魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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第二話 魔法少女はやるしかない。
6.《箒競争(ブルームレース)》が止まらない!


 

 

 

 『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』の《箒競争(ブルームレース)》に出場するような魔法少女は、大体の場合、専用の愛機を持っている。

 

 カリカリにカスタムされた機体であったり、独自の形状をしていたり。

 しかしそれらの造形に遊びはなく、全てが勝利の為に必要な要素として形状が追求されている。

 ライフル弾の様に流線型のボディを持つミスリル銀製の《(ブルーム)》もあれば、巨大な《魔力》噴出機構を有する《(ブルーム)》もある。

 

 そんな中では、Aブロックに配置された国立クロムローム魔法学園高等部一年月組の選手三人は、理想的な構成、とは呼びづらいかも知れない。

 

 マグナリア・ガンメイジはまだ良い。キサラギモーター往年の名機、〝ミツルギ弐式〟のブースターを改造し、操作性をピーキーにする代わりにより多くの《魔力(エーテル)》を蓄えられるタンクを搭載している。完全に同じ形のものはないにせよ、同系統のカスタムを施した選手は多く見られる。彼女の〝こだわり〟は、最前線にとっての常識だ。

 

 一方、ファラフ・ライラが乗っているのはひらひらとした絨毯型の《(ブルーム)》だ。アラビアンな柄で織られ、四隅にタッセルが施されている、少し大きめの長方形をした厚めの布。空気抵抗を強く受ける形状で、速度を競い合うこの競技に向いているとは言えない。ビジュアルイメージに引っ張られた、見た目重視の《(ブルーム)》で勝ち抜けるほど、予選は甘くない。

 

 東ミツネに至っては標準的(デフォルト)としてもいささか古い竹箒型だ。ハンドルもついていないので、バランスを取るのも一苦労だろう。

 ましてクロムローム魔法学園は毎年最下位、中等部では良い成績を出していたようだが……高等部からは文字通りレベルが違う。

 周囲の魔法少女たちは、認識の浅い深いはあれど、そう評価していた。ある程度一定の警戒をしてはいるものの、自分たちの走りをすること、あるいは役割を全うすることに集中しようとしていた。

 

 それが結果として、後々まで語り継がれる、第二十四回 『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』《箒競争(ブルームレース)》……後に予選の悲劇と呼ばれる凄惨なレースの序章の幕開けとなった。

 

 ☆

 

「きゃああああああああああああああああ!」

「嘘ぉおおおおおおおおおおおおおおお!?」

「や、やだっ! あんなに頑張ってきたのに! こんなっ、こんなぁっ!」

 

 

『おっと! アイフィス二年、優勝候補グルーミー・フルーミーがここで脱落だぁ! 後を追う様にエメラリア三年カリス・フェル! ルード二年クリスタ・クラスタも落下してしまったぁ!』

 

 実況解説の魔法少女が、失格となった魔法少女の名前を高らかに読み上げる。

 ええ、とか、わあ、とかいう悲鳴が外の会場から聞こえてくる辺り、かなり有力な選手だったらしい。

 ……当然のことだけれど、《箒競争(ブルームレース)》は《箒(ブルーム)》から落ちたら失格だ。再復帰は認めらないので、墜落しないように立ち回らなければならない。

 他にも、『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』における《箒競争(ブルームレース)》のルールをいくつか確認しておこう。

 

 一周三◯kmのコースを三周、一周毎の通過順で得点が加算されていく。ブロックごとにコースが違い、運営委員会の魔法少女たちが空中に引いた《魔力》のラインが目印となる。

 

 次、《箒競争》では妨害や直接攻撃が認められている。

飛行しながら《魔弾》を打ち合うのはある種のセオリーであり、速度を競いながら空戦を行う魔法少女の姿が見せ場である、と言ってもいいぐらいだ。

 そのルールを後押しするように、《箒競争》にはこんなルールがある。

 一チーム三人までの参加だが、ゴールを通過してポイントを貰えるのは上位二名分のみ。

 例えばクロ学の三人が一位、二位、三位を取ったとしても、チームに加算されるポイントは一位と二位の分だけで、三位分のポイントはその後ゴールした四位の選手に入る事になる。

 

 つまり、チームの内一名はポイントに貢献しない、という意味だ。

 もちろん、律儀に足の速い三人を選んで、上位に入る確率を上げるクラスもある……というか、それが王道なのだろうけど、私たち月組は人数が少ない都合で、早々にその選択肢を捨てている。

 

「ほい、ほい、ほいっと」

 

 というのを踏まえて――惨劇の中心に居るのは誰か。

 

 レースの最後尾に位置するその魔法少女は、あまりにゆったりとした速度で飛行しながら、しかし両手を《(ブルーム)》から離し、虚空を軽く摘んでは引く動作を繰り返す(、、、、、、、、、、、、、、、、、、)

 

「えっ、何――――――うわあ!」

 

 そしてその度に、前方を飛行している魔法少女は、後方に向かって引っ張られて(、、、、、、、、、、、、、)、バランスを崩して落下していく。

 東ミツネの固有魔法(オリジン)、《遠くの物を動かす魔法(ミツネ・マジック)》は……視界に収まっているなら、まるで手元に対象があるかのように、触れて、干渉することが出来る。

 

 先んじてゴールを目指そうとして、ミツネさんに背中を見せたら最後、速度とバランスを維持することを要求される《箒競争》の最中に、後ろからとんでもねえ力で引っ張られることになるわけだ。予測も対策もしてなかったらひとたまりもないだろう。

 

 この日の為に《箒競争》の訓練を積み重ねてきたであろう魔法少女たちは、最後尾にいる質の悪い狐のいたずらによって容赦なく海に、あるいは地上に叩き落されていった。

 

「っと、あれは掴めんねえ」

 

 しかし何事も例外というものはある、委員長と同じタイプの、体をすっぽり包んで〝乗り込む〟《(ブルーム)》は魔法少女当人の体が視認出来ない為、体を掴んで引っ張ることが出来ない。

 

 《(ブルーム)》本体に干渉することは可能だが、推進力に特化した物に下手に干渉すると、ミツネさん自身が引っ張り合いに負けて落下する危険性がある。

 

 そういう相手に対してはどうすればよいか……というのは、事前のミーティングで話していたのを聞いていた。

 

「……っ、やるじゃないルーキー、だけどね!」

 

 委員長の《(ブルーム)》と、他校選手の《(ブルーム)》が並ぶ。共に搭乗するタイプの機種、《魔力光(エーテルライト)》の光を吹き出しながら、競り合うように並ぶ。

 

「ここから先は経験と技術が物を言う! そう簡単には行かないわ!」

『おっと、ヴァミーリ二年、前回大会総合三位の芽吹リーフ! ここに来てクロムローム一年、マグナリアにアタックを仕掛けた! これはたまらないか!』

 

 ガツン、ガツン、と装甲同士がぶつかる音、怯んだ隙に細かく加速を入れるダーティプレイも、ルール上認められているならそれはテクニックの一つだ。

 

 クラスでタイムを競い合うのとは違う、競技としての《箒競争》が委員長に牙を剥く。

 

「そう」

 

 しかし――剥き出しになった牙が、皮膚を食い破るとは限らない。

 ミツネさんの妨害が通じない相手への対処法――正攻法で、ぶち抜く。

 

「――――退屈だわ」

「なっ――!」

 

 敵機の二度目のアタックが委員長機にぶつかった瞬間、一方的に相手の機体がバランスを崩した。委員長機は一切不動のまま、ブースターから放つ《魔力光》の量が膨れ上がっていく。

 マグナリア・ガンメイジの固有魔法(オリジン)は《自分の力を強くする魔法(マグナリア・マジック)》だ。自分の身体能力に限って、体力、洞察力、持久力といったあらゆるパラメータを強化することが出来る。

 

 そして《箒》は自分の《魔力》を推進()に変換する乗り物だ。

 

 《魔力》を使って強化した体に、固有魔法による強化を上乗せすることで、並の魔法少女を凌駕する身体能力を得るのが委員長の戦闘能力なのだ。

 では――例えば。

 《箒》が持つ通常の推進力に、固有魔法による加速()強化を施したらどうなるか。

 

「これじゃあ、あっという間に置き去りね」

 

 二重の強化によって爆発的な加速力を得た《箒》が吠える。この状態を見越して増築したブースターは、その高出力をしっかりと受け止めた。

 莫大な光を巻き散らかしながら、弾いたゴムのような加速。隣接していた機体をあっという間に置き去りにして、最前線に飛び出した。

 

『速い速い! クロムローム一年、マグナリア選手、しかし大丈夫か!? このままだとコースアウト一直線だ!』

 

 高速で動く物体は、当然のことだけど方向転換するのが難しい、慣性があるからだ。

 

 《箒競争》の予選コースは海を超え陸を超え市街地を駆け抜ける。あらかじめ空中に引かれたラインをはみ出せば、コースアウト判定を食らって失格だ。

 

 ましてこれは魔法少女の戦い。どれだけ速度を盛っていても、直角に曲がる凶悪コースを前に、減速タイミングを間違えたらひとたまりもない。

 

「この程度で減速? ――冗談でしょ」

 

 しかし委員長にブレーキという言葉は存在しない。駆け抜けると決めたら駆け抜けるのだ。

 わ、と悲鳴のような歓声。最前線を彗星の如く突き進む委員長の《箒》が、まさにカーブへ突入し――――――。

 

『ま――――曲がったぁあああああああああああ!』

 

 制動力(、、、)を強化した《箒》の速度が、MAXからゼロへ、一瞬で減速した。

 

 当然、中にいる委員長は強烈なGの反動を受けているはずだけど、そこはそれ、頑丈な魔法少女の肉体だ。まして耐久力(、、、)を上乗せして強化できる委員長にはなんの問題にもならない。

 

 華麗な《箒》捌きに、観客が湧いた。拍手と、叫ぶような歓声。

 後続の選手は後を追いたいだろうけれど、間にミツネさんが居る。

 彼女の前に出る事を警戒して、うまく速度を上げきれない。

 

「なら……っ!」

 

 妨害あり、攻撃ありのルールで、邪魔な魔法少女が居るのなら――墜としてしまおう、というのが当然の考えだろう。

 

「《空気を重たくする魔法(フレイア・マジック)》!」

「《見えない壁を作る魔法(シイナ・マジック)》!」

「《風向きを自分へ向ける魔法(シルファリア・マジック)》!」

 

 跳ね上がる空気抵抗、見えない障害物、突然生じる向かい風。

 彼女らも歴戦の魔法少女たち、初見殺しに驚かされても、それぞれが持つ固有魔法を併用しだせば全てに対応するのは不可能だ。

 

「っ」

 

 ジグザグな軌道を描いて回避を試みるミツネさん、しかしついにガン、と不可視の壁にぶつかって、《箒》から放り出され、自由落下を始めた。

 

「やった! これで――――」

 

 レースに復帰できる、と考えた魔法少女たち。

 だけど、充分に時間は稼いだ。

 なぜなら――――。

 

「ミツネ!」

 

 委員長が、コースを一周して戻ってきた(、、、、、、、、、、、、、)

 

「はいな、飛んでいきや!」

 

 そしてその姿を視野に入れた瞬間、ミツネさんは委員長機の先端を摘んで、前方に向けて(、、、、、、)引っ張った。

 ただでさえ強化された委員長機の速度に、ミツネさんの引っ張る力を加えれば、まさにカタパルト射出。あれに一周差をつけられて、戦意を保てる魔法少女はそういない。

 

 ミツネさんのリタイアを加味しても、予選突破に必要な得点を稼ぐのに充分なスコアだった。

 委員長が一位のポイントを三周分、そして…………。

 

「追いつくの大変でしたぁ」

 

 しれっと三位を一回、二位を二回獲得したファラフが続き、クロムローム魔法学園一年月組の予選突破が確定した。

 

 

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