魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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10-2.《集団戦(マギアパーティ)》決勝戦。

☆ ウエストエリア ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 語辺リーン ☆

 

 試合開始直後、私は自分の《魔力(エーテル)》を薄く薄く広げて、ばらまいた。

 ただでさえ透明な《魔力(エーテル)》は、普通なら環境魔力にすら押し負けて色が染まってしまうのだけど、この会場は一から十まで人工物、それも《地球(アースフィア)》の技術で作られたものだから、色……というより、物体に込められた《魔力(エーテル)》そのものが薄い。

 

「『透明な領域(クリアランス)』」

 

 卒業試験の時も使った、透明な《魔力(エーテル)》を散布し、その変化で周囲の状態を探る技だ。

 《魔力光(エーテルライト)》は、普段より遠くまで届く。

 ウエストエリア全域に広がるまで、五分とかからなかった。

 

「東方向に五人、マーケット方向に五人、多分ヴァミーリとアイフィスのチームだ、予選映像で見たメンバーの《魔力光(エーテルライト)》の色が同じ」

 

 自分が放った《魔力光(エーテルライト)》が、他の《魔力(エーテル)》に侵食されて色が変わった感覚。

 

 これはもう私じゃないとわからないと思うんだけど、赤い《魔力(エーテル)》に触れればちょっと熱い、青い《魔力(エーテル)》に触れれば少し冷たい、緑は痒くて、黄色はピリッとして、黒いとなんかもうじくじくする……とか、そんな感覚が伝わってくるのだ。

 

 逆に、透明な《魔力光(エーテルライト)》に触れられた側は、ほとんど何も感じないみたいだ。《魔力(エーテル)》の流れに敏感なレイに試しても察知できなかったぐらいだから、それなりに根拠がある。

 

 普段吸い込んでる空気に何が含まれてるかなんて、普通、誰も気にしない。

だから魔法少女が普段、代謝として取り込む《魔力(エーテル)》の中に、ほんの僅かに透明な粒子が混ざっていても、そんな変化は気づきようがない。

 自分の《魔力光(エーテルライト)》を散布して周囲の状況を探る魔法は、技術の一つとして広く知られているけど、それは《魔力(エーテル)》を知覚できる魔法少女や魔物にとって、居場所を晒す諸刃の剣。

 

 ……私の透明な《魔力(エーテル)》の数少ない利点は、か弱すぎて目立たない、という所。

 

 そして自分の色がない故に、対象の《魔力(エーテル)》の色を正確に反映できる所。

 

「こちらも準備できましたわ」

 

 私が調査をしている間に、ルーズ姫の作業が終わった。《物の大きさを変える魔法(ルーズ・マジック)》によってクローネお手製のぬいぐるみがみるみる巨大化していく。

 

「エグいこと考えるなーリーンっちはー!」

『めっちゃ楽しそうだナー!』『一度やってみたかったんだよニャー!』

 

 建物の大きさが二階分だから、少し飛び変えて三、四階ぐらいの高さまで。

 

 中身はただの綿なので質量は大して変わらないらしいけど、クローネが操る分にはそっちのほうが都合がいいらしい。

 

 そして。

 

「じゃあ、本命の方を走らせて(、、、、、、、、、)

「らじゃー!」『やったるナー!』『ぶっ殺すニャー!』

 

 それと同時に、ルーズ姫に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が一斉に動き出した。

 

「リーンちゃん、楽しそうだね……」

 

 今のところ仕事がないメアは、周囲を警戒しているが、なんだか凄く複雑そうな顔をしていた。

 

「そう?」

「うん……悪巧みしてる時の顔してる……」

「わ、悪巧みなんて失礼な……」

「いや、悪巧みだろう、これは」

 

 ラミアもうーん、と眉を寄せて腕を組んでいる。なんだよ二人して。

 

「大きいぬいぐるみで注目をひきつけてる間に、小さいぬいぐるみで奇襲をかけるくらい、誰でも思いつくでしょ……」

 

 でっかい方は派手に破壊を巻き散らかしているけれど、実際はそんなに《魔力(エーテル)》は込められていない。動きは緩慢だし、攻撃されたらあっという間に壊れてしまうだろう。

 

 一方、こっそり動かしている小さい方は、かなり力を入れて配分してもらっている。初見殺しの不意打ちなら何人か倒せるはすだ。

 

 集団戦において人数差はそのままアドバンテージになる。まあ私がいる時点でこっちはマイナス一人だしこれぐらいやってやっとトントンと言えるだろう。

 

 二人は顔を見合わせ、同じタイミングで頷いて、声を揃えて、

 

「「いやあ……?」」

 

 と言った。ひ、人が知恵を絞ってるってのになんて言い草だ……!

 メアは私の味方でいてほしかったのに。

 

「おっ」

 

 ぬいぐるみの操作に集中していたクローネが、不意に声を上げた。

 

「けっこーやるのがいるじゃん、楽しくなってきた~!」

 

 顔を上げると、巨大なぬいぐるみが、なにか大きな力に引っ張られて体勢を崩し、建物を巻き込みながら転んでいくのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

☆ イーストエリア ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年星組 如月塚ヘクセンナハト ☆

 

『第二十四回、『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』《集団戦(マギアパーティ)》、決勝戦を開始します』

 

 というアナウンスが、戦場となるアウトレットモール全域に響き渡った。

 クロ学星組の初期配置はイーストエリアの右下の端っこ。駐車場にも行こうと思えば行ける位置だが、配置的には一、二チームぐらいはこちらのエリアに居るだろうし、初動が悩ましいところである。

 

 そう考えながら――如月塚ヘクセンナハトは頼もしきチームメイトを振り返る。

 

 ぐらぐらと頭を揺らし視点の定まらないダヴィニア。

 体育座りになって帰りたいをひたすら連呼しているグレープ。

 そんな二人を頑張れ頑張れと励ますイチゴ。

 もう勝手に動き始めているフロム。

 

 なんて最高の仲間達だ、彼女たちとチームを組めることが誇らしい。

 だって勢いに溢れているから。勢いは大事だ、ヘクセンナハトは特にそう。

 

「ボク様はクローネと戦えればそれでいいのサ! だーが、邪魔者の排除は必要不可欠サ!」

 

 フロムはぴ、と懐から、一枚のカードを取り出した。

 ヘクセンナハトには詳しいことはわからないが、何かのカードゲームのようなデザインをしている。そして表面には複雑な模様が描かれたタマゴのイラストが描いてあり……。

 

「だからまずは蹂躙しよう! さあさあ、生まれいでるといいサ! 我が愛しき――――」

 

 同じようなカードを更に十枚、ばっとばらまく。

 ちか、とディープブルーの《魔力光(エーテルライト)》が輝き、カードがイラストに描かれたタマゴに変化した。魔法少女の体格で、一抱え出来るぐらいの大きなタマゴだ。出現してすぐ、ガタガタと揺れ始め…………。

 

「――――魔物(クリーチャー)共よ!」

 

 すぐにピシ、ピシ、と殻に罅が入り、内側から突き破って、それら(、、、)が出てきた。

 

 ……長い牙、長い尾、細長い頭部につるりとした皮膚を持つ、瞳のない化け物。

 

 ヘクセンナハトが持っている知識で、一番近い存在は……外宇宙生物(エイリアン)だろうか。

 

 総勢十体。しかし侮るなかれ、フロム・ヒドゥンの常軌を逸した《魔力(エーテル)》が注ぎ込まれたこの魔物達は――――。

 

『シャギャギャギャギャギャギャギャギャ!』

 

 並の魔法少女では太刀打ちできない、脅威の戦闘力を持っている。

 

「あーもーっ! フロム、勝手に始めないでよっ!」

 

 イチゴがマップと現在地を見ながら、んー、と少し考えた後、愛用のデコメガホンを掲げ、一言。

 

「皆、お願いねっ」

『シャグァアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

 

 ある個体は翼を生やし、ある個体は更に体を成長させて、ある個体は手足を増やし鋭い鈎爪で建物の壁を伝って動き出す。

 予選においても数多の魔法少女を蹂躙した魔物達、しかし、何より恐るべき所は……。

 

「では、次の魔物(クリーチャー)共を生み出そう! キッヒヒヒヒヒヒ!」

 

 フロム・ヒドゥンはこの魔物共を《魔力(エーテル)》が続く限り無尽蔵に生み出し続ける事ができる、という点だ。ボロボロと新たなタマゴがカードから産み落とされる……時間をかければ、どんどんどんどんその数は増えていく。

 

「おっと、秘蔵っ子も用意しておかなくてはネ!」

 

 ひときわ大きく、どす黒い色をしたタマゴの殻を、フロムは優しく撫でつけた。

 

 フロムのタマゴはカードから具現化する時こそフロムの《魔力(エーテル)》を必要とするが、孵化に速度を求めないのであれば、周辺の《魔力(エーテル)》を吸い上げさせて育てる事も可能だ。

 

 早めに孵化させた個体で牽制して時間を稼ぎつつ、強力な個体をじっくり育てることが出来るのである――三十分もあれば、悍ま(愛おし)しき子が生まれるだろう。

 

「ふふふ……早くしないとわたくしたち、無数の軍勢を作り上げてしまいますわー!」

 

 その宣言の反応したかのように、高密度に圧縮された、凄まじい勢いの《魔弾》がヘクセンナハトの頭部に直撃した。

 

 

 

 

 

☆ 駐車場 右側 ☆

☆ 聖イーヴィス魔法女学院 高等部三年 ヘクサ・マギサ ☆

 

 数分前。聖イーヴィス魔法女学院三年のチームは、駐車場の右位置に配置された。

 

 高い建物がなく平坦だが、オブジェクトとして無数の車が並んでいるので見通しは悪い。

 

 恐らく他に一、二チームはこちらに配置されててもおかしくないが、場所を探るのは難しいだろう――普通であれば(、、、、、、)

 

「なにか見えた?」

 

 ヘクサ・マギサの問いに、既に固有魔法(オリジン)を発動していた妹は予想通りの答えをくれる。

 

「西方面に敵の部隊を発見、あれは……AIAM(アルカシェーン国際魔法アカデミア)のチームだ」

 

 サブリーダーにして観測手(スポッター)、妹のヘキサ・マギサは《物体を透過して見る魔法(ヘキサ・マジック)》によって、あらゆる障害物を無視して周囲の状況を把握できる。視力を強化する才能もあるので、これぐらいの広さならば容易に敵の観測が可能だ。

 

「AIAMか……確か大砲型のチームよね」

「うん、なんかもう準備始めてるっぽいよ」

 

 五名中、四名が強力な《魔弾》を扱え、更にそれを固有魔法(オリジン)で強化するという脳筋戦術のチームだ。しかし予選では圧倒的な火力で建物を更地にし、敵チームを全滅させた実績がある。

 

「どっちを向いてる?」

 

 

 

 

 

 

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「ウエストの方。あと、イースト側にクロムローム魔法学園のチームも発見、化け物(フロム)がいる方」

「――――よし、両方叩きましょう」

「その心は?」

「AIAMが砲撃を始めた直後、後ろから三人で奇襲を仕掛けて。倒し終えたらそのまま、砲撃で混乱してるウエストエリアに乗り込んで、逃げ惑った魔法少女を狩って。私とヘクサはここからクロムロームを狙撃。まず頭を刈り取るわ」

「二人だけで大丈夫か? ヘクサ」

「身を隠す所は沢山あるわ、狙撃戦なら私たちは負けない」

 

 知ってるでしょう? と言外に告げると、額から伸びる角が特徴的なクラスメート、雪鬼(せっき)パセラは苦笑して頷いた。

 

「愚問だったな」

「パセちん、心配性~。それよかこっちのほうが大変だよん、近寄る前に気づかれたらぶっ飛ばされちゃう」

 

 侍の様な様相の相方、西陽(にしび)キララがからかうように笑い、腰に吊るした刀の感覚を確かめる。

 

「では、ヘキサ、同期をお願いします」

 

 猫耳と尻尾が生えた魔法少女、ミャネア・ラーネカが右手のスフィアを差し出すと、ヘキサも左手をむき出しにして、お互いの手の甲を触れ合わせた。

 

「ん、毎回ドキドキするね、これ」

「変なこと言わないでください」

 

 スフィアを触れ合わせる、というのは魔法少女にとってかなり大きな意味合いを持つが……この場合はミャネアの『大魔爛祭(マギアラフェスタ)』、《視界を同期する魔法(ミャネア・マジック)》の発動条件を満たすための行為だ。

 

 これによってヘキサの透過する視界を、ミャネアも共有できる。

右目に《魔力(エーテル)》の光が宿り、二人の視界が重なった。

 

「良好、では行って参ります。ご武運を」

「シャクティの期待に応えるとするか」

「二人もがんば~」

 

 慌ただしく駆けていく三人、彼女らのことは信頼している。

 だから、こちらも仕事を果たすだけだ。

 ヘクサは右手に《魔力(エーテル)》を集中した。

 

 飛ばす《魔弾》は高密度に圧縮され、その先端を細長く、鋭く、研ぎ澄ます。

 近接戦の才能はからっきしだが、彼女には《魔弾》を打ち出す才能があった。

 そして血を分けた双子の妹は、お互いの固有魔法(オリジン)を活かし合う、最良のパートナーだった。

 

 

「もう少し右――――止めて。対象は停止中。補足――三、二、一」

「発射」

 

 ヘクサの固有魔法(オリジン)、《物体を透過する魔法(ヘクサ・マジック)》は自身の《魔力(エーテル)》にも作用する。

 

 鋭く磨き上げられた《魔弾》は、あらゆる障害物を貫通して――――ターゲットの元へと届く。

 

 

 

 

 

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