魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
☆ クロムローム魔法学園 観戦席 ☆
☆ 夢見メア ☆
リーンがその技の名を告げた瞬間。
「え――――――」
天使が足元から崩壊し始めた。
ガラスが割れるように、パリンパリンと砕け散って、光の粒になって降り注ぎ、消えていく。
何が起こったのかわからない、もう終わりだと思った、あんな切り札があるなんて!
隣で震えるレイヴンが、祈る様に手を組んだのに、そっと指を重ねることしか出来なかった。
だけど――語辺リーンは、いつだって無茶苦茶をやるのだ。
天使は、
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああ!」
真に迫る絶叫、とはこういうものを言うのだろうか。
「あああああ! ぐぁっ、がああっ! っぐ、うぁああああ! があああああ!」
天使の消滅と連動するように、右目を押さえ、悶え苦しみ叫ぶシャクティーバ。
その破片を雨のように浴びながら、静かに近づいていくリーンの姿は……いっそ幻想的ですらあった。
「まーたやりましたわねー! ホント脱帽ですわ!」
「ナ、ナハちゃん!?」
後ろからどでかい声がした。ヘクセンナハトだ。
ふんす、と腕を組み、憮然とした表情で、しかしどこか誇らしげに。
「な、何が起きたか、わかるんですか?」
「わかるもなにも、わたくしも喰らいましたわよ、あれ」
平然と言い放つので、メアも、クァトランも首を傾げた。
「『
「ああ、私がヘクセンナハトと戦った時に、手助けしてもらった」
ラミアも会話に参加してきた……《
あの時は……詠唱はなかったはずだ。
「あの使い方も十分強力ですが……このわたくしを真っ二つにするぐらい! 強力! で・す・が! 詠唱を重ね、出力を最大限まで上げたあの技は、もっと凶悪なのですわ」
ヘクセンナハトは自身の胸元にあるゴールドイエローのスフィアを撫でながら、言った。
「わたくしたち魔法少女のスフィアには個人差はあれど、出力には限界がありますわ。それを超えて力を使ってしまえば、スフィアに大きな負担がかかり、最悪割れてしまいますから」
「そうなの?」
「貴女はちょっと例外ですわー!」
クァトランに気持ちの良いツッコミを入れながら、ヘクセンナハトは続ける。
「通常、直接触れでもしない限り、他人のスフィアには干渉することは出来ませんわ。全く同じ色彩のスフィア同士であれば、《
「……《
「そう、色彩が違う《
「…………それって何か問題ある? ただ相手を回復させちゃうだけじゃない」
出力に上限という制限を感じたことがない、クァトランらしい物言いだった。
「ええ、通常でしたら。ただ――――相手がその時、スフィアがコントロールできる、限界ギリギリの許容値まで、《
《
「……相手の出力に、強制的に自分の出力を上乗せして、
ラミアが悲鳴のような声を上げた。無理もない……だって、下手すれば自分もその被害を食らう可能性があったかも知れないのだから。
「だから詠唱版と通常版でうまく使い分けているのでしょう、仲間に使う時と敵に使うときで、用途が違いますもの。ですが――――」
「ああああっ、ぐうっ! ぐぁっ! がっ! あああああああああああっ!」
シャクティーバの絶叫が続く、よく見れば――瞳に埋め込むようにして在るスフィアに微細な亀裂が入っていた。
魔法少女にとっての生命が、直接傷つけられているのだから、そりゃあ、そうだろう。
「相手が使っている技が強力であれば在るほど、《魔力》を注ぎ込んでいればいるほど、
「………………」
その場に居る(メアと、クァトランと、レイヴン以外の)全員が、深く深く沈黙した。
何が最弱の魔法少女だ。
超有害じゃねえか。
「それでもまだ
悶えるシャクティーバの前に、リーンが立った。
決着がつこうとしている。
☆ 《個人戦》 決勝戦 リング ☆
☆ 語辺リーン ☆
もう戦えないことは見てわかる、こっちも正直、ギリギリだ。
シャクティーバの出力の許容量が、思ったよりも多かった……残ってた《
敵ながら感服するよ。
三四二五〇回目で――――ようやく勝てた。
ちなみに、詠唱は一度に絞り出せる私の《魔力》の出力のリミッターを解除する為のものだったから……えっと、多分これを見てたラミアとかは凄いビビってると思うんだけど、うん、仲間に使うときはこんなにならないから安心して欲しい。
「が、ふ――――」
「ねえ、一つ聞いていい」
「が、あ…………」
「私たちはさ、間違ってるのかも知れないよ。多分、アンタほど高尚なことは考えちゃいないし、想像もしてない。魔法少女の未来じゃなくて、自分のことばっか考えてるし」
だけど。
「それでも大事なものはあるし、大事な人が居るし、大事な場所があって、大事な思い出があるんだ……お前は、それを全部踏みにじろうとした。正しさっていう、正義の名の下に」
届いてるかな、伝わってるかな、イチゴさんじゃないから、声に想いなんて乗せられない。
せめて、観客には聞こえないように、小さな声で、静かな声で。
私は、囁くように言った。
「お前――――クァトランと戦わない事になって、安心したろ」
ビク、と。
シャクティーバが震えたのは、多分、痛みだけのせいじゃないはずだ。
「クァトランとプレシャスの戦いを見て思ったはずだ。こんなの、勝てるわけ無いって――それが普通だよ、当たり前、でもお前は退けなかった。あれだけ堂々と正義を語っておいて、敵前逃亡なんてできやしない。可愛い後輩と同級生が、沢山のファンが見守ってるもんね」
「ち、違――私、私は、正しき、魔法少女の、未来を――――」
「その正しさの中に収まらない奴は消えたって構わないっていうのが、お前の正義なんだろ」
もう透明な《魔力》の膜で覆っていないから、エーテル視でも、私の姿は捉えられるはずだ。
しゃがみこんで、あたかも支えて、助けるように身体に手を回し、抱えあげて。
顔を寄せて、なるべく低い声で、私は言った。
「別にどんなお題目を掲げててもいいんだ。私に関わりがないところでやってくれるなら、止めもしないし、触りにもいかない」
だけど。
「次、私の家族をお前の底の浅い、下らない理由で踏みにじってみろ。お前の掲げる正しさを、徹底的に、否定し尽くしてやる」
「――――――――」
息を呑み、震え……頷くまでに、数十秒を要した。
「いい子だね、それじゃ、お疲れ様」
優しく微笑んで、解放した……それが、決着。
『――――そこまで! 第二十四回『
高らかに、手を挙げる。あれ……やりすぎたかな。
ここはもう、ぱぁっと歓声がわくところじゃ――――と、思った瞬間。
『語辺リーン選手……総合優勝、クロムローム魔法学園、一年、
会場が、震えた。
…………ほんと、一〇万回かからなくて、よかったね。