魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 アイミ・ソルベット ☆
「っ、早速だべ!」
予選通過タイム一位、誰よりも前でスタートしたアイミ・ソルベットはためらわず速度を上げた。
迫る《魔弾》より速く飛べば着弾しない理屈である――アイミ・ソルベットは忠実にそれを実行しようとした。
「《
自重を軽くすることによる速度の上昇はもちろん、アイミは自分の魔法の使い道をよく知っている。
……高速で飛行する物体である以上、それが魔法の力によるものであっても、空気抵抗からは逃げられない。ある一定のラインを超えると、《
《
だから《
対して、アイミの
たとえそれが、眼前を満たす空間から生じる、
「素晴らしいよアイミ! 良い速度だ! インスピレーションがドバドバ湧いてくる!」
「ドバドバ?」
「ガバガバかもねぇ!」
それが、アイミ・ソルベットがクロムローム魔法学園において最速を駆ける理由であり――対象は自身に限らない。
触れた仲間の《
「では、芸術戦の開始といこうじゃないか!」
「途中で置いてくけどええか?」
「うーん残酷! それもまた芸術!」
☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 ファラフ・ライラ ☆
「ジーン!」
『ほっ』
ファラフ・ライラは前を向いていた。後方を見るのは《
《
極めて光に近しい性質を持つ――つまり、直進し、鏡面に当たれば反射し、ぶつかれば拡散し、入射角次第で屈折し、触れれば干渉し、分散し、場合によっては吸収される。
一方で、実際の〝光〟ほど速くはない――光速、つまり秒速三〇万kmなんて速度では当然出ない。
体内の《
それは魔法少女たちが操作を加えることで、形状を変え、軌道を変え、性質を変え、威力を変えるわけだが――――――。
「――――見えた」
ファラフはコースを反れることも、防壁を張ることもしなかった。
ジーンの視界から伝わってきた《魔弾》を見て、それがどの軌道でどう飛んでくるのかを瞬時に分析し、無数の《魔弾》が飛び交う空間に。速度を落とさず突っ込んだ。
「なっ――――――」
ジグザグの軌道を描く五発の《魔弾》を放った魔法少女が、驚愕に目を見開いた。
数多の《魔弾》が交差した際、一瞬だけ生まれる、針の隙間のような安全地帯を見極めて、すり抜けるように前に出たのだ。
《
それは言い換えれば、その魔法がどういう性質を帯びていて、どのような変化が生じ、どんな効果を持っているかを、
放たれた瞬間、込められた《
「いい調子じゃない、ファラフ!」
マグナリアはもっとシンプルだ。《
多少の被弾はものともせず、最短距離を突き進む。
「抜かせるかっ!」
「っ」
そのルートに、横から叩きつけるような動きで迫る軽量級《
「喰らいやがれェ!」
先日の予選で、その走力で以て目立ったマグナリアは、やはりマークされていたらしい。
《
「――――っ、重い……!?」
「危ないやん、やめたってや!」
斧がピタリと止まった、いや、厳密には、振り下ろそうとする力と、それを止めようとする力が拮抗している――ミツネが、
「まーたあいつか! おい!」
「わーってますよーっと!」
赤い血斧の魔法少女、バーグガル・ニンガルは側を飛行していたチームメイトに向かって叫ぶ。防御力強化に固有魔法のリソースを割いた状態では振り切れない――二対一は分が悪い。
「ロロ! 約束通りいくで!」
「あいあいデスよー」
最初の《魔弾》弾幕に対してミツネが取った手段は、シンプルにより後方に下がること、だった。後ろに誰も居なければ狙い打たれる心配はない、そしてミツネの役割は後方からでも十分果たせる。
しかしそれは、他のチームの妨害担当魔法少女も同じこと、後列組が各々悪巧みを始める中、ミツネはもう片方の腕を摘んで、
「飛んでいけやあああああああああっ!」
近くにいたロロの《
ミツネの
近ければ近いほど高出力になり、遠ければ遠いほど影響力が落ちていく。
言い換えれば、ほぼゼロ距離であればミツネの
「ひゃー、勢いいいデスねー」
弧を描く、というよりは斜め前方にロケットのようにすっ飛んでいく。すでに順位差がつき始めた前列と、妨害の余波でまだ速度に乗り切れてない後列の、ちょうど真ん中辺りの位置まで来たところで。
「《
ロロ・ルルの
喉元に埋め込まれたマウスグレーのスフィアが鈍い光を放つ――他の選手の位置を把握しようとしていた選手や、凄まじい速度で飛翔する物体に目を奪われた選手が、その被害を受けた。
「…………目ぇ塞げぇ!」
バーグガルが叫び、それを聞いて間に合った者たちも居た――が。
――――決勝レース参加選手十八人、その内六人の脱落が、この時点で決定した。
☆ ルード・ゴード魔導院 高等部二年 トラタッタ・ローン ☆
ルード・ゴード魔導院の二年生代表、トラタッタ・ローンは、《魔弾》を回避する為、大きく横に逸れた……その遅れを取り戻すべく、自身の
「《
レースにおいてテレポート能力はまさにチート。
消費《
ごと移動するとなると更に倍ドンであるため多用は出来ない。道中の競り合いを考えれば使用回数は三回が限度。しかしゴールさえ見えてしまえば勝ちを確定できる、魔法少女トラタッタ・ラッタリアの切り札だった。
「あべっ!?」
「
☆ 聖イーヴィス魔法女学園 高等部三年 ナイアララ・ララカーラ ☆
聖イーヴィス魔法女学園三年生のナイアララ・ララカーラは《
通常、どんな魔法少女でも一度に絞り出せる出力には限度がある。スフィアが破損すれば命に関わる魔法少女は、生体の一つとして、スフィアが傷つかない範囲に自らの機能を制限する。
ナイアララの
弾幕を超えて前に出る、その一瞬だけリミッターを解除し、最前線組の後方間で追いついたら、彼女らを風よけにして体力と《
「はっ――――――?」
だが、気づけば彼女は先頭にいた。何せ、前に誰も居ないのだ。これを先頭として呼ばずなんという。
だが、すぐ後ろにジリジリと気配がする。気を抜けばすぐに追い抜かれる、と経験から感じ取ったナイアララは、数瞬の判断を経て、追加速を選んだ。
偶発的にだがトップに躍り出た以上は、リードを守り切る。今年のイーヴィスはなんとしても栄冠を持って帰らねばならないのだ。
シャクティーバ・シュラクシャリアの掲げた、正しき魔法少女があるべき世界を作るために。
……逆走によるコースアウトの宣言がナイアララに告げられたのは、この二分後だった。
☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 ロロ・ルル ☆
発動条件はロロ・ルルを視認すること。
たったそれだけで、《
平衡感覚を狂わせ、移動方向を見誤らせ、進むべき誤った道を示す。
これが幻覚である、と自覚さえできれば、多少の時間をかければレジスト可能だが、その事実に即座に気づくのは難しい。少なくとも、視界が横に流れていく高速飛行中には。
まして予選の段階でマークされていたのはせいぜいアイミ一人ぐらいで、ロロは全く警戒されていなかった。
予選では序盤、ペースを抑え気味なレース展開になった隙を見計らい、前に出て、自分より後方に魔法少女全員に幻覚を見せて、コースアウトに追い込んだのだ。そりゃ恨まれる。
「ま、ロロはここまでデスかねー」
ロロが《
出力も並だし、バランス感覚だって悪いし、一〇〇kmのコースを飛び切る自信もない。
ロロの役割は仲間を決勝に送り出すこと。つまり予選の段階で任務は終了しており、決勝では予選で稼いだヘイトを活用して、最初に攻撃を引き付けて退場する予定だったのだ。
そこを、ミツネにちょいと肩をつままれて、取引を持ちかけられたのだ。
「ウチがロロを思い切り投げ飛ばして前に送り出すさかい、一発かましてくれへん?」
と。
理由は明白だった、ロロの後方――つまり妨害の役目を担う魔法少女たちの、凄まじい攻防が繰り広げられているのだが。
「ちょっ、あかんて! 狙わんといてや!」
「お前は! 真っ先に! 沈めないと! 駄目だろ!」
「けったいなこと言わんと! 初出場やん、優しくしたって♡」
「いいこと教えてやる狐巫女! お前が予選で叩きおとした魔法少女は私の妹だぁぁぁ!」
「そらあかんなあ!?」
迫る攻撃を回避しつつ、自分の《
ここまで足を止められれば、初動を切り抜けた最前線に今から追いつくのはかなり困難だ。
ロロは『見るだけで発動する』というわかりにくさがあったが、ミツネの妨害はそりゃもう露骨だった。
予選の映像を一回見ただけで、能動的に後方から魔法少女を叩き落としているのだ。
自分たちのエースを安全に先へ向かわせる為に、初手で妨害することを決めていた選手は多いはず……つまり今回、ミツネは妨害役、という役目を全うできない可能性が高かった。
ミツネとロロは敵同士であるが、同時に顔見知りでもあるわけで、自分たちのエースを助けたい、という役割もまた、同じくしている。
どうせ競うのであれば、星組と月組の決戦にしたい――敵の敵と手を組むのは、悪い選択ではない、とロロは判断し、提案に乗ったというわけだ。
「あ、でも中間地点まで行けば点入るから、そこまでは頑張るデスか」
「行かせるかボケエエエエエエエエエエエエ!」
「ぐえっ」
くるりと空中で踵を返した瞬間、ヴァミーリ高等学校一年三組代表の妨害担当魔法少女による《