魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
あれだけしっかり励まされておいてあれなんだけど、その後、やっぱり崩落が発生して、予想通りジーンが巻き込まれて、ミツネさんがクァトランを糾弾して……という一回目と同じ流れとやり取りを経て。
最悪の空気のまま、夕食の時間が終わり、ああ、よく見ると委員長が表情を変えないまま凄い落ち込んでる……。
一回目の時も、もしかしてウキウキだったのかな……。
「んー…………」
部屋に戻ると、ファラフはやっぱり居なかった。
ジーンを失ったこともあって、傷心を慰めに星を見に行った……のかな。
時系列を考えると、この後、ラミアとルーズ姫が時間をずらしつつ、示し合わせて外に出てイチャこらかますはずだから、今から外に出て追いつけば遭遇する前に連れ帰れるかな。
「メア、ちょっといい?」
「ん? なあに?」
「ファラフを探しに行きたいんだけど、ついてきてくれる?」
私の顔を数十秒、じーっと見つめていたメアは、やがて柔らかく微笑み、
「ん、いいよ」
と言ってくれた。
ペア決めの時に委員長を選んだことに関しては、どうやらこの場では水に流してくれたらしい。
「何か羽織ってった方が良いかも、寒いから」
「そう? じゃあちょっとまってね」
下手を打つと命の危機がある場所にメアを連れて行くのは極力避けたいんだけど、万が一の事態に陥っても、ファラフ込みで三対二なら瞬殺を免れるんじゃないかという予想もあり。
いや、私は戦力に数えられないことを踏まえると二対二か? まあ壁ぐらいには……。
「おまたせ、行こっか」
ナイトドレスにガウンという出で立ちのメアを伴って、誰も居ないロビーを通って扉を開けると、冷えた風がちょうどひゅうと吹いてきた。
「ひゃ、ほんとだ、さむーい! わ、見て見て、リーンちゃん、星が凄い綺麗!」
一瞬、身震いしたメアも、すぐに星の光に目を取られた。
冷えている分、空気が澄んでいて……何度目かの星空だけど、本当に綺麗だ。
後顧の憂いなく、二人で夜の無人島を散歩なんて出来たらよかったのだけれど。
「って、遊んでちゃ駄目だよね。ファラフちゃん、きっと落ち込んでるし……」
「だね。多分砂浜の方に居ると思うんだけど……」
不謹慎、とは違うけれど、無邪気にはしゃいでいる場合でもない。
ざくざくと土を踏みしめて、少しの間、言葉もなく、二人で並んで歩く。
その沈黙を、特に不快とは感じない、メアもきっとそうだろう。
こんな状況でなければ、これだって楽しい思い出の一つに…………いや。
……時間を遡る、というのは、他者との積み重ねを喪失する行為だ。
私はクァトランやクローネに親近感を抱いているけれど、今屋敷にいる二人は、私のことをただのクラスメートとしか思っていないだろう。
今からクァトランと友達になるのは、多分不可能だ。
だからといって、同じルートを選んだところで、全く同じ会話が出来るわけじゃない。
似たような出来事を重ねて、似たような関係になれたとしても、それは私が最初に親しんだ彼女達ではなくて……つながりも、喜びも、あるいは憎しみも、敵意も、それらは失われてしまう。
メアとのこの時間も、明日を過ぎて八回目を終えれば、私の中にしか残らない。
私は、目的のために必要なことなら、そういうのは平気な奴だと思っていたけれど。
「リーンちゃん? どうかした?」
「……ん?」
「凄い悲しそうな顔してるよ? 大丈夫?」
「……大丈夫」
「じゃ、なさそう」
「そう見える?」
「風邪ひいた時とか、骨折った時とか、痛くて辛いけど、やることがあるからーって、ずーっと我慢してるときの顔」
「そんなにかぁ」
まあ、主観的にはもう一週間以上、緊張状態に放り込まれてるわけだし。
その度に、死んでるわけだし……。
「試験、そんなに大変なの?」
「すっげぇ大変、ハルミ先生の顔を五、六回は殴らないと気がすまない」
「そ、そんなに…………」
本当にそんなにだよ。
ただの被害者で居られたら、あるいは無関係でいられたら、どれほどよかったか。
「ま、でも、もうちょっとでなんとかなるかも知れないからさ」
「……本当に?」
「ほんとほんと。終わったら、メアに沢山慰めてもらうからさ……」
「え、ボクの言うことを聞いてくれる方が先でしょ?」
「メアまで私に優しくないー……」
「ペアに選んでくれなかったこと、ボクが気にしてないと思ってるの?」
「すっごい根に持たれてた……」
全然水に流れてなかった。メアの恨みは後を引くので、なるべく後腐れないように精算しないと行けないが、さてどうしたものか……。
そうこうしている内に、砂浜へと辿り着いた。
ファラフの姿も、ついでにラミアやルーズ姫の姿も見えない。
……まさかもう噴水に沈んでないだろうな、と思ったその時。
「……リーンちゃん、声、聞こえない?」
「ん?」
メアがくいくいと私の服の裾をひっぱり、耳をそばだてた。
「…………ぃ……め……な……………………い……」
すすり泣くような、こぼれるものを必死でこらえて押し殺しているような、そんな声が、確かに聞こえてくる。
「リーンちゃん!」
先に聞きつけたメアが、生い茂る草木に向かって駆け出したので、私は慌てて後を追いかけた。
十秒ぐらい藪をかき分けた先にあった、小さな砂浜の真ん中で。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
膝をついて、溢れる涙を拭おうともせず、ただただ、謝罪の言葉を繰り返し続ける、ファラフが居た。
メアも、私も、言葉がなかった。
これだけの悲壮を背負った娘に、なんて声をかければ良いんだろう。
多分、私達にも気づいていない。震える小さな背中を、ただ見ているだけしかできなかった。
おおよそ十分ぐらい経っただろうか。
泣き止んだ、というよりは、涙も声も枯れてしまって、何も出せなくなってしまったような感じで、蹲ったまま顔を上げることはしなかった。
メアに視線を向けると、同じことを考えていたらしい……お互い、小さく頷いて、私はファラフの肩に手をおいた。
「……大丈夫?」
「――――――っ!?」
その驚き具合と、飛び退き方たるや。
危うく波打ち際に突っ込むんじゃないかと思うぐらい跳ねて、それから、やっと私達に気づいたらしい。メアと私を交互に見て、何で、と小さく呟いた。
「部屋にいなかったから、心配したんだよ」
「――――ぼ、僕、僕、は…………」
「……ファラフ」
じくじくと、心臓に鈍い痛みが走る。
この悲劇を、私は防ごうと思えば防げた。これを回避する方法は、もう分かっていたはずなのに。
何で私は今まで、『次があるからいいか』なんて思ってたんだろう。
全てを無かったことにして、やり直せる?
やり直す前に生じた痛みや苦しみは、本物なのに?
「ジーン、ジーンを…………」
ジーンを、信頼する《
その悲しみに寄り添うことが、今の私に、どうしてできるっていうんだ。
メアに来てもらってよかった、と心の底から思った。
だけど――ファラフの口から飛び出してきた言葉は。
「――――ジーンを、僕は、殺しちゃったぁ…………」
「……え?」
予想もしてなかった、それは
☆
再び涙ぐみ、言葉を詰まらせるファラフを放置して行くわけにもいかず、二人で肩を貸して、屋敷に引き返すことにした。
クァトランの短気から生じた迷宮の崩落によって、たまたま居合わせたファラフの《
これは、放っておいたらほぼ確実に発生する
いくら同じメンバーで同じ迷宮に同じ時間に挑むとは言え、
「っと、危ない危ない」
「?」
立ち止まって、手で進行を制する私に、メアは首を傾げた。
「リーンちゃん?」
「ちょっと待って」
《
透明な《
「?」
意図がわからず、どういうこと? と視線で問うてくるメアを、私はまあまあ、とジェスチャーで宥めた。
四、五分経過してから藪を抜け、元のルートに合流した所で、
「何をしているんだい? 君たちは」
……ラミア・ジュリィが、帰りの遅い子供を咎めるような表情で立っていた。
「やあラミア、夜の散歩?」
私が努めて気さくに話しかけると、ラミアはやれやれと肩をすくめた。
鎧を脱いで、シンプルなワンピース姿の……例の格好である。
「そんな所さ、眠るにはまだ少し早かったものでね」
笑顔でそうは言うものの……うん、私にはわかる。
その裏に潜んでいる、仄暗い怒りの感情が……。
これは推測だけれど、ラミアとルーズ姫はこの砂浜で合流し、ここぞとばかりに逢瀬を楽しんでいたはずだ。
しかしすぐ側で《
知られたくない事実を知られたから口封じをしてるだけで、ラミア達だって別に好き好んでクラスメートを殺したいわけじゃないだろうから、こっちの居場所さえ教えられれば、ラミアはルーズ姫を先に逃がし、自分は私達の足止めをしてくれるだろうと踏んでいたわけだけど、うん、正解だったみたいだ。
「っく…………ぐ…………うぁ…………」
まだ落ち着きを取り戻せないファラフの様子を見て、ラミアは心苦しそうに眉を寄せた……ああ、この心配そのものは、多分本当なんだろうな。
「…………色々あったのだから、致し方ないか」
「うん、私達は屋敷に戻るけど、ラミアは?」
「海風に当たりに来たものでね、もう少し涼んでいくさ」
「了解、風邪ひかないようにね」
「はは、君等こそ」
そんな当たり障りのない、穏当なやり取りを済ませて、私達は屋敷へと戻っていく。
「よくラミアちゃんが居るって分かったね」
メアの質問に、私は空笑いで答えた。
「勘だよ、勘」