魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

76 / 110
第三話 魔法少女は止まらない
-2.魔法少女の追憶


 

 ★

 

 レイヴン・グレイヴは《魔法の世界(マギスフィア)》の名家で生まれた。

 

 と言っても、生まれた時は名も姓も違った。今のこれは、新しい自分の名前だった。

 

 代々続く墓守の一族であり、《ツヴァイア帝国》がまだ国の形を成す前から、象徴として存在する聖樹カルラ・コルナの麓で、役割を終えたスフィアを埋葬する役割を担っていた。

 

 度重なる政変の中にあっても、貴族階級とは違う位相に在るが故に途絶えず、役割に殉じる事で存在を認められてきた、とも言える。

 

 だからこそ、墓守の家に生まれた魔法少女には厳しい教育が課せられた。

立ち振舞い一つ、言葉使い一つに細心の気遣いを求められた。正しくあれ、清くあれ、死者を送るに相応しき、清廉潔白な魔法少女であれと、事ある毎に、刷り込むように言われ続けた。

 

 彼女は家族を愛していた。産母(フェアラ)光母(フェドナ)、二人の母に認められるべく、それら全てをこなそうと、懸命に書を紐解いて、教えを請い、正しい魔法少女へと育っていった。

 産みの母の膝の上で、本を読んでもらう時間が好きだった。頭を撫でられながら、よく頑張ったねと褒められることは、彼女にとって何よりの誇りだった。

 

 同じスフィアの彩りを有する母に肩車してもらって、手の届かない場所に実った果実を採って、分け合って、夕飯前につまみ食いしたことを秘密にしてもらった一時を愛していた。

 

 両親とて、そうだったに違いない。確かに愛してもらっていたはずだ。確かに期待してくれていたはずだ。

 

 けれど、それでも尚。

 

 墓守の家系である以上……死者蘇生の禁忌(、、、、、、、)を犯した者が、許されるはずなどなかった。

 

 厳しい教育も、《使い魔(マスコット)》のクロウが居れば耐えられた。

 彼女の傍らに、クロウは常にいた。

 

 四歳の頃、傷ついたカラスの雛を拾い、甲斐甲斐しく世話を焼き、《使い魔(マスコット)》として迎え入れた最愛の家族。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使い魔(マスコット)》であっても。

 

 失われた命を取り戻そうとするなど、あってはならないことだった。

 

 家の名前を使い、帝国図書館の深層に通い詰め、まだ一桁の年齢の子供は、外法を収めた禁書を見つけ出し、読み解き、暴き立て、その手段にたどり着いたのだ。

 

 禁忌の代償として、レイヴン・グレイヴは左目を失った。

 

 ライムグリーンの綺麗な瞳は血のような赤に染まり、光を見る機能を失い、体の一部を生贄に捧げた証明として、白い部分が黒く染まった。邪法に手を染めたことが、誰がどこからどう見ても、一目でわかるスティグマ。

 

 そうまでして呼び戻したかった生命(いのち)は、いびつな形のまま動き出し、明らかにクロウのものとは違う声で鳴いた後、悶えて、暴れて、苦しみ抜いて再び死んだ。

 

 家族を失い、片目を失い、未来を失い、そして二人の母から、捨てられた。

 

 いや、捨てられた、という言い方が正しいかわからない。

 

 一族にこのような汚点は存在してはならないと、愛して、愛されていたはずの両親から、生命を奪われかけたことを、どう表現していいか、彼女にはわからない。

 

 気がつけば、もう終わったものとして埋められていて、それでも死にたくないから這い出そうとして、力尽きる寸前で、とある魔法少女に救われて――――そして、〝春の家〟へたどり着いた。

 

 

 

 

「《地球(アースフィア)》では、カラスのことを何ていうんですか」

「そうですねえ、クロウ、ヴァローナ、ヴァリス、カルガとか……」

 

 新たに保護者となった魔法少女が、指折り数えるのを聞いて、

 

「それと……レイヴン、ワタリガラスですね」

「……それにします」

「え?」

「わたしの名前、それにします。烏の墓守(レイヴン・グレイヴ)

 

 新しい自分のことをそう定めた。レイヴン・グレイヴという名前は、彼女自身が、自分でつけた。

 

 《魔法の世界(マギスフィア)》にはもう居られない、家族の元にも戻れない、移ろい、揺蕩う、ワタリガラス。

 自分が苦しめて、二度死なせた《使い魔(マスコット)》との繋がりを、それでも求めた浅ましい名前。

 

 そしてこの後、出会うのだ。

 

 何もかもが気に食わなくて、何もかもが鬱陶しくて、反りが合わなくて、幾度となく喧嘩を繰り返し、幾度となく傷つけ合い、幾度となく憎んだのに――いつの間にか、隣に居ることが当然になってしまった二人と。

 

 

 親にはなれない親代わりと、姉妹にはなれない三人組。

 

 

 レイヴン・グレイヴは家族を愛している。

 それを奪おうとするものは、誰であっても許さない。

 

 




産母(フェアラ)
 実際に子供を宿して産む方。

光母(フェドナ)
 子供を宿させる方。

 《魔法の世界(マギスフィア)》では男性が絶滅危惧種なので、基本的に魔法少女同士で子供を作ります。
 スフィアを触れ合わせてお互いの《魔力》を混ぜ合わせ、それを受け取った方が妊娠します。
 なので同カップルだけど母体が違う、みたいな状況がちょいちょい起こりがち。

 《地球(アースフィア)》の男性と子供を作ることも出来ます。
 生まれてくる子供は高確率で魔法少女です。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。