魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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10-3.《集団戦(マギアパーティ)》決勝戦。

☆ ウエストエリア 左下通路 ☆

☆ クロムローム魔法学園 高等部一年月組 語辺リーン ☆

 

 まず喜ばしい事に、二点の加点を確認した。

 大ぬいぐるみで惹きつけて小ぬいぐるみでの奇襲が通じたらしい、アイフィス、ヴァミーリ双方から一点ずつ、まずは一歩リード。

 

 しかしそれはこちらの存在に向こうが気付いた、ということでもあって……クローネの巨大ぬいぐるみが倒れると同時に、こちらに迫ってくる反応がある。

 

 多数の魔法少女が戦闘態勢に入り、《魔力光(エーテルライト)》が入り乱れている為、もう『透明な領域(クリアランス)》では誰が誰だか判別できない、せいぜい『こっちに来ているな』くらいのものだ。

 

「通路で戦闘が始まってる……!」

 

 H字のちょうど真ん中の部分、おそらくヴァミーリとアイフィスのチームが接敵したらしい。

 ……角スタートだから暴れてみれば、釣れるかなと思ったけど、よかった、作戦通り。

 

「メア! ルーズ姫、漁夫の利を取りにいくよ!」

「はーい! 任せて!」

「ちょ、ちょっとずるい気はいたしますが……」

「乱戦状態に外から《魔弾》ぶち込むのが一番効率いいんだから」

 

 自分でもひどいこと言ってるな、と思ったが事実だから仕方ない。集団戦っていうのは基本的に、先に戦わせて疲弊した所を横からかっさらうべきなのだ。

 

「おーい、リーンっちー、一個お知らせー」

『やっちまったなナー!』『まずいかもニャー!』

「ラミアは通路に――――え、どうしたのクローネ」

 

 クローネが珍しく、少しあたふたとしながら言った。

 

「あのでっけーの、コントロール取られちった」

「――――はい?」

 

 傾き、倒れていたはずの巨大ぬいぐるみが、ゆっくりと起き上がり始めた。 

 その場で腕を大きく振るい、建物が破壊される。一人、他チームの魔法少女が紙くずの様に舞い飛んでいくのが見えた。あれはもう駄目っぽいな。

 それから、うろうろと周囲を見渡すように眼下を睥睨し、そして明らかに私たちに狙いを定め――。

 

「うわあほんとにこっちきた!」

 

 振り上げた拳を、思い切り叩きつけようとしている!

 

「ルーズ姫! 魔法を解いてー!」

「っ! 駄目ですわ、わたくしの手からも離れています!」

 

 ルーズ姫とクローネ、二人分の固有魔法(オリジン)で構成されているはずの大ぬいぐるみは、しかし二人の制御をはねのけて暴れ始めた。これはもう誰かの固有魔法(オリジン)じゃないと説明できない。

 

「リーンちゃんどいて!」

 

 ブオン、ブオンと轟音を立てて、メアが前に出た。

 大型の《魔弾》を《魔力(エーテル)》の鎖で繋いだ鎖付き鉄球、『流星を見る人(モーニングスター)】を、迫りくる大ぬいぐるみの腕目掛けてぶん投げる。メアの出力で放たれるそれは、大ぬいぐるみの腕とぶつかり、激しく相殺。両者が弾き飛ばされ、しかし質量差で有利を取る向こうは姿勢を保ち、再び振り下ろしの動作に入った。

 

「っ、メアの《魔弾》と互角かよあれ!」

 

 自分たちで用意した質量兵器が牙を向いてくるなんて……くそっ、この作戦を立てたのは誰だ!

 

「メアっち、もっかい止めて!」

「クローネちゃん、なんとかなりそう?」

「ちょい時間があれば!」

『チャンスはピンチニャー!』『逆だナー!』

「りょーかいっ!」

 

 大玉に《魔力(エーテル)》を供給しながら、再度の投擲。再び両者が拮抗し、弾き飛ばし――――。

 

「悪い事してんのぉ、だーれだ」

 

 その隙間を縫って、クローネが《魔力(エーテル)》の糸を巨大ぬいぐるみに伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

☆ ウエストエリア 中央通路 ☆

☆ アイフィス付属 高等部二年 北沢ヨトギ ☆

 

 アイフィス付属高校所属、北沢ヨトギの固有魔法(オリジン)は《物体を使い魔に変える魔法(ヨトギ・マジック)》だ。

 

 それが非生命であれば自身の《魔力(エーテル)》を付与し《使い魔(マスコット)》に出来る。

 更に使用権を他者に譲渡することも可能だ。それは本来、製造にあたって本人の素質に大きく左右される《使い魔(マスコット)》を誰にでも与えられる、という意味でもあるし……。

 

「ライカ! お願い!」

「OK!」

 

 《魔力(エーテル)》消費の負担を、仲間に肩代わりしてもらうことが出来る、という意味でもある。

 巨大ぬいぐるみが転んだのは、恐らくヴァミーリの生徒、高木セイナによるものだろう。

 

 何度か戦ったことがあるが、《手元に引き寄せる魔法(セイナ・マジック)》をあの質量に使えば、結果的にそうなるだろう、という予測を立てて、先回りしてぬいぐるみに触れて、横からうまく掠め取り、そのまま固まっている所に拳を叩きつけたら一点入った。

 

 固有魔法(オリジン)によって巨大化したぬいぐるみを《使い魔(マスコット)》にした事で、サイズが固定されてくれたのは嬉しい誤算だ。質量相応のコストはかかるが、チーム内で最もスフィアの容量が多い御手洗(みたらい)ライカに伏兵を預け、自分はヴァミーリの生徒と交戦を始めた仲間の補助に向かう。

 

 セピアル・ポワリアルはぬいぐるみの奇襲を受けて、残念ながら活躍の場を与えられずにやられてしまった。すぐにチームメイトのベール・エールが倒してくれたが、被害は甚だ大きい。

 

「ソウ、このぬいぐるみでクロムロームの連中、潰しちゃうよ!」

「ええ、セピアルの仇を討って! もうけちょんけちょんにして!」

 

 奇襲を仕掛けてきたクロムロームに逆襲しつつ、ヴァミーリを背後から攻める。

 

 リーダーである聖域ソウは固有魔法(オリジン)を使わずとも強力な《魔弾》使いだ――というより、彼女の強力な《魔弾》を核とすることで固有魔法(オリジン)がより輝く、という方が正しい。

 

 出力評価:S、貯めて撃てば攻城砲クラスとも言える火力を背後から受けて、耐えきれる魔法少女がどれほど居るか……と、そこまでヨトギの思考が及んだ時。

 

「――――ぐぇっ!?」

「っ、ライカ!? どうしたの!?」

 

 《使い魔(マスコット)》を譲渡して数分後、ライカが悲鳴と共に(うずくま)った。右手を――いや、スフィアを押さえている。ぜぇぜぇと呼吸が荒くなり、《魔力光(エーテルライト)》が溢れ出していた。

 

 ライカのスフィアはライトオリーブ、少し濁った薄緑色のはずなのに。

 ――――炭の様に黒い色が、混入している。

 

「…………しまっ」

「何、これ、まず……ヨト、接続、切るの、どう、ぐっ、ああああああああああああっ!」

 

 どんどん黒い《魔力光(エーテルライト)》の比率が濃くなって、やがて間欠泉の様に溢れ出した。

 

 バチッ、と音がして、ライカが身につけた首飾りの安全機構が発動した。

 その意味を理解して――ヨトギは、戦慄した。

 肉体の外傷じゃない。相手はぬいぐるみ経由で、直接スフィアに負荷をかけてきた。

 

 自分のスフィアと色がかけはなれていたり、濃厚な色の《魔力(エーテル)》を直接取り込むことは、魔法少女には非常に大きな負担となる。血液型の違う血液を無理やり注入するようなものだ。

 

ましてそれが黒い《魔力(エーテル)》ともなれば、想像を絶する苦痛だったに違いない。

 

 もし、ライカに《使い魔(マスコット)》を預けていなかったら、あれを喰らっていたのは自分だった。

 

 その事実に背筋が凍り、それから、ヨトギはその方がまだマシだった(、、、、、、、、、、、)事実に気づいた。

 

 奇襲を受けてやられてしまったセピアル・ポワリアルは《期待を一身に背負う魔法(セピアル・マジック)》……仲間に託された物が大きければ大きいほど能力が向上する、近接戦に特化した魔法少女だった。

 

 御手洗ライカは魔法少女全体で見ても希少な治療役(ヒーラー)……《傷を取り除く魔法(ライカ・マジック)》の使い手だった。その上で、戦況を冷静に俯瞰できる戦術眼を持っていた。

 

 自分だって優れた魔法少女だという自負はあるが、彼女ほどではないと思う……自分が落ちていたほうが、チームにまだ貢献できたのでは、という後悔が滲む――――。

 

「ヨトギ! 後ろ!」

「――――え?」

 

 その後悔の時間は、命取りになるには十分だった。

 眼前に飛び込んできた魔法少女に体を刺し貫かれて、悲鳴を上げる間もなく、首飾りの防護機能が発動した。

 

 

 

 

 

☆ ウエストエリア 中央通路 ☆

☆ ヴァミーリ高等学校 高等部三年 稲妻サダメ ☆

 

一瞬で距離を詰める魔法(サダメ・マジック)》は視界に収めたターゲットの眼前に一瞬で移動する魔法である。

 

 コスチューム以外の物を持って移動できないのが欠点だが、正面から奇襲を仕掛けるのにこれほど向いているものはない。

 

 最初のぬいぐるみの奇襲で大砲役のコロン・カロンがやられてしまい、続く巨大ぬいぐるみの一撃で、皆を逃がすために《停滞空間を作り出す魔法(ナズミ・マジック)》を展開していたナズミがやられてしまった――ここは無理をしてでも点を取りに行く所だ。

 

「セイナー!」

 

 稲妻サダメは奇襲能力に優れているが、こういう状況では敵陣に単独で乗り込んでしまう、という欠点もある。そこで高木セイナの《手元に引き寄せる魔法(セイナ・マジック)》だ。自陣に戻してもらい、ヒット&アウェイ戦法が成り立つ。まだまだここからだ、と思っていた。

 

「よし、次はクロムロームからも点をもらぼぼぼぼぼぼぼ」

「……サ、サダメ、アンタ、か、体」

「えええ、ななな何、あれ、あたし、足、どこ行っ」

 

 腰から下が、いつの間にか消えていて、ものすごい勢いで《魔力光(エーテルライト)》が溢れ出していた。

 当然、体を維持できるわけがなく、首飾りの安全機能が働いて、退場となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆ ウエストエリア 左下通路 ☆

☆ ヴァミーリ高等学校 高等部三年 南屋トトル ☆

 

 判断ミスだ、と南屋トトルは悔やんだ。奇襲に対応しきれなかった、仲間を失ってしまった。

 

 視界の端でスコアが動く。サダメがやられた。理由はわかった。眼の前の魔法少女だ。

 

 騎士のような鎧に、恐らく高価な魔剣。彼女が剣を振るうと、斬撃がその場に残り続ける。

 

 サダメは恐らく、設置された斬撃の一つの軌道上でセイナの『引き寄せ』を受けたのだ。

 

 視界に映りにくいよう置かれた斬撃の上を、体が通ってしまった。

 情報は持っていただけに、これは防げた失敗だった。

 

「このっ!」

 

 トトルに十剣(じっけん)の魔法少女、という二つ名が送られたのは、文字通り十本の剣を同時に操り戦う固有魔法(オリジン)、《無数の剣を操る魔法(トトル・マジック)》によるものだ。両手で剣を構えながら、九本の剣が体の周囲に滞空し、任意のタイミングで斬りかかる。

 

 トトルを相手にする敵は、腕が十本ある敵と戦うつもりで挑まねばならない。

 射程範囲は一〇mと短くはあるものの、近接戦においては相手の背後に回り込んで攻撃するのに十分な距離。

 

 だからこそ――――この相手は相性が最悪だった。

 

「凄まじい固有魔法(オリジン)――だけではないな!」

 

 斬り結び、打ち合い、間合いを開けて、すぐに詰める。戦いに慣れた者同士のリズムが剣戟となって響き合う。

 

「使えることと極めることは別だろう――その数の剣を自由自在に操る技量、感服する!」

「そっちこそ! ――――私の斬撃をこんなに防ぐなんて!」

 

 左右上下、四方向からの同時攻撃。しかしそれらは、途中でガキン、と軌道を阻まれてしまう。敵の斬撃が通ったラインは、そのままこちらの攻撃を防ぐ盾となるのだ。

 

 しかもずるい事に! 相手は自分の《魔力(エーテル)》だからか、置いた斬撃を食らわずすり抜けてしまうのだ!

 

 必然、こっちは迂闊に踏み込めない。相手が剣を横に振ったら、もう側面に移動するしかなくなってしまう――その上で、磨き上げられた技量による、凄まじい剣技を使ってくる。

 

 《魔力(エーテル)》による身体強化だって一級品だ、《個人戦(スターダスト)》に出たって良いところまでいけるんじゃないのか。

 

「けど、まだ負けられない…………!」

 

 そう、ここで自分が退場したら、もう勝ちの目がなくなる。一人でも多く倒し、誰よりも長く生き延びて、点を取らなければならない。

 

「十剣抜刀――テンカウント!」

「!」

 

 序盤で使うには早すぎる切り札――操る魔剣、全てに込められた魔法の一斉起動。

 

 炎の魔剣、氷の魔剣、嵐の魔剣、雷の魔剣、水の魔剣、地の魔剣、光に、闇に、血の魔剣。

 

 トトルが使うこれらの魔剣は両親が、学友が、師匠が、固有魔法(オリジン)を活かせるようにと贈ってくれたものだ。ちょいちょい物騒なものも混ざってるけど――託された期待と信頼を、果たさずにどうして負けていられる。

 

「行っけぇえええええええええええ!」

 

 全ての刃が敵の魔法少女を捉えた、もう絶対に逃さない――――――。

 

 

 

 

 

 ドン、と背中を押されるような感覚があった。

 

 

 

 

「えっ」

 

 からん、と手から力が抜けて、剣を取り落とす。

 それに伴い、浮いていた九本の剣もカランカラン、と音を立てて落下していく。

 

「……すまないな、正面から受けるのが礼儀である事は重々承知なのだが」

 

 剣を鞘に納めながら、対峙していた魔法少女は、申し訳無さそうに目を伏せた。

 

「これは、《集団戦(マギアパーティ)》なんだ」

 

 最後の力を振り絞って、背後を見る。

 大きなウィッチハットを被った、虹色に輝く、不思議だけど綺麗な髪色の魔法少女。

 

 いつの間にそんな所に居たんだろう、周囲は警戒していたし、何本かの魔剣には、射程内に知らない《魔力(エーテル)》の感知反応があったら斬りかかるようにしていたはずなのに。

 

 今受けた攻撃にしたって、平常時なら身に纏う《魔力(エーテル)》の膜だけで防げていたと思う。

 すべての出力を攻撃に転化した瞬間の、ほんの僅かな一瞬の隙を、的確に穿ち抜かれた……そんな印象。

 

「ごめん……皆」

 

 せめて、少しでも倒れまい、とたたらを踏んで――――視界がぐるりと回った。

 

 

 

 

 

 

 

「トトル! 大丈夫……じゃないね、これは駄目かぁ」

 

 セイナの声がする、霞む視界で周囲を見ると、ここは……建物の中だ。

様子をうかがっていたが、《手元に引き寄せる魔法(セイナ・マジック)》で自分を転移させたんだろう。

 

「ごめ……セリナ、ミスった……」

「謝るならこっちだって! サダメにトドメ刺しちゃったの私だし……あー、うん、認めよう、あの一年チーム、強かった。まずは様子見よう、なんて温い真似した私たちが間違ってた」

「……かも。あー……くやしー……セイナ、は、どうする……?」

「一点でも多く取るつも――……あー、いや、ちょっと無理かも」

 

 何度も見たことがある、ギラギラと銀色に光る高密度の《魔弾》が飛んできて、南屋トトルと高木セイナは仲良く揃って吹き飛んだ。

 

 実績と実力を兼ね備えた優勝候補、ヴァミーリ高等学校・魔法少女科……三年チームが、ここでリタイアした。

 

 

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