【コミカライズ化】魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
魔法少女と配信騒動 1
◆
平常時のクロムローム魔法学園では、授業が終わる十五時半から、寮の門限である二十一時までの五時間半は学生の自由時間とされている。
部活に勤しむ生徒もいるし、趣味に勤しむ生徒もいる。もちろん自習や鍛錬に時間を割く生徒だっているし、バイトをしている娘だっている。
で、私こと
《
「あ、リーンちゃん。今日、レイちゃん帰ってこないかもって」
「へ? 何してるのあいつ」
「ハルミ先生に呼び出されたみたい、なにかしてるのかも」
「ええ……今日の抱き枕当番はあいつだったはず……!」
「可哀想なリーンちゃん……せめて苦しまないようにしてあげるね」
「なんて温情なんだ……加害者側のセリフとは思えねぇ……」
「アンタらなんでお喋りしとるだけで漫才になるんや」
「ならないって選択肢はないんですね……」
ってことで、教室でクラスメートたち(メア、ミツネさん、ファラフ)とダラダラ益体もない話をしてたら、
「失礼しますっ!」
と勢いよく教室に入ってきた、
「語辺さんっ、お願いっ! 私と一緒に配信に出てほしいのっ!」
隣のクラスの
「えっと………………配信って、
数秒フリーズした脳を再起動して、私は言った。
「うん、そう」
《
現代人にとっては必須のアプリだ。私も当然、(主にプレシャス関連の情報収集の為に)日常生活の一部として利用してるけれど、なんでまた。
イチゴさんはそこに自分のチャンネルを持っていて、結構な頻度で配信活動をしている。彼女はアイドル系魔法少女志望なので、歌ったり踊ったりを頑張っている。私も時々歌配信を見たり、何かの足しになればとチャンネル登録くらいはしているのだけども……。
「なんで私?」
名指しされた身としては当然の疑問だと思うのだけど、イチゴさんはうう、と困ったような顔をした。
「あのね、今クロムローム魔法学園で積極的に配信活動してるのって私だけなの……」
「そうなの?」
「そうなの。一年生の中にはチャンネル持ってる子もいるんだけど、動画系とか技術系で、うちの学園、部活系のチャンネルはほとんど更新してないし」
「うん……それで?」
「《
「そりゃ迷惑な話だね……え、でも、もっかい聞くけど、なんで私?」
結局、その疑問の答えにはなってない気がするの
だけど……と思っていたら。
「なに言うてるの、リーン。あんた《
「というか、《
成り行きを見守っていたミツネさんとファラフが、揃って言った。
「いや、そりゃそうなんだけど……」
二か月前の《
その上、賞品まで譲ってもらっちゃったから、むしろ成果を横取りした、という自認が強くて……。
《
どちらかというとアンチが怖くてSNSを使う時は自分の名前をミュートにしていたくらいだ。
「最近は雑談配信とかしてても毎回言われるようになっちゃって……話題を切り上げたくて、一回聞いてみるね、って言っちゃったんだ……」
「あー」
スマホでMTubeを開いてみる。イチゴさんのチャンネル登録者数は……えっと、五〇万人、《
「で、そしたら今度は『コラボどうなりましたか』ラッシュになっちゃってぇ……」
「それはなんかその、ごめん……」
私に直接責任がないとはいえ、知り合いに直接迷惑がかかっているのは気分が良くない。
まあ往々にして、視聴者とか一般ピーポーは身勝手なものだけどさ。
「ま、そういうことなら仕方ないか。一回顔見せればいいんでしょ?」
「ほんと!? やったぁ! ありがとう語辺さん!」
家のクラス……というか二年生はもう全体的ひねくれてるやつが多いので、ここまで素直に喜びとお礼を伝えられるイチゴさんの普通人っぷりにちょっと感動しちゃうな。
皆が皆これぐらい素直でいてくれたら、私の苦労って百分の一くらいになるのに……。
「なんか失礼なこと考えとる顔しとるな」
「絶対自分のことを棚にあげてます……」
「図々しいリーンちゃんも可愛いよ」
なんだお前ら、敵だらけか。
「でも、イチゴさんの配信に出たとして、私は何をすればいいんだろう」
「一緒に歌って踊ればええんと違う?」
「あはは、それはちょっと難しいんじゃ……」
ミツネさんが冗談めかして言い、ファラフが苦笑する。
「さ、流石にそこまでは言えないよ! ちょっと届いてる質問とかに答えてもらったり、お喋りしてくれればそれで……」
なんて言っていたら、横で黙って話を聞いていたメアが、突然ばっと立ち上がった。
「リーンちゃん、後ろいって、後ろ」
「?」
全員が揃って首を傾げるものの、メア御大に言われた私は素直に従う他なく、教室後方の開けたスペースに移動させられた。
「はい、光れ、光れ、光れ、光れー」
ぱんぱんぱん、と手を叩きながら急に歌いだしたのは、プレシャスの12thシングル『シャイニング・レイン』だ。しかもサビの二歩手前から入ってきた。
一回目の光れ、で両足を軽く広げて、二回目で右足を一歩前に。右肘を折って肩を上げて、顔の横で指を伸ばす。三回目で左腕を下からまっすぐ伸ばして上げて、四回目で顔の前まで振り下ろして、人差し指を伸ばしながらウインク。
「君にそそぐよーしゃーいにれーいーん」
サビのダンスはちょっと難しい。右足を軸に左足のつま先を伸ばして床を滑るように一回転。
膝を折ると同時に体を横向きに、顔の向きだけカメラに固定して、両腕を下からぐるぐる回しながら上へ持っていって、右足を軸に今度は左回転、腰の重心だけを前に寄せて、両手の甲を前に向けて、伸ばしてから指を動かしつつ下に降ろすことで雨を表現……って。
「何をさせるのさ」
ワンフレーズ踊って我にかえると、メアを除く三人がぽかーん、とした顔をしていた。
「…………めっっっちゃ上手いやん……」
「びっくりした……リーンさんとダンスっていう行為が全然結びつかなくて……」
「今ちょっとディスられた?」
ミツネさんとファラフのあんまりな反応はさておき。
「リーンちゃん、プレシャスのオタクだから……振り付け全部覚えてるの」
「全部じゃないよ、最新の奴はまだPVじっくり見てないし……」
「ライブが近い時はずーーーっと画面見ながら踊ってるの……」
「ずっとじゃないよ、髪の手入れぐらいはするし」
「身内としては寝食の方を優先してほしくて……」
勘が鈍る前に体に覚えさせたいんだから、それは仕方ないじゃないか。
「…………語辺さん、歌配信にする?」
「いやいやいやいや」
なんて思ってたら、イチゴさんがすごく真剣な顔で聞いてきた。
「私、プレシャスの曲の完コピしかできないし、ダンスは出来ても歌は無理だし、フツーでお願い、フツーで」
というか、これは私の趣味みたいなものなので、人前で披露することなんて想定してない。ましてやMTubeで配信なんて恥ずかしくて死んでしまう。
「ん、わかったわ。それじゃあ普通に質問会ってことで……明日の夜から大丈夫? 二十時くらい」
「だそうですけどメアさん、如何でしょう」
我が家を牛耳るボスに目配せすると、むーん、と十秒ほど沈黙をおいて、
「まるっ」
両手で大きく丸を作った。
「大丈夫だそうです」
「……あの、語辺さんと夢見さんってどういう力関係なの……?」
「メアを頂点としたピラミッドが敷かれている感じかな……」
「レイヴンさんは?」
「私の下」
私はレイに強い。メアは私に強い。メアはレイヴンにも強い。
私たちのパワーバランスはそうやって成り立っている、つまりメアの独裁政権だ。
「そうなんだ…………うんっ、それじゃあ明日、よろしくお願いねっ! お礼はするから!」
丁寧に一礼して、イチゴさんはつーたかたー、と小走りで教室を出ていった。
ま、ちょっと緊張するけど、夢を目指してまっすぐ進んでるイチゴさんの邪魔はしたくないもんね。当たり障りのないことを答えて、早めにぱっぱと終わらせよう。
…………私はその時、本気でそんな呑気なことを考えていた。