魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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9-3.《箒競争(ブルームレース)》決勝戦。

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 アトリ・カンバセ ☆

 

 平均して三〇分前後は飛行し続ける《箒競争(ブルームレース)》決勝戦において、開始五分で半数近くがトップ争いから脱落するのはかなり珍しい流れだった。

 

 先頭を走るのはアイミ・ソルベット、続いて彼女を風よけにするアトリ・カンバセ。

 

 そのすぐ後方を追うファラフ・ライラ、EMHS(エメラリアマジカルハイスクール)のバーグガル・ニンガルがマグナリア・ガンメイジを抑え込み、競り合うように同ハイスクールの野薔薇樹(のばらき)ミヨリが続く。

 

 後方にもまだ脱落していない選手はいるが、ゴールで競り合えるのは恐らくこの六名だろう。

 

『依然トップはアイミ・ソルベット! 速い速い! どんどん加速しています! 空気抵抗をものともしません! 今中間地点を通過! クロムローム魔法学園一年星組チームが一位、二位――……おおっとぉ!?』

 

 実況の声は、現在レース中の魔法少女たちには届かないが――――。

 

「ノルマは達成した、そろそろ芸術の時間だ、いいねアイミ!」

「任せるべ! おらは先さ行く!」

「君のライバル君を撃墜してしまったらごめんよ!?」

「だいじょうぶ! アトリさんへっぽこだべ!」

「チームメイトに向かってなんて物言いだ!」

 

 いいながら、アトリは《魔力(エーテル)》を《(ブルーム)》へ注ぎ込んだ。

 巨大なまたがれる絵筆、という形状の先端、筆の部分が急激に色づいていく。

 

「行くよ諸君――芸術は、炸裂だァーーーー!」

 

 空をキャンバスとして、《魔力(エーテル)》で染まった筆が空中にラインを描く。

赤、橙、少しの黄色、まるで炎を絵の具にしているように。

 空間に浮かぶ一筆書きの帯が―――灼熱の炎となって後列の魔法少女たちに襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 ファラフ・ライラ ☆

 

 

「《描いた物を具現化する魔法(アトリ・マジック)》…………っ!」

 

 ファラフは歯噛みして、絨毯型の《(ブルーム)》を横にスライドさせ、火炎の射程から逃れる。

 

 これが通常の《魔弾》であれば軌道を見切ってギリギリの回避も出来るが――ファラフは他者の固有魔法(オリジン)だけは再現できない、言い換えれば構造を分析することができず、回避範囲にマージンを取らねばならない。

「炎はお嫌いかな!? ではこちらはどうだろうか!」

 

 筆が纏う絵具の色が切り替わる。自身の《魔力(エーテル)》を任意の色の魔法の絵の具に変える、アトリ愛用の魔法の絵筆だ。

 

 彼女のスフィアのカラーはハニーブラウンだが、これによって様々な色彩を描き出す――《魔力光(エーテルライト)》の色を変えているわけではないが、文字通り『描いた物』を具現化する彼女の能力を鑑みれば、それはファラフと並ぶ、千差万別の魔法少女と言って違わない。

 

 次の色は――――黄色、すなわち。

 

 

「ビーーーーーーーーーーーーーーーーーム!」

 

 

 黄色い一筆が光線となって後方に向かって放たれた。

 

『ホッホッホッホ!?』

 

 ジーンが思い切り絨毯を引っ張って、かろうじて光線を避けた。

 

「うぎゃーーーーーーーー!」

「バーグガルー!?」

 

 避けた先で、後方から迫っていた他の選手に直撃したらしい。悲鳴が上がった。

 

「いいねいいね、どんどん行こう! 一筆書きで何が描けるか!? インスピレーションが止まらないねえ!」

「ううー……! ポンコツ芸術家のくせに……!」

「滅茶苦茶無礼だねキミィ!」

 

 しかし足止めされているのは事実で、こうしている間にもアイミは先行し続けている。

 

 アトリが厄介なのは、後ろを振り向かずとも、ただ飛行しているだけで後続を攻撃できるところだ。移動の軌跡がそのまま絵となり、絵は具現化して障害となる。

 

 一筆書きしか描けないのでディティールが伴っていないのが救いだが、追い越す為のタメ(、、)が作れない。

 

 途中、カーブや上下のコースがある為、アイミも減速を挟まなくてはならない――マグナリアと違って一瞬で減速と加速を行えるわけではないから、無尽蔵に加速する訳では無いにせよ、ファラフの目算ではあと五分、このまま状況を保たれたらもう追いつけなくなる。

 

 勝負に打って出るかを考えた時――後方から、叫び声が聞こえた。

 

「痛えじゃねえかゴルァアアアアアアア!」

 

 ビームの直撃を食らったバーグガル・ニンガルだ。髪の毛が若干パンクしているが、首飾りの安全装置(フェイルセイフ)が起動しておらず、なおも加速してくる、凄まじい生命力。

 

 《魔力(エーテル)》の容量と出力が並の魔法少女よりも遥かに高いのだろう。

 マグナリアの姿が見えない、やられてしまったか、それとも追い抜けないか。

 

「ミヨリィ! こじ開けるぞ前開けろぉ!」

「オッケー!」

 

 バーグガルが作り出した血斧を、並走する魔法少女――野薔薇樹ミヨリにぶん投げる。

 それを受け取った彼女は、片手をまっすぐ伸ばし。

 

「《手にした物を射出する魔法(ミヨリ・マジック)》!」

 ゴウ、と空気を裂いて、《破壊の血斧を生み出す魔法(バーグガル・マジック)》によって形成された凶器が放たれた。

 

「きゃあっ!」

 

 手にしたものを何でも弾丸として射出できる固有魔法(オリジン)が、ファラフの真横を通り過ぎた。

 

 単に運が良かっただけ――アトリの〝絵〟を回避する為にコースをズレていなかったら、恐らく一緒に薙ぎ払われていた。

 

 

「うおおおおおおおおおおお!?」

 まだ距離が開いていた事が幸いしたのか、アトリも思い切り上への軌道をとることで回避した、が、アトリの絵筆が軌道上に作る『絵』の連結が途絶えた。

 

「もっぱつ行くぞオラァ!」

「それ何回も打てるのかい!?」

 

 新たな血斧を形成するバーグガル、受け取ってぶっ放すミヨリ、その射線上に居るわけには行かず、ついに前を譲ってしまった。

 

「っ…………!」

 

 後三分、直線コースに入ったらもうアイミを止められない、いや、それどころかエメラリアの二人を追い抜くことも困難になる。

 

「ファラフ!」

「マグナリアさん!」

 

 後方から、マグナリアの《(ブルーム)》が突っ込んできた。

 外殻の一部がかち割られ、内部機構が露出していた。増築した加速器も半壊している。

 

「一撃喰らっただけでこれ、あの血斧は厄介だわ」

 

 それでも速度を落とさず並走しながら、マグナリアは続けた。

 

「ファラフ、最後まで行ける?」

「切り札はあります」

 

 はっきり、ファラフはそう告げた。ここまで食いつきながら、まだ《魔力(エーテル)》を温存してきた。ここからは上下が絡む蛇行カーブを繰り返し、最後の直線に入る。

 

 アイミがどうしても減速するこの蛇行カーブで、追いつけなければ、勝てない。

 

「でも、せめてアトリさんを追い抜けないと……」

「わかった、そこまで送るわ(、、、、、、、)

 

 言葉を最後まで聞く前に、マグナリアはそう言った。

 この石頭の魔法少女が告げたということは、それはもう、決定事項ということだ。

 

「どのみち加速器をやられてるわ。作戦通り(、、、、)、でしょ?」

「……了解ですっ、お願いします!」

 

 ファラフの《(ブルーム)》は絨毯状、つまりは布だ。だからべたりとマグナリアの《(ブルーム)》に張り付いて、《魔力(エーテル)

で固定することが出来る。

 

「……加速力最大強化」

 

 《力を強くする魔法(マグナリア・マジック)》が発動し、

 

「ぶち抜くわ」

 

 血斧と絵筆が飛び交う戦場に、半壊した《(ブルーム)》が突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ EMHS 高等部三年 バーグガル・ニンガル ☆

 

「んだぁ!?」

 

 凄まじい加速で後方から追い抜いていくマグナリア・ガンメイジの《(ブルーム)》を、バーグガルは目で追った。

 

 ただでさえ壊れかけた《(ブルーム)》が、加速の反動でボロボロと装甲が剥がれていく。もう一撃喰らわせれば爆散間違いなしだ。

 

「ちっ、そんなに潰れてえなら撃墜してやらァ!」

「まってバーグガル」

 

 血の気の多いバーグガルを、ミヨリが制した。

 

「あれじゃ放っておいても自壊する、上に乗ってる魔法少女はテクはあるけど速度はふつーだ。直線に入れば追いつける」

 

 ミヨリの固有魔法(オリジン)は手で触れているものを一直線にぶっ飛ばす(、、、、、、、、、)、だからお互いが直線距離で結ばれていないと意味がない。

 射出担当(、、、、)がそう言うのであれば、バーグガルは怒りを収めた。

 

「ちっ」

 

 最終の蛇行、ここでコースアウトはあまりに悲劇。細かな魔力操作(エーテルコントロール)が要求される高難易度コースに、二人は突入した。

 

 

 

 

 

 

 ☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 アイミ・ソルベット 星

 

(おら、空が好きだ)

 

 アイミ・ソルベットは空を飛ぶのが好きだ。

 風を全身で感じ、移り変わる景色を目に焼き付けて、《魔力(エーテル)》が尽きないのであれば、ずっとずっと飛んでいたいと思うほど。

 

 子供の頃はただ空を飛んでいられればいいと思ったが、《箒競争(ブルームレース)》という文化を知って、誰かと速度を競い合う楽しみを覚えた。

 

 地元では一番で、誰もアイミに追いつけず、しかし負け惜しみのように『都会にはもっと速い選手がいる』と言われ、それなら戦ってみたいと思い、大会に出てみたら、やっぱり一番になってしまった。

 

 《地球(アースフィア)》への留学が決まったのは、そんな頃合いだった。

 自分が全く知らない改造を施した《(ブルーム)》、知らないテクニック、とんでもなく長いコース。

 

 期待に心踊らせてやってきた《地球(アースフィア)》でも、同学年の間ではやっぱりアイミが一番だった。

 

 けれど――けれど、クラス対抗の《箒競争(ブルームレース)》で、アイミに食い下がり、喰らいついてくる魔法少女が居た。

 

 《魔弾》の天才と呼ばれる、どえらい露出をした、エキゾチックなファッションの魔法少女。

 

 絨毯型の非効率な《(ブルーム)》で、《箒競争(ブルームレース)》に向いた固有魔法(オリジン)でもないのに、技巧と気迫で追いすがってきた、初めての相手だった。

 

(懐かしいべな……)

 

 一言も、アイミのことをずるいとか、卑怯だとか言わなかった。

 ただ悔しそうで、次は負けない、と言ってくれて、私生活では友達と呼べるぐらいになって、だけど真剣勝負が出来る相手だ。

 

 最後のカーブを、曲がり終える。ラスト一五kmの直線。空気抵抗を軽減し、《魔力(エーテル)》を推進力として吐き出す。

 このまま何もなければ、後五分程度でゴールする。

 

 最初から最後まで、誰も前を飛ばせなかった。誰からも何からも邪魔をされなかった。

 

 アトリとロロが、クラスメートたちが、努力してくれたおかげだ。

ただ、感じる。背後からプレッシャーが近づいてくるのを。

 

(これで終わるわけがないべ)

 

 直線距離の速度勝負なら、誰にも負けない自信があるけれど、カーブはどうしてもコースアウトの危険性が生じる為、空気抵抗を適度に戻し(、、)ながら曲がる為、減速せざるを得ない。

 

 だから、彼女が追いついてくるとしたらここ(、、)だろう。

 

(ここしか――――ないべ!)

 

 後ろは振り向かない。減速に繋がることはしない、愚の骨頂だ。

 果たして。

 

 

 

「――――行かせないっ!」

 

 

 

 

 まるで風のように。

 ファラフ・ライラがアイミ・ソルベットのわずか後ろに、現れた。 

 

 

 





【挿絵表示】


【アトリ・カンバセ】
クロムローム魔法学園 高等部一年星組。
作品はいずれも高い評価を受けているが、「最後に炸裂させることで完成」という美意識を持っているため、原形をとどめている作品が1割に満たない。
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