【コミカライズ化】魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
「魔法少女が終わらない!!3 -魔法少女の日々これ徒然-」収録の短編エピソード、先行公開です。
16日まで毎日18時更新
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そんで翌日の放課後。
「ねーねー、リーンちゃぁーん、今日―、一緒にスレマジやりましょうよー、ねーえー」
図書室でぺらぺらと二年前の旅行雑誌をめくっていると、レイが座る私の後ろからのしかかってダル絡みしてきた。
「えぇ……あれやるの翌日休みの時だけにしようよ、永遠に終わらないから……」
「禁断症状がでちゃってんですよぉーこっちはぁー」
レイは無類のゲーム好き……ってほどではないが、話題になるものには一通り触れておくタイプのユーザーだ。
そしてハマる時はズブズブにハマるし、マルチプレイできるときは私とメアも巻き込まれる。……考えると寮生活始まってからこういう時間を小まめに取れなかったのもレイの暴走の一因だったのかもしれないなぁ。
今は同じ部屋になったので、巻き込まれ生活が再開しているわけだけども。
「でも、ごめん。今日は駄目」
「えぇー! わたし昨日ハルミ先生にめちゃこら虐められてんですよー、ご褒美くださいよぉー」
「めちゃこら?」
知らん言葉だ。まぁいいや。
「今日はイチゴさんの配信に付き合う予定なんだ、悪いけど」
「は?」
ぴた、と動きを止めたレイは、そのまま体を起こし、私の正面に回って座った。
かなり久々に見る真顔だった。レイヴン・グレイヴが真剣になることなんて、そうそうないことを、私は知っている。
「ワンモア。なんて言いました? イチゴちゃんの配信に、リーンちゃんが出るんです?」
「う、うん。昨日頼まれちゃってさ。実はこの後打ち合わせ」
あらかじめ届いた質問を見て、どう答えるか考えておくとか、流れの事前確認とか、そういうのがちゃんとあるらしい。図書室に来たのはその時間潰しの為だったのだけど……。
「………………………………」
「ちょっと、レイ、変なこと考えてない? 別にイチゴさんに強要されたわけじゃないよ」
眉を寄せて思考するレイに、一応釘を刺す。身内のことになると何をしでかすかわからないので。
「はぁ? 当たり前でしょーが。イチゴちゃんはわたし達みたいに擦れてねーんですから」
擦れてる自覚はあんのかよ。
「そーじゃなくて、リーンちゃん……あの、大丈夫なんです?」
「何が?」
「だから、配信なんて出ちゃって」
「……? 別に、なにか考えなきゃいけないことでもある?」
要領を得られず首を傾げる私に、レイは大きく、それはもう大きく盛大に、はぁーーーー、とため息を吐いた。
「あの、リーンちゃん。世間から見た貴女ってどーいう魔法少女だと思います?」
「どうって…………」
クァトランの成果を横から掠め取った、《
聖イーヴィスからどう思われてるかなんて考えたくもない。
「…………いいですか? リーンちゃん。よぉーく聞いてくださいね?」
「う、うん。なんだよ畏まって」
「あなたは、
「完封って…………私あいつの攻略に半年近くかけてるんだけど」
いや、やってる当時は全然気にしてなかったんだけど、回数と所要時間を計算したらなんかそんな感じになっちゃったんだよな……。
「そりゃリーンちゃんの主観じゃそうでしょーが、傍からみたら超絶技巧の
「…………でも、それってそんなに大げさなこと? ちょっときつい一発芸ぐらいのものだし、もう一回やったら多分勝てないよ」
「……………………はぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~」
わかってねぇなぁこいつ、って顔で盛大なため息を吐かれた。なんだ、喧嘩なら買うぞこっちは。
「なんでリーンちゃんって頭の回転早いくせに自分のことに関するとアホみたいに察し悪くなるんですか……?」
「言いたいことがあるのはわかったから結論から言えよ面倒くさいなぁ」
これ以上煽ってくるならこっちにも考えがあるぞ、こちとら明日一日お前の髪の毛に櫛を通し続けてたっていいんだからな。
「いーですか? 《
「…………………………ん?」
「ていうか、十億人ってのもざっくりとした概算です。メジャーな配信サイト一個の数字なんで。個人の実況配信同時視聴とか、その他の配信サイト、有料外の違法視聴まで含めたら何倍になるかもわかんねーんですけど、とにかく最低十億人の前で、リーンちゃんはそれをやったんですよ? 決勝戦の切り抜き動画の再生数見たことあります?」
「…………………………ん? ん?」
なんだか、無性に嫌な予感がしてきた。背筋を冷や汗がつぅー、っと伝う。
いや、違う、私、これ、頭の片隅では多分、わかってた気がする。
わかってたけど、あんまり直視したくない現実だったから、不都合な事実を見なかったことにして、気づいてないふりをしてただけな気がする……。
「ってことは……リーンちゃん、今日マジッター見ました?」
マジッター。魔法少女が一言呟く、でおなじみのSNSアプリ。
「見てない……………………」
「どうぞ」
レイがスマホをこちらに向けて、すっと差し出してきた。
堂々たるトレンド一位、語辺リーン。
《
その時点で私はスマホを見るのをやめ、ずい、とレイに叩き返し、目を閉じた。
今なんかすげー不吉なことが書いてあった気がする。え、イチゴさんのチャンネル登録者数って昨日まで五〇万人だったよね……?
「自分の影響力に自覚がないのって、そこそこ罪深いと思いません?」
返す言葉がなかった。言い返す気力もなかった。そして私に否があってレイに否がない時、こいつはほんっっっとうに楽しそうな顔をする。
「ほんと、クロ高がパンピー出入り禁止の孤島でよかったですね。他の学校だったらどーなってたことか」
クロムローム魔法学園は他の魔法少女育成機関と比べても、立ち入る方法が限られている閉鎖空間だ。インタビューの類は教師陣を通す必要があるから……そのへんは多分、ハルミ先生がうまく誤魔化すなり受け流すなりして取材とかが来ないように計らってくれていたじゃないかという気がする。
その気遣いを自分から破壊しにいったのが私ってことだ……え、どうしよう。
「…………これ、今からやっぱ無しって言ったらどうなると思う?」
「流石に大暴動なんじゃねーですか? ていうか、イチゴちゃんにすげー迷惑かかっちまいますよ。チャンネル登録者数、両世界合わせて二〇倍ですよ? 売名だーとか嘘つきーとか言われて叩かれて、最悪の場合もうアイドル路線は無理になるかも……」
「駄目だもう逃げられねえ…………」
私のバカ! 迂闊に! 浅い考えで! YESと答えてしまったばっかりに!
「ていうか、学年が同じだからってたまたま配信者やってたってだけで圧力かけられまくってたイチゴちゃんも大概かわいそーですけどねー」
「ううん……」
イチゴさん……結構柔らかく言ってくれてたけど、この規模感だと《
「メアちゃんはなんて言ってるんです?」
「配信に出ていいか? って聞いたら元気よくまるっ! って」
「ふうん?」
メアは……どうなんだろう、学外での私の評判を知っていたんだろうか。
暇な時間は趣味の睡眠に当て、暇じゃない時は必要な睡眠をしているような娘だから知らなくてもおかしくないし、知っててOKした可能性もあるし……微妙なラインだな。
「あ、いいこと考えた、レイも出ようよ。他校の生徒にイキり散らかしてつっかかった挙句ボコボコにやられた枠として――――――ぐっ、む、胸が………………!」
「わたしがあの目隠し女に勝てなかったからってリーンちゃんがわたしに勝てるわけじゃねーですよねぇ!?」
「お、お前、家族に【
レイの
「私が死んだらどうするんだ!」
「イチゴちゃんと約束する前に時間を戻したらいーんじゃねーですか」
「…………はっ、その手が」
私の
つまり、
「……冗談です、やめてくださいよ。主観的になかったことになるのと、客観的になかったことになるのはちげーんですから」
「……わかってる」
たしかに便利で強力だけど、だからといって好き放題使っていい魔法じゃないことくらいは、流石にわきまえている。そもそも論でいうと私だって別に死にたいわけじゃないし、毎回時間逆行が確実にうまくいく保証があるわけでもないし。
「リーンちゃんは時間を巻き戻れても、わたしが生きている世界がこのまま続いていかない保証なんてねーんですから。わたしにあんたがいない世界を生きさせないでくださいよ」
私が時間を遡ると、未来が変わる。でも、未来が変わる前の世界が続いてない、という保証もないのだ。なにせそれを確認する術はないわけで。
私の知らないところで、クァトランが死んだ世界が八個あるのかもしれない……みたいなことは、考え出すとキリがないから仕方ないけれど。
「……………………いや、でもじゃあさ、人の心臓止めようとすんなよ」
「あんたが人のトラウマを刺激するからでしょーが!」
「お前、あれ気にしてたんだ」
「気にしてねえわけなくないですか!? 全世界中継で切り札まで切ったのにボロ負けして好き放題言われて挙句ネットでもバチボコ叩かれてんですよこっちは!」
「…………お前が負ける前に戻って『絶対勝てないから煽るのやめとけよ』って忠告したほうが早かったんじゃないか?」
「そんなんただでさえ調子こいてたわたしが聞き入れるわけないでしょうが!」
「自己分析できてるじゃねえか」
「リーンちゃんとは違げーんですよ!」
外部評価を全く分析できていなかった事実がたった今明らかになった身の上としてはぐうの音も出なかった。まぁまぁまぁ……仕方ないか。
「かなり話がズレたから戻すけど……私イチゴさんの配信で何したらいいと思う?」
「素直にインタビュー答えてあげて、最後にイチゴちゃんを応援してあげてね! っつってあげりゃいーんじゃねーですか? 下手なことしなきゃ大丈夫ですって。別段緊張するタイプでもねーでしょーが」
「ええ、私、結構緊張しいなんだけど……」
「どの口でほざいてんです?」
「この小さくて可愛い口で」
「コンビニでポッキー買ってくるんでちょっと待っててください、何本入るか試してみましょう」
「ステイステイ」
まぁここまで来たらなるようにしかならないか……この場合、事前に状況を知れてよかった、と思ったほうが建設的だ。
「ま、腹くくるしかねーですね。わたしも面白おかしくチェックしといてあげます」
「絶対録画とかするなよ」
「撮らねーですよ。盛り上がりに反してぬるっと出てきて、平坦に喋って盛り上がりどころが作れないまま終わる姿が目に浮かぶのに、そんな面白くもなさそうな」
「………………」
まぁ多分そうなるだろうな、と納得してしまったので、反論しなかった。