魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
2.《箒競争》代表選手選抜レース
☆ クロムローム魔法学園 語辺リーン
魔法少女は《
比喩表現ではなく、《
《
違いは《
「あーっ、もう、遅いっ!」
細長い《
私の透明な《
法的な括りでは東京都に属しているけれど、その実、クロムローム魔法学園は僻地の孤島に存在しているので、五月初めでも日差しは眩しく、暑い。
どこまでも広がる海が大きな鏡面となって、照り返す日光で上からも下からも照らされて――そんな生ぬるい空気を切り裂いて、魔法少女は空を飛ぶ。
私の使っている《
特別なカスタムもしてないから最高速度も加速力も平凡、その分、安定感はあるのだけど……小細工の出来ない実力勝負だと、自分が如何に魔法少女として貧弱かを思い知らされる。
「リーンちゃん、大丈夫?」
同じタイプの《
いつものナイトドレス風のコスチュームではなく、動きやすい体育着を着ているので、頭の角がなんともアンマッチな感じ。
「なんだよ! 私にかまってる暇があるのか、メア!」
「周回遅れのリーンちゃんの様子を見に来るぐらいは余裕あるけど……」
「なんだなんだ! 同情してるつもりか! 畜生! 馬鹿にしやがって!」
「すごいやさぐれてる……」
「感じは掴めてきたんだ、こう……ぐっとしてぎゅっと行けば良いんだろ!?」
「感覚的だね……」
「じゃあメアはどうやってるんだよ!」
「えー? こう…………がっとやってぼんってやって、びゅーんって」
「何の参考にもならないっ!」
こうやって会話している間にも、当然結構な速度で飛行しているわけで、落ちないようにバランスを取るのも一苦労だ。
前面には薄く《
魔法少女が行う
『出力』……《
『容量』…… スフィアにどれだけ《
『生成』…… スフィアが生産できる《
『付与』……自分の《
『変質』……《
『圧縮』……空間あたりの《
『拡散』……体外に放った自分の《
『吸収』……周囲の環境魔力をどれだけ効率よく吸収できるか。
『希釈』……自分の《
得意不得意は個々人が持つスフィアの性質に依存するのだけど…………。
《
私の無色透明な《
「それじゃ、先行くねっ」
そして一緒に並走してくれる、なんて甘い展開はなく、メアは出力を上げた。
穂先から私とは比較にならない量の《
メアは『圧縮』と『出力』に優れた魔法少女なので、戦闘時は大玉の《魔弾》をぶっ放すし、《
「……そんなメアでもウチのクラスじゃ下位なんだよなぁ」
結果が見えていても、めげない、しょげない、だって私が諦めない……ということで、《
スフィアから《
数十秒進むと、コースを示す為に設置された、空中に浮かぶ大きな
「…………ん?」
軌道を逸らさないように手に力を込めていたら、ボン、バンッ、となんだか物騒な音が聞こえてきた。
「視界を遮るのをやめていただけませんか、迷惑です」
「貴様こそ、品のない《
「ジュリィ家には鏡の一つもないのですか? ああ、申し訳ありません、自己認識を改めるなどという自制を貴女に求めたのは間違いでしたね」
ラミアとルーズ姫だ。一定の距離を取って追い抜いたり追い抜かされたりをしながら、時に《魔弾》を撃ったり剣を振ったりで、互いに牽制し合っている。
ちなみに、《
こと《
「…………お先にー」
……実際の所、速度を出すという点においては空気抵抗や
まあこの二人は《
脇をすり抜けてリングをくぐる。二人を置き去りにして先へ。
空気がかなり薄くなる所まで上昇すると、やっと横方向へ誘導するリングが見えた。
縦移動より横移動の方がそれは楽なのだけど……。
「面倒なコースだなぁ……!」
狭い範囲に配置されたリングを全部通ろうとすると、細かなカーブに縦横の移動が組み合わさった、複雑な挙動をしながら進む必要がある。ここからは速度もさることながら、正確性が要求される。
まっすぐ進んだと思ったら直角に、続いて角度をつけて下方向、と思ったら急上昇、左右への小刻みな移動を挟んで、今度はUターン。
一個一個の挙動を丁寧に……《
「すいません、横通ります!」
「うわっ」
そんな私の隣を、ギュンと追い抜いて行く影があった。
アラビアンな絨毯型の《
「いくよ、ジーン!」
『ホッホッホ!』
直角軌道、からの左右反復横跳び、次いで直滑降、からの急上昇。
そこから更に三度の連続急カーブ――というルートを、私の最高速度以上の速さで、リングの潜り逃がし一つなく駆けていく。当然だけど私の後ろから来たってことは、周回遅れにされているということだ。
速度とコントロールというのは基本的に反比例するものだけど……もう影すら見えなくなってしまった。
せめてもう一周差をつけられないようにせねば……と《
「よっ、ほっ、はっ」
カーブの度に一度止まって、方向転換する……という挙動をしているミツネさんがいた。
なんちゃって狐耳巫女のミツネさんの《
ぐらぐら体を揺らしながら進むミツネさんの隣に並ぶと、私に気付いて、お、と顔を上げた。
「リーンやん、頑張っとる?」
「まあぼちぼち。ミツネさんは?」
「見ての通りや、最初はぶっちぎっとったのに、ここで足止め」
ミツネさんはどちらかと言うと『出力』に長ける魔法少女だが、何かに《
「しかし張り切っとるなぁ、ファラフは」
「代表戦に出たいんでしょ? 去年はアイミに負けちゃったし」
去年の《
「新技も引っ提げてきたし、今年のファラフは一味違うよって。ウチは頑張ってサポートするだけやね」
一足先に《
「ええい、先いくよミツネさん!」
「はいな、頑張りや~」
緩やかに下降しながらも、ぐねぐねとカーブが続くコースを駆け抜けて……よし、地上が見えてきた。
「ゴールリング……!」
ひときわ大きく、金色に輝くリングをくぐり抜けて、そのまま大地に着地。
慣性にしばらく引っ張られて、地面を軽く走って減速、停止と同時に《
「もー限界、もーいい、もー疲れた」
代表は三周のタイムで競うルールだけど、ノルマのコース一周は果たした、私はよく頑張った。
《
重力に逆らい空を飛ぶ……と言うのは、ただそれだけで大変なのだ。
私のスフィアは溜め込める《
一周五〇キロメートルのコースを走りきれたのだって快挙なのだ、快挙。
「いえーい、おつおつ~!」
『頑張ったニャー』
『褒めてやるかナー』
ぴょこ、ぴょこ、と弾む足取りで近寄ってきたクラスメート……クローネが、ぶっ倒れた私を見下ろしながら、ニヤニヤと笑った。
「さんきゅー…………出来たら冷たい水をください……」
「あいよー! ニアニャー! スポドリ一丁~」
「はいはーい! リンリン、よく頑張ったねー」
クーラーボックスから冷えたドリンクを取り出して、ニアニャが駆け寄ってきた。
「今年はちゃんと一周できてえらーい!」
「ありがと、自分でもよくやったと思う……!」
去年までは途中で海ぽちゃしてたからね。
我がクラスの暴力装置の代表みたいな二人は、そもそも選抜戦に参加しておらず、本日はこうしてサポートを務めてくれている。受け取ったボトルに口をつけると、冷たい液体が喉を駆け抜けて、ようやく体の熱が、少しだけ冷めていく感じ。
「はぁー……順位は今どんな感じ?」
一息ついて、空を見上げる……なにせコースの長さが五〇キロということは、ここから見上げていても全体順位なんてわからないわけで。
「んー、ダントツなのは委員長かにゃー。それをファラフが追っかけてーって感じ」
「下馬評は変わんない感じかー」
「メアメアも頑張ってたけどねー。やっぱりあの二人は速いよー」
そうこう言っているうちに、キュイイイイイイイイイイイイン、という空気を裂く音……を通り越してなんかぶちまけているような轟音が、遥か彼方から聞こえ始めた。
「噂をすれば、きたきたー」
ニアニャがぶんぶんと手を振る先に、一つの光点が見える。それはぐんぐんとこちらに向かって近づいてきて――――――。
「うわっ」
轟音が真上を通り過ぎると共に、暴風が渦巻いた。
自慢のウィッチハットが飛ばないように抑え込みながら、発生源に視線を向ける。
とんでもねえ速度でゴールリングを通過した《
プシュウ、と音を立てて
少女一人が体を横にすれば、かろうじて中に入れそうなサイズの小型ポット、とでも言うべきだろうか。
空気抵抗を軽減する為にライフル弾のような形状をした軽金属製の外殻、《
…………《
決して安い買い物じゃない……私の感覚でいうと自動車を一台買うようなものなので、学生の身分では本来手の届かない価格であるということだけ添えておこう。
「――――少し遅いわね、タイムが落ちた」
《
「でもダントツ一位だよ~、さすがさすが~!」
「当然よ、これだけは譲れないわ」
駆け寄るニアニャからスポドリを受けとる委員長、なんというか様になっている。
流れる汗を袖で拭い、きらきらと日差しを浴びながらいい顔をしていらっしゃる。
それから少し遅れてファラフ、かなり間を置いてメア、更に少ししてからミツネさん、一定の距離を取りながらラミアとルーズ姫がほぼ同時……と、私と違って三週のノルマをきっちり終えた面々が戻ってきた。
「あーっ! また勝てなかったぁーっ!」
「本番は妨害ありだからね。期待してるわよ、ファラフ」
普段の控えめな印象はどこへやら、悔しさを隠さないファラフに、期待してるとは口にしつつも、ふふん、と得意げに腕を組む委員長。
選抜レースとは言うけれど、ウチの《
「で、三枠目はウチでええの?」
ふわふわと竹箒にまたがったまま、ミツネさんが委員長に尋ねた。
「ええ、戦力比を考えてもこれがベターでしょう。
ちら、と委員長が視線を向けた先。
私たちが先ほどまでその上を駆けていた、どこまでも青く広がる大きな大きな海。
……の、海面が、ゴボゴボと泡立ち始めた。
海底が沸騰してるのか? といわんばかりに、泡はどんどん大きくなっていって……やがて黒い影がざば、と顔を出した。
「ああああああああああああああああああああ!」
そしてそのまま上空にすげぇ勢いで真っ直ぐ吹っ飛んでいった。
今のは何か? 海坊主か? 新手の魔物か?
否、空中に残る黒い《
我らが最強の魔法少女、クァトラン・クアートラである。
「「ぎゃははははははははははははは!」」
『飛んでったニャー!』『受けるナー!』
クローネとニアニャは大爆笑、私は命が惜しいのでこらえてるけど、おお、自分の出力に振り回されて右に左に飛び回るクァトランがまるでロケット花火か何かのようだ。
しばらく空中を無軌道に飛び回っていたけれど、やがてボンッ、と景気のいい音がして、再度ドボンと海に落ちた。
「…………………………」
ゲラゲラと笑う従者二人以外が沈黙していると、突然、海面から数mの位置に、直径五mくらいの、黒いリングが発生した。《
そのリングからビュン、と海中に向かって帯状になった《
何だあれ、いや、クァトランが作ったんだろうけど……。
疑問をいだいた数秒後、ばしゃんと景気の良い音を立てて、全身ずぶ濡れになったクァトランが勢いよく飛び出してきた。
べちゃ、と音を立てて着地。豪奢なドレスや髪の毛の先端から、ぼたぼたと海水が滴り落ちて、地面を濡らしていく。
手には学園支給の《
なるほど、《
凄く器用な真似をするなあ……。
「「ぎゃはははははははははははははぎゃああああああああああああああ!」」
沈黙を守り続けていた他のクラスメートたちと違い、遠慮なく笑い続けていたクローネとニアニャは、クァトランがノータイムでぶっ放した《魔弾》で吹っ飛んで、結構遠くの方の海にぼちゃんぼちゃんと落ちていった。うーん生きてるかなあれ。
「最下位はクァトラン、記録無しと。……あなた、苦手な科目あったのね」
儚い命を散らした記録係の二人に代わって、委員長は淡々とスコアを記載していく。
「……………………」
クァトランはそれでも無言だったが、手にした《
……一応ベースは金属フレームのハズなんだけどな……。
誰も何もいわないと空気が悪くなってしまうので、ここは一つねぎらいの言葉でもかけておこうかな。
「ま、まぁ…………お、お疲れ?」
それが引き金になったのか、クァトランはビシャンと壊れた《
「こ、このポンコツが悪いのよーーーーーーーーー―――――――っ!」
聖クロムローム魔法学園、
『