魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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エピローグ
18.そしてボクたちはささやかな夢を空に流れる星に願う。


 ☆

 

「え、優勝の権利、私が貰っていいの?」

「一応、優勝したのアンタってことになってるし、私は特にいらねーし」

 

 牛丼、カツ丼、親子丼を三つ並べて端から食べるという、ダイナミックな昼食を展開なさっているお姫様からそう言われて、私はうーん、と唸る羽目になった。

 

 もし私が《個人戦(スターダスト)》に出ていたら、という想定で考えると、一回戦不戦勝としても、二回戦で神門ユニィナ選手に一発ボコられて終わりのはずだし、なんていうか座りが悪いな……。

 

「なんだったら、グレイヴの願いでも叶えてあげたら? なんかあったんでしょ?」

 

 あの一件で顔見知りになったレイとクァトランは、顔を合わせれば会話するぐらいの仲にはなっていて、身内としては嬉しいことだ。

 

「うん、でも……それを私がやるのは、なんか違う気がするかな」

「あ、そう。ちなみに、どんな願いだったの?」

「あー、それはねえ」

 

 『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』の段階では、絶対に言うな、と厳命されていたのだけど。

 

 あれから二ヶ月が経過して、ひょんなことからその願いが星組の生徒にバレて、そりゃあもう大騒動になって、私も巻き込まれる羽目になって……ある程度周知の事実になってしまったので、もういいか、と思って、あっさり暴露してやることにした。

 

 

 

クラス替え(、、、、、)

 

 

 

「…………なんて?」

「だから、星組から月組に来たかったんだって。私とメアが居るから」

 

 そう、レイが望んでいたのは、クラスの移動……そりゃ魔法少女協会が一言添えてもらえば実現可能な願いではあるけれど。

 クロムローム魔法学園は生徒数減少によるクラス統合はあってもクラス替えはないから。

 

「呆れた。ちょっとアンタたちに依存しすぎじゃない?」

「それは私たちも重々承知している問題なんだけどね……」

 

 ほんと、馬鹿だな、と思う。

 別にクラスが違うところで、家族じゃなくなるわけ(、、、、、、、、、、)じゃない(、、、、)のに。

 

「ま、アンタとユメミは普段から一緒だから、余計によね。ていうか、クラスが替わるとして、代わりはどうするつもりだったのよ」

「ラミアとルーズ姫が仲悪いんだから、どっちかと交換できるんじゃないかって思ってたみたいだよ」

 

 実情を知っている私からするとそれはもう安牌じゃなくて人死にルート一直線だから絶対に選ぶべき選択肢じゃないのだけど……。

 

「あ、語辺さーん、クァトランさんもこんにちは!」

 

 そんな話をしてたら、イチゴさんがやってきた。後ろからアイミ、アトリ、ロロ。

 

「おーっほっほっほ! ごきげんようですわー!」

「うるっさいのが来たわね……」

 

 そしてナハトお嬢だ、なんだかんだこっちもクァトランと交友関係が出来たようで、時々喧嘩を挑みに来てボコられている。

 

「どーも」

 

 そして、その後ろから、レイがひょこっと姿を見せた。

 

「どったの、皆して」

「ランチボックス貰って、ピクニックですって。午後が《(ブルーム)》の実習なんで、どーせなら日当たりいいとこで食べよーって」

「へー、いいじゃん、楽しそう」

「暑くなってきたし、ちょうどいーですよ、そりゃあもう。そっちのクラスは?」

「楽しい楽しい実技実習。………………今だけこっちのクラス来てもいいぞ、レイ」

「べーっだ!」

 

 私の甘言に乗せられることなく、星組の面々は食堂のおばちゃんからランチボックスを受け取ってめいめい雑談を織り交ぜながら出ていった。

 

「だからきゅうりのサンドイッチにマヨネーズは邪道じゃねーですか」

「脂質は多ければ多いほどよくてよ!?」

「おら、ハムが食いてえ」

「追加のナゲット貰ってきたデスよー、ロロを敬った人だけに上げるデス」

「はっはっはっは! ロロ愛してる! ……ところでダヴィたちはどこだい?」

「ダウィは移動遅いから他の二人と先に行ってるってば!」

 

 

 

 

 

「……うちのクラスと比べたら、まぁ倍ぐらいは仲良さそうに見えるよね」

「ほんとーね。なんで出ていきたかったのかしら」

「気づいてなかったんだと思うよ、自分の居場所が、ちゃんとあっちにもあるってことに」

 

 何せ決勝戦前、目を腫らしたレイが観戦席にやって来た時の月組の憤り具合ときたら。

 

 ロロとグレープは珍しく大慌てだし、ダヴィニアは眉間にシワを寄せて怒り、アイミはその場で団扇であおぎはじめ、アトリは怪我がないか調べだし、ナハトお嬢は拳を壁に叩きつけて穴を開け、イチゴさんが皆を代表して怒ってた。

 

 ……《個人戦(スターダスト)》の為に頑張ってた姿も見てたんだろうし。

 

「ま、そんなわけで、これはアンタにあげる、好きにしなさい」

 

 申請書類一式が入った封筒を押し付けて、ザクザク丼を平らげてクァトランは体を伸ばしながら席を立った。

 

 中を軽く見てみると……うわ、形式が……なんかこう、すご、すごい複雑だな!

 これ、面倒くさいから押し付けられただけな気がするな……。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 で、その日の夜。

 

「なんで!? どうして!? おかしいでしょ! なんでだよぉ!?」

 

 私は猛烈な抗議をしていた。場合によっては訴訟も辞さない覚悟だった。

 

「うるせーですねー……」

「そう思うならそこをどけレイ! 今の私はお前の敵だ!」

 

 どういう状況かと言うと、メアがベッドに腰掛けて、その前に椅子に座ったレイがいて……。

 

 か、髪の毛を……髪の毛を梳いてもらっている! 私だって物凄くご機嫌取って、お願いして、肩揉み足揉み雑務の肩代わり、ついでに乳揉んでマイナス五点を喰らって、めげずに取り返してメアポイントを稼いで、月に一回ようやくやってもらえるかどうかなのに!

 

「リーンちゃんは今日はだーめ」

「なーんーでーよー!」

 

 メアは三種類の櫛を使い分けながら、丁寧にレイの髪の毛を梳いていく。

 元々癖がある上に、ニット帽を常着しているので、私だって定期的に梳かしたいとは思ってるよ! 思ってるけどさぁ!

 

「だからわたしは髪の毛いじられるの好きじゃねーんですってば……」

「そ、だからリーンちゃんが目の前で悔しがって地団駄踏むサービスを付けないと、こうやって触らせてくれないのです」

「だからって……だからって、だからってぇ……!」

 

 うおおお……絶対に許せない……凄く凄く拗ねてしまいたい気分だ……。

 仕方ない、面倒な書類作業をして気を紛らわそう……封筒から例の諸々を取り出して机に向かって書き物を始める私、悲しすぎる。

 

「あれ、リーンちゃん、それなんの書類です? 提出物でもあるんですか?」

「《個人戦(スターダスト)》の優勝特典だよ、クァトランがくれた」

「ええっ!?」「はぁっ!?」

 

 二人して驚きの声をあげる……が、くく、梳かし作業中は動けまい。気になるだけ気になり続けるがいい……! と若干魔王的なことを考えながら、私はペンを走らせる。

 

「えっ、えっ、何頼むのリーンちゃん! エルバニアファミリー森の大きなお家の緑色の屋根セットとかにしようよ!」

「お店で買いなさいよそれは!」

「じゃあ、レイちゃんのお願い叶えてもらう?」

 

 メアがきょとんと首を傾げて尋ねた。

 

「う……いや、それは、その」

 

 問われて、レイは口ごもる。

 大前提として私が叶えたい願いを叶えさせてもらうという選択肢がメアの中にないのはどういうことなんだ、育て方を間違えたか?

 

 思考が顔に出ていたのか、メアはだって、と何も言ってないのに枕詞をつけた。

 

「ボクたちに相談したくないなら、わざわざここで書かないでしょ」

「…………はい、その通りです」

 

 私が夢見メアに勝てる所なんて、何一つ無いのでした。

 

「まー、卒業後に一軒家をもらうとかでもいいかな、って思ったんだけど」

「わ、それ凄くいい!」

 

 メアがぱぁ、と顔をほころばせ、レイもおお、と肯定的な表情になった。

 でも、それは別に……やろうと思えば出来ることだ。アパートだったり、借家だったりするかも知れないけど、大事なのは、家族が揃っていることだろうから。

 

「……今は、これにしようかなって」

 

 私は書類に書いた願いを、二人に見せた。

 

 そもそもレイがクラス替えを望んだ最大の理由。

 

 中等部から高等部に、進学できなかった生徒が居た。

 留年も諦めて、《魔法の世界(マギスフィア)》に帰ってしまった娘。

 その娘が……レイの寮でのルームメイトだった(、、、、、、、、、、、、、、、)

 

 彼女がいなくなって、一人の夜を過ごすようになって、寂しがりやの烏には、堪えてしまったんだろう。私たちの部屋に顔を出す頻度も増えて、それを繰り返す度に、一人の夜がまた寂しくなって……。

 

 それがきっかけになって、以前から自分一人だけが離れていた、という鬱屈が遂に爆発して、実行に移してしまった……んだと思う。

 だから……間を取ればいいじゃないかと思った。

 

 

 

『学生寮の三人部屋の増築と、利用の権利』

 

 

 

「とりあえず卒業までは、これでいいんじゃない?」

 

 部屋の詳細も書けるんだし、せっかくの権利だから、わがまま放題しちゃえばいい。

 

 ベッドは三人で横になれるキングサイズで、浴室も広くしてもらって、バルコニーにテーブルと椅子を並べたっていい。冷蔵庫もちょっと大きく出来たら、日々の生活にうるおいが増すんじゃないだろうか。

 

 これぐらいは、いいはずだ。

 

 だって、最弱の魔法少女の、健闘の結果じゃないか。

 

 ぽた、と。

 烏の赤い瞳から、一滴の雫が落ちた。

 透明で、透き通っていて――――。

 

「そん、なの、わたし」

 

 私たちの中で一番強いくせに、寂しがり屋で。

 

「頼んで、ないじゃないですかぁ……っ!」

 

 一番泣き虫な魔法少女が、レイヴン・グレイヴ。

 幼馴染で、家族で、多分、来月ぐらいからは、違うクラスのルームメイト。

 メアが顔をほころばせ、レイの肩を軽く叩いた。

 ゆっくり立ち上がったレイは、目元を拭うと、じぃ、と私を見つめて、言った。

 

「…………リーンちゃん」

「ん?」

「三〇秒の権利、今使います」

「えっ」

 

 元々、力では抵抗できないので、されるがままに押し付けられた熱を受け止めて。

 

 約束の履行が行われる様を、メアがニヤニヤしながらスマホのカメラで映しているのが、視界の端に見えてしまった。

 




【おまけ】
同人文庫版表紙イラストの全体図(初出し)

【挿絵表示】


レイヴンキャラデザラフ

【挿絵表示】


どちらもイラストを担当してくださっているそはさんの作品です、大感謝。



というわけでこれにて「魔法少女が終わらない!2 ~極光の大魔爛祭~」掲載分終了になります。

「魔法少女が終わらない!3」は現状2026年の冬コミで頒布予定なのでハーメルンに続きが掲載されるのは2027年の5~8月ぐらいだと思います、気の長ぇ話だな……。

流石にその前にちょっとした形で作品の今後の展開をお知らせできるかと思うので気長にお待ちいただければ幸いです。

それではお付き合いいただきありがとうございました!

よろしければ高評価ブックマーク感想などお待ちしております!
これ毎回言うの忘れる。






↓ぼちぼちこっちの更新がそのうち始まる予定です。かしこ↓
https://syosetu.org/novel/384920/
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