスとの戦いで《魔力(エーテル)》を使い切ってしまった、っていう理由で、リザーバー出場の申請をしてくれるし、その後、私の作戦にも協力してくれる。これはもう決まってる(、、、、、、、、、、)事なんだ」

 

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