魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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☆『一回目』『一日目』『朝』☆ その3

 

「おっ…………お、はようっ、ござい……ます……っ」

 

 そんな折、前からぱたぱたと駆けてくる娘が、こちらを見つけるや否や近寄ってきて、朝の挨拶とは思えないほど、こっちが申し訳ないぐらいぺこぺこ頭を下げた。

 

 ぐるぐる巻のターバンに、南国の踊り子を思わせるようなエキゾチックなコスチューム。臍の部分に埋め込まれたアクアマリンの《秘輝石(スフィア)》、何より日頃から抱えている、A2サイズの大きな本は見間違えようもない。

 

「ファラフ、おはよ」

 

 同じクラスの魔法少女である、ファラフ・ライラだ。

 左目の下にある菱形の模様が、彼女が《魔法の世界(マギスフィア)》生まれであることを示している。

 

『ホッホッホッホ』

 

 音、というか声を発したのは、ファラフの顔の側に浮かんでいる、ターバン巻いてカイゼル髭を生やした水色の人魂だ。バスケットボールサイズのそいつは、極限までデフォルメされたランプの魔神とでも言うべき姿をしている。

 

「ジーンもおはよ、どうかしたの?」

『ホッホッホ……』

 

 ジーン、つまりメアがファラフの《使い魔(マスコット)》に挨拶すると、そいつは『やれやれ』の仕草をしながら自身のご主人さまを見た。

 

「あ、朝ご飯、もらうの、忘れちゃって……と、取りに来たんです、まだあるかな……」

「たくさん用意してあったから平気じゃない?」

「そうだよ、ボクも二つもらったよ」

 

 メアが賛同してくれたが、二つの内、片方はすでに胃の中に消えている。

 

「あ、そ、そうですか、じゃあ、ミツネさんの分も、もっていこう、かな……あ、ありがとう、ございます……また後で……」

『ホッホッホッホ~』

 

 性格はなんというか大人しくて引っ込み思案というか、クラスメイトの私達にすらあの態度なので、性格悪い組にはもうこれでもかというほど舐められているファラフなんだけど……。

 

「すげぇ露出だよね……」

「そ、そうだね」

 

 コスチューム自体は布が多いんだけど、肩、お腹、太ももがむき出しなデザインなので、見ててこう、ドキドキすると言うか。

 デビューしたら人気が出そうだとは思う。

 

 ファラフとジーンを見送って講堂に到着し、観音開きのでっかい扉を開け放つ。

 試験開始は九時からで、八時から待機可能、と説明を受けていたのだけど、すでに何人かの気の早い生徒が席に座っていた。

 

「おー、おはようさん、相変わらず仲ええねえ」

「ミツネさん、おはよ」

 

 真っ先に挨拶してくれたのは、頭の上でぴこぴこ動く、つんと尖った狐の耳に、木彫りの狐の面を頭に引っ掛けるように斜めに乗せて、巫女さんのようなデザインの……にしては袴というかスカートのスリットが深すぎるコスチュームの魔法少女、(あずま)ミツネさんだ。

 

 同級生ではあるけれど、魔法学園は飛び級・留年・途中参加が当たり前で、たしか私よりいくつか年上のはずだ。クラスでも皆のおねーさんみたいなポジションに居る。

 

「さっきファラフとすれ違ったよ、ご飯取ってくるって」

「ほんま? せやったら言うてくれたらええのになぁ、遠慮しぃなんやから」

 

 困ったように笑うミツネさんだが、それこそ、狐のように細い目を、更に細めて頬に手を当てる姿は、ものすごーく様になっていた。

 

「えへへ、カツサンドだよ、美味しかったよー」

 

 現物を取り出しながら、すでに一つ食べ終えたので味の感想まで添えるメア。

 

「朝から重たくあらへんの?」

「コールスローも挟んであるから、結構パクパク食べれたよ」

「へえ、おばちゃん、さすがやねえ」

 

 じわじわお腹空いてきたし、()()()()が来るとのんびり朝ご飯の暇がなくなるかも知れないし、私も食べちゃおうかな。

 サンドイッチの包装に手をかけると、目の前に影が降りた。

 

「ちょっと、講堂は飲食禁止よ」

 

 私達が講堂に入っても一瞥をくれただけで挨拶はしてくれなかった、もう一人の魔法少女だった。

 ツートンカラーのキャスケット帽、ぶっとい二本の三つ編み、眼鏡の向こうではいかにも融通の効かなそうなツリ目が、私達の行為を咎めるように、より細められている。

 

「食べるなら外で食べて」

「い、いいんちょ、大目に見てくんない? 結構お腹空いてたりして」

 

 彼女の名前はマグナリア・ガンメイジ。学級委員長だけあってマジメというか堅物と言うか融通が効かないと言うか……なにせ二つ名が“石頭の魔法少女”だもんね。

 ちなみにゴリッゴリの肉弾戦派だ。彼女が《魔弾》を撃ってるところを見たことがない。

 

「ルールよ、守りなさい」

 

 なもので、こういう状況になると、ルール至上主義の彼女を説得するのは不可能に近い。廊下での立ち食いも校則上では禁止なので、マグナリアの判断基準に従うと私達は食堂に戻るか、どこかの教室に入らないといけなくなる。

 

「まあまあ、委員長、そない、厳しいこといわんと」

 

 ミツネさんが身を乗り出して、私とマグナリアの間にひょこっと割り込んだ。

 

「今日は試験やし、食堂も人がいっぱいおってん。ご飯食べに行って試験に遅刻じゃ本末転倒やさかい、堪忍したってくれへん? この後ファラフもサンドイッチ持ってきてくれるんよ、追い返すの可哀想やん」

「駄目。ルールはルールよ、東ミツネ」

 

 マグナリアの目がもう一段階つり上がった、これ以上ゴネるとそろそろ拳が出る気配を感じる……横を見ると、お腹をすかせた羊さんであるメアが、サンドイッチを両手に持ったまま泣きそうな顔をしていた。すでに一つ平らげてるくせに……。

 

 ミツネさんもマグナリアも、それ以上何も言わず睨み合う、もう素直に外で食べてきますと言うのが一番角が立たない気がするのだけど……。

 

 

 

 

「あら、皆様、お早いですのね。ご機嫌ようございます」

 

 緊迫した空気を包み込むように、ふんわりとした声が室内に響いた。新たな人物が講堂に入ってきたのだ。

 最初に目に入るのは、豪奢な銀色のティアラ。次いで、特徴的な髪の毛と瞳、そしてコスチュームであるふりっふりのドレス――濃淡の差はあれどれもコンセプトの一貫したピンク色で統一された、さながらお姫様のような見た目の彼女の名前は、魔法少女ルーズ・リック。

 

 《魔法の世界(マギスフィア)》のリック家といえば、それはもう高名な貴族であるらしく、そのご令嬢であるルーズ姫(なんか自然にこう呼んでるし彼女も呼ばれて否定しない)は()()()()()()()()()()()()、いつもふんわりほんわりしている。

 

 今も、ミツネさんとマグナリアの間のバチバチとした空気などものともしないマイペースっぷりだ。

 あろうことか片手にしっかりとカツサンドの袋を持っていて、深いお辞儀で一礼すると、しずしずと歩いて真ん中の席にちょこんと座り、丁寧に包装を剥がし始めた。

 

 お姫様がカツサンドもどうよ、と思うが、原則として学園の中では〝あっち〟の立場などは一切考慮されず、すべての生徒は平等に扱われる事になっている。

 

 物を言うのは、実力だけだ。

 

「……ルーズさん、講堂は飲食禁止よ。食べるなら外で」

 

 であれば、当然、それを見逃す石頭ではない。私達に注意をした以上、ルーズ姫にも口を出さないのは彼女の方針に反するはずだ。

 

「あら、そうでしたの?」

 

 一方、咎められたルーズ姫は首を傾げて。

 

「ですが、わたくし、先程、廊下でお会いしたハルミ先生に、食事を頂きながら待つようにと言われたのですが……」

 

 ハルミ先生、つまりウチのクラスの担任だ。意外な所から助け舟が来た。

 

「…………」

 

 マグナリアが黙った……言い返せなくなった、と言うほどか弱い存在ではないので、それを『先生の許可が出た』と解釈するかどうかを考えてるんだと思う。

 ミツネさんを見て、私を見て、泣きそうなメアを見て、それからもう一度私を見て、大きくため息を吐いた。

 

「……わかったわ、撤回する。邪魔して悪かったわね。でも汚したらちゃんと掃除してね」

 

 融通の効かない堅物ではあるけれど、自分が退く時はちゃんと謝ってくれるので、委員長という立場を任されているのが、マグナリアという魔法少女なのだ。

 いや、()()()とか()()()にもずけずけものを言える娘が、そんなに居ないっていうのも確かにあるんだけど……。

 

「くす」

 

 マグナリアが席に戻るのを見届けたルーズ姫は、こちらを見て微笑んで、人差しを立てて小さくウインク、『内緒ですよ』の仕草をした。

 

「可愛すぎかよ」

 

 しっかり空気を読んだ上で、全部わかってたみたいだ。

 

「さすがルーズ姫やねえ」

 

 ミツネさんが喉の奥からコココ、と音を立てて笑った、本当に狐っぽい事するじゃん。

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