魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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サブタイトル回収


16-1.極光の大魔爛祭(マギアラフェスタ)

 ☆ 《個人戦》 決勝戦 リング ☆

 ☆ シャクティーバ・シュラクシャリア ☆

 

 正義が成される時が来た。正しい行為が報われる時が来た。

 労苦を重ね、時間をかけて、遂にここまでやってきた。

 身体にみなぎる力と想いは、この試合の為にクラスメイトや後輩たちが使ってくれと、分け与えてくれた《魔力(エーテル)》のおかげだろう。

 

 相手が誰であろうと――それがたとえ、己と相反する黒き《魔力(エーテル)》の使い手だろうと。

 最強の魔法少女であろうと、負ける気はなかった。

 むしろ、強敵であればあるほど望ましい――打ち勝ち、やり遂げ、乗り越えれば、己の正しさはより不変になる。より揺るがなくなる。

 

 魔法少女が輝く未来に、穢らわしき物は不要。

 ただ、眩いばかりの正義があればよい。

 

 ……しかし、一体いつになったら、対戦相手は姿を現すのか。

 もう時間は過ぎているはずだが……まさか、敵前逃亡?

 

 いや、アレだけの戦いができる魔法少女が、それはありえないだろう。

 珍しく困惑、というより疑問を抱いていると、会場にアナウンスが鳴り響いた。

 

 

『えー……皆様にご連絡いたします。決勝戦の出場選手が、変更になります』

 

 

「……何?」

 

 観客たちも、一様に動揺の気配を走らせた。ざわつきが伝染するノイズの様に広がっていく。

 

『エキシビションマッチでの戦闘により、クァトラン選手は《魔力(エーテル)》が枯渇、回復の目処が立たないと選手から申告があり、リザーバー制度が適用されました。よって―……』

 

 

 コツ、コツ、コツ、と、足音が聞こえた……正面から?

 いや、違う、誰もいない。

 

 

『同学年、同クラスのリザーバー登録選手、語辺リーン選手が、決勝戦を行います』

 

 

 巻き起こったのは――――ブーイングの嵐だった。

 

 それはそうだろう、会場が期待していたのは最強の魔法少女vs最高の魔法少女の、歴史に残る一戦だ。代打選手が何者であろうと、天秤の片側に乗るにはふさわしく有るまい。

 

 何より、《魔力(エーテル)》切れには見えなかった。レースの目隠しの下、シャクティーバの〝目〟には、スフィアに満ちる《魔力(エーテル)》が、たしかに映っていたはずだ。

 

 しかし――聞き覚えのない名前だった。あのクァトランのリザーバーなのだから、相応の実力があると信じたいが。

 

『お、落ち着いてください、落ち着いてください! リザーバーの語辺選手は、今『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』における《集団戦(マギアパーティ)》の優勝チームの一人で――――』

 

 ほう、なるほど、かの戦いでは、ヘクサ達は早期敗退してしまったが……。

 

 それであれば〝障害〟としての格は十分か。

 

 もっとも、観客たちにとってはそうではないのだろうが……まあ、いい。

 重要なのは、この光が示す正しい道へと歩むこと……それだけだ。

 

 喧騒が収まらぬ中、実況の声が耳を貫く。

 

『お静かに! お静かに! それでは、改めまして――第二十四回『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』、《星降る祭典(スターダスト)》決勝戦! シャクティーバ・シュラクシャリア選手vs語辺リーン選手の試合を、開始します!』

 

 ……何だと?

 

「一体、何のつもりかな?」

 

 思わず、困惑の声が出た。今、試合開始と言ったのか?

 それはおかしい……だって、シャクティーバの〝眼〟には、誰も映っていない――――。

 

 

 

 

 

「がっ!」

 

 

 

 

 

 思考がそこに及んだ瞬間、右頬に強い衝撃が走った。

 身構えもしていなかったシャクティーバは、肩から地面に倒れて、転がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ クロムローム魔法学園 観戦席 ☆

 ☆ レイヴン・グレイヴ ☆

 

 試合開始の合図と共に、語辺リーンはまっすぐ、ゆっくりと言っていい歩調でシャクティーバに近づいた。

 

 何をしてるんだ、と思ったら、なんとあろうことか、その場で大振りの拳を、思い切り顔面に叩き込んだのだ。

 

 誰もが言葉を失った、もちろん、レイヴン・グレイヴも。

 信じられなかった、でも、リーンの言う通りだった。

 

 ここに来る前の僅かな時間で、レイヴンはクァトラン、メアと共にリーンの〝作戦〟に付き合った。それはとてもじゃないほど無謀なもので、うまくいくなんて思えなくて、でも。

 

 持ち出された交換条件(、、、、)に、レイヴンは乗ってしまった。

 もとより、自分がすがってしまったから、リーンに火が着いてしまったのだ。

 ああなったら止められないことを、レイヴンは誰より知っている。

 でも、まさか本当に――――。

 

「へえ、本当にエーテル視でしか知覚できないんだ」

「やっちゃえリーンちゃん! ボコボコ! ベコベコ! バキバキ!」

 

 右隣のメアちゃんは擬音がうるさい、そして左隣には、何故かお姫様(クァトラン)が座っている。

 こちらの視線に気づいたのか、クァトランもまた、レイを見た。

 苦笑し、頬杖をついて、

 

「そんな心配そうに見てんじゃないわよ、やるときはやる奴でしょ、あいつ」

「あ、あなたに言われなくたって知ってます! わたしの方が付き合いなげーんですから!」

「はいはい、仲良しね、素敵だわ」

 

 本当にわかってるんだろうか、だが、元々の原因は、レイヴンにある。

しっかり見届けなければならない。

 

 話を戻すと、エーテル視――つまり、シャクティーバは通常の視覚ではなく、エーテルで物を判別しているのではないか、というのが、リーンの考察だった。

 

 

 

 

『シャクティーバは最初に会った時、私の方を一切見なかったんだよね』

 

 

 

 これは単にリーンを舐め腐っていただけという可能性もあるが、あの仰々しい目隠しに意味があるとすれば。

 

『私が横から口を挟んで、初めてこっちを見たんだ。最初は眼中にも入れられてなかったのかな、って思ったけど、他の試合の様子を見てると、多分違う』

 

 だからうまくいくよ、とリーンは笑っていた、そして本当に実行した。

 シャクティーバには今、リーンが見えていない。

 《魔力(エーテル)》で物を見る。それはつまり、シャクティーバの視界には《魔力光(エーテルライト)》の色彩でものが見えているということだ。

 

 であれば、透明なスフィアを持つ魔法少女は、彼女にとってどう映る?

 答えは、眼の前にあった。

 

『な、なんとなんとぉー! どういう事でしょう! 語辺リーン選手、め、滅多打ち(、、、、)です!』

 

 殴る、蹴る、ひっぱたく、とにかく考えうる暴力を思いつく限り振るっているという感じだった。立ち上がろうとする所に蹴りを叩き込み、転ばせてからぶん殴る。

 

 リーンに普通の武術の心得なんて無い。《魔力(エーテル)》を交えた魔法少女用の近接格闘術だって身につけてないはずだから、その振る舞いは不格好で、全く不慣れなものだったけど。

 

 相手からすれば――透明人間が一方的に殴りかかってきているようなものだ。

 

「っ、いい加減にしろ!」

「おっと」

 

 手に《魔力(エーテル)》を収束させ、広い範囲への光線。

 それでようやく、リーンは距離を取った。

 立ち上がったシャクティーバは、その足音を聞きつけたのか、き、と正確にリーンに狙いを定め、

 

「何者だ貴様ァ!」

 

 即座に光線を放った――そう知覚した瞬間には、もう命中している必中の《魔弾》が、都合三発。

 

 

 

 

「がっ、はっ!?」

 

 

 

 ――――シャクティーバを貫いていた(、、、、、、、、、、、、、)

 

『こ、これはどういうことでしょうか、シャクティーバ選手が放った《魔弾》が、シャクティーバ選手に跳ね返っています! 無傷、語辺選手、無傷です!』

 

 これには観客たちもざわついた、確かにシャクティーバは光を放ったのに。

 対戦相手はことごとく、その光線の前に屈してきたのに。

 

「これで打ち止め?」

 

 リーンはわざとらしく声を上げて――自分の居場所を示しながら、言った。

 

「そんなわけないよね、魔法少女の最高傑作さん」

「――――――『聖光掃射(ルミエール)』!」

 

 咆哮とともに放たれる、レイヴンを焼いた八本の光線、一斉掃射。

 対して、リーンはもう、準備を終えている。

 最初からそこに光線が来ることがわかっているかのように、そっと手を向け、

 

「『透明な烏(クリアプリズム)』」

 

 透明な《魔力》を収束させて作った――プリズム(、、、、)を向けた。

 全ての現象は、本当に全て一瞬で終わってしまうので、何をするつもりか(、、、、、、、、)を知っているレイヴンですら、目に焼き付けて、追うのがやっとだけれど――。

 

 リーンが作ったプリズムに入った光線は、それぞれが更に複数の光線となって拡散した。

 

 その先にもまた、事前に置かれたプリズムが仕込まれていて、光が飛び込む。

 

 都合八本の光線はそれぞれが八本に分岐し、それらが更に行く先に置かれたプリズムへと届き、反射と屈折を繰り返し――――シャクティーバの元へ返っていく。

 

「な――――あぁ!?」

 

 放った数の何十倍もの量になった光線に貫かれ、シャクティーバは悲鳴を隠せない。

 

「《光を支配する魔法(シャクティーバ・マジック)》っていうには、語弊があるみたいだ」

 全てを焼き払う純白の光は、透明な魔法少女をすり抜けて届かない。

 

「だって目が見えないってことは、光が見えない(、、、、、、)ってことだ。本当に純粋な光を支配できてるなら、お前は反射や屈折すらも自由に操れるはずなんだから」

 

「ぐっ――――『聖なる暁光(オーロール)』!」

 

 雨前サクラ戦で使用した、全方位に向けて放つ光波。

 

「『透明な膜(クリアヴェール)』」

 

 それすら事前に予期している様に、自らを透明な《魔力》で覆う。本来であれば紙の様に破かれて裂かれてしまうはずの魔法少女(なかみ)に届かず、表面で拡散して、散ってしまう。

 

「『焼き払う光輝(アンカンデサンス)』!」

 

 一瞬で収束した《魔力光》が、先程よりも遥かに太い光線となって放たれ――シャクティーバの魔法は、発動した時点で着弾する。だからリーンはその動作の前に、もう対策を終えている。

 

「『透明な烏(クリアプリズム)』」

 

 プリズムが太い光線を受け入れると、リーンを避けるように八つに裂けて後方へ飛んでいった。その内二本が空中に置かれたプリズムを経由して、また反射し、シャクティーバの元へ戻って来る。

 

「話を続けると――お前が知覚して支配できるのは、《魔力光》……遅い光(、、、)だけのはずだ。だからお前は自分の《魔力光》に広義の光の性質を混ぜた。それで初めて『光』をちゃんと捉えて、文字通り光速の《魔弾》を編み出した――――けど、同時に反射や屈折みたいな、普通の光に生じる性質も混ぜ込んじゃったんだよ。だから私のプリズムで、簡単に拡散できる」

 

 極端な話を言えば、全身をアルミホイルかなにかで包んでしまえば、シャクティーバの光線は中身に届かない、ということになる。現実には、熱や衝撃も生じるはずだから、リーンはもっと複雑な事をしているのだろうけれど。

 

 世界でたった一人だけ白い《魔力》に一番近しく、馴染みやすい色のスフィアを持つ――最弱の魔法少女。

 

「来いよ最高傑作――勝ったほうが正しいんだろ」

 

 それが今、最高の魔法少女を、圧倒している。

 

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