魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

64 / 110
エピローグ その2

 

 

「ちょっと、遅いわよ」

 

 扉を開けて投げかけられる第一声も、特に悪意があるわけじゃなくて、挨拶みたいなものだとわかれば、特に気になることもなくなった。

 

「先生に色々文句言ってたんだよ」

「ああ、それはいいわ。どんどん言ってやりなさい。ハルミは一回痛い目見るべきよ」

「それは私も本当にそう思う」

 

 ……ナイトドレスに着替えて、()()()()()()()()()()()の印象は、普段の姿とかなり異なっていて、暴君の威圧感は鳴りを潜めて、お姫様度合いが高くなっている。

 

「何ボサボサしてるのよ、さっさとして」

 

 うん、まあ、見た目の問題であって、中身に変化はないんだけども。

 一人で使うには大きすぎる、キングサイズのベッドに腰掛けたクァトランの後ろに回って、膝立ちになり、まだところどころ湿ってはいるけれど、ドライヤーで乾かしてふんわりとした質感になった髪の毛を持ち上げた。

 

「どうせなら別に私が洗ってあげても良かったのに」

「アンタと同じ風呂に入るのはぜぇったい嫌」

 

 両手で豊満な胸元を抱きしめながら、クァトランは少しだけ振り向いて、器用に私を睨みつけた。

 

「やっぱりもうちょっとかかりそう?」

 

 ()()を掘り返されると私のほうが分が悪いので話題をそらす。

 幸い、クァトランもそれ以上続けるつもりはなかったらしく、ええ、と素直に肯定した。

 

「くっついたとはいえ、細かい動きはまだし辛いわ」

 

 あの日、身体から切り離されたクァトランの右肩から先は、幸いにも原型をとどめた状態で発見され、治療系魔法少女の奮闘と、クァトランの規格外の回復力によって、無事にぴったりとくっついたのだった。

 

 何でくっつくんだよ。

 

 ただ、自由自在に動かせるようになるには、流石にしばらく時間がかかるらしく、その間、クァトランは悪魔を『孔』に封じておく為に必要な、髪の毛の細かな結い上げができないので――――。

 不肖私、語辺リーンが、就寝前のお手入れ役に、抜擢されたのだった。

 

「……毎回怖いんだけど、ほんっとうに起きてる間は大丈夫なんだよね?」

「一時間くらいなら自力でなんとかなるわ。疲れはするけど」

 

 だからこそ睡眠中に、寝返りで角が解けるように、なんて迂遠な暗殺方法が選ばれたわけで。

 なので、間違っても解けないように、丁寧にしっかりと編み込んで、ご自慢のツインテールを仕立て上げていく。

 

 細く、透き通った薔薇水晶(ローズクォーツ)のような糸の束。

 ふふ、いい艶だ。薦めたシャンプーとトリートメントをしっかり使っているなあ……?

 もうちょっと、もうちょっとで理想の髪の毛になっていくぞ……待ってろクァトラン最強ツインテール計画…………。

 

「あっだああっ!」

 

 後ろ向きにデコピンを放つという器用な真似をするクァトラン、壁まで吹っ飛んで後頭部を強打する私。

 

「邪悪な気配を感じたわ」

「何も言い訳できない……」

 

 おかしい、クァトランは髪の毛を高品質に保ち、私の欲望は満たされるwin-win関係のはずなのに……。

 

「…………はい、できたよ」

 

 そしてこれ以上ふざけると後に響くダメージを与えられそうなので、ちゃんと仕事をしました。偉い。

 鏡で仕上がりを確認したクァトランは、ふうん、と頷いて一言。

 

 

「ありがと、リーン」

 

 

 そう言った。

 

「どういたしまして」

 

 ひょいとベッドから降りて、扉の前まで向かったところで。

 

「――――あ、ちょっと待って」

「ん?」

「マグナリア見つけたら言っといてくんない? もう完璧だから、次は私が勝つまでやるって」

「自分でいいなよ」

「嫌よ、負け惜しみみたいじゃない」

 

 勝つまでやる宣言も大分負け惜しみみたいなものでは……ま、いっか。

 

「それじゃ、おやすみ、クァトラン」

「ええ、おやすみ」

 

 クァトランの部屋を出て、扉を閉めて、私は自室へと向かって歩き出す。

 クローネの話によると、従者ペアは時間がある時は呼び出されて、強制的にUNOをさせられているらしい。

 

 ……あれって半分運ゲーだと思うんだけど、なぜだかクァトランが勝ってる所を一回たりとも見たことがない。

 今度、テレビゲームとかやらせてみようかな、レースゲームとか、体ごと傾けるタイプだったらめっちゃおもろい……。

 

 従者ペアと言えば、くーちゃんは何食わぬ顔で、今もニアニャの《使い魔(マスコット)》として振る舞っている。

 皆とりあえず見て見ぬふりをしているが……まあ、クァトランが居れば大丈夫だろう。

 今頃メアはシャワーを浴び終わってベッドに転がっている頃合いだろう、今宵も抱き枕としての務めを果たすべく頑張らなくては。

 

「…………あれ? そういえば」

 

 皆が嘘をついています。

 暴き立てる必要はなかったけど、知ることでハッピーエンドへと向かう導べにはなってくれたあの言葉だけれど。

 

 

 メアの嘘は、私の時間逆行を知っていたこと。

 ミツネさんの嘘は、クァトランを暗殺しようとしていたこと。

 ファラフの嘘は、ジーンを自ら殺めたこと。

 クローネの嘘は、自分の固有魔法。

 ニアニャの嘘は、魔法少女ではなく悪魔(くーちゃん)の《使い魔》だったこと。

 ラミアとルーズ姫の嘘は、お互い好き合っていたこと。

 クァトランの嘘は、許されない為の、暴君としての振る舞い。

 

 ついでに私も嘘をついたけど、それも含めて。

 

「…………委員長って、なにか嘘ついてたっけ?」

 

 まあ、今更どうでもいいか、と寮の廊下を歩いていたら。

 

「…………ああ、リーン」

 

 噂をすればなんとやら、マグナリア・ガンメイジが、ふらふらと正面から歩いて来る所だった。

 

「あ、委員長、ちょうどいい所――――どうしたの?」

 

 表情はいつもどおりの仏頂面な委員長なのだけど、どこか顔色が悪く見えるような気が、しなくもないような……。

 

「…………私は、嘘をついていたわ」

「へっ?」

「最近、にわかにクラスで流行り始めている気配を感じたから、ルールを確認していたの」

 

 え、何、ここにきてUNOの話?

 

「えーっと、うん、それで?」

「知らなかった、知らなかったのよ……私もローカルルールに踊らされてた……」

 

 苦しげに、悩ましげに、それでいて重大な悲劇に直面したかのように。

 マグナリア・ガンメイジは、私の肩に両手を置いて、

 

 

「公式ルールでは、ドロー2の上にドロー2は……重ねて出すことができなかったのよ……!」

 

 

 後悔と自責にかられ、大きく項垂れる委員長。

 

「私は…………嘘のルールを信じ込んで、勝利を得てしまったの………!」

 

 数秒間、考えて。

 やがて、私はその一言を、喉の奥から絞り出した。

 

 

 

 

 

 

「…………………………あ、そう」

 

 

 

 

 

 

 VERY VERY HAPPY END!!

 




ということで第一部完!
よろしければ高評価・感想等お待ちしております。

と見せかけてもうちょっとだけ続くんじゃ。
2巻の体験版(文庫50P分)引き続き同じペースで投下します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。