【コミカライズ化】魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
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クァトラン・クアートラ。
誰が呼んだか〝最強の魔法少女〟。
その二つ名は伊達でも酔狂でもなければ、誇張でもない、純然たる
「きゃあああああああああああああああああああああ!」
ぼしゃーーーーーーーーーーーん、と、でっかい水柱が上がる。
ぶくぶくと泡立つ海面、しかしすぐ中からざぱぁ、と勢いよく飛び出してくる四本角。
「「ぎゃははははははははははははは!」」
ずぶ濡れのクァトランが、ゲラゲラ笑う従者二人めがけて純黒の《魔弾》をぶっ放す。
「なんでいつもいつもこーなるのよっ!」
最強の魔法少女は、《
ここ数日、毎朝授業の開始前に繰り返される、お決まりの光景だった。
突然だが、ファラフ・ライラは今年の《
チーム競技故に組み合わせや連携の妙はあれど、今代最速の魔法少女と呼んでも差し支えない。実際、《
そのファラフは今、食堂で最強の魔法少女、クァトランと向き合っていた。
普段一緒に昼食を食べるミツネが、今日は先生に呼び出されていて一人ランチをしていた所、いきなり眼前に座られたのである。
「あ、あのう」
「何よ」
え? え? と思っていたら普通にそれぞれ山と盛られた回鍋肉定食、麻婆豆腐定食、油淋鶏定食を端から食べ始めたので、もう何も言えなかった。その量がどこに消えていくのかも、ファラフにはわからない。
だからといって、『じゃあこれで失礼します……』と立ち上がって良いものかもわからない。ファラフから見て、クァトランはいつ爆発してもおかしくない核弾頭であるからして、何をどういう形で触れると爆発するのかすらわからないこの状況が怖すぎる。
必然、じ、と見つめる形になり、クァトランはその視線に目ざとく気づいた。
「…………食べる?」
「い、いえ、大丈夫です、ぼくはもう食べたので……」
「そう」
黙々と食事に戻るクァトラン。
ファラフは困惑し、傍らの《使い魔》、ジーンにちらりと視線を向けた。
(ど、どうしよう、ジーン)
(ほっほっほ……)
なるようになるしかありませんなあ、という顔をしていた。ファラフはこの役立たずめ! とちょっと思った。
同じクラスなれど、あまり話すことのない組み合わせだった。
ファラフからすればクァトランは《
「ねえ」
「ひゃいっ!?」
声をかけられてファラフが正面を向くと、既に定食三つの姿が消えていた。手品か? 魔法か? 魔法少女なんだから魔法に決まってるだろう、なんて益体もない言葉が頭の中をぐるぐる支配する。
いや、そうじゃない、声をかけられた……声をかけられてしまった。
「アンタ、《箒(ブルーム)》得意よね」
「へ? あ、は、はい……その、普通の人よりは、得意、だと思います……」
《
名前の通り、基本的には箒型……長い棒の先端に放射状に広がるワイヤーを取り付けた形状をしている。
魔法少女が《魔力》を流すとふわりと浮き上がり、《
「あれ、どうやってやってるの?」
「…………はえ?」
思ってもみなかった言葉に、ファラフは目を丸くした。
「アンタも見てたでしょ、私が授業の時、海に突っ込んでいく所」
「ええと、はい、それは、見てましたけど……」
「浮けはするのよ。でもあらぬ方向にぶっ飛んでいくの。《魔力》のコントロールは得意なつもりだったけど、あれは全然わからない」
ファラフは二つの事実に驚いた。一つはクァトランにも出来ないことがある、ということ。もう一つはそれを自分に打ち明け、相談してきたこと。
クァトランは《魔力》のコントロールを『得意な方』と言ったが、それはとんでもない謙遜だ。ファラフの二つ名、〝千変の魔法少女〟は
そのファラフから見たクァトランの技術は〝常軌を逸している〟と言う他ない。
他人に言葉で伝えるのはとても難しい感覚なのだが――そう、例えるなら。
一台の車があるとしよう。車種によって向き不向きがあり、積んでいるエンジンもカスタムも違う。アクセルやブレーキで速度を調整して、ハンドルを動かして方向性を決めることを、魔法少女たちは『魔法を使う』と呼んでいる。
ファラフも含めた彼女らの言う『操作の精密さ』とは、狭い道を速度を落とさずに、車体をこすらず通り抜けられるとか、一周三kmのコースをきっちり三〇秒で一〇周走り切るような技術のことを指す。
対してクァトランが行うコントロールとは、
普通の
普通の魔法少女たちがスフィアという器官に、
「で、でも、クァト、ラン…………さん」
普段あまり名前を呼ばない相手に対し、言い淀んだファラフを見て、クァトランは苦笑して言った。
「別に呼びやすい言い方でいいわよ」
「…………………………クァトさん?」
「…………あんた結構距離の詰め方凄いわね、アズマに対してもそんな感じ?」
「あ、いえ、そういうわけでは……ミツネさんはミツネさんなので」
「……まぁいいわ、それで?」
「……その、クァトさん、《
これはもう本当に体感的な話になるが、一般的な『10』の《魔力》を注ぎ込むと浮力に『4』、推進力に『4』を割り振る。余った『2』は変換の際に生じるロスだ。
注ぎ込む《魔力》の量の調整、それを浮力と推進力にどれぐらい割り振るか、《
「そりゃね、飛ぶだけなら簡単よ」
ファラフの問いに、クァトランはあっさりそう言ってのけた。
もちろん、簡単なわけがない。っていうか、普通は無理だ。魔法少女が単独で飛べるなら、そもそも《
ただクァトランは根本的に生産できる《魔力》の量と質、そして出力が規格外だ。
ファラフ達が一度に電気をどれぐらい使うか、という話をしている横で、原子力発電所そのものをバリバリに稼働させているのがクァトランなのである。
彼女は《魔力光》をぶちまけるだけでその勢いで空を飛べるし、実際に浮遊している所を見たことがある。競ったことはないが、《箒(ブルーム)》に乗ったファラフと比べても、多分遜色ない速度を出せるはずだ。下手すれば追い抜かれる。
「でも、そうも言ってられないのよ。近いでしょ」
「…………? 何が、です?」
「
「……ああ、なんだか、この時期……そう、ですよね。《
ファラフもクァトランも《
何かしら、偉い人の生誕祭……らしく、ケーキを食べたりプレゼントを交換したり、樹に飾り付けをしたりする。
詳しい概要はわからないが、皆楽しそうにしてるし、美味しいものを食べられるしで、なんかそういう感じの日なんだな、と思っている。
「で、私はそのクリスマスで仕事をしないといけないの」
「お仕事……?」
「ガキ共にプレゼントを配って回るんですって。それを積んで飛び回るためのソリ型の《
ファラフが愛用している《
航空力学的には空気抵抗が大きく速度が出ない、世間一般的にはレジャー向けの製品として知られているが、ファラフはこれを駆使して《箒競争》を勝ち抜いたのである。
そして今、クァトランが御そうとしているのは、積載量のある大型の《箒》なのだろう。《地球》で言うと運送用のトラックのような感覚のものだ。
「なるほど…………あの、なんでそんなことを、クァトさんが?」
ファラフの中のクァトランのイメージは――誰に聞いても大きくは変わらないはずだ――我儘・暴君・最強である。
頼まれてプレゼントを配るなんて真似、どういう経緯だか全く想像がつかない。
「私じゃねーわよ、クローネとニアニャ。奉仕活動の一環」
「ああ……」
いつも一緒でゲラゲラうるさい、しかし常軌を逸した戦闘力を持つ二人のクラスメイト。クローネ・クローネとニアニャ・ギーニャ。
二人は《魔法の世界》の法律でそれはもうしっかり実刑判決を受けている……が、何かしらの理由で恩赦を受けて、クァトランの監視下で学園生活を送ることを許されている。
……のだけれど、それ以外にも様々な仕事が課され、それらを行うことで品行方正に過ごしていますよ、法の裁きを遵守していますよ、というところを見せないといけない。
「あいつらが二人セットで仕事するってことは私も一緒にいないといけねーの。しかも逃亡防止の為に《
「それで最近、毎日練習を……」
「本番はもう五日後だから、そろそろなりふり構ってらんねーのよ。荷物ごと海に墜落したら、流石に『あ? 何か文句ある?』で睨み効かせるわけにはいかなくなるし」
この人、普段はそれで乗り切ってるんだ、という感想を抱きつつ、ファラフは考える。
クァトランは《魔力》のコントロールが得意な魔法少女だ、にもかかわらず、《
理由は、なんとなく想像がつく。そしてクァトラン本人には気付けないだろうな、ということも。
「その、多分……なんです、けど、《箒》の変換機構が……邪魔をしてるんじゃないかな、って」
「?」
どういうこと? と言いたそうな顔をするクァトランに、ファラフはなるべく言葉を選びながら答えた。
「クァトさんは、その……《魔力》が強すぎて、でも、自分でそれを……押さえつけてますよね」
「まあ、そうね」
「手元で操る分には、ともかく……《箒》の機構にクァトさんの《魔力》を流しちゃうと、それを《箒》側が制御できないのかな…って」
クァトランの《魔力光》はピュアブラック。何者にも染まらぬ最強の色、その制御は困難を極めるが、クァトランは超絶技巧でそれを成し遂げている。
しかし《箒》に《魔力》を〝流して〟しまうと、その制御がクァトランの手から離れてしまう。そして《箒》の変換機構ではクァトランの黒い《魔力》の出力を抑え込めない。
結果、クァトランからも《箒》からも制御の離れた《魔力》が暴発してしまう……つまり。
「………………それ、私、《箒》乗れなくない?」
「そ……うですね、物凄く高価で、クァトさんの《魔力》にも耐えられる制御機構をつけるか……、《箒》に乗るだけ乗って、全部自力で飛ばすか……」
「うーん……私一人が飛ぶのはともかく、他のモンを一緒に飛ばすのはちょっと無理ね」
「あ、それは無理なんですか……」
「だって勢いよく《魔力》ぶっ放してるだけだもの。《箒》のほうが壊れちゃうわ」
それはそれでとんでもないことなのだが、問題の解決には至らないようだった。
「あとは、暴走するのを前提で《魔力》を制御する、とか……」
口にしてみたものの、なんだか微妙な気がする。クァトランも『できっかなぁ……』くらいの顔をしているし。
「あ……そうだ、《箒》の変換機構を浮力だけに割り振ってみるのは……どうでしょう」
「んー、《箒》で浮き沈みだけをするってこと?」
「はい、推進力は、こう……自前で、ビュンと。変換機構を噛まさずに、方向だけ調整して……吹き出すようにすれば、自分でコントロールできないかな、と……」
浮力と推進力、つまり上に向かう力と前に向かう力が同時に制御を外れるのが問題なのだから、片方のみに絞れば良いのでは、というアイディアだ。
これはいけるのではないか? と思ったのだが、クァトランはむむむ、と眉を寄せた。
「それって《箒》を軽く改造すればなんとかなるモノなの?」
「ここまで極端な割り振りは、そう無いので……ちょ、ちょっと待ってくださいね」
ファラフはスマホを取り出して、メッセージアプリを起動した。
いくつか質問を入れると、すぐに返ってきた。
「……その、今、アイミちゃんに聞いてみたんですけど……〝アレイトラ〟を譲ってくれるって。必要なら、カスタマイズも……」
仕様としてはかなりピーキーな仕上がりになるはずだから、アイミなら喜んで引き受けてくれるだろう、とファラフは予測を立てた。彼女はスピード狂だが、それと同じぐらい腕利きのエンジニアなのだ。
「アイミ……ああ、隣のクラスの、アンタと競ってた奴」
「は、はい。アイミちゃんが使ってる〝アレイトラ〟は、《箒》の原材料なんです」
魔法植物アレイトラ、大きな蓮のような葉をつける樹で、《魔法の世界》でも限られた地域にしか生えていない貴重な植物だ。
《魔力》を注ぐと浮遊・推進する性質を持ち、全ての《箒》はこの葉をベースに作られている。原種のアレイトラは《魔力》の伝導率が百%に極めて近く、アイミなどは一切加工を施していないアレイトラの葉をそのまま《箒》として活用しているぐらいだ。広い《魔法の世界》を見渡してみても、そんな真似が出来るのはおそらくアイミくらいだろう。
「浮力に特化するように編み直して、機関部に組み込めば、なんとかなるかも……ただ、その、ちょっと、加工に、手間と、その……」
「ああ、お金が必要なら…………いや、まちなさい」
クァトランはしばし考え込み、それからずい、とファラフに顔を寄せてきた。
「ひゃ、な、なんでしょう……?」
「いい? お金に糸目はつけないわ。物凄く高く見積もりなさい。盛り盛りで。不要なオプションもガンガンつけていいから。常識を捨てて」
「へ? へ? え? い、いいんですか?」
「いいわ。許す。一言一句違わず伝えなさい」
「わ、わかりました……あの、アイミちゃん、そういう事言ったら、本当に凄いことになっちゃうと思いますけど……」
「いいのよ、考えがあるから」
何やら自信満々にそう言うので、ファラフとしては言われた通り、アイミに取り次ぐだけだ。
返事はすぐに来た。『ほんとにいいんだべ!?』という文面が返ってきたので、これでやっぱ無しね、と言ったら偉いことになりそうだ。
「そ、それじゃあ……お、お仕事、うまくいくといいですね……」
「適当にやるわ。ったく……なんていったっけ、あの、サ、サ、サ……」
「あ、聞いたこと、あるかも……えっと、
「それそれ、そんな感じの奴」
残念ながらこの場に、その間違いを正せる《地球》出身の魔法少女はいなかった。
「フフ、楽しみです……、あ」
「ん?」
「あによ」
「そう……いえば、あの……二十四日、ってリーンさんのお誕生日だった気が……」
「ふうん?」
本当にふと思い出したことだった。毎年、この時期が近づくと、メアがプレゼントどうしようっかなー、と考えていた気がする。
「こういう祝祭と誕生日が被る奴って可哀想よね、なんだかんだ一緒にまとめられたりするもの」
「あ……クアートラ王国でもそうなんですね」
「
「ふぇ? えっと……
《魔法の世界》と《地球》では……世界そのものが違うので当然と言えば当然だが……時間の周期が違う。一日は三十四時間だし、一週間は六日だし、一ヶ月は二十五日で、それが十一ヶ月で一年となる。
《地球》にいる間は《地球》換算の年齢で算出しているが、本来《魔法の世界》の暦に従った年齢だと、一歳くらい年下扱いになるのだ。
よって留学魔法少女はまず、一日のリズムに体を合わせることに苦労するのだが……閑話休題。
「げ、半年前じゃない。んー、まぁいいか、来年、適当に期待しといて」
「あ、ありがとうございます……その、クァトさんの誕生日は?」
「ん?
「も、もうすぐですね……お、覚えておきます」
「そりゃどーも。…………ははっ」
「ど、どうか、しました……?」
「……いや、四年近くクラスメートやってて、誕生日も知らなかったんだなって、今更ね」
中等部の一年から高等部の一年まで、一〇人のクラスメートは、数人単位でグループを作って、それ以上はあまり積極的な交流を持たなかった。
ファラフもそうだ。基本的にはミツネにべったりで、彼女の交友関係で、他の輪に入れてもらったような感じ。
きっかけは、やはり中等部三年の、進級試験だろうか。
あの時から……様々なものが一気に動き出した感覚がある。それは多分、気の所為ではないはずで。
「ぼくは……今からでも、知れて、良かったと思います」
偽りのない本心でそう言うと、クァトランは小さく笑い。
「そーね。私も」
そう言った。
冬コミ落ちましたが知り合いのサークルにねちっこく委託することになったので新刊出ます。
「魔法少女が終わらない!4 そして彼女は微笑んで言った」
の予定です、詳細はまたちまちま投稿しながら。