魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 語辺リーン ☆
ファラフがアイミに並ぶのを、《
全員――クローネですら――息を止めて見入っていた。それぐらい、ギリギリで追いつけた。
アイミから見れば、不可思議な現象に感じたかも知れない、相応に開いた距離を、どうやって埋めたのか。
私達、
「初見殺ししかないんじゃない?」
委員長にアイディアを求められた時、私は少し考えてそういった。
クロムローム魔法学園高等部一年の明確なアドバンテージは、警戒されていないこと。外部から見た時の情報が足りていないことだ。
だから予選ではファラフを目立たないようにして、委員長とミツネさんで大暴れする。そうすればファラフの能力を隠せるし、他のチームは選手としての委員長と、放っておけば壊滅的な被害を受けるミツネさんを対策せざるを得ない。
本戦に出るような魔法少女は、全体の中で見ても上澄みなのだから、二重の強化を施せる委員長に、正面から対抗できる奴だっているだろう。
優秀かもしれないけれど、脅威じゃない。先手を取って潰す以外でも対処ができる――ファラフを眼中にない状態にすることこそが、私たちの本当の目的だった。
最高速度が一番速いのは、委員長かもしれない。
だけど、アイミ・ソルベットに勝てるのは、ファラフ・ライラしかいないのだ。
半壊した《
『――――ハァー!?』
少し遅れてカーブを抜けてきた
赤い髪の魔法少女――バーグガルはその突撃を回避した。
凄まじい反射神経だけど、並走していた緑の髪の魔法少女――ミヨリはそうはいなかった。
『見てたわよ』
《
中にいた魔法少女はひとたまりもないはずだ、容赦なく、首飾りが二人を退場させていく。
『テ、テメェ――――!』
相方をやられたバーグガルの絶叫が響く、無理もないだろう……この局面まで、彼女は
《魔力》の消費を考えず、問答無用で。
なら、最後の直線をどう走り抜けるつもりだったのか……多分だけど、映像を見る限りミヨリの
恐らく、最後の直線に入ったら、《
その速度が仮に血斧の射出速度と同じだとすると、ファラフがぶち抜かれる可能性がある。だから委員長は、自分がゴールしたことで入るスコアより、後続の危機を断つことに専念した。どちらかがいなくなれば作戦は使えない、できれば《
果たして、目論見は成功したようだった。バーグガルはトラブルにめげずコースに戻ったが、もう中盤までの勢いのある加速はなかった、
勝負の結末はアイミとファラフ、どちらが速いかに委ねられた。
委員長の《
そこでようやく――今まで一度も
を使わなかった、ファラフが身構えた。
『ジーン!』
《
正面に水色の《
そのリングから、帯のようなものが何本も、ファラフの《
『射出――――――――!』
伸びた帯が伸縮する勢いで、ファラフが一気に加速した。
『んなっ!』
突如生じた急加速、アイミが慌てて速度を上げるが、ファラフは加速中にも同じリングを作り出し、更に自分の体を前に送り出す。
どっかで見たことあるような――ああ、そうだ、思い出した。
クァトランが《
ファラフはそれを《
グイグイ差を詰めていくファラフ、負けじと速度を上げるアイミ。追い抜けるようで追い抜けない、もどかしい相対距離の差。
《
ゴール――つまり、『
☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 アイミ・ソルベット ☆
アイミの
どうしても軽減しきれない空気抵抗はあるし、それに伴うダメージは無視できない。
だけど、そのお陰で未だトップを飛んでいる。すぐ横に気配を感じても、前へ、前へと向かっていける。
もうゴールは見えている、決着がつくまで、二〇秒もかからない。
最後の最後で命運を分けたのは、《
どのような《
ゴテゴテと装甲や加速器をつけようものなら、その効率はさらに悪くなる……アイミから言わせれば、それそのものが速度を削ぐ重荷だ。
アイミが持つ浮遊樹〝アレイトラ〟の葉は、バランスも取りづらく、コントロールの難易度が跳ね上がる代わりに、最もストレートに《
つまり、感覚のまま、思い通りに飛ぶ為の、唯一の手段なのだ。
もうゴールは眼の前だ。最後の加速、《
勝てさえすれば、その後は落下したって構わない――――――。
その時、ゴウ、と向かい風が吹いた。
アイミはそれを気にしなかった。空気抵抗を軽減しているアイミにとっては、風の影響すら受け流すことが出来るものだから。
だけどファラフは違う、正面から風を受ければ、どうあがいても減速は免れない。極限状況で、この差は大きい。アイミは勝利を確信した。あと二秒、一秒――――。
「――――――え」
確かにアイミの方が速かったはずだ。
あそこから加速する手段は、ファラフにはもうないはずだった。
なのに。
ファラフ・ライラは、ほんの僅か、少しだけ。
アイミ・ソルベットより先行して、ゴールのリングをくぐり抜けた。
☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 ファラフ・ライラ ☆
愛用の《
一つは、留学の際に絨毯職人の祖母が作ってくれた手製の品だったからだ。空飛ぶ魔法の絨毯を家族から贈られる事は、ファラフの生まれた村では一人前の証だった。
広々とした面積があれば、体を伏せて扱いやすい。ジーンと一緒に並んで、本を広げても大丈夫。だけど、何より重要だったのは……祖母が教えてくれた、ある技術を学んだからだった。
魔法少女は《
だけど本来、飛行というのは、
絨毯の布を巻き込んで、帆の様に広げて、
……主観的には、追い抜けたかどうかの自信がなくて、というか、最後の方は記憶がない。
奥の手を使っても追いつけなくて、どこまでも背中が遠くて、その上で、正面から風が吹いてきたのだ。
絨毯を帆にする飛び方も、意識したわけじゃなくて、風を感じた瞬間、体が勝手に動いていたのだ。余計な動作一つが命取りになる速度領域だったはずなのに。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
ゴールをくぐった後、すぐに選手の待機エリアへ滑り込んで、地面に体を投げうって寝転がった。わ、という歓声と拍手は、周囲の観客たちがもたらしたもので、凄く近いはずなのに、遠くから聞こえる気がした。
呼吸が荒い、息が苦しい、吐き出すものを全て吐き出した時特有の、疲れ切って動けないのに、どこか心地良い疲労感。
「んがーっ! くやし、悔しいっペ! 最後のあれ! すんごかったなぁ!」
本当に一瞬の差で競り負けたアイミも、隣で体を投げ出して、ぐたっとしながら、笑顔でそう言った。
「あー、次は負けねえーっ!」
「ぼ、僕だって、もっともっと、頑張りますからっ」
接戦を繰り広げた二人の魔法少女にカメラが向けられ、会場の大スクリーンにでっかく映し出されていて、会話はマイクで拾われていることに、ファラフもアイミも、気づいていなかった。
そして………………。
『――――次々と魔法少女たちがゴールしてきます! 三位、
「ファラフー! やったやないのー!」
「ミツネさーん……!」
竹箒からひょい、と飛び降りて、無事にゴールしたミツネが駆け寄ってきた。
どうやら序盤の攻防でトップ争いからは脱落したものの、その後なんとか生き延びて、無事にゴールへたどり着けたらしい。五位は大きい、とても大きい。
やがて、残る魔法少女たちが全員ゴールを迎え、スコアの計算が終わり、最終結果が大きくスクリーンに映し出された。
第二十四回『
総合スコアは、まさしくギリギリだった。
特に中間チェックポイントを一位二位で通過し、ゴールでも二位を取った星組との差はかなり近かった。
もしミツネが六位だったり、ロロが脱落せずに最下位でもいいからゴールしていたら、結果が逆転していたくらいには、僅差だった。
しかし、結果は示された。
ファラフが思わずぐっと拳を握りしめた所がカメラに映され、歓声が湧き、あれ、とそれに気づいた彼女の動きに、また湧いて、慌てふためいて、思わず腕を振り上げると、その熱は最高潮に達した。