魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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クァトランの夢

 

 一人の少女がいる。長い髪の毛をツインテールに結い上げて、立派な二本の角が生えた、可愛らしいドレスに身を包んだ、まだ三歳かそこいらの、幼い子供だ。

 

 額には楕円形の()()()()が埋め込まれている。

 ただ、その石はまだ自身の色彩を宿しておらず、自ら《魔力(エーテル)》を生み出すことはない。

 私の石は、一体、何色になるんだろう。

 

 一番上の姉上のように、王家が継承してきた、美しく高貴な真紅血色(ノーブルブラッド)までは流石に望まないけれど、中姉様みたいな力強い鳩血色(ピジョンブラッド)? ちい姉様はもっと濃い色が良かったと愚痴をこぼすけれど、少女自身はとても綺麗だと思う、苺血色(ストロベリーブラッド)だってとっても嬉しい。

 

 石を額に宿す魔法少女は珍しく、優秀であることの証なのだという。

 

 お庭のテーブルに、珍しい《地球(アースフィア)》産のお菓子を並べて、姉上達の膝の上にのって、頭をなでてもらいながら、『クァトは何色になるのかな』とお話をするのが、少女は何より好きだった。

 

 

 

 

 

 ノイズ、ノイズ、断線、ノイズ。

 

 

 

 

 

 一人の魔法少女がいる。長い髪の毛を、角のように拵えたツインテールに結い上げて、立派な二本の角が生えた、額に純黒の《秘輝石(スフィア)》を宿した、十歳ぐらいの子供だった。

 

 少女は一人で歩いている。周りには誰も居ない。誰かに近づいても、逃げるように遠くに行ってしまう。

 待って、行かないで、と叫びながら、走って追いかけるけれど、やがて誰も、いなくなってしまった。

 

 もうどれぐらい、姉上達の膝に乗せてもらってないのだろう。

 もうどれぐらい、一緒にお茶を飲めていないだろう。

 もうどれぐらい、一人での食事の時間を過ごしたのだろう。

 

 一人であることが、辛くて、悲しくて、さみしくて、凍えてしまいそうで、その場でしゃがみこんで、泣いてしまった。

 

 

 

 

 

 ノイズ、ノイズ、断線、ノイズ。

 

 

 

 

 

 一人の魔法少女がいる。長い髪の毛を、角のように拵えたツインテールに結い上げて、立派な二本の角が生えた、額に純黒の《秘輝石(スフィア)》を宿す、少しずつ女性として育っていく最中の子供だった。

 

 笑顔を繕った仮面をつけた者たちが、魔法少女の周りを取り囲んでいた。

 後ろ手に刃を、金槌を、魔法の杖を持ちながら、褒めて、称えて、崇めているのに、誰も彼もが怯えと畏怖を隠しきれない。

 

 魔法少女はそんな無礼者達に、精一杯に応じた。助けを求められたら、力を振るった。

 時には身を切り崩して、望むものがあれば、手の届く限りで与えた。

 誰かに側にいてほしかったから、誰かに認めてほしかったから。

 

 彼らは一斉に仮面を外す。恐怖や怒り、憤り、妬み、憎しみ、恨み辛み。

 様々な感情が記されていた、様々な欲望が記されていた。

 そこには誰一人として、魔法少女を好きな人はいなかった。

 

 

 

 

 ノイズ、ノイズ、断線、ノイズ。

 

 

 

 

 

 一人の魔法少女がいる。長い髪の毛を、角のように拵えたツインテールに結い上げて、立派な二本の角が生えた、額に純黒の《秘輝石(スフィア)》を宿す、まだまだ未来はあるけれど、一旦は女性として、在る種の完成に至ったような、メリハリのある身体をしていた。

 

 魔法少女の側には、白猫と黒猫が居た。言うことは聞かないし、大騒ぎするし、ドレスに爪を立てるしで、腹立たしくて仕方がない。

 

 殴っても怒鳴っても言うことを聞かないどころか、にゃーにゃー騒いで擦り寄ってきて、時には噛みついてきたりもする。

 

 イライラが募ってかまってられるかと放って置くと、やっぱりにゃーにゃー鳴いて、後を追いかけてくるものだから、いつしか二匹を伴う事が、魔法少女の日常になっていった。

 

 寂しくはなくなったけれど、時々、胸元から何かがぽろりぽろりとこぼれていく。

 ぽっかりと、大きな孔が空いているのだ、と気づいても、それを埋める方法が、魔法少女にはわからない。

 

 

 

 

 ノイズ、ノイズ、断線、ノイズ。

 

 

 

 

 

 クァトラン・クアートラは、一人で踊っている。

 

 優雅で、洗練されていて、誰がどう見たって一番だと、一目でわかる立ち振舞いで。

 

 舞台の袖で、黒猫と白猫が、ラッパを鳴らして、笛を吹いて、踊りをやんやと盛り上げている。

 けれど、舞台にあがる者はいない、観客もいない。どこにも、誰も。

 

 時折、虚空に向けて手を差し出してみるものの、やっぱりその手を取ってくれる人はおらず、やがてステップを踏むのを止めて、すっと舞台を降りてしまう。

 

 少し離れた場所で、笑い声と音楽と、ぎゃあぎゃあ騒ぎながら、ダンスを踊っている者たちがいる。

 品もない、上手でもない、ステップはめちゃくちゃで、とてもじゃないけど社交界じゃあ相手は務まらないようなのばかり。

 

 だけどひたすら楽しそうで、どうしようもなく目を奪われて、視線を離すことが出来ない。

 演奏を止めた黒猫が、ひょいと立ち上がって、寄ってきて、問うてくる。

 

 

 ここにいていいの? ほんとうは、あっちにいきたいんじゃないの?

 

 

 そんな事ないと言い返して、ふんと鼻で笑って、少し考えて。

 やがて、そちらに向けて手を伸ばしてみるけど、勿論、立ち止まったままじゃ届かない。手を伸ばしていることにすら、気づいてもらえない。

 

 立ち上がって、一歩、二歩と近寄ってみて、それでも、向こう側にはまだ届かない。

 せめて向こう側に、こちらに気づいてくれる人がいれば。

 

 そうして、手を伸ばしてくれたとしたら。

 指先が触れ合う距離にまで、近づけるかも知れないのに。

 

 淡い期待を諦めて、クァトランは手を引っ込めた。黒猫の頭を撫でてやって、白猫を呼び寄せて、膝に乗せて、瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 ノイズ、ノイズ、断線、ノイズ。

 

 

 

 

 

 

 大きな大きな孔がある。

 どこまでも黒くて、どこまでも深くて、中にはよくないものが、みっちりぎっしり詰まっている。

 普段は蓋をされているのだが、今日は何故だか違った。

 重しになっている四本の柱の内の一つが、ガラガラと崩れているのだった。

 だから、彼らは表に飛び出した。

 

 

 

 良くも閉じ込めてくれたな、好き勝手してくれたな。

 絶対に許さないぞ、許さないぞ許さないぞ許さないぞ。

 

 死ね 死ね 死ね 死ね 殺してやるぞ。

 

 

 

 

 黒い本流が、孔の外から出ようと暴れまわる。途中にあるものすべてを壊して、中身を全部かき回して、ぐちゃぐちゃにしてぶちまけて、それでも足りない、認めない。

 

 ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズ。

 ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――断線。

 

 

 

 ☆

 

 画面が真っ赤に染まり、次に真っ黒になって、最後に凄まじいノイズを走らせてから、もう一度真っ黒になって、それ以降、何も映らなくなった。

 

「………………」

「すごい、悪夢……だったのかな。画面が消えちゃったってことは、目が覚めたのかも」

「いや」

 

 メアの推測が外れていることを、私は知っている。

 

「クァトランは、死んだ」

「……え?」

「…………ありがとう、メア。見たいものは、見れた」

「……リーンちゃん、それって、どういう……」

「明日、説明するよ。今日は、戻ろう」

 

 説明に、納得してくれたとは思わないけれど……私の様子を見て、メアはそれ以上何も言わず、私の手を取って、またぷかり、と宙に浮かんだ。

 

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