魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
孔を降りた先は、石と土が半々の、坑道のような階層だった。
声は断続的に聞こえてくる、それを追いかけて、私達は走る。幸い、途中で魔物に遭遇することはなかった。
やがてたどり着いた部屋の一つに飛び込んで……最初に目に入ってきたのは、
マザーウッドを倒したあとに出現したような、《迷宮》が機能として空けた孔……にはとても見えない。上の階層と、途中の断層までがぽっかりと見えてしまっている。
力づくで、強引にこじ開けたのだろう……破壊の痕跡が見て取れた。なにせ砕け散った岩盤がそこらに散乱している。
そして、その穴の下に、四人の魔法少女がいた。
「何考えとるんやアンタァ!」
「…………………………」
「どこに誰がいてるか考えもせんかったんか!? あァ!?」
今までに見たこともないような形相で、マジギレしているミツネさん。
その足元に座り込み、何かを掻き抱きながら慟哭するファラフ。
壁にもたれかかり、眉をしかめて額を抑えるラミア。
そして……ミツネさんに怒鳴られながらも表情を変えず、無言で腕を組むクァトランだった。
「ちょ……っと、タンマタンマ!」
険悪極まる空気だが、今にも殴り合いが始まりそうで、とてもじゃないが放置できない。
ファラフの元にかけよって、何があったの、と口を開きかけて、『それ』が見えた。
一言で言うなら、半壊した人魂だ。顔が半分崩壊していて、断面が黒い《魔力》に汚染されている。いつもファラフの傍らで、髭をなでつけながらホッホッホ、と笑っていた面影はどこにもない。
「ジーンっ! 待って! お願いだから…………っ!」
ジーンの体を形成する《
《
生き物に《
ファラフはその、《
《
ファラフの相棒であるジーンは、それよりもさらに高度で優秀な能力を持っていた。ファラフのあらゆる魔力操作をサポートし、固有魔法を手助けし、何よりかけがえのない相棒だった。
同じ機能を有する《
《
「…………えっと、ラミア、何があったか聞いてもいい?」
ブチギレのミツネさん、泣きわめきながらジーンを治療するファラフ、無言のクァトラン……もう尋ねる相手がラミアしかいない。
「……クァトランが穴を開けたんだよ」
その苦々しげな表情は、止められなかった自戒も含んでいるのだろうか。
「穴って…………え、これ?」
天井を指差す。まるまる迷宮の部屋一つありそうな、あの穴を…………?
「ああ、どうにも分岐が多くてね。マッピングとマーキングを繰り返しながら探索していたんだが……」
どうやら一方通行+隠し通路で構成されていた、私達とはまた違うタイプの
「……行き止まりと邪魔の多さに、クァトランの我慢の限界が来てね、
具体的に何をしたかは想像もつかないが、クァトランがイライラを《迷宮》に直接ぶつける姿は、ありありと想像できた。
ただ……。
「……
メアの問いに、ラミアは頷いた。
「《
最悪の
クァトランだって巻き添えを出すつもりはなかったはずだけど、いくらなんでも。
「クァトラン、これは……これに関しては私達に非がある、謝罪すべきだ」
もし、ここで素直にクァトランが謝っていたら、もしかしたらもっと違う結末があったのかも、知れない。
同行者であるラミアも、『止められなかった』という一点で責任を感じている様だけど、同級生に諌められて止まるくらいなら、クァトランは問題児扱いされていない。
「………………っる、っさいわねえ! 誰に口聞いてるわけ!? くだらねー《
決裂、という言葉が頭に浮かんだ。それはもう、絶対に言ってはいけない言葉だった。
間が悪く……魔が悪く。
バリン、とガラスが割れるような音がして、ジーンの形が崩壊した。
「ジー……!」
クァトランの黒い《
「っ、
ヒートアップしたクァトランは止まらず、ミツネさんも止まらない。
それでも、直接やりあったら、
「誰が身内ですって? はっ、有象無象共が随分と主張するじゃない。アンタ達なんて居ても居なくても変わらないっての! 大人しく目立たないようコバンザメやってりゃいいものを
掴みかかろうとするミツネさんと、怒りに任せて言葉を吐き出すクァトラン、二人の間を割くように、《
濃い《
仮にメアにファラフ並の器用さがあったら、《流星をみる人》はもっと凶悪さを増していただろう――ファラフの打ち出した五つの《魔弾》は、その形を大きく変化させていた。
弾というより矢に近い、細く鋭く絞り上げた三角錐。
「――――《
その形状は言うまでもなく、
気が弱く、大人しく、普段からおどおどしているから勘違いされがちだけど……ファラフ・ライラはクラス随一を誇る、変幻自在の《魔弾》使いだ。
「……あ?」
その殺意と技術は、少なくとも――クァトランの逆鱗に触れるには十分だった。
先端鋭い《魔弾》がクァトランの肌に触れて刺し貫く直前……ミントグリーンの光が、あたかも先程のジーンと同じ様に、黒い色に侵食されて、傷ひとつつけることなく
クァトランは何もしていない、防御のために《
ただそこに立っているだけ、身体に薄く纏っている《
濃い《
だからこそ、あらゆる色の中で最も濃厚な、
「返してよ」
それでも尚、ファラフは怯まなかった。
「…………ふざけるな、謝りすらしないで!」
相手がどれだけ格上で、どれだけ高貴な生まれだろうと、今のファラフには関係ない。
ただ、大事な友達を奪われた悲しみと悔しさ、それをくだらないと断じたクァトランへの怒りが、身体を突き動かしていた。
「返せ! 返してよっ、ジーンを……返せ!」
再び形成されていく《魔弾》、全《
「――――っるさいって言ってんでしょうが!」
バチンッ、と。
ファラフの《
ファラフの頭が弾かれて吹き飛び、地面を何度も跳ねて転がって、遠くの壁にぶつかってから。
ようやく、クァトランの指先から、小さな《魔弾》が発射されたのだとわかった。
あまりの速度と勢いだったので、私の目には捉えられなかった。
「ファラフ!」
ミツネさんが慌てて追いかけて――命に別状は……ええと、ない……はずだよね。
遠目から見る限り、ぐったりしてるけど、首から上が物理的に吹き飛んだとか、そういうダメージはなかった。気絶してるだけだと、出来れば思いたい。
「……くっだらねーのよ、友達だとか何だとか、死なせたくないなら最初から連れてくるなっての」
吐き捨てるように言ったクァトランは、そのまま踵を翻して、《迷宮》の奥へと歩きだした。
「おい、クァトラン! ……ああもう、すまない、リーン、メア。ファラフ達を頼むよ、私はなんとかあの馬鹿を連れ帰ってみる」
ラミアは私達に向かって一礼すると、クァトランの背を追いかけていった。
結局、気を失ったファラフを外に運び出す為に、私とメア、ミツネさんの三人がかりで、一度迷宮の外に出ることになった。
本日のリザルト、第一階層、攻略完了。用途の分からない宝石の入手。
……これを喜べたら、どれだけよかっただろう。
もう少しで一週目が終わるよ!