魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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この話のあとがきにクソデカ発表が二つあります。


ナイトメアの告解

 毎日ご飯を作ってくれて、夜怖い時は一緒に寝てくれて、寒い時は抱きしめてくれて、寂しい時は手を握ってくれて、うまくできたら褒めてくれて、間違った時は叱ってくれて、ふて腐れていても待ってくれて、怒っていてもなだめてくれて、甘えたい時に頭を撫でてくれる。

 

 だから、当たり前のように、ボクはその人を、自分のおかあさんだと思っていた。

 五歳のある日、母の日に、ボクはお小遣いで赤いカーネーションを買った。

 

 わたしたいものがあるの、と言って、一輪の花を差し出して。

 おかあさん、いつもありがとうって。

 

 そうすると、その人はとてもとても悲しそうな顔をして。

 しゃがんで、ボクと目線を合わせて、しっかりと目を見つめながら、

 

『ごめんなさい、私は、あなたのお母さんではないんですよ~』

 

 と、申し訳なさそうに謝った。

 それが、すごくすごくショックで、悲しくて、苦しくて。

 その日から、ボクはその人のことを、先生、と呼ぶようになった。

 

 

 ★

 

 

「ボクのおかあさんって誰なんだろう……」

 

 夢見(ゆめみ)メアは物心ついた時から〝春の家〟で暮らしている。

最初は自分一人しか居なかった広い家にも、気づけばいろんな娘が増えていた。

 

 年上の娘も居れば年下の娘もいる。同い年だって当然居て、全員が身寄りの無い魔法少女。

 

 全員で一つの家族みたいなもので、その頃にはもう、先生のことを母親だと思い違いするような意識はなくなっていたのだけど。

 

「急にどうしたんです?」

 

 呟きを聞いていたルームメイト、レイヴン・グレイヴは、突然そんなことを言い出したメアに向かって、首をかしげた。

 

「んー、なんとなく、昔のことを夢みちゃって」

 

 来年には中学生になるのに、そんなこと言い出したら笑われる……と、一瞬思ったけれど。

 

「メアちゃん、しらねーんですか? 産母(フェアラ)光母(フェドナ)も?」

 

 レイヴンは、とくにそれを言及することなく、内容の方に疑問を呈した。

ライムグリーンの淡い髪が、さらりと流れて肩に落ちる。

 

「わかんない。もしかしたらお父さんがいるかもしれないし」

 

 魔法少女には、大きく分けて三つの種類がある。

 

 まず、最も一般的な《魔法の世界(マギスフィア)》生まれの魔法少女。生まれた時からスフィアを持っていて、時間が経てば自然に色づき、固有魔法を使えるようになる。

 

男性という種族がほぼ絶滅した《魔法の世界(マギスフィア)》では、魔法少女同士で子供を作る。

 赤子を体に宿す生みの母である産母(フェアラ)と、子を宿させる側の光母(フェドナ)

 基本的にはどちらも母と呼ばれ、権利上も区別されることはない。レイヴンはこれだ。

 

 次に、《地球(アースフィア)》の人間が後天的に魔法少女になる場合。これは『ロストフィア』と呼ばれる空っぽのスフィアを、年若い人間の少女に移植することで生まれる。

 

 適合する可能性はあまり高くなくて、拒絶反応が出れば魔法少女にはなれないけれど……これも《地球》と《魔法の世界》の融和が進んでしばらくして、かなりの人数が増えた。

 

 今はこの場にいないもう一人のルームメイト、語辺リーンはそうやって魔法少女になったらしい。

 

 最後に、地球人の男性と魔法少女が結ばれて生まれた魔法少女。

 人間と魔法少女のハーフで、マジカリアンと呼ばれる娘たち。

 

 普通の魔法少女と同じく、生まれた時からスフィアを持っている。

 この辺りはちょっとややこしくて、男子が生まれた場合は当然魔法少女ではないし、女子だったとしても魔法少女であるとは限らない。

 

 一方で、前述の方法で『ロストフィア』を埋め込んで後天的に魔法少女になる場合は、ほぼ一〇〇%の適合率を誇る。

 

 メアはこれ……かもしれない。少なくとも、物心ついた時から自分は魔法少女だったし、『ロストフィア』を体に埋め込むような事をした記憶は無い。

 

 《地球》……というか日本をルーツに持つ魔法少女は、名字に漢字が使われることが多い。メアだって、名前は『夢見メア』だ。

 

「どーなんでしょうね。ほら、地球生まれの魔法少女って露骨な異形がすくねーじゃねーですか」

「そうだよねえ」

 

 メアの頭部には、大きな大きな角が生えている。

 両方のこめかみから伸びる、羊のように太くねじれた立派な角。凄まじい堅さだがおかげで頭部が重たく、寝る時も寝返りをうちにくい。角まで包み込んでくれる専用のふっかふか枕がないと快眠出来ない困った角だ。神経は通ってないので折れても痛くはないが、ほっとくとまた生えてくる。

 

 魔法少女によっては犬の耳だったり、猫の尻尾だったり、植物や鉱物と一体化していたりと、場合によっては翼が生えていたり……といった生態的な追加パーツが生じることがある。

 

 かつての《魔法の世界》では誰もがそんな感じだったらしいが、時代を経るにつれてだんだんと人の形に収束していったらしい。そしてこれらの性質は《地球》生まれの魔法少女にはほとんど見られないものだ。

 

「ハルミ先生ならなんか知ってるんじゃねーですか?」

「昔、聞いたことあるけど、教えてくれなかったよ」

「ふうん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――そんな会話をした日の、夜のこと。

 

「――――…………ぷはぁっ!?」

 

 メアは、息苦しさに目を覚ました。混乱しながら、かすれた視界で壁掛けの時計を見る。

 

 暗くとも視野の利く魔法少女の視力で捉えた時刻は、深夜一時。

 

 ……あり得ないことだった、メアは自分で言うのも何だが、寝汚いことに定評がある。

 

 一度入眠すればよほどのことが無い限り目をさまさない、こんな時間に意識があったことなど、下手すると生まれてこの方なかったかもしれないぐらいだ。

 

 原因はわかる。胸が異様なほどにドクドクと高鳴っていて、酸素がうまく回っていない感じ。

 全速力のマラソンを駆け抜けて、喉がひくつくほど疲労した時の感覚に近い。

 

 頭が重い、ふらふらする。今すぐもう一度目を閉じてあっち側(、、、、)へいきたい。

 

「メアちゃん、おきましたぁ?」

「――………………レイ、ちゃん……………………?」

 

 レイヴンが、こちらの顔を覗き込んでいた。

 傍らを見ると、もう一人のルームメイト、語辺リーンはまだ目を閉じて眠っている。起きているのはレイヴンとメアだけだ。

 

 彼女の固有魔法(オリジン)は《リズムを操る魔法(レイヴン・マジック)》……レイヴンは恐らく、メアの心臓のリズムを狂わせて、強引にメアを叩き起こしたのだろう。

 

「しー、静かに。リーンちゃん起こしちゃ駄目ですよ」

 

 小さな声で呟かれるも、メアの頭には疑問が浮かぶ。

 

 夢見メアの眠りを妨げることは何よりの大罪であり、対応を誤ると破壊と殺戮の嵐が巻き起こる、というのは〝春の家〟においては誰もが知る法であり、ルールである。

 

「ついてきてください、ほら」

 

 とりあえず、この場で首をへし折ってもう一度寝よっかな、という思考と、何でそんな命知らずな事をしたんだろう。

 もしかしてレイちゃんは進学を前に世を儚み自殺をしたいのかな、という二つの感情がかろうじて拮抗し、レイヴンの導くままに立ち上がる。

 

「今日、ハルミ先生いないんです。さっき仕事で、どっかいくのを確認しました」

「…………………………?」

 

 何が言いたいのかわからず、首をかしげると――……レイヴンは空いた手の指に、キーホルダーを引っかけて、くるくる回した。

 

「ハルミ先生の部屋の合鍵です。やー、手に入れるの大変でしたよ」

「? ? ?」

 

 何でそんな物を? と、どうしてそれで起こしたの? という疑問が顔に出ていたのか、レイヴンはにやっと笑った。

 

「メアちゃんのママの手がかりが、ハルミ先生の部屋にあるかもしれねーじゃねーですか」

 

 普段はどれだけ眠ってもさえない思考が、その瞬間、ぱっと冴え渡った……気がした。

 

 

 

 

 ★

 

 

 ハルミ先生の部屋は基本的に立入禁止だ。メアが小さい頃も、部屋には入れなかった……そもそも、あの頃は四六時中、リビングやメアの部屋にいてくれたので、行く理由もなかったのだけど。

 

 他の娘達との共同生活が始まってからも、特に気にしたことはなかったけど。

 

「……でも、どうやって鍵を手に入れたの?」

 

 ハルミはそういうセキュリティに非常に厳しいタイプのはずだが……しかしレイヴンはしれっと言ってのける。

 

「ひ・み・つ。……さーて、なにかありますかね」

 

 家の三階の一番奥の小さな部屋。それがハルミの私室だ。

 普段自分たち捕まっている物より背が高い大人サイズの机や椅子、小さなベッドが一つ。

 

 難しいことが書いてありそうな本がみちっと詰まった本棚……それぐらいのものだった。

 

 手がかりがあるかも、といっても、そもそもどこを探したものやらわからない。

 

 下手に荒らせば部屋に入ったことがバレてしまうし…………そう思って、部屋をキョロキョロ見回した矢先。

 

 机の上に、写真立てがあった。ちょっと古い金属製のフレーム。

 色あせていて、色彩が分かりづらい。ほとんどセピア色。その写真には四人の…………。

 

 

 

 いや、五人の魔法少女が写っていた。

 

 

 

 額縁に入った絵が壁に飾られていて、裸足で歩いてはいけないような毛の長そうな絨毯が敷かれた、おしゃれな部屋で。

 

 中央に並んで座る二人の魔法少女と、それぞれ後ろに立って姿勢を正している、二人の魔法少女。

 

 そのうち、三人は見たことがなかった。けど、座っている片方は……。

 

「これ、ハルミ先生?」

 

 メアとレイヴンがよく知っている、にこやかな笑顔……ではなかった。

 つん、とすました顔をしていて、髪型も結い上げたお団子ではなく、肩から流すようにしている。

 

 なにより、メアとおそろいのデザインの、特徴的な丸眼鏡をかけていない。

 かろうじてそうだ、と認識出来たのは、顔のパーツに面影があるからに他ならない。

 

 そして――…………。

 

「赤ちゃんだ…………」

 

 写真の中のハルミ先生は、赤ん坊を抱いていた。そしてそれは、自分ではない。

 

 赤ん坊のスフィアは、額にあった。メアのスフィアは、胸元だ。

 スフィアの位置は、生まれたときから絶対に変わらない、だからこれはメアじゃない。

 

 やっぱり、ハルミ先生は、ボクのお母さんじゃないんだ。

 知っていたけれど、でも、寂しい事実が明らかになって。

 

「ねえ、これ、メアちゃんのおかあさんじゃねーですか?」

 

 胸に満ち始めた寂寥感を、レイヴンの一言がかき消した。

 

「――――え?」

「だって、ほら、そっくりですよ」

 

 座っているもう一人の魔法少女は、眼鏡をかけていた。

 丸い大きなレンズの眼鏡。ハルミがかけているのと同じ眼鏡。

 せがんでせがんで、おそろいにしてもらった、メアがしているのと同じ眼鏡。

 髪型はショートボブで、にっこりとした笑顔。目の色も形もわからないけれど――――。

 だけど、疑いようもないものがある。

 

 両こめかみから生える、ゴツゴツとして、ねじくれている、大きな羊のような角。

 

「……ほんとだ」

「最初に気づきましょうよ、ハルミ先生ばっかに目がいってませんでした?」

 

 その通りだ、恥ずかしい、でも、暗かったし、とか心の中で言い訳をしながら。

 メアは、食い入るようにその写真を見つめた。大人の女性、という感じ。

 魔法少女の成長は遅い。ある程度成長すると加齢が止まって、それから若い時間が長く続く。

 

 こうした『成熟した大人の女性』としての佇まいを得るには、相応の経験が必要だ。

 

「こっちの人が産母(フェアラ)だとして……後ろのどっちかが光母(フェドナ)なんですかね。ほら、こっちの人なんか、目元がメアちゃんに似てますよ」

「……そ、そうかなぁ?」

「ほら、垂れ目じゃないですか、垂れ目」

「そ、そんないうほどじゃないよぉ!」

 

 けれど、その可能性は充分にあって。

 そうだったうれしいな、という気持ちがあって。

 そして――自分が今、こうして〝春の家〟に居て。

 幼い頃からハルミの下で育てられたということは、きっともう、この世にはいないのだろう。

 

 あるいは、事情があって手放したのかもしれないけれど――――。

 

「……レイちゃん、ありがとね」

「ん。もういいんです?」

「うん、いつか、ハルミ先生が教えてくれるのを待つよ」

 

 どっちにしても、今すぐ手に入るものじゃない。知って、どうこうできることでもない。

 

 自分がもう少し大人になって、受け止められるようになったら、きっと先生も教えてくれるだろう、ということには、全く疑問を抱かなかった。

 

 部屋を出て、鍵を閉め直し、こっそり自室に戻る。その最中、メアはレイヴンに尋ねた。

 

「……でも、なんでリーンちゃんを誘わなかったの? 二人だけ」

「三人でこそこそしてたらいらんトラブルを起こすかもしれねーでしょう、見つかるリスクも三倍です」

「それは……そうだけど……」

「それに、万が一バレて怒られるときは、連帯責任でリーンちゃんも一緒です。身に覚えのないことで怒られるんですよ、あーおもしろ!」

「レイちゃん…………」

 

 これもレイヴンのなりの愛情表現なのだと思おう……うん、可哀想なリーンちゃん。

 足跡を殺してこっそり部屋に戻る。

 リーンは幸い、まだ目を覚ましていなかった。

 

「あ、レイちゃん、こっちきて」

「? どうしまし………………ぐえっ」

 

 自分の布団に潜ろうとしたレイヴンを引き留めて近づくと、メアは静かにレイヴンを抱きしめた。

 

「今日はありがとね、ボク、うれしかった」

「それは、なによりなんですが…………なんでホールド?」

「でも、起こされちゃったから」

「え」

「気持ちよく寝てたのに」

「……………………でもそれは必要なことで」

「おやすみなさい」

「メアちゃ…………メッ……………………………………」

 

 夢見メアの眠りを妨げてはいけない。それは〝春の家〟の法で、決まっている事なのだ。

 

 今回の判決は情状酌量の余地を加味して、終身ならぬ就寝名誉抱き枕の刑となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………おはよう、世界」

 

 翌朝、目を覚ました語辺リーンが最初に見たものは、心地よさそうにぐっすり眠るメアと、一晩中抱き枕としての役割を果たし続け、ホールドされてぐったりした、レイヴンの姿だった。

 

 いつものことだったので、特に気にすることなく、当然、メアを起こすと言う愚行などもってのほかなので、とりあえず水でも飲みにいこうと、部屋を後に為た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

「あの子達ったら……お仕置きですね~」

 

 自分の立場を脅かすほど重要なモノなど、はなから部屋には置いてはいないが、それはそれとして、誰かが立ち入ったら判別できる程度の仕込みぐらいは、当然してある。

 

 どうやって鍵を手に入れたのかは後で問いただすとして……うん、長い茶色の髪の毛。侵入者は確定した。まあ、これぐらいのいたずらなら、可愛いモノだけど。

 

 溜息を吐いて、机の上の写真を見る。少し以前と角度が違うから、あの子は恐らく、これを見たのだろう。

 

 知ってしまった……とは思わない。

 

 本気で隠しきるつもりなら、こんなもの、そもそも置いておかない。

 この写真は、ただの感傷であり、感情だ。

 手放したくないモノ、手放してしまったモノ、ほしかったモノ、失ったモノ。

 

 あるいは……決裂の代償。

 どうやら侵入者は、写真入れから取り出して、後ろを確認するようなことはしなかったらしい。

 

 額から写真をとりだして、裏返す。

 

 《魔法の世界》の古い文字で、色あせないインクで書かれた、直筆の文字。

 

『我が親愛なる友人、スプリング・スクープと、その第一子と共に』

 

 かつての名前、今の己になる過程で、捨ててしまった名前。

 そして――――。

 その横に記された、黒ずんだ赤色の一文と、署名。

 

「…………夢を見る人、か」

 

 ――ごめんなさい、メア。さようなら。

 ――ナイトメア・ドリームノック

 

「まだ、教えられませんね~…………もう少し、少しだけ。母親代わりをしますよ、ナイトメア」

 

 写真を表にして、額に戻す。呼びかけても当然、返事はない。

 あの頃にも、戻れない。だから、感傷。

 …………あの子がその意味を知るのは、まだ早い。

 

 《地球(アースフィア)》においても《魔法の世界(マギスフィア)》においても。

 

 その名前は、大きな意味を持つものだから。

 世界を隔てる壁を破壊し、侵略を企て、七つの魔界を生み出した魔王。

 今もなお世界を侵略し続ける、全人類と魔法少女の天敵にして怨敵。

悪逆なりしEXTERMINATE(エクスターミネイト)と呼ばれる災害の、真名なのだから。

 




重大発表その1!

 comipo comics様(https://comipo-comics.com/)にて
 「魔法少女が終わらない!!」コミカライズが開始します!

 7/3(金)より毎週連載開始、初回は3話同時掲載。
 アプリ先行配信スタイルなので「comipo comics(https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.vivion.comipo&hl=ja&gl=JP)」のアプリをダウンロードするなどしてお待ちいた だけると幸いです!

重大発表その2!
 夏コミ受かりました!
 8/16(日)、 西地区 西1ホール て23a「Southree」にて予告より少し早めに、
 最新刊「魔法少女が終わらない!!3 魔法少女の日々これ徒然」頒布予定です!
 こちらもご興味があれば是非! よろしくお願いします!

 
【挿絵表示】



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