魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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8-2.最高傑作の宣戦布告

 

 私たちがかき氷を食べ終えたのと、ちょうど同じぐらいのタイミングで……周囲の観衆が、にわかにざわつきはじめた。

 

「どうしたんだろ」

「有名人でも通ったんじゃねーですか?」

 

 その答えは割とすぐにわかった、魔法少女の一団が、私たちの前を通り過ぎたからだ。

 

 魔法少女のコスチュームは千差万別なので、基本的に学園ごとの制服、という概念はない。

 

 彼女たちもズボンだったりスカートだったり、マントだったり……服としてのジャンルはバラバラなのだけど、しかしモチーフというか、デザインが同じなのだ。白に金糸の刺繍が施された、統一性のある意匠。

 

 聖イーヴィス魔法女学院の生徒である、魔法少女は皆容姿が整っているけれど、彼女らは一様にキリッと顔が引き締まり、エリートの自負を漲らせていた。

 

「……………………ううっ」

 

 訂正、一名がぐしゃっと涙を流して泣いていた。

 

 ……いや、あれ、私たちが《集団戦(マギアパーティ)》で戦った選手じゃないか?

 最後にクローネと殴り合った……確かグロリア・グロースター。

 そして一緒にいるのは……他の四人は見覚えはないけど、一人だけ、私でも顔と名前を知っている魔法少女がいた。

 

「悔やむな、グロリア。君は全力を尽くしたろう?」

「でも、シャクティ……あんな、あんな戦いって、ないじゃないですか……!」

 

 シャクティーバ・シュラクシャリア……魔法少女の最高傑作。

 

 …………ああ、うん、もしかして、これはあれかな。

 予選落ちを慰める会なのかも知れない……心配そうに二人の様子を眺めている他の魔法少女は、後輩とかなのかも。確か三年生で、最後の『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』だったはずだし……。

 

「フレリアは今も泣いてます、ユーミィもアシュリナも……リシアンサスも、あんなに頑張ってきたのに……私、あの娘たちに何もしてあげられなかった……!」

 

 確か……そう、イーヴィスの選手たちは実力に相当の自信があったらしく、誰より先に戦線に出てゲームメイクをしようとしてたっぽいんだけど、こっちから見るとノコノコ出てきた最初の獲物だったから、速攻でクローネのぬいぐるみで囲んで袋叩きにしたんだよね……。

 

 勝てば嬉しいし負けたら悔しい。勝負ってのはそういうものだから、特に申し訳無さとかはなかったんだけど、直接こういう姿を見せられると、ちょっといたたまれなくはなってくるな。

 

 私は特に何もしてないとしてもだ……いや、作戦は立てたけども。

この場に居続ける気まずさは否めないし、早々に立ち去るのが一番だろうか。

 

「大丈夫だ、グロリア。キミの仇は私が討つ」

 

 なんか歯が浮くような、キラキラしたやりとりだ……見ててむずむずする。ちら、と隣を目を向けると、レイもどーでも良さそうに眺めていたので、まあ多分同じ感想なんだろうな。

 

 だけど、次にシャクティーバの口から飛び出してきたのは――そんな私たちの感想の、斜め上を行く言葉だった。

 

 

 

 

「あの穢らわしきクロムロームは、この『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』が終わった後、消えてなくなる(、、、、、、、)のだから」

 

 

 

 

「「は?」」

 

 二人の声が、同時に揃った。それは存外、大きくなってしまったらしく。

 それで――ようやく、向こうもこちらに気づいたみたいだった。

 

 ちらりとこちらを振り向き、小さく一言。

 

「……あれは?」

「ええと……クロムロームの選手でしょうか」

 

 シャクティーバの疑問に、グロリアが小さく首を傾げた。

 いや、私、一応あなたと戦ってるんだけどな……まあいいや。

 

 取り巻きを引き連れながら、座ってかき氷を食べる私たちに向かって一糸乱れぬ動きで向かってくるのはなかなか威圧感がある。

 

 遠くからじゃよく分からなかったけど、近くで見ると、彼女の視界を覆うレースの目隠しが物凄く精緻に編み込まれていることがわかる。

 

「失礼、聞こえてしまったかな?」

「ええ、とんでもねー寝言がね」

 

 シャクティーバの慇懃無礼と言って差し支えない態度に、いくら注意されても直らなかった舐め腐った敬語で応対するレイ。一旦黙ってるか。

 

「クロムロームは国立の魔法学園ですよ、あっち(マギスフィア)こっち(アースフィア)の物流拠点でもあります。『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』でどれだけ成績が低かろーと廃校になるわけねーでしょうが」

 

 あまりに真っ当すぎるレイの主張に、シャクティーバはふむ、と顎に手を当てた。

 

 真っ白で一切の汚れのない手袋だなぁ……目を隠しているから、眉と口ぐらいでしか表情が読めないのだけれど、あれは、そう。

 

 大人が物わかりの悪い子供に(、、、、、、、、、、、、、)どう言い聞かせようか(、、、、、、、、、、)――とか。

 

 そんな風に考えてる時の顔。

 

「誤解があるようだから訂正しよう――厳密には、今のクロムローム魔法学園の形が変わるだろう、という話だよ」

「それもわかんねー話ですけどね」

「それは簡単な話だ、責任者が変わるんだよ(、、、、、、、、、、)

 

 …………ウチの学園の責任者って誰だ? 校長先生? 理事長?

 いや、国立の学園に理事長っているのかな。校長のミステリア・ミステリカ先生は、なんかハルミ先生と凄く仲が良い感じなんだけど……。

 

「責任者ぁ?」

 

 私と同様、レイもピンと来ていないようだった。態度にも口調にも露骨に現れている。

 

 そんな私たちを……こっちが座っていて、向こうが立っている、という構図の問題もあるんだろうけれど。

 

 見下すように、見下ろすように。シャクティーバは、口元を抑えて嘲笑った。

 

「いや、失礼。無知もここまで来ると、いっそ滑稽で哀れだ」

「喧嘩売ってんなら買いますよ、今、ここで」

 

 その物言いを、止めようとも思わなかった。だって腹立つもんこいつ。

 

「やめてくれ、キミと違って私たちには守るべき矜持がある」

 

 あるいは、こちらから手を出させようとしているのかも、と思った。

 だって誰かと話す時、ここまで露骨に相手を下に見ることがあるだろうか。

 それとも、この態度の悪さが、魔法少女の最高傑作の本性ってことか?

 

安倍ハルミ(、、、、、)

 

 ……シャクティーバがその名前を口にした時。

 レイの目の色が変わった、いつでも立ち上がれるよう、僅かに腰が浮いて、次の相手の言葉次第では、多分手に持ったかき氷をぶん投げるだろうな、と思った。

 

 私は…………どうだろう、凪いでいるような、ざわついているような、不思議な心持ちだった。隣にレイが居なかったら、多分同じ反応をしてたと思うんだけど。

 

「クロムローム魔法学園を取り仕切っているのは、実質あの女だ。穢らわしき裏切り者(、、、、、、、、、)、悍ましき大罪人……邪悪なる虐殺者、あれが支配している限り、クロムロームに正しき魔法少女など育つまい。まずは頭をすげ替える必要がある」

「言葉選びには気をつけたほうがいーですよ」

 

 ……レイが纏う《魔力光(エーテルライト)》の密度が、じわじわと濃くなっていく。

 それは、魔法少女が臨戦態勢に入った証だ。

 

 一方、シャクティーバは泰然自若としていた。言動は挑発的ながら、《魔力光(エーテルライト)》のゆらぎは一切無い。何をされてもこの状態から対応できる、と言わんばかりの態度。

 

 出場選手が野良ファイトは流石にまずいか……一般大衆の眼の前でのドンパチは、下手しなくても出場停止ものだ。

 

「例え《個人戦(スターダスト)》に勝ったからって他の学園の人事にまで口出しできないと思うけど?」

 

 レイの手を抑えるように制して、私はようやっと口を開いた。

 すると、シャクティーバは今やっと私に気付いた、と言わんばかりにこちらに視線(見えないけど)を向けて、物凄く怪訝そうな表情をした。

 ……そんなにアウトオブ眼中だったか、私。

 

「ああ、失礼。ええと――ははは、それはそうだ。あくまで魔法少女協会の定める規定の範囲で、できる限り魔法少女の望みを叶えてくれるだけだからね」

 

 そんなことは当然だ、と言わんばかりに、シャクティーバは手を広げた。

 

 

 

「だから、特例で差し止められている(、、、、、、、、、、、、)彼女の死刑を執行をしてもらうのだ(、、、、、、、、、、、、、、、、)

 

 

 

 今度こそ――何を言われたかわからなくて、私は固まった。レイですら、目を見開いたまま。

 

「大罪人・安倍ハルミが今こうして表舞台に立っていられるのは、《地球(アースフィア)》と《魔法の世界(マギスフィア)》の関係性が始まった黎明期の立ち回りのおかげだ。死刑は下ったが執行を先延ばしにしている状態――――魔法少女協会が特例を定めているだけのこと」

 

 いや、待て待て待て。

 

「それを解除する。彼女を殺すのは私ではなく、法だよ」

 

 ハルミ先生に死刑判決が下っている――――それは知っている(、、、、、、、、)

 あの人がやったこと(、、、、、、、、、)を考えれば、当然の措置だということぐらいは、理性でわかる。

 だけどそれは、抑止力としてある種の安全装置みたいなものだって…………。

 

「バカバカしい」

 

 レイは冷静だった。意図的に、そう努めようとしているのだと思う。

 

「魔法少女協会が、はいそーですかって従うんですか、そんなの」

「厳密には彼女を含む、様々な要因で刑の執行を先延ばしにされている罪人たちの一括処理だよ」

 

 《地球(アースフィア)》と《魔法の世界(マギスフィア)》の関係は複雑で、今でこそこうして馴染んでは居るものの、元々の文化や法律が違う――歴史を辿れば、世界間で戦争までやったのだ。

 

 加害者と被害者、異なる文明の邂逅……その狭間で法の判断が難しくなっているような案件がいくつかある、っていうのは、授業で習ったことがある。

 その結果、受けるべき罰を受けていない者がいて、問題になっていることも。

 

去年私がそれを望んだ時(、、、、、、、、、、、)、いくつかの法と規則がそれを許さなかった」

 

 ――――こいつ、今なんて言った?

 

「だから、私が前回の《個人戦(スターダスト)》で優勝した際、魔法少女協会への限定的な参加を希望した。何が問題でそれが出来ず、何をどうすれば実現可能なのかを見聞し、検証を終えた」

 

 じわりと冷や汗が滲んできた。何を言ってるんだこいつ、という当初の感想がどれだけ的外れだったか思い知る。

 

 

「全ての障害を取り払い――再度の優勝を以て私の望みが叶うかを確認した際、魔法少女協会の理事会はイエスと答えた」

 

 

 もう外堀は全部埋まってて、《個人戦(スターダスト)》に優勝するというボタンを押すだけで、すべてが実現可能な所まで来ているんだ。

 

「――――――」

 

 とうとう、レイの《魔力光(エーテルライト)》が隠せないほど強く光った。

 ライムグリーンの淡い光が周囲に立ち昇る。

 

「っ、何するつもり!」

 

 そこまで臨戦態勢を見せれば、取り巻きの魔法少女たちも黙ってない。

 だが、身構える彼女らを、シャクティーバは手を伸ばして制止した。

 来るなら来い、と言わんばかりに。

 

「レイ、やめよう。ここで暴れても得がない」

 

 だから私も、レイの肩に手をおいた。

 

「お前が勝てばいいんだ、《個人戦(スターダスト)》で」

 

 シャクティーバの望みはあくまで、《個人戦(スターダスト)》の優勝を前提としたもの。

 であれば、その目論見を妨害する方法そのものは、簡単だ。こいつに勝てばいい。

 

「――――…………そう、ですね」

 

 数秒間の沈黙の後、レイは《魔力光(エーテルライト)》の励起を抑えた。

 感情を隠しきれてない……拳の握りは見えたけれど。

 

「おや、なるほど? そうか、キミも《個人戦(スターダスト)》に?」

 

 シャクティーバはそれを聞いて――――――。

 

「ふっ」

 

 と、口元を押さえた。

 笑いをこらえている――嘲笑(わら)いをこらえている。

 分不相応な夢物語を語る、現実を知らぬ子供の妄言を聞いたかのようだった。

 

「いや、失敬……では、眩き舞台でお目にかかろうじゃないか? あの戦場の熱を知らぬキミが、どこまで戦えるか見せてもらおう」

 

 それは前回優勝者の余裕なんだろうか、全く脅威と思っていない――敵だと認識してすらいない、そんな堂々たる振る舞いだった。

 

「一つ、キミを啓蒙(けいもう)してあげよう」

 

 彼女が背を向ければ、周囲の魔法少女たちも一斉にそれに倣う。

 侮蔑と軽蔑を含めた全ての視線も、同様に。

 

「正しき魔法少女のみが世界を導けるのだよ。キミは存在が誤っている」

 

 そのまま喧騒に飲まれて、彼女たちは立ち去っていった。

 ……私の知るレイヴン・グレイヴであれば、この場で殴りかかってないのは本当に奇跡だ。

 

 向こうのほうが明らかに挑発的だったとはいえ、先に手を出したらやっぱり問題になるし、下手に暴れて《個人戦(スターダスト)》の出場権利を奪われたら本末転倒だから、本当に――本当に凄く我慢したんだろうなと思う。

 

「レイ、あんなのに負けるなよ」

 

 会話の最中で、ほとんど溶けてしまったかき氷。器に結露した雫が、手を伝う。

 

「当たり前じゃねーですか」

 

 レイは、溶けてしまった氷の中に浮かぶ果実をスプーンで掬って、勢いよく噛み締めた。

 




活動報告にも書きましたが、明日12/31、コミックマーケット107の二日目に出展しております。

新作「文学少女の先輩と放課後の部室でお喋りするだけ」
 →新作のラブコメです。おおよそタイトル通りの内容です。

新作「魔法少女が終わらない!! 上下巻合同版」
 →まほおわの上下巻を1冊に纏めた物です。以前頒布したもの、ハーメルンに投稿した物から用語や表現の統一、誤字脱字の訂正はありますが大きく内容は変わりせん。しかし書き下ろしの短編が憑いています。
 
委託「俺の切り札は光らない 先行配布体験版」
 →今ハーメルンで最も熱い小説が来年の夏コミに劇場版登場!(予定)
  その予告編の委託となります。前世のモブが●●●●使いとバトル!
  劇場版には私も僭越ながら寄稿予定なので夏に向けて勢いつけたい方はどうぞー。


【挿絵表示】

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