【コミカライズ化】魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
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「そんなわけで……お、お別れの時間が近づいてきました……」
「結構疲れたね」
「一応念のため聞いておきたいけど、語辺さんは誰のせいだと思ってる……?」
「コメントの皆さん、言われてますよ」
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『お前だお前』
『なすりつけてくるな』
『図々しすぎる』
『盗っ人猛々しい』
『コラボありがとう、もう二度と来るなよ』
『イチゴちゃん、お疲れ様……!』
『マジでびっくりした』
『やっぱクロ校おかしいよ』
『学園全体にこの変態の業を背負わせるのは流石に可哀想』
『語辺絶許』
『イーヴィスの間者がおる』
『残当』
『この配信を最大一◯◯◯万人が見てたのか……?』
『髪吸いからみるみる視聴者減ったよね』
『同じ国産魔法少女として《
『語辺リーンちゃんのこと、ずっと知りたいと思ってたから嬉しかった。知らなきゃよかった』
『来年は初戦敗退してくれ』
『せめて《
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「………………………………あれ? おかしいな」
「ごめんね語辺さん、私、明日から今までと同じ付き合い方できないかも……」
「え……そんな、イチゴさん……一緒にお風呂とかいく?」
「ひっ」
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『ガチ悲鳴で草』
『やめてあげてください!』
『放送事故だ放送事故!』
『ほぼ最初からだろ』
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「おかしいな……何が駄目だったんだろう。私はただイチゴさんに迷惑をかけられないと思ってこうして衆目に体を晒しているのに……」
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『全部かな……』
『語辺呼べコールが多かったのはマジですまんかった』
『今は別の意味で謝りたい』
『一時間ぐらいは常人のフリをしていてほしかった』
『演技やキャラ作りでないことだけは確信できちゃったんだよな……』
『本当にごめん、イチゴちゃん……』
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……ま、いっか。吸うものは吸えたし、イチゴさんにここまですれば、もう語辺リーンをチャンネルに呼べ、なんてことにはならないだろう。
もっと仲良くなれたら嬉しい、と語った同じ口から上がる悲鳴が少し寂しいけど……うーん、もう二度と部屋に呼ばれることはないだろうからもう一回吸っとくか。
そんなこんなでじゃあ締めの挨拶をしようか、とイチゴさんがタイミングを伺っている隙をつこうとジリジリ気づかれないように接近しようとして……。
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『マジチャ総額億超えてて草』
『配信ドリームすぎるだろ』
『ヤバ』
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そんなコメントが目に入った。
「ん?」
今見逃せない数字が出てきた気がする……億?
「…………………………えっ?」
さあ、とイチゴさんの顔が青くなった。
慌てて画面を操作して、魔法少女の顔からこんなに出ていいんだ……っていう勢いで、汗がじわっと滲んだ。
「っ、う、嘘」
「ど、どったのイチゴさん」
震える声で、目を見開いて、イチゴさんは小さく呟いた。
「マジチャが、オンになってる……なんで、普段オフにしてるのに……」
マジチャは略称で、正式名称はマジカルチャット。
ざっくりいうと配信者に投げ銭が出来る機能で、お手元の端末からお気軽に、配信者に課金するシステムだ。
「……あの、アイミさん言ってなかったっけ。設定初期化されてるかもって……」
「あ…………」
普段と違う環境で、普段と違うことをすると、トラブルが起こる。
私達の動揺が伝わっているらしく、視聴者達のコメントにもそれが現れだした。
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『どうした?』
『マジチャオンにしてたの気づかなかったらしい』
『嘘やん』
『普段してないのに今回してたから変だと思った』
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更に厄介な事に、
「…………………………ごおく?」
何度か数えたけど、間違いなかった。とんでもない数字が記載されていた。
……これは後で知ったことなんだけど。
MTubeのアルゴリズムはとてもとても優秀で、私達目線では配信者側が拾いやすいコメントが前面に表示されやすく、結果として視聴者との漫才みたいなやり取りが出来ていたのだけど。
普段はマジチャをしないイチゴさんなので高額マジチャへの反応コメントは後ろに下がり、メンバーや普段から配信に来ている人たちのコメントが優先される設定も相まって、配信中にそれを認識することが出来なかった。
私という魔法少女の話題性の高さ、イチゴさんのチャンネル登録者数の急増によるトレンド入り、注目度の高さなどから……裏ではもっととんでもねえ数の視聴者達が蠢いていたのだ。
総視聴者数、一〇五〇万人、投げ銭総額、五億六四三〇万円。
記念にちょっと多めに課金、とか質問を拾われたくて……みたいな層が結構いたことが、後に判明している。とにかく、ちょっとありえない金額が、一日で動いていた。
「…………………………」
ああ、イチゴさんが放心している。うん、言っちゃなんだけど、学生が一日で得て良い金額じゃない……っていうか、私も足が震えている。どうしよ、どれぐらい請求しても許されるかな。
「…………みんなー、ちょっとまってねー」
イチゴさんは生気のない声でそういうと、空中で指を振ってMTubeの画面を呼び出し、操作し始めた。
まず課金可能の設定を止めたらしく、マジチャができなくなった。
なおマジチャ総額が話題に上がった段階で更にお祭り騒ぎが加速したのか、更にそこから二〇〇〇万円が積まれていた。ちょっとこの辺の人間心理がわからなくて怖すぎる。なんで増えるんだよ
はっ、はっ、とイチゴさんの呼吸が荒くなる。瞳を開いたまま、沈黙している。
はっきり言って、凄いことだ。人生を大きく変えられる、途方もない金額だ。
だけど、
なぜなら――――。
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『気づいてなかったとか嘘だろ』
『知らないフリ乙』
『わざとらしすぎて萎える』
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アイドル志望で、それなりにファンはいるけれど、トップ層にはまだまだ全然追いつけない――そんな魔法少女が、《
この配信は、記録に残る。SNSのトレンドにもなるし、明日の朝にはニュース記事にもなるかもしれない。下手すると、一配信におけるマジチャ総額のランキングにも載るだろう。
イチゴさんは私を使って自分の名前を広めるチャンスにしたかった――とは思う。言ってたし。
でも、それでお金を稼ごうとは思ってなかったはず――だけど、周囲がそう思ってくれるかどうかは、また別問題だ。
誰が何を思おうと、言おうと、それは個人の勝手なのだから。
さておき、どうしよう。
簡単なのは私が《
失敗はなかったことになり、トラブルも起こらない。円満に配信を終えられるだろう。
問題は二つ。一つは単純に私が蓄えている《魔力》の不足。それこそ《
もう一つは、それをした時にどこまで巻き戻るかがわからない。体感的に私が逆行できるのは最大で四十八時間ぐらい――だと思うのだけど、今回の場合はハルミ先生のいう『運命の分岐点』がどこだかわからない。大した手間ではないとはいえ、最長二日間をやり直すのは結構大変だ。
……そして、それらの事情を抜きにしても。
《
だけど、だからこそ……そう気軽に、ホイホイと使って良いものじゃない、と思う。
本当に必要な時、どうしても変えなければならない運命に対して抗う手段。
そう思ってないと、そう考えていないと。
失敗してもやり直せばいいや、なんて考え方のまま生きていたら。
多分私はどこかで……大きく
そんな気がする――――だから、私は普段、《
レイの言う通り、『私が諦めた世界』が、その後続いていかないとも限らないのだから。
(イチゴさん)
配信に載らないように、私は小さく尋ねた。
(このお金、欲しい?)
私が問うと、イチゴさんは少しびっくりした顔をして、それから小さく首を振った。
(いらない、私は、ちゃんと自分の力で成功したい)
赤い瞳を見開いて、はっきり、しっかりと明言した。
(おっけー)
それなら、話は早い。
わかりやすく畳んで、綺麗に終わらせられる。
「えっと、まず沢山のマジチャ、ありがとうございます。正直ちょっとビビってる」
私が言うと、コメントが一斉に返ってくる。
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『気持ちはわかる』
『シンデレラガールすぎ』
『一日で億万長者け……』
『ただ変態が髪の毛吸っただけなのに五億……』
『語辺ドリーム』
『いや、語辺ドリーンだな』
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やかましいわ。
だけどこういうやり取りの向こう側で、様々な批判意見もあって、可視化されてないだけだろう。
「ただイチゴさんも本意じゃなかったみたい。私が来るからって負荷に耐えられるようにってサーバーをいじった時に設定が初期化されたみたいで」
ああはいはい。そういう言い訳ね。上手いこと誤魔化したな。ズルい。売名成功おめでとうー。よく言うよ。
心無いコメントの数々には、嫉妬もあるし、悪意もある。
そしてそういう外野からの声の中に、イチゴのマークを付けたメンバーからのコメントが、一つ。
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『イチゴちゃん、信じてたのになあ』
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世界に溢れかえってしまった魔法少女は、それでも誰かに夢を見せるものだ。
推しの成功を望む事がファンとして正しい姿だという人もいるかも知れない。私が彼らの立場で、プレシャスがイチゴさんの立場にいる時、私だったら手放しで大喜びすると思うけど――そうじゃない人たちの気持ちも、多分理解できるのだ。
イチゴさんのことを、明るくて、優しくて、可愛らしいアイドルだと思って信じてた人たちに――――お金目当てで私を呼んだなんて、思わせたくない。
それは、例え百億払ったって、取り戻せない人の心だ。
「ってことで、イチゴさん!」
「ひゃ、ひゃいっ、な、何っ!?」
私はなるべくいい笑顔を作って、画面の向こうの皆様方にも聞こえるように、大きな声で言った。
「ここまで来たらもう、徹底的に売名しよう!」
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『変なこと言い出した』
『何何何何』
『ワクワクしてきた』
『何するつもりだ』
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「か、語辺さん?」
「えっと、そうだなぁ……〝ヘルルリッハ魔法少女支援財団〟に全額寄付なんてどう?」
「か、語辺さんっ!?」
〝ヘルルリッハ魔法少女支援財団〟とは、伝説級の魔法少女ヘルルリッハ・ユーアラッハが立ち上げた、文字通り魔法少女を支援する財団だ。
保護者のいない娘に対する生活や教育の支援、成績優秀な魔法少女への無返済奨学金の給付など、まぁ一般的に『そういう感じ』の活動をしている機関の中で、もっとも透明性がってもっとも信頼がおける所、というのが世間の共通認識じゃないだろうか。
プレシャス・プリンセスなんかは収入の一部を常に寄付してることを明言しているし、そういう意味でも『大金をぶん投げてもまぁ大丈夫な場所』という認識でいいはずだ。なんなら『春の家』の経営母体もここだったはずだし。
「で、でも」
「ん?」
「か、語辺さんは、いいの?」
……ああ、なるほど。
寄付しちゃえばいいじゃん、なんて誰でも出せる結論を、イチゴさんがすぐに言い出せなかった理由。
イチゴさん、
そりゃ、客観的に見て今日の配信にこれだけの人とお金が集まったのは、私のおかげ……っていうより、私のせいではあるんだけど。
「いいよ、私が欲しいものはもう貰ってるから」
家族と一緒に過ごせる部屋を、私は手に入れてる。
それ以上を望むのは野暮ってものだ……いや、お金が要らないわけじゃないんだけど。
私のなりたい
「人気者になっちゃいなよ、イチゴさん」
私が言うと、イチゴさんは……申し訳なさそうに、そして嬉しそうに。
「……ありがとっ」
そう言った。
「…………んっ、こほんっ」
一旦目を閉じて、端に溜まっていた涙を拭う。
喉を鳴らして、声を作り直し、イチゴさんは再びカメラに向き直った。
「うん、ごめんなさい。ちょっとあんまりの金額に動揺しちゃった」
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『いいよ』
『許す』
『そりゃそうだ』
『俺にくれ』
『俺も欲しい』
『なんでだよ』
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「沢山マジチャしてくれた皆には申し訳ないんだけど、語辺さんの言う通り、私達も予期せぬ事態だったから……今この場で全額、寄付させてください。……来年の税金も怖いし!」
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『確かに』
『税金は本当に怖い』
『納得した』
『いいんじゃない?』
『俺はこうなると思ってた』
『推しに課金チャンスだったのに!』
『イチゴちゃん信じてた!』
『残念だがそれも良し』
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「あ、私が単独で配信したときはいくらでもマジチャしてくれていいんだけど」
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『もういいです』
『しない』
『変態に投げるマジチャはねえ』
『部屋に帰れ』
『二度と出てくるな』
『クロ学は責任持ってこいつを封印して欲しい』
『自分の髪の毛を吸っててくれ』
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なんでだよ。
とにかく、衆人環視の元、イチゴさんはその場でマジチャを〝ヘルルリッハ魔法少女支援財団〟に全額寄付した。
後で知ったんだけど、チャリティ系の配信者に向けた、受け取った金額を直接送金するシステムがちゃんとあるらしい。配信者の口座を経由しないので税金的にも処理が楽なのだとかかんとか。
「それじゃあ改めて……皆、今日はありがとー! せーのっ!」
「「おやストロベリー!」」
というわけで、こうして語辺リーンの配信デビューが幕を閉じた。